海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

21 / 77
19.しあわせ

----------------------------------- side : three brothers

 

「兄弟〰!? ほんとかよー!!」

 

 ルフィの目がきらきらと輝いたが、ふとコテンと首が傾ぐ。

 

「ルリは呼ばねェのか?」

 

 一緒に遊んで一緒に鍛えている中でもルリとは特に仲がいいと思っていた。それはエースやサボもだと思っている。だからルフィは四人いる方が自然な気がしていた。

 

 ……あとあいつ強いし一緒がいい。一緒に強くなりたい。

 

 シャンクスたちとルリがどこかから帰って来たあの日の決闘。

 余裕で躱され優しく投げられまくったことで大きな実力差を感じていた。あれ以来頻繁に手合わせを頼んでいるが、ルフィは一撃も当てられず全敗を喫している。

 

「いやあいつはさ、親両方いるし友達だってたくさんいるだろ。だからおれたちの兄弟には()れねェよ」

 

 そう言ったエースは微笑んでいたから、何も仲間外れにしようという訳ではないのだろう。

 

「兄弟じゃねェけど、あいつは親友だ」

 

 サボも笑っていた。

 

「そーいうモンか?」

 

 なんだかその境界は小難しいものみたいだ。よく分からないし気にしないでいいやとルフィは思う。

 

 この兄弟盃がいっとう特別なものだというのはひしひしと伝わってくる。

 だけどこれを交わさなかったとして、ルリが仲の良い友達なことは変わらないのだから。

 

 三人はみんな船長になりたい訳で同じ船には乗らないかもしれない。

 しかしどこで何をやろうと、彼らの絆が切れることはない。

 

 三人は小気味良い音を立てて盃を合わせた。

 

「これでおれ達は今日から兄弟だ!!」

「おう!!!」

 

 心が熱い。嬉しい。楽しい。

 これがずっとずっと続くんだ。

 しあわせっていうのはこういう気分なのかなあ。

 ルフィはしししと心から笑った。

 

----------------------------------- side : Ruri

 

「っはー、速えー……てか幹斬れてんぞ……絶対当たりたくねえ……」

 

 松田がぽすんと胡座をかいた。

 

「人に当てる気ないからな。篭手で受けてくれるって信じてたんだけど? てかお前覇気で"鉄塊"もやれるじゃん。木がかわいそう……」

「張本人が言うな」

「お前が避けなきゃよかっただけじゃん」

「鬼かよ」

 

 なんか顔引きつってっけどさあ。

 

「だいたい、ケンジの篭手すげぇじゃん。親友信じろし」

「ハギが成長してるのは事実だが、お前もおかしいんだよ……この篭手でも斬られる」

「んな訳あるかよ……まあ……斬りたいもん以外斬らないのが手練、とかは聞くけどまだできる気はしねーや。ほら子供らしいじゃん? おかしいとかねーわ」

「いややれよ。子供らしかったら幹にこんな傷つかねえよ。そんなん受けさせようとすんな」

 

 そう簡単にできたら苦労しないよ。

 

「えー……お前なら受けれるだろ」

「マジで鬼だろ」

 

 降谷たちがくすくすとか大いにとか笑ってるのが聞こえてきた。

 

「俺も斬れると思う」

 

 降谷が苦笑しながら言うと、他が全員神妙な顔でコクコク頷きやがってる。ェえフザケんなよ、今まできっちり受けてたじゃん。

 自分みたいなぺーぺーが元警察官たちに敵うわけないだろ?

 

 でも、万が一にも怪我させたくなくはあるからなあ……。

 

「んー……ゴリラたち怪我させるとかあり得ないけど、一応木刀向けるのはもうやめとくよ」

 

 はじめは向こうから木刀使えって言ってきたくらいなのに。それができる強さも知ってるのに。

 

 受けたり避けたり相手してくれる人がいたほうがためにはなるけど、これはいくらなんでも仕方ない。

 

「ゴリラ言うな」

 

 松田の額に青筋が見えた気がした。

 

「俺たちにそう言うなら、今はルリちゃんもゴリラだよ」

 

 萩原め笑ってやがる。自分の額にも青筋が浮いた気がした。

 

「うーん、でもゴリラって言うよりは……『前』にルリは筋力でやってる訳じゃないって言ってただろ?」

 

 諸伏がふわりと笑いながら言う。

 言ったかはあんま覚えてないんだけど、そんな感じな気がしてる。感覚でやってるから説明はうまくできそうにないけど。

 

「多分獲物の性質を掴むのが得意なんじゃないかな。あと手を抜けるとこは極限まで手を抜くみたいな思考でさ、無駄がないんだよ。だからすごく綺麗なんだ」

 

 ……褒めてんだか貶してんだか。

 

「その上で『今』は筋力も瞬発力も持久力も……そのへんが比べ物にならねえ。そりゃ、筋力だけでやってる訳じゃねえんなら、幼児の内にこうもなるだろうぜ」

 

 伊達がカラッと笑いながら言う。

 

 ……。

 

 何なんこれ。

 そんなうまいこと出来てる気はしないのに、褒められまくって困惑だ。

 

 我知らずぷくっと膨れて口を尖らせてた。

 

「……強情」

「自分のことになると頑なにすげえとこ認めねえよなあ」

「無自覚は罪だぜ」

「いや謙虚なんだよルリちゃんは」

「ずっとストイックに鍛錬してるからめっちゃ伸びてるんだよ」

 

 ……だから、ちやほや褒められるのは……。

 苦手なんだって……。

 

 しどろもどろしてると、奴らはニヤニヤ笑った。

 ちくしょうめ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。