麗花   作:不思議の国の爱丽丝

56 / 63
やっぱ終わんなかった。あーあ、あーぁ、アーア


愛やな〜

月光が差し込む人里は、人がまるで居ない様に静寂が鳴り響いている。そんな静寂に溶け込む様な小さな寝息が聴こえてるくる。

そこに目をやると、木の下で服が赤く滲んだ慧音が居る。

こんな夜に外で寝ていたら、人喰い妖怪の格好の的となるだろうが、

体力的にもそんな事を考える余裕を持ち得ていない。

 

???「けーね。おーい、けーね?返事をしてくれ〜。

お腹減ったぞ〜。今日の夜ご飯何だ〜」

 

と、少し遠くから、何者かの声が聞こえて来る。

その声は静寂を駆け抜けていき、山びこの様に、

またその人の耳へと届いた。

 

???「けーねー。なんだ?寝ちまったか?

何時もなら起きてる時間の筈なんだが…

疲れちまったかな?

しょーなねぇなぁ。

今日はこの妹紅が腕によりをかけてご飯を作ってやるか!」

 

などと独り言を呟きながら闊歩していると、

こんな時間に、聴こえるのは不思議では無いが、

こんな場所で聴こえるのがおかしい声が聞こえて来た。

その声が聞こえた時、無意識に自らの気配を消し、

その音に近づいた。

何故だか胸が締め付けられるような…

全身に血液が激しく駆け回り、

熱くなっていく感覚がする。

 

妹紅  けーね!

 

慧音「んぁ?あぁ、もこう…もうこんな時間か…」

 

妹紅 もういい!喋んなお前!

 

慧音「この程度じゃ死ぬ事はないよ」

 

と、微笑を顔に浮かべ、妹紅を見た。

が、そんな顔を見る余裕なんて持てるはずなく、

 

妹紅 一旦お前の家に戻るぞ!

 

といい、慧音を軽くおんぶすると、

家へと迷いなく、泣きそうな顔で、駆け抜けた。

 

 

慧音「ありがとうな妹紅…」

 

慧音を妹紅は、緊張により、少し震える手を落ち着かせて、

脆く壊れやすい物を扱う様に、そっと布団に置いた。

置いた後の慧音の服を見てみると、

赤く滲んでいた服が、妹紅の汗により、広く薄く滲んでいた。

 

妹紅「誰に…」

 

慧音「?」

 

妹紅「誰にやられた?」

 

声は震えていることがよく分かる。

が、その時の感情がどのようなものなのか分からない。

ただ、その感情が簡単に言い表せるものではない、

という事だけがわかる。

 

慧音「ふふっ」

 

妹紅「…は?」

 

慧音「いやすまない、

こんなに取り乱している妹紅を見るのは初めて見たもんでな…」

 

妹紅「もーう!俺は本気なんだぞ!」

 

と言い、思わず、2人とも笑いが辺りを包み込んだ。

 

妹紅「全く…で?結局誰に…、いや、

お前をこんな風にした奴は今何処にいる?」

 

その目は月光を取り込み、

元々赤みがかった瞳孔が、より紅くなった様に見える。

その目は雲ひとつない空のように澄んでいる。

その目をずっと見つめていると、引き込まれそうになってしまう。

 

慧音「…はぁ。今のお前に、何を言った所で、

止められないだろうな。

まぁいいだろう。

私をやったヤツらは、今永遠亭にいる…と思う。

 

が、アイツらも悪気がある訳じゃないんだ、

今回の満月を奪った奴を懲らしめるために…

ってあれ?」

 

慧音が瞳を開いた時には、もう妹紅の姿は闇に消えていた。




次回、混ざり合い、混ざりきらず、混沌に
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。