昼下がりの太陽が、桜の花弁を透かし淡く輝かせており、
青空を背景に陽の光を浴びてきらきらと瞬いている時間。
まるで和の絵画のように、
桜の木の下でそっと白いおにぎりを持ち上げ、
ふんわりとしたお米の塊がゆっくりと唇に運ばれてゆく。
ゆっくりと目を閉じ、一口頬張るとほんのり嬉しそうに微笑む。
欲張りに頬張ったせいで、頬がほんのりと膨らんでいる。
其の様子を、ジトっとした目で所作一つ一つ見ている。
紫「ねぇ」
幽々子「ŧ‹”ŧ‹”ゴックン、何?」
紫「貴方はその量のおにぎりをこのお昼の時間に食べるの?」
幽々子「その量?たったの間違いじゃないの?」
目の前にはおにぎりのヒマラヤ山脈が連なっていたが、
段々とみじかくなっていっている。
紫「貴女夜ご飯、と言うよりご飯作れるの?」
そう、何を隠そう紫は、妖夢に家事を頼まれたが、
全くやってこなかった為出来ないのである。
幽々子もそれが適用される。
が、その事を紫は人に言っていない。
と言うより人?と話す機会は幽々子ぐらいしか居ない。
それに、幽々子とすらあまり話さない為、
其の様な事を話す機会がなかった。
もう幽々子が家事が出来るということを祈るしかないが、
幽々子「出来ると思う〜?」
と、唇の先に米粒を付けながら言ってきた。
紫「はぁー、まぁその事は後で考えましょう。」
幽々子「そうそう、後は野となれ山となれってやつよ!
後のことは後の私に託せば良いの!」
と、アンデス山脈の様な胸を張り上げて、
答えるのだった。
紫「これ、食べてもいいかしら?」
幽々子があまりにも美味しそうにおにぎりを頬張る為、
紫も食べたくなってきてしまったのだ。
幽々子「良いわよ〜。でも、食べすぎないでね?
私も食べるのだから。」
紫「貴女程食べないわよ。」
と言うと、「はむっ」と口に入れた瞬間、
目を真ん丸くして幸福そうに微笑んだ。
紫は、ご飯を食べなくても生きていける為、
ご飯を久しぶりに食べたからか、
とてもご飯が美味しく感じた。
紫「美味しいわね!これ!」
と、紫が口にお米の塊をほどきながら、
幽々子の方を向いて語り掛けた。
幽々子「ふっふっふ!そーでしょ!」
と、ロッキー山脈の様な胸を張り上げて答えた。
紫「これも、妖夢が作ったの?」
幽々子「そうよ!私の自慢の庭師なの!」
などと、食べながら話していると、
ヒマラヤ山脈程あったおにぎりがもう無くなってしまい、
幽々子のおにぎりに伸びたはずの手が空をきった。
その時、幽々子から声にならない声を発生させた。
その声にビックリしたせいか、紫の口の中でほどけたお米の粒が、
器官に入ってしまい、
紫「ゲホゴホちょっと!いきなり何よ!」
幽々子「おにぎりが…そんな…おにぎりが…」
紫「あの〜?幽々子?いや〜夢中になっちゃって食べ過ぎちやったわ。
ごめんなさいね?」
と、謝罪をしたがそんな声聞こえちゃ居なかった。
紫「ねぇ、ご飯一緒に作りましょ?
そうすれば貴女の食べたいだけ作れるし、
好きな味付けに出来るわよ。」
幽々子「! それもそうね!
そうと決まれば、即決即行!」
と言うと、キッチンに走って行った。
紫もキッチンの場所を知らない為、
幽々子の後ろをついて行く事にした。
…………結論を言おう、
紫・幽々子「「迷った!!」」
幽々子の屋敷は冥界を管理する場所という事もあり、
とても広く、もしかしたら東京ドーム程のデカさがある。
それに幽々子はあまり家を歩き回ったりしない為、
自分の部屋と宴会会場、
そして庭を見る為の縁側位しか場所を知らない。
それに幽々子が家事をするはずない為、
キッチンの場所なんて知るはずがない。
紫「あんたがなんで迷ってるのよ!
ここの主でしょ!」
幽々子「五月蝿いわね!
こんな広い屋敷だなんて私も知らなかったわよ!」
心做しか、口調が2人とも悪くなっている気がする。
と、幽々子のお腹から夜のアラームが鳴った。
紫「ちょっと、妖夢に家事頼まれたのに、
段々と暗くなっていってるじゃないの!」
外から入る光が紅くなっている事から、
今が茜時だと言うことが分かる。
幽々子「ウア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
と、幽々子が膝をつきながら床に台パンを食らわした。
紫「っさいわね!」
幽々子「も゛う゛た゛え゛ら゛れ゛な゛い゛!!!」
紫「ちょっと黙りなさい!」
紫『妖夢を呼ぶのも良いかもしれないが、
ここで呼べば絶対落胆され…』
ヌッ
妖夢「幽々子様どうされましたか?」
紫「え?」
と妖夢が出てきた事により、
幽々子の暗かった表情が綻び、晴れやかになってゆく。
幽々子「よ゛う゛む゛ち゛ゃ゛ん゛!!!
よ゛か゛っ゛た゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
と言うと、ハイハイをし妖夢に近ずき、
抱き着いた。
妖夢「わっわ!ちょっと?!幽々子様!?
どうされましたか!?」
と、寝起きで働いてない頭が、
スポーツカーのエンジンの様にフル稼働した。
そして、どうすれば良いか分からず、
とりあえず、目の前にある頭を優しく撫でた。
それにより、
幽々子のキモ…気持ちが少し安定してきた。
そして、妖夢は紫に状況確認のため、
どうしてこうなったのかを聞くことにした。
妖夢「どうして、幽々子様がこんな泣かれてるんですか?
まさか…紫様が何かやったんですか?」
と言うと、腰に携えた太刀の刃先を紫に向けた。
この後、無事誤解はとけ、
妖夢は床に穴が空くほど謝り倒した。
妖夢「そういえば、紫様の能力を使えば、
キッチンになんて一瞬じゃないですか。
なぜ使わないのですか?」
紫「私の能力は、
移動するには、ある程度正確にその場所を想像出来ないと、
そこに移動出来ないの。」
妖夢「あ、ふーん。
と言うより、何で大の大人2人が家の中で迷子になるんですか…」
と溜息をつきながら言った。
紫・幽々子「「返す言葉も有りません…」」
妖夢「そういえば、ある程度想像出来る場所なら、
何処にでも行けるんですよね?」
紫「?そうだけどいきなりどうしたの?」
妖夢「なんで庭に戻らなかったのかなって…
そこからなら幽々子様だって、
ある程度の道は分かるんじゃないですか?
少なくとも、迷子は脱出できたと思いますけど…」
幽々子「……」
何やら幽々子が、じっとこちらを見て来ている。
紫「……てへぺろ☆」
この後、屋敷の襖に大人の頭程の穴が空いたとか…
幽々子「それじゃあ妖夢ちゃん、
ちょっとキッチンまで案内してくれる?」
妖夢「は、はい分かりました。」
と、キッチンまで案内してもらった。
妖夢「本当に大丈夫なんですか?」
幽々子「大丈夫よ、流石の私もおにぎりぐらい作れるわ。
だから、安心して寝ていらっしゃい。
というより、起こして悪かったわね。」
妖夢「それに関しては別に良いんですけと…
困ったら呼んでくださいね?」
幽々子「わかったわ。」
と言うと、妖夢は自室へと戻って往くのだった。
幽々子「それじゃあ作りましょうか。」
紫「はい」
と言うと、紫と幽々子は腕まくりをして、
おにぎりを作る体勢を整えた。
幽々子「じゃあまずおにぎりの形を整えましょうか。」
と言うと、手に水をつけてご飯を少し取り、
グッグッと音が出る程思いっきり握った。
紫「なんかちっちゃくなっちゃったわね。」
幽々子「じゃあご飯を足してみる?」
紫「そうね。」
と言うと、おにぎりを握った。
それはもう、1合程の米がおにぎりの大きさに収まってしまった。
幽々子「私、焼きおにぎりが食べたいわ。」
紫「いいわね。」
幽々子「それじゃあ、どうしよう…」
紫「この竈じゃないかしら?焼くと言えば」
幽々子「それもそうね。」
と言うと、薪を突っ込んで、火を付けた。
紫「そういえば何か塗ってるわよね?」
幽々子「それもそうね…何を塗ろうかしら。」
と周りを見てみると、
幽々子「塩じゃないかしら?」
紫「いいねぇ!」
と言うと、塩をこれでもかと塗りたくった。
幽々子「なんか焼けない気がするわ。」
紫「油とか塗ってみる?」
幽々子「いいわね!
そっちのほうがいい感じに焦げ目が出来そうだわ!」
と言うと、油に1度沈めて油が滴るぐらい付けた。
紫「よし!それじゃあ串を刺して焼こう!」
と言うと、おにぎりを竈の中に入れると、
竈が水を経た魚の様に、火が燃え上がった。
紫・幽々子「「イヤーーー!!!」」
と、甲高い叫び声により妖夢がまた助けに来た。
そしてこの時妖夢は、
妖夢『二度と家事をこの人達にやらせちゃいけない』
と、思うのだった。
次の次位で永夜抄に多分入るんじゃないかな?