モブプロデューサーの『初』   作:五月車

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あるプロデューサーの『初』

 その異常事態に気づいたのは中間試験が終わってから三日目の事だった。

 

 篠澤さんのプロデューサーが学校に来ていないことに気づいたのだ。

 いや、正式に言えば来ていない事は知っていたが、その異常性に気づいたのがその日だったということになる。

 

 中間試験が終わった次の日、彼がいない事に気づいたがその時はきっと最終試験の為に何かしらの準備をしているのだろうと思っていた。

 彼が『初』にかける執念は本物だった、なら中間試験を突破した今、新たな方法を考えるだろう。

 篠澤さんのレッスンの事を考えると、『惑星S』を最終試験で披露できないだろうし、何かしら別の方向からアプローチを掛けることは想像に難くない。

 しかし、あれには驚いた。まさか中間試験で『初』以外の曲を披露するとは思わなかった、普通にしていれば明らかに時間が足りない。

 事実、俺も咲季さんの持ち歌となる死ぬほど負けず嫌いなアイドルの歌の作成を依頼したが、完成したのは振り付けも込で中間試験の一週間前。

 流石に今更曲を変える余裕もなく、そのまま『初』で挑むことになった。

 

 自分より早く持ち曲の依頼をした……というわけではないだろう。

 

 『惑星S』は篠澤広というアイドルが歌うことに、特化しすぎている。

 いや、彼女にしか歌うことの出来ない曲と言ってもいい。

 

 十中八九、彼女の事をよく知る人物が作っていると考えていい。

 そして篠澤さんの過去の経歴を見ると、そういった交友関係があるとも思えない。

 更にこの曲は過去の篠澤さんを知っている人物ではなく今のアイドルとしての彼女をよく知っている人物の仕業だ。

 

 そう考えれば、この曲を作った人物は一人に絞られる。彼女のプロデューサーだ。

 そうすれば、中間試験に持ち曲が間に合った理由も理解出来る。

 

 そして一番恐ろしいことは、あれは中間試験で使い捨てる為の曲だということだ。

 

 そう思う理由の一つとして、まずあの曲はライブでは使えない。

 体力を限界まで追い込むあのパフォーマンスは、常にもしもが付きまとう。

 ソロライブならともかく、他のアイドル達に迷惑が掛かる可能性が高い以上、『惑星S』を歌うという手段はとれないだろう。

 録画されたミュージックビデオで表現するなんて方法もあるが、それでは『惑星S』の魅力を理解しきれない。おそらく半分程度も伝わればいい方だろう。

 

 二つ目の理由としては篠澤さんの体力が付けばあそこまでのパフォーマンスは出来ないということだ。

 あの後半部分を普通に歌えるようになってしまえば、凡百な曲の一つになりさがってしまう。

 もちろん篠澤さんのレッスンをサボらせばあの魅力を保ったままの曲になるが、あのプロデューサーがそんな選択を取るわけがない。

 寝ても醒めても、授業中でも食事をしていても、担当アイドルの事しか考えていない担当馬鹿。それが彼だ。

 そんな彼が彼女の成長をそこで止めてしまうわけがない。

 

 つまりその二点から、あの曲が使い捨てだという結論になるわけだ。

 

 その執念に咲季さんはいや、同じグループになった生徒達は負けたと言ってもいい。

 彼が最終試験でいったいどういった手で来るのか、試験の場ではライバル同士ではあるが、友人として次はどう来るのか少し気になる自分がいるのも又確かだった。

 

 

 そして二日目、この時点でもまだ何かしらの準備をしているのだろうと思っていた。

 ただほんの少しだけ、心配になり一言だけメッセージを送った。大丈夫か? とそんな一言。

 話を聞く限り彼は一人暮らしのようだし、もしも風邪だとかひいていたなら看病ぐらい行ってやるのが友人としての務めだろうと思って。

 

 ただそのメッセージにはいつまでたっても返信が帰ってくる事が無いどころか、既読すらつかなかった。

 

 そして返信どころか一切既読も付かないこれは可笑しいと思ったのが、今日の三日目というわけだ。

 もしかしたら病院とかに入院していて、携帯すら触れない状態なのかもしれない。

 念のため、彼の活動教室を覗いてみるが誰もいる気配はなく、何度も電話をかけてみても当然の如く反応がない。

 

 学校側なら何か知っているかと思い、あさり先生にそれとなく彼の様子を訊いてみる。

 

「心配ですよね、今日も無断で欠席してますし」

 

 この時点でまず入院しているという線は消えた。

 入院していれば、彼の家族に連絡がいくだろうし、そこから学校側にも連絡が有るはずだ。

 

 後はあまり考えたくないが、事件で身元不明の状態、あるいは行方不明になっている、あるいは家で倒れているかのどれかだ。

 家に向かうべきだろうかと思い立ち、彼の家の住所を知らないことを思い出す。

 学校側に訊いても教えてはくれないだろうし、誰か知っている人がいないかと考えてみるが、彼が俺以外のプロデューサー科の人と話しているところは見た事が無い。

 駄目元で学校側に訊いてみるか? と思ったところで、一人だけ彼とよく話している人物の存在を思い出す。

 

 そうだ、篠澤さんなら何か知っているかもしれない。

 

 家を知っているとは思えないが、何かあれば彼は絶対に彼女に連絡をする。

 両親や学校に連絡をする暇が無かったとしても、担当のアイドルだけには心配を掛けないように連絡をする。それがあいつという男だ。

 

 そうときまれば話は早い。

 

 篠澤さんに会いに行くべく、一年二組の教室へと向かう。

 

 ちょうど授業が終わった時間のようで、篠澤さんが教室を出てきたところを見計らい、彼女に声を掛ける。

 

「すみません、ちょっといいですか?」

「わたしに、なにかよう?」

 

 彼女は小首を傾げる。

 

「少し訊きたいことがありまして、あなたの担当のプロデューサーについてなにか」

「知らない」

 

 こちらが、言い切るよりも早く、彼女は否定の言葉を口にする。

 それは明確な拒絶だった。

 

「知りたいなら、ふうかに訊いて」

 

 それだけ告げると、早足に教室の外へと出て行った。

 突然の事に追いかける事も出来ない。

 

 ふうか? 記憶の中からその名前が該当する生徒を探す。

 汐入ふうかのことだろうか? もしも普通科に通っている生徒の事だったなら、手の打ちようがないなと思いつつも、まだ教室に汐入さんの姿があることを確認する。

 

「むー、お姉ちゃんのプロデューサーさん。広ちゃんに何を言ったんですか?」

「ただでさえ最近の篠澤さんは変だというのにあの様に逃げるなんて不自然ですわ」

「だよね、だよね! さあ、真実を話すまで帰しませんよ! プロデューサーさん!」

 

 汐入さんに話しかけようとしたところ、咲季さん妹と倉本さんの二人に声を掛けられる。

 

 どうやら、先ほどの彼女の様子を見て篠澤さんに俺が何か失礼な事を言っていると勘違いしているらしい。

 

「いえ、ただ彼女のプロデューサーについて訊いただけですよ」

「本当にそれだけですか? それだけで広ちゃんがああやって逃げるとは思いませんけど!」

「本当ですよ。最近彼が学校を無断で休んでいるようなので、彼女なら何か知っているかと思い訊きに来たんです」

「ええー! 広ちゃんのプロデューサーさん、無断で休んでるんですか?」

「それで最近篠澤さんの元気が無かったんですのね」

「千奈ちゃん、何か分かったの?」

「はい! 篠澤さんはご自身のプロデューサーさんの事を気にいっていましたわ。ですから、そのプロデューサーさんが無断で休んでいることが心配で様子が可笑しくなってしまっているんですわ!」

「流石だよ、千奈ちゃん! あれ、でもそれなら、なんで広ちゃんはお姉ちゃんのプロデューサーさんから逃げたんだろう?」

「それは…………分かりませんわ!」

 

 堂々と胸を張って、倉本さんは言う。

 

 何処に胸を張れる要素があるか分からないけど、まあ彼女達が楽しそうなのでよいという事にしておこう。

 

「そういうわけで、自分も困っているんです。篠澤さんに訊いたところふうかという生徒なら知っているという話だったんですが?」

「ふうかちゃんが? なんで?」

「わたくしにも、分かりませんわ」

 

 そういって倉本さんは首を横に振る。

 二人共、どうして汐入さんが知っているかについては心当たりがないみたいだ。

 

「なら、本人に訊いちゃえばいいんだよ! ふうかちゃん、ちょっといい?」

 

 入口の方から手をブンブンと振りながら、花海さんは大声を出して汐入さんを呼ぶ。

 汐入さん自身も自分が呼ばれていると思っていなかったのか、困惑した様子で彼女自身を指さしている。

 

「そうだよ、ちょっと訊きたいことがあるからこっちに来て!」

 

 そんな花海さんの言葉に、困惑しながらも彼女はこちらの方におずおずと言った様子で近寄る。

 

「それで、えっと何の用でしょうか?」

「実は最近、篠澤さんのプロデューサーさんが無断で欠席しているんです。担当のアイドルである篠澤さんなら何か分かるのではないかと思って訊きに来たのですが、彼女から汐入さんに話を訊いた方が良いと言われたんです」

「えっと、そもそも篠澤さんのプロデューサーが欠席しているということ事態初めて知ったんですが、どうして私なんでしょうか?」

「……それが分からなくて、自分も困っているんです。何か心当たりとかありませんか」

「そんなこと言われても、篠澤さんのプロデューサーとは以前スカウトされて以来関わりはありませんし、それ以上の事はわかりません」

 

 そう俯きがちに答える汐入さんの様子からは嘘を吐いているようには思えない。

 ……なら、なんで篠澤さんは彼女に訊けと? やっぱりふうかという名前の普通科の生徒?

 

 いや、普通科の生徒とは考えにくい。彼女の言ったふうかという名称が汐入ふうか以外を指すならフルネームで話すのが筋だろう。

 それにおそらく篠澤さんと仲がいいであろう、このふたりがふうかと訊いて汐入さんの事しか連想しなかった。篠澤さんと親しくしている他のふうかという人物がいればそちらも候補に入れる可能性は高いのにだ。

 以上のことから、ふうかは汐入さんの事を指す可能性が非常に高い。

 

「分かりましたわ!」

 

 ただ、そんな中で倉本さんが何か理解したように目を見開く。

 

「なになに、何が分かったの!」

「嫉妬ですわ!」

「嫉妬?」

「篠澤さんは知ってしまったのです。以前にプロデューサーが汐入さんをスカウトしていたことを。それに嫉妬して、気落ちしているのですわ!」

「おお、凄いよ千奈ちゃん! あれ、でもそれならなんで広ちゃんのプロデューサーさんは、無断で学校に休んでるの?」

「それは…………分かりませんわ!」

 

 ……二人で再び漫才を始めた二人を放っておいて、汐入さんの方に話しかける。

 

「本当にその時以外に関わりはないんですね?」

「はい、そのプロデューサーさんとはそうです」

「……彼にスカウトされたことは他の人に話してます?」

「ええ、それこそ随分と前に篠澤さんに既に話しています。ですので、倉本さん達が言っているようなことは無いと思うのですが……」

「ありがとうございます、それだけ聞ければ十分です」

「何か力になれたでしょうか?」

「……どうなんでしょうね。自分もよくわかっていませんから」

 

 三人にひとまずお礼を言って、その場から離れる。

 

 ここに来て分からないことが増えてしまった気もするが、それでも何個か分かったことがある。

 

 一つ目は篠澤さんは、彼が無断で学校を休んでいる原因を知っているということ。

 正直にいえば、これが一番の収穫だ。

 彼女が理由を知っている以上、何かしらの事故に巻き込まれただとか、家で倒れているということは無いだろう。

 ひとまずは安心できる材料になる。

 

 二つ目は篠澤さんは、その原因が汐入さんあるいは別のふうかという人物にあると思っているということ。

 

 そして、三つ目は、おそらく汐入さんは原因ではないことだ。

 

 正直に言ってしまえば、ここの齟齬が一番理解出来ない。

 

 篠澤さんが思っている理由とは別の理由で彼は無断欠席している?

 ……駄目だ、分からないことが多すぎで理論を建てるどころではない。

 篠澤さんに再び声を掛けても、どうせ先ほどと同じように拒絶されるだけだろう。

 

 ならもう少し情報を集める必要がある。

 彼が無断欠席を始めたのは、中間試験の後からだ。なら、中間試験の後に何かあったと考える方が自然だろう。

 

 その時の彼の様子を知っている人……ああ、そうだ。

 

 あさり先生なら何か知っているかもしれない。

 中間試験の結果は彼女が教えてくれることになっている。だったら、その時の様子ぐらいは訊けるかもしれない。

 

 そう思いながら、職員室へと足を運ぶ。

 ……はあ、俺は探偵ではないんだけどな。

 

 

 職員室に入り、あさり先生から中間試験の後のあいつの話を訊いてみる。

 

「私は行ってないんですよ、実は彼だけは特別に学園長が『わしが言わなければならんことがある!』と言って、成績を伝えたもので」

「そうでしたか」

 

 職員室から出て再び考える。

 学園長がわざわざ伝えないといけないものってなんだろうか?

 

 お褒めの言葉? だとは思えない。

 中間試験一位、その称号で十分だろう。作曲家方面でのスカウト?

 いや、わざわざ試験結果の発表を変わってもらう程の事ではない。 

 

 それなら何かしらの説教?

 学園長を怒らせるほどの事ってなんだ?

 

 あのパフォーマンスを見てケチをつけるとしたら……。

 

 あの『惑星S』が中間試験用の使い捨ての物であることぐらいか?

 いや、そうだ。学園長はおそらくあいつのことをよく知らない。

 そのことで小言を言いに向かうというのは考えられる話だ。

 

 下手な成功体験というのは、ただの失敗よりも質が悪い。

 その成功体験に縋ってしまい、自分の道を踏み外すきっかけになるからだ。

 中間試験合格という成功体験に彼が縋ると学園長が感じたなら、それは篠澤広というアイドルとしての可能性を一人のプロデューサーが潰す事を意味する。

 

 プロデューサー科の成績が、担当のアイドルの成績で決まるのもその勘違いを促進する要因とはなる。

 『惑星S』あれをこれからもずっとやり続けると、そう誤認していたのであれば、学園長が一言、言わなければならない理由にはなる。

 

 あのプロデューサーの事を知っていればそんなことさせるわけがないと断定できるが、相手は学園長だ。彼の事は断片的にしか知らないはずだ。

 可能性として考えられる話ではある。

 

 

 ……ただ、だからといって、彼が学園を無断で休む理由にはならないだろう。 

 

 例えば、もしも彼自身も『惑星S』は中間試験の為だけの曲でなく、篠澤さんの懐刀として作ったつもりであったとしても、彼がたった一度の失敗を指摘されて折れるような男には思えない。

 

 むしろ学園長に感謝し、問題点を理解し、次の日には別のレッスンプランを用意する男だ。

 彼との付き合いは長いわけではないが、それだけは断言できる。

 彼はどれほど打ちのめされたとしても、アイドルの為であれば何度も立ち上がれる異常者だ。

 

 もしも彼が折れることがあるとするなら、それは常識では考えられないような七難八苦を与えられた時……あるいは……。

 

 ……あるいは?

 

 ああ、そうだ。

 そう考えれば、理解はできる。

 

 彼が折れるとすれば、それはアイドルに見限られたときだけだろう。

 

 だが、もしそうなら篠澤さんはどうして彼を見限った?

 

 中間試験の結果が気に食わなかった? ありえない。いったいどこに最高の結果を取って、喜ばない人物がいるというのか。

 

 そこで問題になってくるのが、汐入さんの存在だ。

 これなら篠澤さんが汐入さんが原因だと思っていた理由についても説明がつく。

 

 つまり、今までの事から結論付ければこうなる。

 

 

 中間試験を合格した後、あいつは何らかの理由で汐入さんをもう一度スカウトしようとした。

 そのスカウトの話を篠澤さんに話したところ、彼女にとっては自分から汐入さんに乗り換えるように聞こえたと。

 そしてあいつに絶縁状あるいはそれに似た何かを突き付たのだろう。その結果、あいつはショックで寝込んでいると。

 

 おもわず大きくため息を吐く。

 

 こうして考えてみれば、なんら大したことは無い。

 ただのコミュニケーション不足。あいつが担当アイドルをないがしろにするとは思えないし、何かの行き違いがあっただけだ。

 

 それなら友人として、仲を取り持ってやるのが、務めだろう。

 心底面倒ではあるが、あいつに借りを追加で作っておくというのは悪くない。

 

 

 

 ならまずやるべきことは、簡単だ。

 二人で話し合う場を作ってやればいい。

 

 それにはまず彼女の誤解を解く必要がある。

 こちらの言葉をどの程度信用してもらえるかは分からないが、話し合いの場に連れ出すことぐらいは出来るだろう。

 

 全く……今回の貸しは高いぞ?

 

 

 

 

 ……なんて思いながら、彼等の話す場所を作るべく、意気揚々と篠澤さんを捕まえたまではよかった。

 

「話すことはない」

 

 こちらが声をかけるなり、そんな言葉を浴びせられる。

 

「そうかもしれないんですが、あいつ今ずっと無断で学校を休んでいるんですよ」

「……それ、本当?」

 

 やっぱりそうだ。

 篠澤さんはあいつが学校に休んでいることを知らない。

 だから、こうして休んでいることを告げれば食いついてくる。

 

 おおかた汐入さんをスカウトして、彼女の担当になっているとでも思っているのだろう。

 

「本当です、こんなことで嘘をついてもしかないでしょう?」

「それは……そう」

 

 篠澤さんは何か考え込むような仕草を見せる。

 

「おそらくあなたは何か勘違いをしているんですよ」

「……あなたはプロデューサーの何?」

「友人ですかね」

 

 向こうがどう思っているかはしらないが、少なくとも自分は友人だと思っている。

 

「そっか、ならあのことも知ってる?」

 

 こちらを試すような目で彼女はこちらを見る。

 

 あのこと?

 汐入さんを以前にスカウトしたことだろうか?

 

「ええ、知ってます」

「そうなんだ、時間遡行の事知ってるんだね」

「は?」

 

 ……自分の耳を疑った。

 時間遡行? SFの世界でしか聞いたことないぞ、そんな言葉……。

 

「……すみません、そのことについて詳しく聞いても?」

「知らないの?」

「はい、汐入さんのスカウトを以前失敗したことだと思っていたので」

 

 そこからの話はもう、奇想天外と言う言葉が相応しい話だった。

 何度もループして、同じアイドルをスカウトして、何度も中間試験に落ちていると。

 

 まあ理解は出来た。そう考えれば何個か理解出来るところもある。

 

「……なるほど、理解出来ました」

「信じるの?」

「ええ、信じたほうが話の筋は通るので」

 

 今まで感じていた微妙な違和感。

 その理由も彼が同じ時間を過ごしているからというのなら、納得は出来る。

 

「そのうえで一つ訊くんですが、どうして先ほど彼の事を訊いた時汐入さんに話を訊けと言ったんですか?」

「それは……プロデューサーはふうかのプロデューサーであるべきだと思ったから」

 

 その言葉を聞いて、頭を抱えた。

 

 真相を聞いてみればこれほど馬鹿らしいことは無い。

 

 過程こそ間違っていたが、結局のところの結論は同じ。

 コミュニケーション不足、それが理由だ。

 

 そんなことで彼等が離れ離れになるのは余りにも惜しい。

 ただ、ここまですれ違うのは、もはや一種の才能と言ってもいいだろう。

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