到着した島の、端にあった海軍支部の建物がすごくデカイ。
安全のためか機密のためか、壁で中はほぼ見えなかった。
けど鍛練中の大きな掛け声等々が聞こえてきて、頼もしい気迫にこっちまで高揚してくる。
思わず「はー……!」なんて間抜けな感嘆の声が出てた。
何故かガープさんがこっちを見て楽しそうに笑ってる。
……海兵ならないっつってたのにって? 自分でも思ってますわ……。
両親は住む所を探すってことで、ガープさんの部下に連れられて街に向かった。
わたしはガープさんに連れられて海軍支部──第14支部、らしい──の建物に入ってく。
こ、これからここにお世話になるってこと、なんだよね……?
少し緊張しながらガープさんの後を着いて歩く。途中で会う人会う人皆ガープさんに敬礼してた。わたしは一応ぺこりとお辞儀をする。
小さく「堅苦しいのう……」って呟きが聞こえた気がするけど、わ、わたしには関係ない。
んんん、しかし入隊窓口みたいなんって、入口付近にあるもんじゃないの?
ずんずん歩くガープさんに大人しく着いてくんだけど、まさかお偉いさんとこに行く訳じゃないよな……?
そのまさかだったわ。
ガープさんがノック無しで開けたのは『支部長室』だった。ただし誰もいない。
ガープさんは溜め息をついた。
「あやつ、相変わらず鍛錬に勤しんどるようじゃな……」
地位にふんぞり返ってる奴じゃないってこと?
少し期待しちゃう。いやそれが普通であるべきだけどさ……。
それから連れてかれたのは屋外運動場だった。
一部の人がガープさんに気付いて固まって敬礼して、それが伝播してく。
「いい、いい、気にするな! 鍛錬に励め!」
面倒そうにガープさんが叫ぶと、恐る恐るといった様子で皆戻ってった。
ただ、一人だけガープさんの方に歩いて来る人影がある。
「久しぶりじゃな、アイリッシュ准将」
「お久しぶりです、ガープ中将」
……あれ。
なんか、見覚えがある眉毛……?
「畏まるなと言っておろうに、堅苦しい」
「そういう訳には」
「いいから茶でも出してくれい」
「……はい」
そして支部長室に逆戻り。この人が支部長なんかな。
アイリッシュ准将は途中で、部下っぽい海兵サンに茶とおかきを頼んでた。律儀。
「ピスコ少将は、変わらずか」
「……ああ」
アイリッシュ准将の表情が、少し陰った気がする。
……しっかし……アイリッシュ……ものすげえ眉毛……ピスコ……酒の名前……ハッ。
れ、例の黒い組織の幹部だったのでは???
あんま覚えてないけど、このただでさえ吊り上がってるのに、眉尻が更に吊り上がってる特徴的な太い眉は、印象に残ってる、気がする。
金髪で筋骨隆々。うん、海兵ちょー似合ってるのでは。
「それで、そっちが例のガキか」
「ああ。ムラサキ大佐の孫娘じゃ」
ヒッ。
思わずお辞儀して「ハイッ」と返事してた。
ガープさんが畏まるなって言ってはいたけど、その言葉遣いと無表情は怖いデス。
「顔を上げろ。……海兵になるなら、こういう時はこうだ」
アイリッシュ准将は、手の甲を前に向けた例の敬礼をしてた。
これかっこいいよね……。
「ハイッ」
ミーハー心をくすぐられて精一杯ピシッと真似る。
……だけどなんか、しっくり来ない感。多分、
アイリッシュ准将は、小さく鼻で笑った気がした。ぐうっ。
……てか、さらっと流れたけど、じいちゃん大佐だったのか。
階級とかよく分かんないけど、多分高め……だったよね?
あともしかして、この支部にいたってこと?
「ムラサキ大佐と違って青瓢箪だな。本当に海兵になる気があるのか?」
じ、じいちゃんムキムキだったのか。そこ隔世遺伝してくれよ。
ガープさんが「がっはっは」と大笑いした。
この人、筋肉付きづらいのわたしが気にしてるの、知ってんだよ。
だからジトリと見遣る。
「見た目で判断するな。四つの時からわしが鍛えておるし、ある道場の師範を剣で下したようじゃぞ」
アイリッシュ准将はわたしの腰にある、じいちゃんの刀を見遣った。
……だから、ガープさん、初対面からハードル上げんでもろて……。
「剣……刀……ムラサキ大佐と同じか」
「ああ。抜刀術を得意にしとる所も同じじゃの」
何かこそばゆいを通り越して居心地悪い……。
「要注意じゃじゃ馬っぷりもそっくりじゃ」
アイリッシュ准将の特徴的な眉の間に、微妙にシワが寄った気がする。
そ、そんなに悪名高かったの???
「……ムラサキ大佐の要注意暴れ馬っぷりは、
アイリッシュ准将はすごく嫌そうな顔をした。
「そんなガキをここに押し付けようってのか?」
「がっはっは、根性叩き直してやってくれい」
「……」
眉間にシワを寄せてじいっと見られる。ヒエ。
「……丁度戦力増強を図っておったじゃろ。経験はないが腕は立つ」
だから……ハードル(以下略)。
アイリッシュ准将は無言で見てくるまま。
「ともかく、その戦力増強の理由を含め、状況を分からせることも兼ねて、ピスコ少将の見舞いに行こうと思っておる。お前も来るか?」
「…………
……。
じいちゃん、マジで何したん……?
ピスコは結構早い時期に出てきた幹部で、アイリッシュは映画13作目に出てきた幹部です。