「火力が足りねえんだよなあ……かといって酸素抽出は……」
松田が不満そうに口を曲げながらブツブツ言ってる。
そういやこの前1万℃目指し……いやいくらなんでも太陽表面並の火力出すのは無理だろ。火相手にそれくらいの気合みせろって詰ってたけどあまりにも無体では???
「火なんて全部一緒だろ?」
エースが首を傾げてる。
「いや、燃やした物によっても変わるし、何とかして温度を上げられれば色が変わる。あと空気を送り込めば火力が上がるんだが、その空気に酸素ってのが多ければ多いほどよく燃えて、うまくいきゃ青くなることもある」
「火が青く……? そんなことあんのか?」
「あんだよ」
……あ、思い出した。
ガスの火が青いのは温度じゃなくて完全燃焼とかなんとかだ。だからの酸素。
松田、に限らずこいつらは、犯人を暴くのにも爆弾の仕組みを察知するのにも、科学的根拠を次々に並べる奴らだ。だから……1万℃だの何だのはやっぱ大げさ(過ぎるが)に毒づいてただけなんだろう。
温度、かあ……。
「なあ、じんぺー。900度くらいならなんとかなる、そうだろ?」
「あぁ。炭でもありゃ済む」
「ならいけるんじゃないか?」
現代でこういう知識を使うなんてあんま思ってなかった。なんか楽しくなってきた。
「けど、このへんで拾えるのは大体鉄だ。熱間鍛造するには1,200度は欲しい。炭じゃ安定してそこまでは出せない」
松田の表情は険しいままだ。
「なんとか銅と錫見つけられないかな? 青銅なら火力は充分以上だろ? 多少鉛とか亜鉛とかが混ざっててもいい」
「ああー……銅と、錫……銅は鍋やらによく使われてるから、わざわざ
ネックはそこだよなあ……。
「んー……グレイ・ターミナルにブリキのおもちゃとか落ちてねえかなあ」
世間によくあるかもしれない錫といったら、自分に思い浮かぶのはそれくらいだ。
でもブリキじゃ錫はメッキなだけだから、見つかったとして量は少なそうだけど……。
マレーシアの特産品が錫でさ、ああいうとこなら錫メインの製品も流通してたみたい。よくお土産にもなる。
この世界にもそういう島ないかなあ……まあ、あったとして行けるんだかは分からんしな。無いものねだり。
「あったとしてすぐに拾われてるんじゃねえか?」
「そうだよなあ……」
即、目につくめぼしい物な気がする。
「それに、インゴットにして鍛造しようにも、今度は火力下げるのが難しいから溶ける可能性がある。だからやるとしたら鋳造だろ? 正確な形を鋳型で作れなきゃいけねえ。整形するにしてもバリを削り取るくらいが関の山だ」
「お前らならできるだろ」
にこっと笑って言いのけてやる。
ジャングルで打製石器作り始めたかと思えば木刀まで作っただろお前ら。
松田は何故か微妙な顔をした。アクセルしかついてないにしては弱気だな。
「お前ら何の話してるんだ?」
ルフィが眉間にシワを寄せて首を傾げてる。
「海水に強い金属の話。役に立ちそうだろ?」
青銅は鉄よりも腐食に強い。
「へー……」
にまっと笑ってみせたけどルフィのシワと傾げはそのままだった。
「……お前たち、何者じゃのし」
うっ。
調子こいて色々話し込んじゃったけど、子供らしくなさすぎるわな。
え、ええと……ええと……あ、そうだ。
「自分は考古学者に憧れてるんです。青銅って人類が最初に使い始めた金属らしいです」
「考古学者……」
実際前の自分は大学で考古学を専攻してた。考古学者になりたかったというより、ウチのご神体についてをよく知れればと思ってのことだけどね。
ナグリさんはまだ微妙な顔で思案げだ。
「別におかしくはないじゃないですか。ちょっと前に新聞で、長い間行方が掴めてない賞金首の特集をやってたんですけど」
ロビンのことも載ってた。
まあ、島一つ滅ぼしたことになってたけどね。
「たった八歳の考古学者のことが書いてありました。下手したら大人よりも知識豊富だったみたいです」
「なんと。そんな神童が賞金首かのし、もったいないのう」
あはは。
手配の理由そのものが考古学者だからなんて普通思わないのかもしれないね。
「お前もたいしたもんじゃのう」
ナグリさんはにこにこしている。照れた風を装う。うぅっ、嘘ついてすみません。
「す、すげーなお前ら」
ルフィがそう言ったけどなんか分かったフリしてそうな雰囲気を感じる。可愛い。
エースとサボもそんなルフィを見て苦笑いしてた。
「ま、まあ、この通りそう多くは手に入らなそうだから、ナグリさんが鉄で作ってる部分の補強とか、細かい部品が必要な部分に使えるくらいだろうけどさ」
「充分以上に助かる知識のし。海水に強いなら潮風にも強いじゃろう。細かい部品はいくらでも必要じゃ」
そっか。
役に立てそうだったら、嬉しいなあ。
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我々は暗くなる前に帰らなきゃいけないから、今日は船造りの手伝いまではできなかった。ううっ。
六人でてくてくと中間の森を歩く。
「……なあ」
松田が自分の方をちらりと見ている。
「この前の記事には考古学者とか載ってなかったよな」
うっ。
「八歳の賞金首は、ニコ・ロビンだけだった。けどそいつは島一つ滅ぼした悪魔の子だってだけ書かれてた」
記憶力良すぎだっての!!
え、ええと……ええと……。
うん。こいつらは情報収集できなくて自分にできるといえば。
「……海兵だった霊さんがいたんだけどさ」
皆がぴくりとした気がした。あ。
「だからゼロの魂が眩しすぎて今は何も居ないんだってば」
皆の視線が降谷に集まる。
降谷は小さく溜め息をついて肩をすくめた。
「んで、その八歳の子が賞金首になった本当の理由は、その霊さんから聞いた」
「本当の理由……」
皆が眉間にしわを寄せて考え込んでいる。
ああぁ、ますます海軍のイメージさげてしまう。
ええと、ええと、ちょっとぼかして……。
「さすがにそう詳しくは知らないみたいだったけど、危険な研究してたとかなんとかさ。それプラス島一つ滅ぼしてる訳じゃん?」
あはは嘘まみれ……。ロビンごめん。
「ふうん……」
みんなは何故か微妙な表情のまま。
ハハハ彼らを誤魔化すには杜撰すぎるかもしれないね……。
「あと言わなくても分かるだろうけど、青銅云々は前世で勉強したことだよ」
「まあそうだよなあ。この村で学ぼうってのは無理だろう。本屋でそこまでのもんを扱う意味がねえ」
「そうなんだよねえ」
本屋にしてみれば売れないものを置いてても仕方がないからね。
「けど久々にそのへんの話できて調子のっちゃったや。気を付けないとなハハハ……」
ほんとこれはそう。反省。
……でも、役に立てそうなのは嬉しいんだよなあ……むむむ。
「ハハ。ままならねえよな。早く成長してえ」
松田がぐーっと伸びをしながら言った。
ほんとそれなあ……。