海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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45.将来

 ガープさんはわたしが解く前に、覇気だか筋力だか分からんけど、「フンッ」と縄を断ち切った。

 

「……所詮縄か」

「……ガープさんを基準にしないで下さい……」

 

 アイリッシュ准将の呟きに抗議する。

 さすがに納得する部分があるのか、彼は「ホォ?」と目を細めた。

 

「ガープさんもっかい」

 

 しゅるしゅる出した縄に武装色を纏わせる。

 ちっちゃい頃は縄の性質を残したままにできなかったけど、今はちゃんと縄そのものに動くよ!

 

 今度はぎゅーっと遠慮なく締める。ガープさんだし大丈夫だろ。

 

「……ヌゥッ!」

 

 さっきより()ったし、ガープさんもっと力込めてたよ!

 

「結局切られたじゃねえか」

 

 しかしアイリッシュ准将は非情だった。

 

「だから、ガープさんを基準にしないで下さい……」

 

 い、いつかは超える気概くらい持たなきゃだろうけど、それはさすがに今じゃない……。

 

「じゃあ俺にやってみろ」

 

 え、えぇ……初対面の人締めろって……?

 困惑してると「とっととやれ」と急かされた。

 ……えぇい、どうにでもなれぇ……。

 

 ガープさんにしたのと同じことをする。

 黒く硬化した縄がギチっとアイリッシュ准将を縛る。

 

「……」

 

 アイリッシュ准将は無言で力込めてた、けど。

 

 しばらく経って。

 

「……降参だ」

 

 苦渋の様子でそう言われた。

 ちょっと意外だけど、多分、武装色まとったものをブっ千切るガープさんがおかしいだけだよな……。

 しゅるしゅると縄を解く。

 

「じゃから見た目で判断するなと言っとろう」

 

 ガープさんがニヤリと笑った。

 

「……そうかもしれんな」

 

 は、はははは……。

 

〖まったく……人の病室で何をしている〗

 

 ピスコ少将が初めて喋った。苦笑してる。

 二人に気づかれないよう願いつつ、わたしは苦笑したままピスコ少将と一瞬目を合わせた。

 ……縄片付けよ……。

 

「そう言えばお前、未だに支部長代理に留まっとるのか?」

「支部長は養父(ちち)だ」

 

 アイリッシュ准将はキッパリと言い切った。

 絶対に譲らない、という意思を感じる。

 

「……そうか」

 

 ガープさんは少しアンニュイに苦笑した。

 ……支部長扱いしちゃう前に知れて良かった……。

 

 縄拾いながらじっとピスコ少将を観察してみる。

 霊体は健康そう。五年も身体に戻れてないようには見えない。

 まあ、幽体離脱しちゃったのは最近で、長いこと完全に眠ってた、って可能性もあるかもだけど。

 

 彼は時折こちらに視線をくれるものの、もう話しかけてくることはなかった。

 会話なんかしたら変な目で見られるのを察してるのかな。

 

 ……植物状態、か。

 この状態で起きれてないなら、原因があるのは肉体の方だと思う。

 こういう時わたしにできることがあるとしたら、霊体や(いと)に元気を送るための何かしらをすること。だけど両者ピンピンしてるんだよなあ。

 おかげで、脳死とかではないことが分かるけど。

 

 たまに見舞いに伺ってもいいか聞くと、アイリッシュ准将は嫌そうな顔をした。うっ、初対面から信用ないのは理不尽だろ。

 

「新兵にそうそう外出許可が出ると思うな」

 

 全寮制なんだって。

 

 まあ、わたしにできることが明確にある訳じゃないしなあ……。

 ピスコ少将には命に関わりそうな悪縁も繋がってない。

 加えて、わたしには切れない『死』そのものの陰もない。

 

 せめて快復を祈っていよう。

 

 まだ日は高いんだけど、入隊準備して来いって帰されることになった。

 明日の出勤は九時だそう。でも諸々を考えたら早めがいいよね。

 

 帰れってなると新居な訳だけど、両親はもう見つけられたのかな?

 

 ガープさんと少し街を見てたら、彼が持ってた電伝虫がプルプル鳴いた。

 

 両親は一軒家見つけて早速買ったらしい。

 そんなポイっとできるもんなの……?

 

 送り届けてくれたガープさんとお茶して別れる。

 ……こんな色々お世話して頂いて、茶とおかきで済ませていいのか?

 いや、連れてこられたのガープさんの意思だわ。……だとしても???

 ……考えないことにしよ。

 

 全寮制なこととか伝えて準備を始めつつ、両親と雑談する。

 

「この家って、食堂?」

 

 やるのかな?

 安かっただけ、とかはあるかもだけど。

 

「うふふ、そうよ。村で太鼓判押してくれた子たちもいたから、頑張ってみようと思って」

 

 確かに母の料理は最高だ。

 

「おとうさんの魚を料理すんの?」

「そうよ」

 

 漁師続けられそうって言ってたもんね。

 なんだかわくわくしてきた。

 

「繁盛間違いないね」

 

 母は「この子ったら」とくすくす笑った。

 

「そうだ。皆に手紙出しとこうかなあ」

 

 多分基地から出すのは色々面倒だろうし。

 

 という訳でフーシャ村の皆宛と、シモツキ村の道場宛に、現状報告をしたためる。

 将来の話とかなんもしなかった道場のみんなは、きっとびっくりするだろう。

 

 けどゾロっていつ村を出るんだろうね。

 彼は今年十六。もう鷹の目探しに行ってたって特に不思議じゃない。

 くいなは将来どうするのかな。道場継ぐのかな。ゾロに着いてくのかな。

 へーじ君とかずはちゃんは、何を目指すんだろう。

 街の駐在さんとか似合いそう。

 ……村は戦闘民族だから多分そういうの必要ない。

 ああ、道場で教える側になるってのもあり得るかな?

 もしかしたら、海に出たり?

 なんて、勝手に考えてわくわくする。

 

 フーシャ村の皆は……ルフィは、あいつらは……今何してるのかなあ。

 相変わらず身体鍛えてんだろうけど、五人は、将来……。

 

 うーん、なんか、予想はできないや。

 みんな楽しく生きられたらいいなあ……。







✦海軍階級備忘録
・本部での階級は支部のそれより三ランク上
・支部長は大佐以上
・海軍将校は少尉以上(正義コートを羽織る)
・伍長以上は私服OK
大将
中将 ← 本部大佐
少将 ← 本部中佐
准将 ← 本部少佐
大佐 ← 本部大尉

モーガン大佐 支部
フルボディ大尉 本部
ネズミ大佐 第16支部
プリンプリン准将 第77支部
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