毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件   作:カンピロバクター卍

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#5 『週間サイボーグを作ろう』或いはサイボーグキク江

 キク江のことを覚えているだろうか。

 

 ほら、この前私が不死の妙薬を投与した死にかけのお婆さんのことだ。

 私のその慈悲深い行動のおかげで、キク江は心臓が止まって脳味噌が流れ出しても生き続けることが出来るようになったのだが、読者の皆様はキク江のその後についてご存知だろうか?今回はそこんとこについて話そうと思う。

 

 題してサイボーグキク江。

 

 

 ルコプコビジネスもこの1週間で軌道に乗り始め、私のキャンパスライフはより充実したものとなり始めていた。これでもう食費に困って万引きをする必要もないわけだ。(万引きしないとは言っていない)

 

 ユンパウ婆さんには感謝してもしきれないネ!

 

 なので今回はいつも以上に仕送りに期待をつのらせて、結果とてもガッカリしてしまった。

 別にこの仕送りを送りつけている存在が私を楽しませる義務などは1つもないわけだが、しかし今まで何だかんだ役に立つものが送られてきたからつい期待してしまったわけである。

 

 今回は所謂パートワークマガジン……つまりはディアゴスティーニスタイルのアレである……が届いたのだ。

 

 なお歯抜けかつ恣意的にピックアップされた号しか同梱されていない模様。これでどうしろってんだ。

 

 "週間サイボーグを作ろう"と題されたそれは、名前の通り毎週サイボーグのパーツを組み立てていき、最後はサイボーグが完成するという趣旨の雑誌であった。

 出版社は『南亜理化学出版』というところらしいが、やはり検索してもヒットしないから、どうせまた存在しないやつだろう。

 

『カケルです。おいしゃさんはあといっかげつしかないんだよっていいました。よくわかりません。しおくりさんはぼくのたからものをさしだせば、てんごくにつれていってあげるといいました。なのでぼくはつくりかけのさいぼーぐのうでだけをおくります。たいせつにしてほしいです。かんせいさせたかったなぁ』

 

 手紙を読むに、どうやら送り主は子供らしい。しかし、仕送りさん?何だソイツは。宝物を差し出せば天国に?宝物と言えば、例の皇帝もそんな事を……なんか手紙もちょっとヨレていて湿ってるし嫌な感じだ。

 でも、うん、子供が自分の宝物を差し出せと言われたとき、少しでも自分の手元に置いておきたくて宝物を分割してしまう気持ちはよく分かる。だからサイボーグの腕と、それに対応するマガジンしか入っていないんだねと納得できた。

 

 しかし、サイボーグの腕だけって、凄いけど使い道がなぁ……。

 

 サイボーグを完成させようにも存在しない会社の存在しない雑誌なんて揃えられるわけもないし、これはゴミかな。いや、ゴミに出すとしてこれは何ゴミなんだ?粗大ごみ?燃えないゴミ?金属フレームで構築された1/1スケールのサイボーグアームなんぞ、使い道がなければ邪魔なだけだし捨てたいのだが。

 

 でも、大切にしてねって書いてあったしなぁ。

 

 さすがの私も死人の願いが籠もった物品をおいそれと処分するのは憚られた。法律は無視するけど、謂れとかは存外気にするタイプなのだ、私は。

 

 そんなとき、気まぐれにつけていたテレビにキク江が映った。

 

 そう、不死になったあのキク江だ。

 テレビに映るキク江は骨と皮だけになっており、もはや自力で立ち上がることも出来ない状態になっていた。

 親族とみられる男性が車椅子に乗せたキク江を、市内の大学病院の研究グループに引き渡している様子が中継されているようであった。

 まあ、死んでるのに死んでないとか意味がわかんないし、誰かに世話を押し付けられるんなら押し付けたいわな。

 

 あ、車椅子が床の配線に引っかかった衝撃でキク江の腕がもげちゃった。

 

 そこで私はピンと閃いたね。

 

 キク江にこの腕をプレゼントしてあげれば良いんだって!

 

 

 キク江が移送された大学病院では異常な程の警戒網が敷かれていたが、完全犯罪ストラップの前には役には立たない。私が「ちょっと入りますね」と警備員に言えば、「はぁ、どうぞ」とすんなり病室に入れてくれた。

 

 ハローキク江元気ィ〜?

 

 わぁ、ホントに腕もげちゃってるじゃん。なんか乾燥しきってて断面そんなグロくないね。木材が千切れたみたいになってる。

 でもキク江は運が良い。たまたま私の持ってるサイボーグアームとキク江の千切れた腕が左腕だったのだから、幸運と言ってもいい。

 とはいえ、サイボーグアームをどうやってキク江に取り付けるかだが……取り敢えず断面同士を重ねてみる。するとサイボーグアームからシュルシュルと赤黒いコードが這い出てキク江の左肩を突き刺した。わーお、すご。

 私がサイボーグアームから手を離しても、コードによるキク江の侵食は止まらなかった。ドクンとコードが脈打つ度にキク江の体もビクンとベッドの上で仰け反り、かすかな嗚咽をあげる。数度それが繰り返されると、今度はサイボーグアームから警告音が鳴り始めた。

 

『エラー、不明なユニットに接続されました。対象を再構築します』

 

 なんかヤバそうなので、私はそそくさと病室から退散した。

 

 翌日、全身メタリックなサイボーグと化したキク江が夕刊に載っているのを見つけた。どうやらサイボーグアームには対象を自身と同質のものに再構築する能力があったらしい。

 なにはともあれコレで腕は取り戻せたし体も再び動くようになったしで、めでたしめでたしって感じだ。

 

 良かったねキク江お婆さん!

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