ぶん投げられた岩食らったとはとても思えない程とはいえ怪我は怪我、家に帰るたび両親はギョッと血相を変えるんだけど、毎度下手人がガープさん率いる海軍と聞いて「あらまあ」なんて苦笑に変わる。ここの村民、英雄への信頼が厚すぎる。
「イヤイヤでお友だちに付き合っている訳ではないのね?」
と少し心配そうに聞いてくれた点、やっぱり聖母だと思う。
……ガープさんももう少しルフィの意思聞いてあげて。
『俺たちはルリにも生きてほしいんだ』
ふと、ゼロの声が頭をよぎる。
……ああ、推したちに敵うわけなんかないんだよ。
「……うん。つよくなりたくて」
ふふふ、と両親が柔らかく笑う。
父がぽんと頭に手を置いてきた。
「無理だけはするなよ」
「うん」
二人の優しさが嬉しくてにぱっと笑うと、両親も笑顔になってくれるのが嬉しかった。
ああ、しあわせだなあ。
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ガープさんたちがそう何日も続けて村に滞在できるはずもなく、彼らが海に帰って行くと、ルフィは明らかにほっとした。
気遣わしさと巻き込んだ申し訳なさで思わずなでなでする。でもそういえば我々の方が年下だったっけ。
まあ一個だけみたいだしいいだろ。ルフィもにこにこしてくれてるし。彼もなでなで好き仲間なのかもしれない。
ルフィ含む村の子どもたちときゃいきゃい遊んで別れたあと。
「……ガープの爺さんの鍛え方はめちゃくちゃではあったけど、おかげで『前』の常識に囚われちゃならねぇってのがよく分かった」
じんぺーが無表情に言うと、ゼロが苦笑しながらそうだなと言った。
「うん。多分想像次第でやれることがかなり広がるんだと思う」
色々思いつけたら面白そうだって笑うヒロが可愛い。無邪気にそうだなって笑うゼロとワタルと……ついでにケンジも可愛い。不敵に笑うじんぺーは幼児だから可愛い。成長してからでいいよそういうかっこいい系。
「しかしルフィほんと可哀想」
思わずこぼすと、皆も、うっと息を詰まらせた。
「今度肉奢ってあげようかな……市で串焼きとか骨付き肉とか見た気がする」
父は漁の手伝いの報酬としてお小遣いをくれる。
それ程ものの数になってないしそもそも家族だし要らないって言っても、こういうのはきちんとしとかないとと笑われて実は閉口してた。
だけどもらっててよかったと思った。ありがとう父さん。
今も既に「肉ー!!」と元気に叫ぶルフィへの見舞いだかお詫びだかなら、何よりも肉だろう。
皆もそうしようかななんて言って、でも六人でそれは多すぎだろとなってて、機会を分ければ、なんて言ってるけど。
あの子なら六人分だろうと一度にペロリといくだろと言ったら奇妙なモノを見る目で見られた。あれ、ルフィ今はまだそこまで食わないんだっけ?
そういえば目撃した食事シーンといえば海兵さんたちが持ち込んでくれた子供一人分相応のオニギリだけだな。絶対足りてなかったと思うよ。
食べたあと「肉……」て淋しそうに言ってただろ。
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早朝。
あの日視えてるなあと自覚して以降、欠かさずやっていることがある。
自分の場合この『視える』というやつはとある神さんの後ろ盾あってこそのはずだ。
同じ神さんかは分からないけど実際何かそうした存在との縁を感じる方角があって、その方向に遮るものなく水平線まで見える場所で──つまりは何かあるとしてかなりの遠方なんだろうけど──代用品としている棒(昔壊した銛の柄)を両手で水平に持って捧げ、瞑目して精神の集中を図る。
それで──何ていうんだろう、周りに溶け込んだというか空気に紛れたというか自然と自分の境界が曖昧になるというか──そういう感覚になってきたら、剣を腰に佩くふうに棒を収めて、跪くような体勢を取る。そのまましばし待機。
何だか丁度いいなと感じた所で居合斬りのような挙動で立ち上がり、そこから体に染み付いた一連の動作に入る。
要所要所で鋭い運びをする所はあるけど、基本ゆっくりと、そして刀が流れるのに任せて剣を振っていく。
舞には何種類もあって、風をイメージした舞、水をイメージした舞、炎をイメージした舞……色んな『自然』へのイメージを神様に捧げるのです。
今日は風が気持ちいなあと思ったから風。
中でもゆったりなやつ。結構好き。
前世でうちの神さんに奉納していた剣舞のひとつだ。
前々世については全く覚えてないけど、前世の実家は神社だったと思う。んで確か母に仕込まれたもののはず。
これで験だか徳だか信仰心だかを積んでからじゃないと、霊の皆さんとコミュニケーションを取るのは早計だと思うんだ。
前世と違ってこちらで視える皆さんはブルックの魂(頭だけじゃない方)みたいに少しファンシーなんだけど、その性質もファンシーとは限らないからね。
ワンピースについてはブルックやペローナのホロホロたちくらいしか霊体の記憶がなくて、その他が一体どんな存在なのか見当がつかない。
視える皆が悪霊や呪いの類じゃないとは断言できない。
居ない=成仏してる、居る=良くない未練を残してて何かの機会を伺っている or 呪い or 兵器etc、等、あらゆる可能性を想定してかかるべきだろう。
だからこれは必要な下準備のようなもの。
それに、ヒロみたいな惹き寄せ体質も身近に居ることだし、鍛えとくにこしたことはない。
決まった順序で舞を終えて瞑想的なものに入ろうとして──何か生きてるのが近くで睨んでやがる、と思った瞬間身体が動いた。
「うわ!? っ、てめえ!! 何すんだ!!」
自分より大きい子どもが少し吹き飛ぶようにして尻もちを着いていた。げえ……。
「うわ人ォ?! ご、ごめん。獣だと思ったんだ。ご飯になるかなって……」
ルフィに肉あげようって思ってたしさあ……。
た、多分いきなり首のあたりに突きつけた形になった。泣かしててもおかしくなかった。泣いてないのすごいなこの子。
「はあ!? 食う気だったのか!?」
「ごめんて! なんか殺気立ってたから獣が襲いに来たと思ったんだ……」
「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえ! 見てただけだ!」
そ、そうか……? ほんとに……? ちょっと突き刺される感じあった気がするんだけど。
「ごめんて。まじごめん。……ほんとごめん」
がちで申し訳ない。頭を下げる。気分的には土下座も辞さない。
幼気な……ちょっと目付き悪いけど……子どもに酷いことをしてしまった。
しばらく相手は無言になった。うげえ……怒ってるよなあ……。
「……頭あげろよ」
言われて恐る恐る顔を上げる。
「……お前、剣士なのか?」
想定外の質問にきょとりとしてしまった。何か怒りの言葉が飛んでくると思ってたし、この舞は武術じゃない……と思う。
「いや、違うよ。これは踊り」
「踊り……?」
思いっきり疑いの目で見られてらぁ。
けどいきなり神様に捧げるものだなんて言っても話がこじれそうだ。
「剣士ならもっともっと速いし力が乗ってると思う。こんなんじゃ何も倒せないよ」
「……おれを殺そうとしたくせに?」
ううっ!
さっきの剣舞は最初の居合ちっくな奴とか要所要所の動き以外は基本ゆったりしたものだ。
この子が尻もちつくくらいのことをしでかしたのは、世界の性質や水泳やここ数日の
「ごめん……」
「いやおいもう頭下げんな!」
「お、おう……」
再び顔を上げれば少年の顔をじっと見ることになる訳だけど、あれ、こんな子村に居たっけ。まあまだ全員と会ってるとは限らないけど。
「……なあ、お前そんな小せえのにメシ取りに来ないといけないのか?」
「小さいって言うな」
反射的に言ってしまったけど小さくて当たり前だよな四歳だし。
「いや小せえだろ。……親居ないのか?」
んん、何か心配してくれてるのか。
「いや居る。肉欲しいのは友だちに詫び入れたくて」
少年は何故か舌打ちした。何だ?
「なら親に頼めばいいだろ」
何で突っかかってくんだろ?
「自分のケツくらい自分で拭くだろ。さすがにもう親に便所手伝わせてねえよ」
少年は何だか引き気味になって目を丸くした。
「いやお前も四つの時にはそうだっただろ?」
「便所と狩りじゃ違いすぎんだろ……」
げっそりされた。
「例えだよ。……それにその様子じゃ、お前だって四つの時には狩りしてたんじゃないの?」
背中に戦果らしい猪背負ってるし(すご)。
あと尻もち着いた時には取り落としてたみたいだけど、棒を持ち直してた。ていうか鉄パイプじゃないかあれ。いいなあ強そう。
「……まあ……そうだが……」
何が不満なのさ。
「ああもう面倒臭えな。家のことなんて人それぞれでいいだろ。自分がやりたいことやってるだけだ。お前にあれこれ言われる筋合いはない」
「……っ! ……好きなことやれるのは、親が居るからだろ」
あー。この子、もしかして親が居ないのかなあ。
まだ子どもなんだし、色々と飲み込めてなくたっておかしくない。
「そうだな。うちの親に感謝してるよ。お前今、自由がないのか?」
誰かに話せる環境があった方が良いことだってあるから、ちょっと突っ込んだことを聞いてみる。怒って去られたとして、所詮今会ったばっかりの子だしなあ(酷)。
相手はぎこちない表情で身を強張らせた。
虐待とかされてなきゃいいけど。
少しその状態が続いた。
「……ああ、そうだ。自由なんかねェ。今は何もかも足りねえけど……金を集めて、もっと成長したら、絶対海に出てやる」
おお、話してくれた。しかも腐ってんじゃなくて先を見てる。
「へえ、すごいなお前。かっこいいな」
これきりの縁かもしれないし思ったことは包み隠さず言っておこう。
「……なっ! お前……!」
んん? 何か目がつり上がってる。怒らせた? 何で?
少年はそのまま踵を返して走り去ってしまった。
んー、ヒネた受け取り方して真逆の「バカにした」とか思われてたらどうしよ。
まあ、気に触ったんならもう近づいてこないでしょ。あとはどうしょうもない。
なんて思いつつ帰るかと後ろを振り向いてぎょっとした。
そこにはめちゃくちゃ見覚えのある人が居た。
──透明だったから、そんな反応しちゃだめだったはずだ。
二人はきょとんとこちらを見つめて──。
〖おい坊主……いや、嬢ちゃんか? ……どっちでもいいか。おれたちが見えてるな〗
言ったのはめちゃめちゃいい笑顔のゴール・Ꭰ・ロジャー。隣で微笑むのはポートガス・Ꭰ・ルージュ。
ええ……。
ああ、さっきの子どもって、もしかしなくてもエースだな!?
頭痛くなってきた気がした。
ここから誤魔化すのは無理だろうなと思いつつ目を逸らしたら、二人のくすくす笑う声が聞こえた。
『気が向きゃあいつと仲良くしてやってくれ』
荷が重い。
抗議の声をあげようか一瞬迷っていたら、二人の姿は消えていた。
その日以降、しばしばエースが通りすがるようになった。
わざわざ見学に来てるとはあんまり思いたくなかった、んだけど。
「暇かよ」
「うっせ。……お前の動きには無駄がねェ。見て盗む」
だそうだ。
舞と実戦て違わんのかな……?
まあ……場所を移すあてもないし邪険にする気も起きないから、このこそばゆい状況は甘んじて受け入れるしかなさそうだ。
あと、あの日以降ロジャーとルージュが姿を見せることはなかった。
今を生きる子どもの関係性には、あんま干渉したくはないのかもしれないな。
そして漁の前に出掛けてるのがさすがに父にバレた。
朝練してるって誤魔化したら真面目だなとか真剣なんだなとか感心して頭撫でてくれて少し心が痛くなった。秘密が色々あってごめんよ父さん……。
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ゼロとヒロの家で畑作業を手伝いつつ。
「え、ゼロとヒロも名字前の通りなの? てっきり兄弟とかで一緒なのかと思った」
「まあ本当の名字かは分からないんだけどな。海辺に流れ着いた小舟に二人して乗せられてたらしい。さすがに記憶ないけど」
「赤ちゃんの頃だからねえ。名前はおくるみに書いてあったらしいよ」
「へー……」
何て言っていいのか分からん。
「拾ってくれたのがおじいちゃんとおばあちゃんなんだ。子どもほしかったけどできなかったから嬉しいんだって、良くしてくれて……だから、できるだけ家の手伝いしたくて」
ヒロはふにゃりと微笑んで言う。
「だからルリがうちの畑仕事を鍛錬としてあげてくれて、すごく感謝してる」
「いや大袈裟」
ふふっと笑われる。ああもう分かってる頑として撤回しないよこの子は……。
はあ、と思わず頭を抱える。
けど畑仕事ってほんといい運動になるんだな、農家の人たち改めてすごい。
早朝の剣舞、その時の獲物によって時間の変わる漁、畑仕事、たまに帰ってくるガープさんに筋トレとか走り込みとか岩避けとか拳骨の素振り(?)とか見てもらって、こうめちゃめちゃ運動するようになって、健康的だなあなんて現実逃避気味に遠い目をする日々を過ごして。
とある日、ガープさんによって突然ジャングルに連行されサバイバル生活が始まった。
海兵さんたちも一緒にいてくれたとはいえ、スパルタがすぎる。
……多分そのうち、ルフィ含む子どもたちだけ置き去りにされそうな気がする。
何度か連行されるようになり、崖から落とされたり風船にくくりつけて飛ばされるようになった頃(白目)、やっぱり置き去りが始まった。
でも五人やべーのがいる分マシだったのかもしれない。頼もしすぎるだろ警察学校組。いやそりゃそうか。体力お化けな警察官だったんだもんな。しかも頭も働くくっそ優秀な。
ボクシングを嗜んでたゼロとじんぺーはもちろんワタルも素手でがんがん野生動物相手にするし、ルフィも一緒になって楽しそうに暴れてた。
ガープさんが仲良い友人がいれば楽しいだろうみたいなこと言ってたのはまあ間違ってなかったのかもしれないね。
自分はケンジとヒロとともに棒やらの得物を持つことに。
ジャングル投入回数を重ねるうちに、ケンジとじんぺーが色々作ってくれるようになって、打製石器(これ現代人が作るのかなり難しいはずなんだけど???)つけた槍とか、弓矢とか(ヒロのエイム異常)、そのうち木刀削り出しまでしやがった。
「ルリはやっぱこれだろ」
くそ長くね? 石器作るのもそれで削るのも研磨するのも大変すぎるだろじんぺーケンジどうなってんだ器用ってだけじゃ片付けられなくね?
「え、何で」
「
「子どもにそんなん求めるな」
「筋力でやってる訳じゃねえって言ってただろ」
「それ多分だし稀にだし実戦とかしたことねえから…………まあ、手間かけてくれてありがと……」
四歳児の身長に合わせてくれてるのか二メートル超えなんてモノではなかったけど、にしてもじんぺーの無茶振りが酷すぎる。
でも何故か手に馴染んだのは事実で。
少し釈然としないけど、まあ、前世までとは筋力が明らかに比べ物にならないし、そのせいだろ。
フーシャ村に帰ったあとも素振りやガープさんたちによるスパルタ訓練だけでなく、毎朝の剣舞にもじんぺーケンジお手製のその木刀を使いだしたら、そのうちエースに目撃されて羨ましがられた。
「材質的にエースの鉄パイプの方が強そうだけど」
さすがに名前を教え合うくらいの仲にはなってた。でもまあ、あんま気を許してくれてはないだろうなあ。
「……見た目も大事だろ」
おお、意外なこと言ってる……。
「これ村の友達が作ってくれた物なんだけど、頼んでみようか?」
「……いい」
そっけなくぷいっとされた。
あんま知人増やしたくないのかなあ。人間不信真っ盛りっぽそうかな。……もう街の方でロジャーの悪口聞いてるのかな。
とある日。
「お前、ゴール・Ꭰ・ロジャーを知ってるか」
ああ、いつか聞かれることはあるんだろうかとは、思ってたけど。
「ゴールド・ロジャーのこと? 海賊王だっけ」
それだけ答えると、エースは黙った。
少しの間沈黙が続いた。
ロジャーについては無関係な一般人としては知りすぎてるんだろうな。
加えてどこで
「もう処刑されてるんだっけ。一体何したんだろうね」
ひとまず知らないふりしないと。
「海賊だからだろ」
「でも海賊にも色々いるんだろ? 白ひげ海賊団とかはあんま悪そうに見えないんだけど」
エースが少し目を見張った。
「案外知ってるんだな。海賊のこと」
「うち、ニュース・クー来るたび新聞買ってるからな」
「へー」
また少し沈黙。
「旅しながら縄張り守ってる以外は、ちょっかいかけてくる奴を返り討ちにしてるだけじゃね? それが何か悪いのか?」
また、沈黙。
……そして。
「……ロジャーのせいで、大海賊時代が始まった。おかげであちこち略奪されて、悪けりゃ滅びる」
「ふーん。ロジャーが略奪しろって呼び掛けたのか? こわ」
また、少し沈黙。
「…………ちげぇ、な。多分」
「ふうん?」
「そいつは、自分の宝を全部、世界の果てに置いてきたっつったんだ。欲しけりゃくれてやるってな。だからどいつもこいつもそれを狙ってる」
「へー。随分酔狂だな。普通溜め込んで悦に入るか元手に遊ぶだろ」
確かルフィみたいな何かを待ってたんだと思うけど。知らないふりって結構大変だな……。
「夢あっていいじゃん。それだけ聞くと処刑される意味分かんねえんだけど」
「……諸悪の根源だろ」
「あ? ……海賊増えたこと? ……宝探す以外で悪さすんのはそいつらの勝手じゃね? ロジャーは略奪呼び掛けてねえんだろ?」
「…………ああ」
腑に落ちなかった所ではある。諸悪の根源は極論すぎね?
「そいつ自身が略奪しまくってたんなら知らんけど。そもそも海賊王って何だ?」
具体的にどんな権力持ってたのか知らないんだよな。覚えてないだけなんかな。
「……この世の全てを手に入れた、って」
「んん……? 世界全部動かせたってこと? 世界全体の王様みたいな? ……それでなんで処刑なんてされたんだ? 頂点ならそいつが正義だろ? 誰にも何も言わせないはずじゃね?」
エースが黙り込む。彼もよく知らないのかな。
「……海賊だけの頂点、かもな」
「……うーん。全て、なのかそれ?」
二人して考え込むはめになった。
こうなったら知らないものは知らないんだから、推測したって当たるとは限らない。
「まー、海賊王よく分からん上に本人に会ったこともないし、何とも言えなくね?」
また、少し続く沈黙。
「……でも、処刑されたんだぞ」
「何の罪かよく分からん以上はなあ……処刑する側が正しいとは限らんし。圧政敷いてる国が反乱分子処刑したとかあるじゃん。ロジャーもなんかお上が気に入らないことしたんじゃね? 海賊『王』なんて生意気だ、とかさ」
何かエースが吹き出した。どうして。
「……何だよ」
「……いや……フハッ……何か、下らねえな」
「え、ロジャー可哀想。悲劇のヒーローかもしんないのに。……分からんけど」
ふひふひ笑うエース。ほんと何なんだよ。
「……じゃあさ、そんな処刑されたような奴に、もし子どもがいたらどう思う?」
それも聞いてくるのか。
首をひねる。下手なことは言えないと思うけど、個人的には見ず知らずの死刑囚の家族まで糾弾するなんて疲れることする気にもならない。
「……うーん。別に?」
「……は?」
エースの表情が曇った。まあそうだろう。
「ロジャーとか所詮知らん人だしなあ。あんま興味湧かない。あとさっきも言ったけどその処刑が正しいのかもよく分からんし。それに、親が処刑されたなら一族郎党皆殺し、っていう文化だったとして別の国行きゃそんな文化なかったりするし」
エースは目を丸くして絶句した。
……そしてやがて。
「……お前の家族が……村が、海賊に襲われたら?」
「あ? 何だいきなり……ああ。その海賊は殺したくなるかもな。だけど……山賊に襲われるのと何が違う? ロジャーが略奪指示した訳じゃねえんだから、無理矢理関連付ける気にはならん。疲れる」
エースはぽかんとした。
そして。
ふははは、あははは、と笑い始めた。
……笑い続けた。
「……ほんとお前何なん? なんか疲れたんだけど」
こんな長々と喋るタチじゃないはずなんだけど?
ははは、とエースは笑う。
「……はは。……そうか」
笑いすぎだ。ちょい涙まで出てきてね?
怪訝に眺めていると、エースはにぱっと笑った。
そんなカラッとした笑い顔は初めて見たから、思わずぽかんとしてしまった。