月光が差し込む人里は、人がまるで居ない様に静寂が鳴り響いている。そんな静寂に溶け込む様な小さな寝息が聴こえてるくる。
そこに目をやると、木の下で服が赤く滲んだ慧音が居る。
こんな夜に外で寝ていたら、人喰い妖怪の格好の的となるだろうが、
体力的にもそんな事を考える余裕を持ち得ていない。
???「けーね。おーい、けーね?返事をしてくれ〜。
お腹減ったぞ〜。今日の夜ご飯何だ〜」
と、少し遠くから、何者かの声が聞こえて来る。
その声は静寂を駆け抜けていき、山びこの様に、
またその人の耳へと届いた。
???「けーねー。なんだ?寝ちまったか?
何時もなら起きてる時間の筈なんだが…
疲れちまったかな?
しょーなねぇなぁ。
今日はこの妹紅が腕によりをかけてご飯を作ってやるか!」
などと独り言を呟きながら闊歩していると、
こんな時間に、聴こえるのは不思議では無いが、
こんな場所で聴こえるのがおかしい声が聞こえて来た。
その声が聞こえた時、無意識に自らの気配を消し、
その音に近づいた。
何故だか胸が締め付けられるような…
全身に血液が激しく駆け回り、
熱くなっていく感覚がする。
妹紅 けーね!
慧音「んぁ?あぁ、もこう…もうこんな時間か…」
妹紅 もういい!喋んなお前!
慧音「この程度じゃ死ぬ事はないよ」
と、微笑を顔に浮かべ、妹紅を見た。
が、そんな顔を見る余裕なんて持てるはずなく、
妹紅 一旦お前の家に戻るぞ!
といい、慧音を軽くおんぶすると、
家へと迷いなく、泣きそうな顔で、駆け抜けた。
慧音「ありがとうな妹紅…」
慧音を妹紅は、緊張により、少し震える手を落ち着かせて、
脆く壊れやすい物を扱う様に、そっと布団に置いた。
置いた後の慧音の服を見てみると、
赤く滲んでいた服が、妹紅の汗により、広く薄く滲んでいた。
妹紅「誰に…」
慧音「?」
妹紅「誰にやられた?」
声は震えていることがよく分かる。
が、その時の感情がどのようなものなのか分からない。
ただ、その感情が簡単に言い表せるものではない、
という事だけがわかる。
慧音「ふふっ」
妹紅「…は?」
慧音「いやすまない、
こんなに取り乱している妹紅を見るのは初めて見たもんでな…」
妹紅「もーう!俺は本気なんだぞ!」
と言い、思わず、2人とも笑いが辺りを包み込んだ。
妹紅「全く…で?結局誰に…、いや、
お前をこんな風にした奴は今何処にいる?」
その目は月光を取り込み、
元々赤みがかった瞳孔が、より紅くなった様に見える。
その目は雲ひとつない空のように澄んでいる。
その目をずっと見つめていると、引き込まれそうになってしまう。
慧音「…はぁ。今のお前に、何を言った所で、
止められないだろうな。
まぁいいだろう。
私をやったヤツらは、今永遠亭にいる…と思う。
が、アイツらも悪気がある訳じゃないんだ、
今回の満月を奪った奴を懲らしめるために…
ってあれ?」
慧音が瞳を開いた時には、もう妹紅の姿は闇に消えていた。
次回、混ざり合い、混ざりきらず、混沌に