数日後、エースから「あの熊倒すぞ」と言われてきょとんとした。
「お前の顔に傷残したやつだよ!! 最近よくうろついてんだ」
「!!」
……存在忘れてたぜ。
「……よし来た!」
にっと笑ってついていく。
「けどどーしてその個体だって分かるんだ?」
「あのあとおれは、お前の木刀をあいつの目にぶっ刺した。あの傷は絶対に忘れねェ」
エースは不敵に笑う。
その個体を見付けて襲いかかったんだけど、結果はエースのワンパンでした。
「……あたし必要だったか?」
苦笑いする。
「必要に決まってんだろ。……サボもな」
「……!」
そうだな。
あの時はサボもいた。
彼が生きてるのを知ってるけど、伝えるべきかどうかが分からなくて、ずるずるとそのままになってる。
物語通りだとエースは知らないまま死んでしまう。
……生きて自分で知ってほしいから、願掛けに……してもいいだろうか。
勝手すぎるけど。
でも……。
「おい、もっと嬉しそうにしろよ」
エースがそう言って苦笑してる。
「あはは、そうだな。エースすごいや」
「熊のが人間より成長はえーんだ。仇取るまえに勝手にくたばってたかもしれねェ」
確かに。三倍だっけ。
「六年もどっか行きやがって」
「さ、里帰りしたじゃん」
「短ェよ。熊探す暇なかったし」
「あ、あはは……」
でも。自分は忘れちゃってたのに。
「なんか、ほっとしたってか……ありがと」
この熊に家族とかいたら、復讐の連鎖とか生まれたかもしれないけど……。
「今日のメシは熊肉だな」
「あ、皆呼んでくる。せっかくだから特別料理にしよう」
「はは、そうだな」
生命頂いたからには最後まで。
私怨で生命取ったにしても、弱肉強食でございます。多分。
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「えー。近所のエイミーが、ちゃんと女の子らしいです」
「エイミー二個上じゃん。あとケンジセクハラ」
秘密基地近くの開けたトコでの鍛錬を終えて。
おやつにしてたらケンジがアホなことを言い始めた。
「うるせえ! 同年代が女の子らしくなったら、明かすって言ったのお前だろ!」
ちょっと恥ずかしそうなケンジ可愛い。
女たらしなトコもあるのに。
「俺達もだいぶ筋肉付いてきたしな。結構男女差が分かりやすくなってきた」
じんぺーが自分の肩を見ながらくるくる回してる。
「んで? 周りはともかく、分かりやすいか?」
腕を少しだけ左右に広げてみせる。
……全員眉間にシワを寄せてじっと見てくる。
「周りが分かりやすくなったら教えるとは言ったけど、つまりは? みんな自分では分からないってこと? 降参?」
「うっ」
全員引きつってやがる。
「ルリちゃん縄巻いてないよね……?」
「巻いてねーよ。さすがに誤魔化さないって言ったろ」
ケンジ疑い深すぎ。
「あー分かりづれえ……この幼児体型が」
「FA?」
じんぺーてめえ……。
「鍛えりゃちゃんと筋肉つく奴には、この苦しみは分からんだろうよ!」
「そこなんだよな。筋肉が太くなりづらい、六年女の子してバレなかった……」
ヒロがじっと考え込んでる。
「男性にも筋肉が太くなりづらい人はいるけど、そういう人でも骨格はゴツゴツしてるんだよな」
ゼロがじーっとこっちを見ている。
「タッパはそこそこあるから、成長遅いってこたねえと思うんだよなあ……」
考え込むワタル。
まあ身長、お前らの誰にも届いてないけどな。こいつら高すぎ。
この世界だし、将来六メートル超えたりしても、おかしくない連中だと思ってる。
「んんー……」
ケンジが目を眇めてじっと見てくる。
胸を張って腰に手当てて偉そうにしてみる。
「……楽しそうだなルリちゃん……」
「だって前世じゃ、お前らに勝てたこと何もないんだもん。こんなんでくらい悦に浸ってもいーじゃん」
何でみーんなげんなりした顔するの。事実だろ。
「ルリこそ、誰にも替えが効かないことができるだろう……」
「ここにいる全員お前に助けられてんだが」
ゼロとワタルがジト目で言う。
……霊感のことか?
……ちょっと、ふっと、苦笑する。
「あんまいい思い出ないことで、持ち上げられるのはな……」
「……」
職場でヤバいの憑いてる人見かけてついお節介したら、頭おかしい奴扱いされて、言い掛かり色々つけられて、結局仕事辞めざるを得なくなった。
似たようなことが過去にも色々あった。
要らぬお節介がとめられないなら、もういっそ『霊能者』という肩書きで動いたらって親に言われて……。
そっか。
家の神社継いで、そんで……『霊能者』アピールのために配信者にもなった。
ペラペラ喋る
……まあ、画面にどーんと映してたのは、膝に抱えたシロだけどね。
そういや他の配信者さんとコラボさせてもらう時は、サバトラのぬいぐるみ持っていったな。はは。
「……他のどんな知らない奴が何と言おうと、僕たちが君を尊敬してるのも、感謝してるのも……素晴らしい人間だと思ってるのも、変わらないからな」
……ゼロの一人称がいつの間にか、前世とおなじ『僕』にもどってる……。
「……買い被り過ぎだ」
逆に身が縮む。
「……うん。でもまあ、今更うじうじしても仕方ないしな。ありがと」
にーっと笑う。
プラスに言ってくれてる奴らの前で凹むのは、なんか違うし。
「んで答えは?」
考え込むみんな。
……やがて。
「「……降参」」
「……はあ? 全員?」
思わず素っ頓狂に言う。
頷くみんな。ぇえ……。
頭を抱える。
「……女だよばーかばーか。マジ馬鹿野郎ども。分かんねーとかガチ失礼!」
腕組みしてぷいっと顔逸らす。
ハアァァァ、とどいつもこいつもデカイ溜め息をついた。
「……もっと柔らかい言葉使ってろよ」
「うるさいじんぺー。前世男だった癖とかじゃね。そっちも忘れてんだろお前たち。ほんっと酷い」
「うわああぁあぁ! 紛らわしいいぃ! どおりで両方の雰囲気ある訳だよ! 詐欺だ!」
「何言ってんだケンジ。高校からつるんでたのに覚えてない方が酷いだろ」
「うがー!!」
フンッ。
「……ふふ。それで? 僕たちに一生何をさせる気だい?」
苦笑しながらゼロが問う。
しかし。
「んー。まだ決めてねーや」
「「ハァ!?」」
すげー顔で詰め寄ってきた。
「いきなり答えろってなったしなあ。無茶言うなよ」
ジト目で睨まれる。
「それに、お前たちが最後まで分からんなんて、あんま思ってなかったんだぞ。何でも解いちゃうのに」
「ルリこそ買いかぶりだよ」
ヒロが苦笑してる。
「ま、一つ貸しってことで」
「……ルリちゃん貸しのまま終わらせる気がする」
ジト目のままのケンジ。
「まあだってさ、隠したかったってより、単にお前たちとじゃれたかっただけなんだもんよ」
「……」
なんか皆またげんなりした顔下。
「そういう所だよ……」
だからどういうことなんだよケンジ?
……まあ?
性別なんてどうでもいいよね?