真剣で猟犬に恋しなさい!!   作:勿忘草

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もう少しで中学生編も終わります
原作時間軸まであと少し。


『修了試験』

副官に任命されてから数ヶ月が経った。

もう少しで訪れてから一年が経とうとしている。

俺はマルギッテさんの身の回りについての警護や兵法での相談役。

それ以外にも給仕などといった事をこなす身になっていた。

 

振り返ってみると初めてここに来た時から随分時間が経った。

最初は装備や重りをつけての鍛錬に驚いていたが、いまやその倍ほど総重量を増やした上で軽快に動き戦場を駆けている。

筋力も初めてここに来た時に比べて大きく増加したものものだ。

 

そんな事を考えながら俺は腕立てをする。

『狩猟部隊』の副隊長にして副官、その大役を務めるためには努力を積まなくてはならない。

もっとも今までただの一度も努力を怠った事は無いが。

 

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……それから警護をこなして兵法を学び、それから更に一年が経つ。

その間にも『狩猟部隊』にも新人が入って育成はマルギッテさんや先輩の人達が教えている。

俺の教える事はは徒手空拳による攻撃の為それほど人気はない。

ただ、例外として実戦における組み手では人気はある。

 

あと、コレは私的な事だが誕生日の贈り物が届いた。

トーマと準からはペンダント。

ユキからはお菓子の詰め合わせ。

モロからは写真立て。

英雄からは真っ赤なふんどしだった。

 

写真自体入れる写真がないし……お菓子はその一週間後には空になった。

赤フンはいまだに未着用で今のところ身につけているのはペンダントだけだ。

 

そのペンダントを撫でて俺は気を入れなおす。

いつどんな事があっても、どんな時でも気を抜けば死ぬ事があるのだから。

一度だけ戦場での裏切り者に銃を向けられた事がある。

そいつを撃ち殺した時はそいつの親友から恨まれた、そいつに闇討ちされる事が有ったが……正等防衛による一撃の当たり所が悪かったせいでそいつも帰らぬ奴となった。

 

そんな事を思い返していた時マルギッテさんが近寄ってきて俺に一言言ってくる。まあ、真剣な顔からして用件は一つだろうけどな。

 

「任務が入りました、キョーヤ」

「分かりました、すぐに向かいます、隊員を集めるので場所聞かせていただけませんか?」

「ありがたい、場所はここです」

 

マルギッテさんは俺に地図を見せてその場所を指差す、なるほどこの場所か。

 

「分かりました、それでは集めてきますので隊長は先にその場所へ向かってください」

 

そう言って服をはためかせ目的へと駆けるマルギッテさん、俺は軍の舎へと入り軍人の人達を集めていった、そしてマルギッテさんが出て3分後、俺は後発隊として戦場へと向かっていた。

 

それから少しの時間が経ち、戦場に着くと俺は真っ先に斥候も送らず相手の戦力を確認する、こちらに比べて相手は3倍近い兵の数、それに戦車が4台、今まで見てきた相手の中では多くも無ければ少なくも無い、丁度真ん中ぐらいの兵力であった。

 

「お前ら、死にたくなきゃ副隊長についていけよ!!」

「オォ!!!」

 

隊員の人たちが集まり雄たけびを上げる。

幾ら隊長のマルギッテさんが怖いからってちょっと感心しないぞ、特にそこの新入りの人。

 

「キョーヤ、貴方も随分と信頼されるようになりましたね」

「まだ少し恥ずかしいですがね」

 

マルギッテさんが俺を見て褒めてくる。

まあ、戦場を駆ける際にとてつもないほどの信頼を置かれているのも仕方ない。

この若さで『上級准尉』など普通ならありえないからだ。

これはきっとマルギッテさんが俺を死地に連れて行きその中で無謀な事をして功績を挙げたからだろう。

 

「相手の兵力と分布を見て囲むようですね」

 

 

「俺と隊長が背中合わせに戦えば同時に殲滅が可能です」

 

「それはいい提案だ、それならば貴方に背中を任せましょう、兵と協力してそちら側の全ての殲滅をお願いします」

「了解、それでは掃討を開始します、少尉」

 

そう言って俺とマルギッテさんは背中合わせで敵軍へと駆けて行く。

相手は慌てふためき戦車の行く方向を妨げたりして我先に逃げようとしていた。

それを見た俺は相手の後ろから銃で心臓を狙う、引き金に指をかけ力を入れる。

銃口から吐き出された弾は相手の背を貫き、一瞬呆然とさせた後、相手の軍服が血に染まり倒れこむ。

 

痙攣をほんの僅かの間してそのまま動かなくなる。

俺はそれを見届ける事もなく相手の軍勢へと進み、八極拳で吹き飛ばす。

逃げ切れなかった奴は他の隊員たちの銃やナイフなどで赤い噴水を巻き上げて倒れていき、それから数分後経って見渡すと俺達が担当した相手の部隊の中で立ちながら戦場に残っている者は皆無であった。

まだ少しの奴らは倒れているが息があり生きている事がわかる。

しかしそれ以外の相手の部隊のやつらは物言わぬ骸と化しただろう。

 

そのまま振り向くとマルギッテさんの方に居た相手部隊の軍勢が綺麗さっぱりと一網打尽されていた、やはりこの人は凄いな。

そう思い俺は感心したまま戦場から部隊を引き上げた。

今回の任務も終了、と言っても俺はもうこれから少しの間は戦場に向かうことはないだろう。

なぜならば俺は日本に帰国するからである、学生としての学歴をちゃんとしないとな。

一応特殊訓練学校って言う名目で卒業試験を行うみたいだ。

 

中将の部屋に呼ばれた時に俺はあの背中を合わせた戦を最後に日本への帰国を伝えていた。

時期としては二月だが用意などを考えれば十分だ。

入る予定の川神学園の試験には武芸の試験があるし、なおかつ勉学を怠ることはなかったから頭脳面にも問題はないはずだ。

充分入れる可能性はあるだろう。

 

「そうか、君はもう帰国するのだな……」

「はい、今年の四月には高校生になるので一度日本に戻り勉学をしなくては」

「別に構わない、将来を豊かにする際には重要なものだからね、だが……」

「だが?」

「君には悪いがどれほど強くなったのか、そして戦闘力を見た上で帰っても大丈夫なのか、卒業試験を兼ねた試験を突発的だが行わせて貰う」

「えっ?」

「なぜなら君の出身地では『武神』が居るからね、もしあまり強くなっていないようでは少しの間だけでもここで鍛錬してもらわないと心配だ」

「あぁ、『MOMOYO』ですか……」

 

そう、何故か知らないが戦場や軍の舎ではたびたび『世界最強』の存在として『MOMOYO』と言う存在を皆が口々に呟いていた。

俺からしたら誰か知らないが、軍人が恐れるほどの戦闘力を有しているのは明らかである。

 

「それで試験の内容は?」

「君には今から少尉と戦ってもらう」

「なるほど……」

「演習場に行こうか、少尉を私は呼んで来るよ」

 

試験というよりは俺からすれば今までこの場所で学んできた集大成をぶつける機会という訳だ。

そういう意味なら最高の相手だろう、俺自身一度は相手をしてもらおうと思っていたんだから。

 

俺は先に演習場へ行き念入りに柔軟をする。

そして数分後マルギッテさんが来た、顔を見るに事情は説明されていたみたいだ。

丁度お互いを挟んで中将が真ん中になるように立つ。

 

「では……宜しくお願いします」

 

俺はそう言って装備していた重りを外す。

体が軽くはなっているがそれでもどこまで速度で勝負できるのかはわからない、マルギッテさんも眼帯に手をかける。

 

「こちらこそ宜しくお願いします」

 

そう言ってお辞儀を返すマルギッテさん、そして眼帯にかかっていた手の力が強くなる。

 

「キョーヤ、本気で来なければ悪夢が待っていると知りなさい」

 

マルギッテさんが眼帯を外してトンファーを構える、完全に本気で戦うつもりだ。

まあ、そうして貰わなければ意味がない。

そして随分と言ってくれるじゃないか、元よりそのつもりだよマルギッテさん。

そう思って俺は牙をむき出しにするように笑みを浮かべた。

 

「それでは……始め!!!」

 

中将の一言で戦いが始まった。

俺はいつもの構えから一気にマルギッテさんの懐めがけて突っ込む。

それ以外の方法としては蹴りでの一撃と武器術だ。

しかし今回におけるこの試験では武器を選ばなかった、やはり全力で戦う以上は己の鍛えてきた体の方が馴染む。

 

「フッ……やはりそうきましたか」

 

マルギッテさんが駆けてくる、こちらが踏み込むタイミングを読んだ上での行動。

そして予想通り一気に俺との距離を詰めて懐へとやってきた、俺はそれを見て苦い顔をしていた。

一撃を放つ距離を一気に詰められた事によって、踏み込みが浅くなる。

そのためこちらの攻撃はそれほど脅威にならず、凌がれて反撃を食らう可能性が必然的に高くなった。

それを見て僅かに後退するマルギッテさん、零距離の一撃もさせないってわけか。

なるほどそう簡単に主導権を渡さないって事だな、全くやりがいのある人だよ。

 

「ならば次はこうしましょうか……」

 

足をゆらゆらと左右に動かしているマルギッテさん。

こっちへ踏み込んでくる気なのだろうか?

もし、仮にそうなのだとしたらそれならその瞬間を狙うのも悪くないかもな。

俺は構えてマルギッテさんが踏み込んでくるのを待ち構える、そしてマルギッテさんが踏み込んだ瞬間を見た俺は一気に踏み込んで距離を詰めた。

しかし次に見たのはなんという事に……

 

「なっ、しまっ……!?」

「このような物につられるとはまだまだ甘い、『トンファーアッパー』!!!」

「ぐあぁ……!!」

 

地面に着いていないマルギッテさんの足だった。

つまりマルギッテさんは踏み込んだのではなく、踏み込む『振り』でこっちのタイミングを外してきたのだ。

俺はこの罠に引っかかってしまった事に後悔する、とんでもないミスを2つ犯してしまったと感じた。

一つは『待つ』という自分らしくない方法をとったという事。

そして、もう一つはまんまと踏み込む動作につられた事。

そのミスの清算は大きなものとして俺の体へと降りかかってきたのだった。

 

「よく耐えられましたね、驚きです」

「そりゃあ、どうも……」

 

顎を跳ね上げられた為言うほど大丈夫でもない。

しかし、その弱みを見せれば一気呵成に攻め立てられるだろう。

だから俺は不敵な笑みを浮かべて『効いてない』という感じを装ったのだった。

 

「クッ……」

「ハァ!!!」

「…ラア!!!」

「グゥ!?」

 

俺は足に力を込めて『蹴按』でマルギッテさんの足にお返しの一撃を叩き込む。

マルギッテさんはすかさずバックステップをしていた為浅かった。

でも、顎の一撃を喰らって何も返さないよりはましだろう。

 

「ハァ!!!」

「『トンファートルネード』!!!!」

 

今度は罠を張る隙は無いと思い踏み込んだ瞬間。

こちらを近寄らせない為にマルギッテさんはトンファーの連打を繰り出し、さらにそこへ独楽のように回転を加えて暴風となる。

うかつに大きく踏み込んだらこの暴風の餌食だったというわけか、厄介な技を使ってくる。

 

俺が踏み込まない様子を見て技を解くマルギッテさん。

そりゃあ、あれの中に入るのは危険だ。

逸らしようのない全方位攻撃に硬気功でも耐えられないであろう連打。

安易に入って顔に一撃でも受け、距離感を掴む為の目をつぶされたら確実に負けるだろう。

それを考えたから俺は暴風の中へ入らずに構えるだけにしたのだ。

 

「ガアアア!!!」

「ハアアアアアアア!!!!」

 

咆哮をあげ踏み込んだ俺をいなしてマルギッテさんは自分のペースのまま進行させる。

そしてマルギッテさんも俺のように咆哮をあげてトンファーによる怒涛の攻撃を繰り出す。

それに対してはこちらも一撃を何度も打ち込みその嵐のような攻撃を掻い潜りペースをつかませないために奮闘をする。

しかし、かなりの距離の接近を許していたのがそもそも間違いだった。

その事に気づいた時には既にトンファーによって挟み込まれた体が担ぎ上げられ宙に舞っていた、トンファーの連打は相殺していたが強引に押し込まれる形になったか。

 

俺はどうにか受身を取りその勢いのまま転がって難を逃れたが、その転がる最中に空気を切り裂く音が聞こえる。

そしてその音と共に俺の顔の横を蹴りが通り過ぎる、俺は起き上がりざまに身震いがした。

 

「あれは『トンファーキック』……」

「ええ、貴方にとっては思い出深い技でしょう?」

 

そりゃあ、初めて会った時に喰らった技だから確かに思い出深いよ。

でもあの時のように無防備には喰らわないさ、マルギッテさん。

俺は構えて一撃を放つために呼吸を整える、マルギッテさんがその間に一撃を放ってきた。

その一撃はゆうにガードが出来る速度だった、俺はそれを難無く受け止める、そしてそのままマルギッテさんはこの一撃を振り切って隙が出来る、これは思ってもいないチャンスだ。

千載一遇のチャンスが見えてきた、俺は一気に踏み込んでがら空きになった腹へと一撃を叩き込む。

 

「『猛虎』!!!」

 

しかしその瞬間、マルギッテさんがニヤリとした、まさかこれも罠だというのか!?

 

「やはり甘い、『トンファーペンデュラム』!!!」

 

横から来たのは側頭部を狙い打つ返しのトンファーの一撃。

横に向かせる事で打撃面積を減らす博打の技だがこちらの『猛虎』に合わせてカウンターで叩き込んでいた……

冷静に考えればあの速度で放つ一撃には警戒しなくてはいけなかった。

冷静だったなら罠だと気づけたはずなのに興奮して気が逸|(はや)ってしまったのか?

しかし例えそうだとしてもやはり兵法や戦いでの閃きは一枚も二枚も上手だ。

 

「クッ…」

「ガッ……」

 

ただ、お互いに手痛い一撃を喰らったのは言うまでもない。

こちらは側頭部にトンファーが直撃、マルギッテさんは腹に八極拳の一撃。

足がふらつく俺より多分ダメージはでかいだろう、ヒザが笑っている、これならチャンスは有る、流石に三回目の罠だろう。

 

「まだまだいきます、トンファー……!!」

「それは…こっちの台詞だ!!!」

 

俺はふらつく足に喝を入れ一気に懐まで踏み込む。

マルギッテさんはそんな俺にカウンターの為に十字にトンファーを構えている。

この一撃をトンファーで受け止めた後に、『トンファーキック』で俺を打ち倒すつもりだろう。

だが…そうはさせん!!!

この一撃でラストにする、防御を突き抜けるように全身全霊を叩き込む!!!!

 

「マルギッテ、キョーヤ、双方待て!!!」

 

中将が腕を上げて、今にも一撃を放とうとしていた俺と腰を落としてトンファーを構えたマルギッテさんを制止する。

 

「試験終了だ、2人とも下がりなさい」

 

そう言われて下がる俺とマルギッテさん。

お互い最後のカウンターで足元がおぼついていない。

マルギッテさんはゆっくりと歩いて離れる、俺はふらつきながらもどうにか離れる。

 

「結果としては合格という所だな、キョーヤ、まさか少尉と同じ高みに立ってしまっていたとは驚きだよ、賞賛に値する」

 

中将が微笑みながら俺に試験の結果を伝える。

褒め言葉は嬉しいんだが勝つ事が出来なかったのが悔しい。

今まで負ける事無く進んできたのに初めて勝てなかった、そう考えると無性に悔しさが込み上げてくる。

そして自分のペースを最後まで作れなかった事に憤りを感じる、なるほど……これが『屈辱』って奴か。

 

今度戦う時は絶対に負けるものか、俺は握りこぶしを作って『引き分け』という結果と『屈辱』という気持ちを頭の中で反芻(はんすう)していた。




次回は原作キャラが久々に出てきます。

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