毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件 作:カンピロバクター卍
ルコプコは煙草にするとうまいと気づきを得ました、私です。
こう、ルコプコの葉を刻んで、加湿して、フィルターと一緒に手巻き用の紙に包むんですわ。それをなんとなく口寂しい時に吸うとたまらないんですね。
ちなみに私は18歳です。
この前ルコプコ漬けにした屋久 中恵とは、売主と顧客の関係を越えて親友となってしまった。こんなはずではなかったんだがなと思いながらも、中恵と遊ぶのは存外楽しかった。普段からルコプコを常用している中恵には私製のルコプコ煙草を融通してやったりもしている。それで中恵とシガーキスとかして遊ぶとドキドキして楽しい。
ちなみに私は18歳です。
やっぱり私の根がオタク臭いのか、同じくモサッとしてオタクっぽい中恵と波長が合うのかも知れなかった。あ、でも私は中恵と違ってモサッとしてないお洒落さんなので。なんせお金はあるんで全身ラルフ□ーレンコーデとか……いやウソ。流石にまだそこまでお金は溜まってないです。私が持ってるのはジャケットだけ。
そんな金欠(大嘘)な私と違って、中恵は妙に羽振りがいい。コーデのセンスが壊滅的なだけで結構高いブランドの服をいつも着てるし、よく私に飯を奢ってくれたりしている。聞けばどうやら実家が金持ちらしく、高校の頃から月に五万のお小遣いをもらっているそうな。
……友達だからってルコプコ代をタダにしたのは間違いだったかもしれない。
それに比べたら私の実家はケチなもんだ。
いや、恵まれているのは重々承知なのだけれど、それでも働かずして月五万は憎い!妬ましい!私の親なんか「家賃払って水道光熱費も払ってあげてるのに、その上お小遣いだなんてあげるわけないでしょ!バイトしろ!」だものな。いやホント、妬ましいや。
今回はそんな私の実家から仕送りが来た話だ。
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毎週のように来る異常な仕送りを見ていると忘れがちだが、毎月1日は私の実家から仕送りが届く日だ。
ルコプコが成長し、その葉っぱを食べてトリップした朝。
玄関に届いたそれを見た私は、昨日が日曜日だったからまさか二日連続で!?と一瞬身構えてしまった。よく見てみると発送元が私の実家になっていたのでほっと胸をなでおろす。全く紛らわしい!
どうやら実家からの仕送りらしい。
いやはや、最早普通の仕送りに懐かしささえ感じてしまう。なんだかすごく神聖なものに思えてきたぞ。
そう思うと何だかワクワクしてきた。箱の中身は何だろう、パックご飯かな、レトルトカレーかな。いやもしかしたら現ナマ支給があるかもしれない。ふふ、現ナマだと嬉しいな。私お金大好き。夢が膨らんじゃうね!
夢とは大概、現実に打ち砕かれるものだ。私はそのことを失念していたのかもしれない。親とは何か。親は子を思った時何を寄越すのか。リアリティのある人間としての親を、私は考えておくべきだった。
『ユウへ。
大学に入学してから二か月になりますが、ちゃんと元気にしていますか?ちゃんと大学には通えていますか?そろそろバイトは始めましたか?あんまり連絡してくれないので、お母さんは心配です。あなたは昔から無口な子だったけれども、メールくらいはちゃんと送りなさいね。とにかくバイトです。バイトをして食費くらいは稼いでもらわなければ困ります。貴方が行きたいと言った大学なのですから、そのくらいの誠意は見せてもらいます。なので今回から仕送りは必要最低限、数日を凌げる程度しか送りません。
・精米済みコシヒカリ20キロ袋…×1
・トイレットペーパー……………×4
・夏物シャツ………………………×3
・パンツ……………………………×3
・靴下………………………………×3
・缶詰………………………………×10
今回送るのは以上。大学頑張ってね。 母より』
ママ!ママ!ひどいよママ!現ナマドコ!?現ナマ!?ない!は?え?
手紙を読み終わった私は、頽れて泣いちゃった。
金は?どうして?おかしいよダンボールひっくり返しても何も出てこないの。あるのは米と靴下と……こんなのおかしいよ。いつもは食費だって入れてくれてたじゃん。三万円くらい!そこから切り詰めてCDとか小説とか買ってたんだよ?そんなのってないじゃん。
あ、もしかしたら今回から私の口座に直接振り込んでくれてるとか?そうだよねー、普通に考えたらそうかー。
『口座残高:2579円』
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!マ゛マ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!
ママが私を殺そうとしてる!
これはもう間違いないですね。お、落ち着くために発狂しなきゃ……。
チンポチンポ!チンポ?チンポッポザウルス!チンチン!チン!チン!ポ!(クソデカボイス)
「お客様、行内ではお静か」
完全犯罪ストラップをギュッ。
「いえ、どうぞごゆっくり……」
危ない危ない。危うく銀行員に奇行を咎められるところだった。どうやらストラップの入った鞄を下ろしたまま走り回ったせいで、効果範囲から外れてしまったらしい。最近知ったのだが、完全犯罪ストラップは使用者が10メートル以内に居ないと効力を発揮しないらしい。一度発揮された効果は永続されるので、例えコイツを紛失しても今までのことで逮捕されたりとかはなさそうだが……試す気にはならないね。
それはともあれ当面の生活について考えなくては。
いやー、正直仕送り(本物)を当てにしすぎていた。ぶっちゃけ先月から来月分の食費は無しだって言われてたんだよな、失念していた。
これからは毎日一時間くらい体育館裏でアルバイト(違法)でもするか?さっき銀行までの道中で顔も知らねぇ高校生集団にルコプコひと舐めさせたら言い値で買ってくれたし、多分いける。期せずして芸術系の大学に通っているわけだから、ビラさえ出しとけば変なもの見たさに集まってくる変人が沢山いるだろう……しかし一時間はデカいよ。
仕方なしに手書きで、1年総合芸術科の田妻からのお知らせとタイトルを付けて『今日より月火水木金の午後4時半よりルコプコ粉末の定期販売を開始します。販売時間は午後五時半までの1時間!みんな急げ!』のような内容のビラを作った。コレを大学事務のコピー機を借りて百枚ほど刷ると、大学のあちこちに貼って回った。これで後は客を待つだけだ……いや、今日は月曜日なんだから、講義があるじゃん。あーあ、時間までゲーセン行ってようかと思ったのになぁ。
ほんの少しげんなりした気持ちで真昼間の大学講内をぶらついていると、黒髪ロングで眼鏡の似合う芋女を見つけた。ああ、確か私と同じ総合芸術科の…屋久…中恵だっけ?あんま人の顔と名前一致させられないんだよな、私。
あ、そうだ。良いこと思いついちゃった。
「ねえ君!今日の五時くらいでいいからさ、体育館裏に来てよ!」
「エッ」
「いいもんあげるからさ!」