ガープさんはわたしが解く前に、覇気だか筋力だか分からんけど、「フンッ」と縄を断ち切った。
「……所詮縄か」
「……ガープさんを基準にしないで下さい……」
アイリッシュ准将の呟きに抗議する。
さすがに納得する部分があるのか、彼は「ホォ?」と目を細めた。
「ガープさんもっかい」
しゅるしゅる出した縄に武装色を纏わせる。
ちっちゃい頃は縄の性質を残したままにできなかったけど、今はちゃんと縄そのものに動くよ!
今度はぎゅーっと遠慮なく締める。ガープさんだし大丈夫だろ。
「……ヌゥッ!」
さっきより
「結局切られたじゃねえか」
しかしアイリッシュ准将は非情だった。
「だから、ガープさんを基準にしないで下さい……」
い、いつかは超える気概くらい持たなきゃだろうけど、それはさすがに今じゃない……。
「じゃあ俺にやってみろ」
え、えぇ……初対面の人締めろって……?
困惑してると「とっととやれ」と急かされた。
……えぇい、どうにでもなれぇ……。
ガープさんにしたのと同じことをする。
黒く硬化した縄がギチっとアイリッシュ准将を縛る。
「……」
アイリッシュ准将は無言で力込めてた、けど。
しばらく経って。
「……降参だ」
苦渋の様子でそう言われた。
ちょっと意外だけど、多分、武装色まとったものをブっ千切るガープさんがおかしいだけだよな……。
しゅるしゅると縄を解く。
「じゃから見た目で判断するなと言っとろう」
ガープさんがニヤリと笑った。
「……そうかもしれんな」
は、はははは……。
〖まったく……人の病室で何をしている〗
ピスコ少将が初めて喋った。苦笑してる。
二人に気づかれないよう願いつつ、わたしは苦笑したままピスコ少将と一瞬目を合わせた。
……縄片付けよ……。
「そう言えばお前、未だに支部長代理に留まっとるのか?」
「支部長は
アイリッシュ准将はキッパリと言い切った。
絶対に譲らない、という意思を感じる。
「……そうか」
ガープさんは少しアンニュイに苦笑した。
……支部長扱いしちゃう前に知れて良かった……。
縄拾いながらじっとピスコ少将を観察してみる。
霊体は健康そう。五年も身体に戻れてないようには見えない。
まあ、幽体離脱しちゃったのは最近で、長いこと完全に眠ってた、って可能性もあるかもだけど。
彼は時折こちらに視線をくれるものの、もう話しかけてくることはなかった。
会話なんかしたら変な目で見られるのを察してるのかな。
……植物状態、か。
この状態で起きれてないなら、原因があるのは肉体の方だと思う。
こういう時わたしにできることがあるとしたら、霊体や
おかげで、脳死とかではないことが分かるけど。
たまに見舞いに伺ってもいいか聞くと、アイリッシュ准将は嫌そうな顔をした。うっ、初対面から信用ないのは理不尽だろ。
「新兵にそうそう外出許可が出ると思うな」
全寮制なんだって。
まあ、わたしにできることが明確にある訳じゃないしなあ……。
ピスコ少将には命に関わりそうな悪縁も繋がってない。
加えて、わたしには切れない『死』そのものの陰もない。
せめて快復を祈っていよう。
まだ日は高いんだけど、入隊準備して来いって帰されることになった。
明日の出勤は九時だそう。でも諸々を考えたら早めがいいよね。
帰れってなると新居な訳だけど、両親はもう見つけられたのかな?
ガープさんと少し街を見てたら、彼が持ってた電伝虫がプルプル鳴いた。
両親は一軒家見つけて早速買ったらしい。
そんなポイっとできるもんなの……?
送り届けてくれたガープさんとお茶して別れる。
……こんな色々お世話して頂いて、茶とおかきで済ませていいのか?
いや、連れてこられたのガープさんの意思だわ。……だとしても???
……考えないことにしよ。
全寮制なこととか伝えて準備を始めつつ、両親と雑談する。
「この家って、食堂?」
やるのかな?
安かっただけ、とかはあるかもだけど。
「うふふ、そうよ。村で太鼓判押してくれた子たちもいたから、頑張ってみようと思って」
確かに母の料理は最高だ。
「おとうさんの魚を料理すんの?」
「そうよ」
漁師続けられそうって言ってたもんね。
なんだかわくわくしてきた。
「繁盛間違いないね」
母は「この子ったら」とくすくす笑った。
「そうだ。皆に手紙出しとこうかなあ」
多分基地から出すのは色々面倒だろうし。
という訳でフーシャ村の皆宛と、シモツキ村の道場宛に、現状報告をしたためる。
将来の話とかなんもしなかった道場のみんなは、きっとびっくりするだろう。
けどゾロっていつ村を出るんだろうね。
彼は今年十六。もう鷹の目探しに行ってたって特に不思議じゃない。
くいなは将来どうするのかな。道場継ぐのかな。ゾロに着いてくのかな。
へーじ君とかずはちゃんは、何を目指すんだろう。
街の駐在さんとか似合いそう。
……村は戦闘民族だから多分そういうの必要ない。
ああ、道場で教える側になるってのもあり得るかな?
もしかしたら、海に出たり?
なんて、勝手に考えてわくわくする。
フーシャ村の皆は……ルフィは、あいつらは……今何してるのかなあ。
相変わらず身体鍛えてんだろうけど、五人は、将来……。
うーん、なんか、予想はできないや。
みんな楽しく生きられたらいいなあ……。
✦海軍階級備忘録
・本部での階級は支部のそれより三ランク上
・支部長は大佐以上
・海軍将校は少尉以上(正義コートを羽織る)
・伍長以上は私服OK
大将
中将 ← 本部大佐
少将 ← 本部中佐
准将 ← 本部少佐
大佐 ← 本部大尉
モーガン大佐 支部
フルボディ大尉 本部
ネズミ大佐 第16支部
プリンプリン准将 第77支部