海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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22.完成

「……んんー……」

 

 不確かな物の終着駅(グレイ・ターミナル)でゴミ山を漁りながらじんぺーとともに唸る。

 

 錫はブリキのメッキ以外にも色々と使われるものではあるけど、ここでは食器とか調度品とかは、もっとすぐに用意できる素材を使うのかもしれない。

 あと単純に『電子部品』とかをそうそう見ない。ベガパンクとかなら使ってそうだけど。

 

 だから見つけられるとしたら……ブリキのおもちゃとか、建物の装飾とか……そういう、ある意味『嗜好品』だと思うんだ。とすると平民の家に多くある訳じゃなさそう。とはいえ貴族ってやつはそうたくさんいる訳じゃない。

 

「むー……」

 

 自分じゃ錫は銀や鉄とあんま区別つかない。

 ただ銀と錫は磁石にくっつかない。そして銀はここにはそうそうない、はず。

 

「なー、じんぺー、錫簡単に見つかる方法ないー?」

 

 鉄より腐食に強く、今の我々にも加工できるはずの合金。

 めっちゃ魅力的なんだけどそううまく行かないもんだなぁ。

 

「んなもん見て分かるだろー」

「ハァ? お前たちみたいに目ェ肥えてないんだわ」

 

 しかしじんぺーはニィっと悪どそうに笑った。

 

「お前だって『見て分かるだろ』って理不尽なゲーム始めたじゃねーか」

 

 え、性別のこと?

 

「ええー、関係ないじゃん」

「誰だって専門外のことは分からねえっての」

 

 ……お前らにそれは当てはまらないだろ。

 それに。

 

「性別の判断に専門とか関係ある?」

「あんだろ。生物」

「それ関係あるの雰囲気とかじゃなくね!? てか、身体なんか見せないし触らせないからなセクハラ絶許(ぜっゆる)!! それに謎掛け主は生物選択してません!」

「出題は結果だけ知ってる奴にもできるからな」

「あー言えばこー言うううう!!」

 

 地団駄でも踏みたい気分でイーっとしてやると、じんぺーはハッと鼻で笑った。この野郎。

 

「……ま、ラベルが残ってるならだが、果物の缶詰のカラなら見つけ易い方かもな」

「へー。ありがと」

 

 ……弄るは弄るけど結局教えてくれはするんだよなあコイツ……。

 

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 しばらくかかったけど、青銅加工したり使えそうな鉄拾ってきたり木で頑張ったり色々して、なんとかナグリさんの船が完成した!

 

 自分の出す縄も結構活躍したのはちょっと嬉しい。縄、能力者が気絶すると消えるとかじゃなくてほんと良かった。縛って引っ張るのが大得意だから運搬にも持って来いだったしな。

 将来運送業とかできないかなあ。ちょっと真面目に考えよう。

 

「船って手作りでここまでイケるもんなんだなあ……!」

「はは、目ぇ輝かせすぎだろ」

 

 じんぺーが冷やかしてきてせっかくのきらきらした気分に水を差された。

 思わず膨れっ面でジト目を投げる。

 

「何言ってんだよ、みんなで作ってきたもんが想像以上に仕上がったら誰だって嬉しいじゃんか、なあ?」

 

 みんなきらきらの笑顔でコクコクと頷いてた。ほらあ!

 

「いやはや。わし一人ではとてもここまでのものにはならなかったのし。いくら礼を言っても足りんのう」

「じいちゃん修行つけてくれたかんな!」

「充分以上に収穫がありましたよ」

 

 ルフィと一緒にぺかーっと笑う。ナグリさんは「そうかのう……?」と少し不満げだ。

 

「なあナグリ、もう出発するのか?」

 

 サボが聞いた。

 ナグリさんは甲板に立ってて、確かにもう行っちゃいそうな勢いを感じなくもない。でもちょっと淋しい。

 

「保存食と水はいくらか積んでありますけど、もっと色々ないと身体に悪いですよ」

 

 なんて言って微妙に引き止めにかかる。事実じゃあるけど多分次の島で調達したって構わない程度だ。

 

「のっしっし、心配しとるのか、ありがとうのし」

 

 ナグリさんはからっと笑った。帽子と眉毛で目元は分からないけど。

 

「じゃがエース君たちには修行の総仕上げがあるからの。出発はそれからじゃ」

「オレたちには総仕上げはいらないってことですか?」

 

 ヒロがしゅんとしてる。可愛い。この可愛い言うbot、みんなが幼い内は頻繁に出没する自信しかない。

 ……成長したら今度はカッコイイ言うbotになるんだろうか。ウザそう。ミーハーすんません。

 

「のっしっしっし! 彼らの大虎狩りは船長を決定するためのもの。お前たちも彼らと船長の座を争うのかのし?」

「あっ遠慮します」

 

 反射的に答えちゃった。

 

「てかお前たち同じ船に乗ることにしたんだな」

 

 皆船長になりたいから別の船に乗る気って聞いてたけど、気が変わったのかな。

 

「ルリたちもおれの(・・・)船に乗れよ! 絶対楽しいぞ!」

 

 きゃっきゃした感じに言うルフィがとても可愛いけど、前ロジャーに言ったように彼らの自由を邪魔したくないのもあってその気はない。

 ……あと、船長になりたい他の二人との争いがここで始まりそうでとっとと口を開く。

 

「乗らないよ。お前たちと居るのは楽しいけど海賊ってなるとまた別だ。迷いがある内は足手まといだろ」

「そっかあ。海賊になりたくなったらいつでも言えよ!」

 

 あっさり引いてくれるルフィ。

 意外でもない。彼は『海に出たい』と全く思ってない人間まで無理やり連れ出そうとはしない。

 

「お前らは?」

 

 ルフィはきらきらした目を他の五人にも向けた。

 

「前にガープさんに言ったまま変わってないよ。海賊になる気はないかな」

 

 ゼロが穏やかに言うと、他の四人も頷いていた。

 ルフィは「ちぇー。お前らも気が変わったらいつでも言えよ!」とは言ったけどやはりそれ以上は食い下がらない。

 

 大虎狩りについては、相手が野生である以上いつ遭遇できるか確定できないのと、我々が暗くなる前に村に帰りたいのとで見学するにしても時間の折り合いがつかず、先にナグリさんとのお別れを済ませておくことになった。

 まあわざわざ待たせたりとか縛りつけるような気もしないしね。

 

 次の日来てみたらもう船がなかった。

 ナグリさんのこれからの旅が良いものでありますように。

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