海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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43.マユ

 到着した島の、端にあった海軍支部の建物がすごくデカイ。

 

 安全のためか機密のためか、壁で中はほぼ見えなかった。

 けど鍛練中の大きな掛け声等々が聞こえてきて、頼もしい気迫にこっちまで高揚してくる。

 

 思わず「はー……!」なんて間抜けな感嘆の声が出てた。

 何故かガープさんがこっちを見て楽しそうに笑ってる。

 ……海兵ならないっつってたのにって? 自分でも思ってますわ……。

 

 両親は住む所を探すってことで、ガープさんの部下に連れられて街に向かった。

 わたしはガープさんに連れられて海軍支部──第14支部、らしい──の建物に入ってく。

 こ、これからここにお世話になるってこと、なんだよね……?

 

 少し緊張しながらガープさんの後を着いて歩く。途中で会う人会う人皆ガープさんに敬礼してた。わたしは一応ぺこりとお辞儀をする。

 小さく「堅苦しいのう……」って呟きが聞こえた気がするけど、わ、わたしには関係ない。

 

 んんん、しかし入隊窓口みたいなんって、入口付近にあるもんじゃないの?

 ずんずん歩くガープさんに大人しく着いてくんだけど、まさかお偉いさんとこに行く訳じゃないよな……?

 

 そのまさかだったわ。

 ガープさんがノック無しで開けたのは『支部長室』だった。ただし誰もいない。

 ガープさんは溜め息をついた。

 

「あやつ、相変わらず鍛錬に勤しんどるようじゃな……」

 

 地位にふんぞり返ってる奴じゃないってこと?

 少し期待しちゃう。いやそれが普通であるべきだけどさ……。

 

 それから連れてかれたのは屋外運動場だった。

 一部の人がガープさんに気付いて固まって敬礼して、それが伝播してく。

 

「いい、いい、気にするな! 鍛錬に励め!」

 

 面倒そうにガープさんが叫ぶと、恐る恐るといった様子で皆戻ってった。

 ただ、一人だけガープさんの方に歩いて来る人影がある。

 

「久しぶりじゃな、アイリッシュ准将」

「お久しぶりです、ガープ中将」

 

 ……あれ。

 なんか、見覚えがある眉毛……?

 

「畏まるなと言っておろうに、堅苦しい」

「そういう訳には」

「いいから茶でも出してくれい」

「……はい」

 

 そして支部長室に逆戻り。この人が支部長なんかな。

 アイリッシュ准将は途中で、部下っぽい海兵サンに茶とおかきを頼んでた。律儀。

 

「ピスコ少将は、変わらずか」

「……ああ」

 

 アイリッシュ准将の表情が、少し陰った気がする。

 ……しっかし……アイリッシュ……ものすげえ眉毛……ピスコ……酒の名前……ハッ。

 れ、例の黒い組織の幹部だったのでは???

 あんま覚えてないけど、このただでさえ吊り上がってるのに、眉尻が更に吊り上がってる特徴的な太い眉は、印象に残ってる、気がする。

 金髪で筋骨隆々。うん、海兵ちょー似合ってるのでは。

 

「それで、そっちが例のガキか」

「ああ。ムラサキ大佐の孫娘じゃ」

 

 ヒッ。

 思わずお辞儀して「ハイッ」と返事してた。

 ガープさんが畏まるなって言ってはいたけど、その言葉遣いと無表情は怖いデス。

 

「顔を上げろ。……海兵になるなら、こういう時はこうだ」

 

 アイリッシュ准将は、手の甲を前に向けた例の敬礼をしてた。

 これかっこいいよね……。

 

「ハイッ」

 

 ミーハー心をくすぐられて精一杯ピシッと真似る。

 ……だけどなんか、しっくり来ない感。多分、回数(経験)が足りない。

 アイリッシュ准将は、小さく鼻で笑った気がした。ぐうっ。

 

 ……てか、さらっと流れたけど、じいちゃん大佐だったのか。

 階級とかよく分かんないけど、多分高め……だったよね?

 あともしかして、この支部にいたってこと?

 

「ムラサキ大佐と違って青瓢箪だな。本当に海兵になる気があるのか?」

 

 じ、じいちゃんムキムキだったのか。そこ隔世遺伝してくれよ。

 

 ガープさんが「がっはっは」と大笑いした。

 この人、筋肉付きづらいのわたしが気にしてるの、知ってんだよ。

 だからジトリと見遣る。

 

「見た目で判断するな。四つの時からわしが鍛えておるし、ある道場の師範を剣で下したようじゃぞ」

 

 アイリッシュ准将はわたしの腰にある、じいちゃんの刀を見遣った。

 ……だから、ガープさん、初対面からハードル上げんでもろて……。

 

「剣……刀……ムラサキ大佐と同じか」

「ああ。抜刀術を得意にしとる所も同じじゃの」

 

 何かこそばゆいを通り越して居心地悪い……。

 

「要注意じゃじゃ馬っぷりもそっくりじゃ」

 

 アイリッシュ准将の特徴的な眉の間に、微妙にシワが寄った気がする。

 そ、そんなに悪名高かったの???

 

「……ムラサキ大佐の要注意暴れ馬っぷりは、養父(ちち)からよく聞いている」

 

 アイリッシュ准将はすごく嫌そうな顔をした。

 

「そんなガキをここに押し付けようってのか?」

「がっはっは、根性叩き直してやってくれい」

「……」

 

 眉間にシワを寄せてじいっと見られる。ヒエ。

 

「……丁度戦力増強を図っておったじゃろ。経験はないが腕は立つ」

 

 だから……ハードル(以下略)。

 

 アイリッシュ准将は無言で見てくるまま。

 

「ともかく、その戦力増強の理由を含め、状況を分からせることも兼ねて、ピスコ少将の見舞いに行こうと思っておる。お前も来るか?」

「…………養父(ちち)に何かあっては困るからな……」

 

 ……。

 じいちゃん、マジで何したん……?








 ピスコは結構早い時期に出てきた幹部で、アイリッシュは映画13作目に出てきた幹部です。
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