毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件 作:カンピロバクター卍
噂話は好きだ。
アイツは性格の悪いクソビッチだとか、今朝方UFOを見たとか、あの校長は1万人以上とヤッたらしいとか、そういう益体もない噂話が大好きだ。
ネット掲示板でそういう嘘か真かもわからぬことを流布するのにハマっていた時期があったが、そのうち逮捕者が出たのでビビッてやめた。今なら逮捕の心配もなくやれるが……今更戻ろうという気は起きない。というかぶっちゃけ飽きてしまった。あの頃の私は何が楽しくてあんなことをしていたのだろうか。
でもまぁ、掲示板でデマコピペを貼りまくった中で、そのうち体感一割くらいは事実だと後から証明されたのは面白い発見だった。私が一見本当に見える噂を選んで貼っていたのもあるが、それでも一割はデカい。
だからさ、都市伝説も神話も、或いは今君が読んでいるこの文章だって、実は本当のことかもしれないんだぜ?
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質の悪い冗談みたいな一週間だった。
キク江は国機研(国立機械技術研究所)に送られると知って激怒し、全身から板野サーカスよろしく無数のレーザーを放って大学病院を破壊し脱走。
それを聞いたアメリカは「日本にはキク江を管理する能力がないので、これからはうちに任せてね」と強引に日本各地に在日米軍を派遣し、総力を挙げてのキク江捜索に乗り出した。他にもサイボーグ化前のキク江から剝離した体組織のサンプル(要するにもげた左腕)が何者かによって盗まれたり、キク江捜索中の米兵が無限に餃子の湧く謎の酒杯を見つけたりと、凡そ日常とはかけ離れたニュースが連日流れた一週間であった。
キク江の人権が焼失したおかげで日本は大変なことになっていたのである。
全く、何でこうなっちゃったのかな。私全然わかんない。私ってば小市民だから、周りに迷惑をかけようと思ったことなんて一度もないのに。ピエン。
そんな慌ただし気な世間の様子も何のその。相も変わらず仕送りは届いた。
“風説証明機”と名付けられたそれは一見30センチほどの白い球形であり、球の頂点(?)にあるスイッチを押し込むと軽快な起動音と共に空中に浮かび上がった。どう考えても地球のテクノロジーの産物ではなかったが、それは今更な話である。
空中、ちょうど私のチェストラインあたりまで浮かび上がった球は、全身に無数のパネルラインを生じさせると(それまでは完全に一体成型された球にしか見えなかったというのに!)その全身を裏返すように開いて魔法少女めいた姿に変じた。
『お好みの風説を丸っと証明!この“風説証明機”にお任せなのねん!』
そんなキメ台詞を吐いてふわふわと浮かぶ風説証明機には知性らしきものは何も感じられず、キメ台詞を言った後は微動だ1つする気配もない。
意味不明だったので手紙を読んで使い方を確認したいところだったが、今回は何故か手紙が同梱されていなかった。仕送りを言い張るあの手紙がなければいよいよもってただの不審物に成り下がってしまうのだが、送り主は何を考えているのだろうか。
風説証明機と名乗るからには、風説と関係があるのは間違いない。なのでとりあえず適当な風説を一つ、呟いてみることにした。
「ネギを首に巻くと病気が治るらしいよ」
すると風説証明機は双瞳を赤色に輝かせて、ガタガタと振動しながら『風説を検知したのん!ピポロキルキル・ピポロピロ~!』と言って右手に持っていたステッキを天高く掲げた…ように見えた。何しろその瞬間には風説証明機の全身から閃光弾が如き光が放たれていたから視覚は信用ならなかった。
光が収まった後には、球形に戻った風説証明機が床に転がっていた。
何が……何が起きたんだ?
テレビをつけてみれば『必見!季節の変わり目の風邪対策!』という昼の情報番組がやっていて、特に目立った変化があるようにも見えなかった。
窓を開けて外の景色を眺めてみても、そこにあるのはいつもの光景だけ。
大げさなだけで何も起きないパターンのやつか?と思いながら窓を閉めてリビングに戻ると、つけっぱなしにしていたテレビからこんな声が聞こえた。
『万一風邪をひいてしまったのならば首にネギを巻きましょう!ネギは万病に効きますからね!』
『何当たり前のこと言っちゃってるんですか高橋さぁん』
『ネギは癌にだって効くってのは常識ですよー?もっとちゃんとした情報を教えてくださいよ!』
……?
こいつらは何を言っているんだ?
ネギを首に巻いた程度で風邪が治るわけがないし、癌に効くだなんてそんな……あ。
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風説証明機は世界を上書きすることで風説を証明する機械だった。
世界の上書きは過去に遡って行われ、風説は実在するものとして置き換わるようだ。
事実インターネットでネギのWikipediaを見てみると「ネギはあらゆる病に対する特効薬として有名」「紀元前200年前から既に薬として重宝されていた」とあるし、ネギの分布する地域では正史にはあった感染症のパンデミックがなかったことになっている。例えばフランスなどの西洋諸国ではペストによる死者数が圧倒的に少なく記録されており、その死者もネギの供給がひっ迫したために発生しただけで、本来は助かる命だったとジュール・ケインによる回顧録で語られていた。
あからさまに過去が改変されている。
直近でいえば新型コロナもなかった事になっていた。いや、正確に言えばウイルス自体は見つかっていたのだが、日本に上陸する前に中国での封じ込めが成功してしまったので……新聞で取り上げられたりしたのは確認できる限り数例という始末。
確認のために再度風説証明機を起動して、今度は「UMAって実在するんだよね」と言ってみた。
閃光。
そうです、チュパカブラは実在します。