海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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39.帰郷

 少し経って、いつものようにガープさんの帰郷ついでに、自分たちもフーシャ村へ帰還することとなる。

 

「……チッ。勝ち逃げしやがって」

「何言ってんのさ、8,524対34じゃん」

「どこが『何言ってんの』だよ……」

 

 わぁ青筋すげえ……。

 

「昔全勝してたのにあとで負け始めたってことはさ、ゾロはスロースターターなだけだと思うんだよね……将来が怖いわ」

「フン」

 

 ご機嫌斜めが治ってくれん。

 

「世界一の大剣豪の取り合いしようってんだ。何日和(ヒヨ)ってんだよ」

「あぁん?」

 

 しまった。つい煽ってケツ叩くいつもの癖が。

 内心冷や汗かきながらにぱーっと笑う。

 

「次どこで会うか分からんが、8,525勝目いただかれたくなかったら、ヘソ曲げてる場合じゃねーかんな」

 

 引っ込みつかなくなった煽りを、そう言って締める。

 上から目線すぎィ。すんません。

 

「……首洗って待ってろ」

 

 ゾロはニッと不敵に笑った。まだ顔怖いけど。

 

「ふふ。……ルリ、元気でね」

 

 くいながにこりと笑ってくれる。

 

「うん、くいなもね。……あ、階段には気をつけるんだよ」

「もう! 何年前のこと言ってるの。あれから寝不足だって鉄分不足だって、ちゃんと気をつけてるからね!」

「だってすげえ怖かったんだぞ、あれ」

 

 色んな意味で。

 

「あはは。うん、気を付けるよ」

 

 くいなは素直で癒しです……。

 

 しかし、くいなが階段から落ちかけたのはあれ一回きり。

 前世のケンジは、同じ事態に何回も見舞われたって言ったけど、くいなはそうでもなさそう……?

 いやスパンが長いだけかもしれないから、油断はできないけど……。

 

 その前世も、ケンジ以外はそんなことなさそうだった。人によるのか?

 うーん。

 こればっかりは死じゃうまで分からない。何でもいいから死なないで。

 

 もやもやと考えてると、ヒロとケンジも同門の皆とわいわい別れを交わしてた。

 

 過去ケンジは愚かなことに、くいなとゾロ、そしてへーじ君とかずはちゃんに「付き合ってるの?」とか聞いて、四人にしばかれたことがある。

 以来何故か打ち解けてんだけど、今も気さくに小突き合ってる。

 ヒロは誰も彼もと仲がいいから、すげえ囲まれてた。

 

 ……自分はといえば何故か、緊張の面持ちした連中が一列に並んで握手を求めに来た。

 なんだこれ???

 十二歳のガキに何を慄いてるの???

 

 困惑しつつ応じてたら、あとでヒロとケンジに笑ったり引かれたりした。

 自分が自嘲(わら)いたいし引きたいよ?

 

「……お前、全然学んどらんのじゃなかろうな」

 

 ガープさんがジトりと見てくる。

 ひっ。

 

「な、何かあったらちゃんと、こいつらに話すようにしてるよ!」

「そもそも何かあるんじゃない!」

「ひィ」

 

 り、理不尽では!?

 

「自分にできるだけのことは、したいじゃん……?」

「それは無事に解決できる力があればじゃ!」

「ガ、ガープさん! ルリはこの六年怪我とかしませんでしたよ!」

「そ、それに、師範に勝っちゃいましたし……!」

 

 ヒロとケンジがアワアワと庇ってくれている。あははすっかり保護者にさせてしまっとる……。

 ガープさんは目を丸くして黙ってた。

 

「い、一回だけだよ……」

「勝ちは勝ちだよ?」

「うっ」

 

 コウシロウ先生から圧を感じる……。

 じ、自覚、自覚……。

 

 そんな感じに賑やかに送り出してもらった。

 

 神社でシロとお別れした時はものすごい絡みつかれたんだけど、また朔に翼ではたかれてすっとんでた。

 いつか鈴後(りんご)に行くことはあるのかな。

 もしくは、この村にまた来たら会えるのかな。フーシャ村からここに来ようとするのも、大変ではあるけど……。

 

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 帰ったら港にたくさん人がいた。

 なんかエースもいる。昔村に来るの嫌がってたのが嘘みたいだ。

 多分ルフィに連れて来られまくって慣れんだろうな。へへへ、微笑ましいな。

 

 まーたじんぺーとゼロがぶすーっとしてる。

 お前たち自分で拳骨(コブシ)一本って言ったから、定員漏れしたって話じゃん。

 

 お帰りって皆で言ってくれて温かい。

 この村ほんと気さくな人ばかりだよね。

 

「今回は単なる里帰りじゃないんだよな?」

「もう大人でもお前らには勝てなそうだなあ」

 

 ほのぼので安心する。

 あー本当帰ってきたんだなあ。ぐうーっと伸びをする。

 

「……力を付けたからと言って、暴れるなよ」

 

 そこにジロリとガープさんに睨まれて、びくぅと身をすくませる。

 

「わ、分かってる……コウシロウ先生にも散々言われたから……」

 

 自分の強さを自覚しろ、というのはきっとそういうことでもあるんだ。

 

「どうだかのう……」

 

 うぅ、顔が怖い。

 

「よし。お前ら、今日の特訓はじゃな」

「えっ!?」

「ひいぃい!?」

「今!?」

 

 ……ということでスパルタ訓練が始まった。容赦がないよおぉ。

 聞けばこれまでに、ルフィは風船いくつも括り付けられて、空に飛ばされたこともあるらしい。

 ……どうやって生還したの……。

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