真剣で猟犬に恋しなさい!!   作:勿忘草

54 / 59
エアマスターのキャラが久々に出てきます。
上位のクリス達との試合もできれば早く書いていければと思います。


『恋愛観と未知の遭遇』

板垣家の三人を怒って叩いた日の翌日。

少々気まずいものの挨拶を交わす。

どうやら、もう怒ってもいないみたいで天ちゃんの薬はすべて処分したようだ。

しばらくの間はしんどいだろうが、きちんと鍛錬をしてあれと同じくらい強くなることを目標に頑張るらしい。

それを聞いて安心した。

今日は久々の休日だ、少し街を歩いてみるのも悪くない。

 

「仲見世通りでも行くか、せんべいなり団子でも食べ歩こう」

 

普段、あまり行けてない場所に行くのもいい。

仕事の関係上、基本が親不孝通りや歓楽街だからな。

 

歩いて数十分の距離だが、楽しみにしている事があればそんな距離も気にかからずスイスイといける。

あっという間に着いていた。

 

「あれ、キョーヤちゃんじゃないですか、久しぶりですね」

 

小笠原さんの家の団子を買おうと向かっていたら声をかけられた。

声の主は甘粕さんだった、親友の家に行く予定だったのだろうか?

 

「久しぶりですね、もしかして小笠原さんの所に?」

「はい、千花ちゃんとお話ししようと思いまして!!」

 

やはり予想通りだったか。

相変わらず元気いっぱいな人だ、準が見守ろうとする気持ちも分かる。

しかしそこには先客がいた、まさかこんな日に会うとは思わなかったが。

 

「長枝さん、どうしたんですか?」

 

師匠でもある人がそこにはいた。

鍛錬はほとんど放課後にやっていたし、大方今日も夜にやるものだと思っていたのだがこの時間に会うとは。

 

「あぁ……ちょっとな」

 

少し元気がない、一体何があったのだろうか?

 

「流石にお前らに聞いても答えに困るだろうが……」

 

重々しく、少しづつ言葉を絞り出していく。

低い声が真剣な考えだと物語っている。

 

「27歳か28歳の女性にとっての結婚はいったいどれだけの重みがある……?」

 

聞けば、確かに答えに詰まりそうだ。

そう言った年齢の女性とお付き合いをしていたのだろう。

 

「3年もの間、一度もそういう言葉を言わなかった事に愛想を尽かしたのか、『やっていけない』と言われて出ていかれたんだ」

 

重々しいトーンで話を続けているが、確かに交際期間を考えれば一度や二度はそういった話を口にするものだろう。

 

「まず、なんで言わなかったんですか?」

 

前提として言わなかった理由があるはずだ。

まず、それを聞かない事には間違っているかどうかわかるはずもない。

 

「一緒に居れるのだからいいじゃないかと思ってしまったんだ、しかしよくよく考えてみたら、恋人同士なら当然のように行うような行為も特になく、毎日をただただ漠然と過ごしていたからそれも原因かもな」

 

目の前にある幸せに満たされているから次の一歩を踏み出さなかったわけか。

しかしそういった行為を一度もなくただ日々を過ごすというのも、マイナス部分としては大きいだろう。

流石にもう大人なのだから行為と言葉を伴ったふるまいをするべきだったと思う。

 

「女性にとっては一つの夢なので言わなかったり行動に移さないと、やはりそういう『好き』の気持ちからは離れると思いますよー」

 

委員長が言うとやはりそういうものかという様にため息をつく。

 

「そうか……お前らは俺みたいになるんじゃないぞ」

 

そう言って歩き始める。

足取りは重いが出口に近づくにつれて少しずつ大きく踏み出していき、躍動感が出ていた。

まるで重い荷物が降りたような軽やかさを思わせる。

恋愛よりも何かを重視している内面を見抜かれていたのも原因の一つではないかと思えた。

 

「しかし相変わらず神出鬼没だ、予測もつかない場所で会う」

 

頭を掻きながら苦笑いをする。

前は変態の橋だったり、マルギッテさんの案内の時も偶然会っていた。

 

「キョーヤちゃん、団子はどうするんですか?」

 

委員長に言われて、俺はあれから小笠原さんの店の団子を買い、二人と別れてそのままぶらぶらと歩く。

ちょうど良いところにあった公園のベンチに座ってむしゃむしゃと食べていたら面白い外見の人を見かけた。

頭にはニット帽、服はポケットが沢山ついたコート。

頭に被ったニット帽の下にはバンダナ、そして表情を悟られにくくする為かサングラスをかけている。

前の忍者といい勝負なほどの奇抜さだ。

 

「君は……澄漉香耶かな?」

 

そんな事を考えていたら目の前にいきなり現れて声をかけられる。

この声、どこかで聞いた気がするぞ?

だが、それは些細な事だ。

 

「オラァ!!」

 

俺は空になった団子の空き箱をその男に投げつけて、勢いよく立ち上がって距離をとる。

全く初対面の人間が俺の名前を知っていることに危機感を感じた。

軍人をやっていたために恨みを買わないわけではないし、そうでなくても個人情報を奪って追跡しているストーカーの可能性がある。

 

「血の気が多いタイプではないらしいが、流石に警戒心を抱かせたかな?」

 

空き箱を避けていたのか、平然とした様子で言葉を言う青年。

その次の瞬間、火花が散って閃光に包まれる。

信彦さんと同じやり方ならば攻略したのだからいける。

一瞬の間、目を隠してそのまま転がって射程範囲外に逃げる。

閃光が終わるまで目をむやみに出さない、閃光をくらえばさらにその分の時間、視覚を奪われてしまうからだ。

 

「ふっ!!」

 

突然、腹に蹴りが叩き込まれる、後ろに下がって威力を弱めて、距離をとるが今の一撃はいい。

大技ではなく、今の状況であまり動かせない腹部や下半身を狙うための基本的な攻撃。

戦いのイロハや、重要な部分はきちんと押さえているようだ。

 

「はあっ!!」

 

眼を開けて構えなおす。

相手は微笑んでいるがどのような戦法でこちらを攻めるのか?

目くらましならば対処法がある、生半可な攻撃では俺の防御は破れない。

何かしらの隠し玉を持っているとみて間違いない。

 

「やはり情報通り、八極拳士か」

 

情報通りとはいったいどういう事だろうか?

今までの戦いをどこかで見られていたのだろう、その部分で考えられるのは野試合の部分だったりもしくは一度挑まれた時だ。

 

「あんたが指示を出して他の奴らを俺達に向かわせていた張本人か」

 

去年、一度だけ目の前に現れたボクサーの男が、言っていたことを思い出す。

あの時に指示や情報を出していた男ならば容赦する必要はない。

 

「その通りだ、あれから1年たったのもあって俺自身が見ようと思ってな」

 

そう言って相手が構える。

ミュンミュンとコートのポケットが光りながら音をたてている。

きっとあれを使って閃光を放射するんだろう、しかしその対処法はある。

 

一気に懐に向かって駆けてくる。

速いが腕の動きをよく見る、空振りをしても閃光の放射が待っているからだ。

 

「シィ!!」

 

俺は前蹴りを出して牽制をする。

気を宿らせた一撃だ、いつもの技とは違うが威力は一級品。

一気に踏み込めば閃光に包まれやすく、相手の攻撃を避けにくくなる。

弾くか逸らせばいいのだが、相手はその対処法も持っているだろう。

そう考えるとあまり隙のないこの技が最適だと思った。

 

「蹴按か……」

 

相手は横に動いて回避をする。

受けたら腕がだるくなったりして満足に防御できなくなる代物だ。

判断としては間違っていない。

しかし次の瞬間、俺の目に飛び込んできたのは捻られた親指だった。

 

「くっ!!」

 

あれを喰らうのはまずい。

あれは親指に気を込めて相手の筋肉を貫いたりする『鉄指功』と呼ばれるものだ。

俺は振り抜いた足をそのままに仰向けに倒れるように後ろへ全体重を預ける。

 

「……なかなか面白い避け方だな」

 

すぐに体勢を整えて、距離をとる。

あのままでは腹を蹴られたり肘を落とされて大きなダメージを受けていただろう。

 

「花火と鉄指功、さらに蹴りや攻撃の水準も高い、だが……」

 

それだけでこの男の引き出しが空になるわけがない。

まだ何かしら秘密のものを隠し持っているはずだ。

もし、それがないのにこのまま続けたら無傷とは言わないが勝てる可能性はある。

 

「お前が考えている通りだ、俺は今までお前が戦ってきた奴らの中で一番強いというわけではない」

 

やはりそうなのか、マルギッテさんのような破壊力抜群の蹴りではないから耐えられる。

しかし、違和感が残る。

そんな事を言っておきながら、仮にマルギッテさんとこの男が戦えばこの男が勝つだろう。

 

「その違和感の正体があんたの隠し玉ならば納得だ」

 

構えてまっすぐに見据える。

踏み込んで一気に制空権に捉えれば、全ての攻撃を叩き落して勝負を決めにかかる。

戦いの中で成長はしている、少しずつではあるが己の力が引っ張られていく事を感じていた。

 

「さて、どうかな?」

 

喰えない男だ。

しかし、もはやこうなればそんな事はどうでもいい。

自分の力を存分に出してぶつけるだけ。

どのようなからくりかは知らないが……

 

「見せてみろ!!」

 

踏み込んで一撃を放つ。

花火の目くらましや放射が間に合わない速度だ。

防ぐか避ける一手しかない。

しかし、次の瞬間相手は思いもよらぬ一撃を俺に見舞っていた。

 

「残念だったな」

 

顎に蹴りを叩き込まれてしまう。

カウンターの形になって脳が揺れる。

倒れることはないが足ががくがくとして平衡感覚があいまいになっていた。

 

「お…前…、俺の動きを予…測か何か…する能力を持っているな」

 

それを考えてしまう。

想像力の豊かさと、もともと調べていた動きと照らし合わせた予測。

それはそいつにとっては崩れることの無い動きであり、確定しているといってもいいだろう。

 

「あっさりと見破るあたりはさすがだな」

 

しれっとそれを認めて微笑む相手に、苦笑いで返す。

ただ、その能力の弱点は見えた。

 

「そんなもの、乱発していれば脳への負担が尋常じゃないはずだ、インターバルを作らなければ封じれる」

 

連続して使えても2桁という事はまずない。

それならば何度も絶え間なく一撃を放ち続ける。

制空圏で後出しをされればダメージは喰らうが必要経費だ。

 

「おいおい、そこまでの答えはいらないだろ、種明かししないでほしいもんだ」

 

そう言いながら構えている相手に向かってもう一度踏み出して一撃を放つ。

このまま使えない状態に持ち込んで勝つ。

 

そんな事を考えていたら相手が閃光を放つ。

腕の振りかぶりもなかったがすっかり忘れていた。

指を弾くだけで火花を起こすのだった。

 

閃光が晴れた時、すでに相手の姿はなかった。

 

どうやら、あの忍者と同じように実力を見るために出てきたというわけか。

しかし、あの男の声を聴いて思ったがやはりアイドルの藪沢さんと同じ声がする。

 

「もしかして、あの人たちがランキングに関与したりしているんじゃないだろうな?」

 

あのボクサーに野試合を申し込まれてから1年でランキング戦が起こった。

しかもその時はわざわざ調査の意味合いを込めての勝負だった。

そして、その元締めがわざわざ興味本位とはいえ出てきた、また誰かが調査していただろう。

事前に強さの調査をしたり、戦い合わせたり、まるで特定の誰かと戦わせる人間を選抜しているような感覚さえ感じる。

 

「どちらにせよ、そういった目的は今後調べたり時間がたてば、明らかになっていくんだから、今は目の前の戦いにだけ目を向けるのが賢明だな」

 

俺はそう呟いて家に帰るのだった。

 




誤字、脱字などといったご指摘の点がありましたらお願いします。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。