「朔、ありがと。なんかお礼になることない?」
デカブツに最後一緒に特攻してくれた朔が、スーっと腕に降りてくる。
たくさん頑張ってくれたんだ。消耗がないはずない。
朔は少し首を傾げた。
えっ。もしこの子にとって『あの程度なんでもなかった』として、色んな意味で無償はだめだぞ。
しかし困ってるのかまた小さく首が傾ぐ。
……何回かそれが続いた。
えぇ……。
こっちも困って眉尻が下がる。
じいっと見つめてくる朔。
むむ。
やがて彼は意を決したように翼を広げた。
えっこのまま帰ったりしないよね。
困惑してると、朔はふわっと頭上に飛んで──
「……って!」
ぷちりと、髪が二、三本持ってかれた。
それで帰ってったらしい。
成程。髪って霊力宿るっていうからなあ。
こういうこと無いではないけど、でもたったそんだけでいいのかよ?
対価は見合うもんじゃないといけないんだぞ。
……謙虚か?
はは、と苦笑して小さく溜め息つきながら、みんなの様子をうかがう。
へーじ君とムクの手首から、狼のマークが消えてる。
二人はそれに気付いて、ふるふる振ってみたり、ぺちぺちはたいてみたり。
そして安心したように笑って、へたり込んだ。
他の皆も似たようなもの。
あんな大量を相手取ったことなんて、そうないよね。お疲れ様。
みんなを内心で労りながら、洞窟の方に歩いていく。
「一人で何する気?」
目ざとく察知しやがったヒロとケンジが着いてきた。けど。
「お前らがこの道通ったら
「う。もう全部倒したんじゃないの?」
ケンジがたじたじした。
「悪霊に捕まえられてた子たちは、まだだよ」
「……そう、か……」
ヒロは痛ましそうに俯いた。
「そーだ。何か手伝ってくれるならさ、しばらくしっかり休んで、明かりと接着剤持ってきてよ。あと喉乾いた」
そのへん遠慮なく頼ります。だから許して。
「しばらく? 接着剤?」
二人は心配そうな顔をした。ははは過保護だな。
「浄霊済んだら、鎮魂塔直す」
「それ、接着剤でいいの……?」
どこか引きつってるケンジに、くすりと笑う。
「
「そっか。分かった」
二人は頷いた。そしていそいそと歩き出す。
……浄霊済む前に帰ってきそう。ヤメロ。
コウシロウ先生が近付いてきたので、身体ごと向き直る。
「先生?」
「すまないね、こんなことに子供たちを巻き込んでしまって」
……死んじゃった子たちがいる手前、安易に何か言えないけども。
「先生だって世代じゃないでしょう」
「はは……どこにも話は残ってないはずなんだけどなあ」
はは。
しー、と、苦笑しながら人差し指を唇に当てる。
コウシロウ先生は困ったように笑った。
皆が帰ってくのを見送って、色々と清めながら洞窟を進む。
当時大狼の頭領が自爆しただけあって、メチャメチャになってて苦労した。
だけどできるだけ奥へ、奥へ。
あぁ……。
つらかったな、苦しかったな。
もう上がって、次に進むんだよ。
彼らを見送って入り口まで帰ったら、既にケンジとヒロがいた。
……どんだけ待ったんだろハハハ。
こっちが鎮魂塔の修復にかかってる間に、ケンジとヒロはポールにロープを張って入り口を閉じ始めた。
うん。もう皆上がったにしろ、遊び半分で入れないようにしないとね。
何も言わずともそれをやってる彼らに、ふわりと心が温かくなる。
ロープはあとで
鎮魂塔の方は……普通遺物の接合なんて、何日かかかると思ってたんだけど……。
なんか、分かるってか、伝わってくるってか……。
割れた数に苦労したくらいで、すぐに終わってしまった。
これも見聞色なんかなあ。便利だ。
前世でも欲しかったね(無理)。
三人で道場に帰って。
ああさすがに眠い。
コウシロウ先生なんでまだ起きてるの。
じゃあついでに。
「もう何もいないですけど、別のが謂れに釣られてたまるかもしれないから、肝試しなんかで行かないように、あとで何か考えましょう」
ふふ、と先生は笑った。
「今はもう休みなさい。お疲れ様ですよ」
泥のように眠ってたら、起きた時には夕方だった。
……おいゾロ、勝負とか勘弁しろよ。
……なんか勝った。
ゾロも疲れてない訳ない。
今日くらい大人しく休め。
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前と同じく色々準備して、今度はウタの『風のゆくえ』を歌いながら墓場に向かった。
あの女性と男性と、子供たちが迎えてくれた。
〖またそんな堅苦しくして来る〗
女性がくすくす笑う。
……洋服な子供が増えてる。
みんなできゃっきゃしてる姿は、とっても微笑ましい。
〖ありがとうね〗
多分自分との繋がりはないんだろうに、ふわりと笑ってそう言う女性が温かい。
ここへは報告を兼ねて朔を返しに来たんだけど、もう状況知ってるみたいなのと──返すなって言われた。えぇ!?
ここの霊さんたちは、のんびり村を見守ってるんだそう。
そうすると朔は動けなくて、暇なんだって。
だから着いて行きたいって言ってるらしい。
ひィ。
「よ、よろしくお願いします……」
〖キュゥ〗
「あでっ!?」
何で頭つつくの!?
男性が大笑いした。
〖堅苦しくするなとさ〗
「うっ」
そうだねこの子、人懐っこいもんなあ……。
そんなこんなで朔は着いて来ることになった。
後日。
「あのね! 村の墓場にね! 歌いながら歩いてる、ざんばら髪の侍のユウレイが出るんだって!」
……つぐみ。
目ぇきらきらさせて何言ってるのかなあ?
さすがに懲りて?
きつく叱っておきました。