海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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35.浜辺の戦い

「……キリがない……!」

 

 ヒロがぽつりとこぼす。

 

 わらわらと、次々に海から這い出て来る骸骨の群れ。

 人型に限らず、犬型や大型の魚型なども混じっていた。

 加えて視えない存在まで居るという。

 

 味方が居ない所で見境なく刀を振り回したくなる状況だった。

 しかしそうすると動きが大味になるため、気配で斬るしかないモノを捉えづらくなる。

 

 ルリがピュイーーーっと指笛を吹いた。

 白い鷹が一直線に飛んできてルリに並走する。

 

(サク)! お願い!」

 

 それに応えるように〖ヒュウー〗と長く鳴きながらスイーっと少し高くまで飛んだ朔は、宙で旋回すると一気にお化けの群れに突っ込んで行った。

 視えないものを含めてお化けたちが薙ぎ倒されて行く。

 

「ありがと」

〖キュゥ〗

 

 他の皆は「またルリが何かやってる」と流しただけだったが、ヒロは朔を空間の歪みのようなものとして捉えていた。

 前世と同じく超常のモノに近づいて行っているらしいと、彼は苦笑する。そのうちまた、はっきり視えるようになってしまうのだろう。

 

 わらわらとお化けは海から現れ続ける。

 

「何でこんなに集まってくるんだろう……!?」

 

 ムクが焦燥の声をあげる。

 

「……大狼が海を利用したせいだな。あたしもここまで集まるとは思ってなかったよ」

 

 ルリが答える。

 

「栄養みたいなモンを欲しがった念だから、大狼にとっての『栄養』な存在があの洞窟に引き寄せられてる。ついでに『栄養』を狙った奴も釣れちゃったっぽい。

 あと今ここには、『栄養』定義の子供がいっぱいいる」

 

 ルリがとつとつと語りながら色々と斬り飛ばしていた。

 

「子供が栄養!?」

「俺ら来ぇへん方が良かったんちゃうん!?」

 

 ムクとヘイジが悲鳴のような声をあげる。

 

「あたし一人で特攻するなって口酸っぱく言われるんだ」

 

 ルリがハハハと笑う。

 

「そらしゃあない……」

 

 ヘイジとムクは内心でとても納得した。

 そして同時に、『こいつらなら養分にならない』という信頼でもあることを理解して、内心で照れ隠しをする。

 

「あともしかしたら、盗賊と侍の戦場が海だったのかもしれない。その戦死者もいる感じだねえ。

 それに最初の犠牲者が出てからもう何日経ったっけ? それだけ念がどんどん伝わってってる訳でね?」

 

 皆気が重くなった。

 ここを目指す敵性存在は多種多様。数が膨れ上がりもする訳だ。

 

「みんなちょっと陸側に退()いてくれる!?」

 

 ケンジが叫ぶ。意地を張る理由がないので皆素直に退いていく。

 

「能力? 攻撃系?」

 

 ルリの問いにケンジは頷いた。

 

「できるだけ縄でまとめるわ」

「助かる」

 

 全員で海から離れ、ルリとケンジは化け物たちを振り返った。

 そして。

 

 ルリの両手から大量の縄が出現する。

 それはあっという間に横方向に伸びると、お化けたちを丸く囲んでいった。

 

ロプロプの(ダイ)縛府(ショーグネイト)‼‼

 

 ルリが叫んだ瞬間、ギュッっと縄が締まってお化けたちが一気にまとまった。

 大量のそれらはもぞもぞジタバタするが、逃れることは叶わなかった。

 

 そこへ。

 

「いっくよー! ホシホシの……超星冠(チョリース)

 

 上空でぐるぐる渦巻いていた細かな粒が一斉にお化けたちに襲いかかる。

 

「あははははなんだその技名!!」

 

 思わず大爆笑するルリ。

 成果に歓声の声をあげようとした者は飲み込むことになってしまった。

 

「何か浮かんだんだから仕方ないだろ! 一番合ってるってことなんだから……」

 

 後半は少し拗ねたように小さくなっていった。

 

 そんなふざけた雰囲気をよそに、縄に捕らえられたお化けたちには輪になってぐるぐる回る(つぶて)──星の砂が襲い掛かっており、その細かさからは信じられないほど骨たちを穿ちまくっていた。

 

 浜が骨などの残骸だらけになるが、ぞろぞろとそれを踏み越えて新たな手合いが上陸し始める。

 

「……(ばく)

 

 骨たちが崩れた後も縄の囲いを絞り切ったのは、見えないモノをひねったためだ。

 同時にその場に走って刀を振り抜き、彼岸と此岸の線引きをする。

 

 しかしまた次の群れが海から上がってくる。

 

「だああー! まだ来るんかああ!」

「ゾロ、くいな、せんせーい!! 大狼一座殲滅しないと永遠に増えそうです!」

 

 ルリが洞窟前で奮戦しているメンバーに叫び、内容に皆絶句する。

 

 海から来るモノは洞窟に届かないよう倒し続けなければならないし、そちらの疲弊が限界を迎える前に、巨大な怨念の塊である大狼一座を全て刈り取らなければならない。

 

 ぱちんとヒロが頬を叩いて、再びお化けの群れに走って行った。

 

「端っこは担当するよ! ルリとケンジは思いっきりやっちゃって!!」

「助かる!」

「ほな反対側やるわ!」

 

 それぞれ散開して行く。

 

ロプロプの(ダイ)縛府(ショーグネイト)‼‼

ホシホシの怒星(どっせーい)

 

 またルリが爆笑した。

 

「だから技名なんなん!!」

「うるせえ!! ルリちゃんレパートリーないの!?」

「網とかにしたらお前の星の砂の邪魔しそうじゃん?」

 

 そんなじゃれあいをよそに、今度は大きな球状に固まった星の砂がお化けたちを押し潰した。

 

 その跡を朔が飛んでいく。その軌道に在った視えない者たちが霧散していった。

 

「すごいこと起きてるのに全然そんな気がしない……」

 

 苦笑しながら、現れ続けるお化けを斬るムクに、他の全員が内心頷いた。







書いてて海賊無双やりたくなりました。
五年前の発売…買ったらすぐ新作出たりしないよね???
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