海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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49.ぐずぐずもだもだ

 遠泳だけはまったくやれないのがつらい。

 泳ぐの好きなのにィ……。

 沖へ沖へとみんなが泳いでいくのを、ただ見送るしかできない。つらァ……。

 

 ……ええいクソぉ!

 八つ当たりで、みんなが帰ってくるまでダッシュでグラウンド周回してたら、形相が怖いってビビられた。

 

「やーいカナヅチ〜」

 

 なんて煽ってきたニールはぐるぐる巻きにして、グラウンドの真ん中に放置してやった。

 武装色使ってないから可愛いイタズラだろ?

 

 このニール、このところわたしの胸のあたり見て「ほんとに女だったんだな」とか言ってきたので、跳躍用の砂場に首まで埋めてやった。セクハラ絶許。

 着痩せする方っぽいなあって安心してたら、見て分かるくらいになってしまったらしい。今度別の下着買いに行こうかなあ。

 この時期どんどん膨らんでくもんだから、張って痛くてひたすら邪魔。

 前世男だったのに、魅惑の膨らみに不思議とムラっとしないのは、この張りによる違和感と痛さのせいかもしらん。

 

 けどまあ、精神的にも完全に女性になってるってことかなあ。前世までの記憶が薄いし、今の記憶の方がはっきりしてるからかもね。

 

 ……ゴホン。

 

 海兵になって一年を過ぎる頃には、ちらほら後輩ちゃんも増えてった。そして我々ニール班は全員雑用を卒業した。

 だから軍艦で海上にいることがより多くなった。

 

 とすると、当然命のやり取りが増える。

 

 最弱の海なんて言われてても、海賊っていっぱいいるもんなんだね。

 これが大海賊時代か。

 こいつらが全部略奪ばっかしてるような奴らなら、キッカケを作ったロジャーが恨まれもするだろうけど……でもやっぱ何か違うんだよなあ……。

 

 世間では海賊=悪、でしかないんだよね。

 ルフィさえ原作で、『噂に違わぬ悪人……!』とかヒソヒソされてた訳だし。

 

 だけどわたしは、海賊は海賊でもやることなすことヒーロー的な、ルフィみたいな奴らの存在を知ってる。

 対して、世界政府にも『悪』が在るってことも知ってる。

 だから大海賊時代を『絶対に始まるべきでなかった物』としては扱えない。

 

 だからわたしは、略奪するかどうかはそいつの勝手だから、全部がロジャーのせいじゃない、なんて言えてしまうんだ。

 人によっちゃ無責任な発言にすら映るだろう。

 

「……こいつら、手配書すらなくないですか?」

 

 縄でぐるぐる巻きにした若者たちを眺める。全員、きゅう、って感じに目を回してる。

 

「捕まえる意味ありますかねえ」

 

 思わず首をひねりながら言う。

 

「馬鹿者、今はコレ(・・)でも見逃せば将来どうなるか分からん。海賊旗を掲げている以上は、捕縛必至だ」

「まあ……抑止、ってことですか……」

 

 まだ芽な内に摘んどかなきゃってのはあるかもだけど。

 けどこいつら、『悪い奴ら』の臭いがしないんだわ。

 

 まあ、この雰囲気なのと手配書なしなら、罪らしき罪がないってことだし、その内釈放される可能性もあるか。

 

「……と、言いますか、今までどおりなど勘弁願います! そしていい加減敬語はお辞め下さい! ルリ大佐(・・)!」

 

 ……。

 

「先輩こそ敬語お辞め下さい。自分は形式的に階級上がってるだけの青二才であります」

 

 一年ちょいでじいちゃんと同じ階級ってことだよね……。

 納得いかない。

 

「とんでもない!」

 

 ブンブン首を振る先輩。

 

「大佐は捕縛数も撃破数も群を抜いておられます! 実力です!」

「縄のお陰なだけであります。縛るまでに先輩方が弱らせて下さっているのに、何故自分の手柄になさるのですか」

「バケモン並の身体能力してる奴にゃあ、とっとと相応の階級になってもらわねえと、組み手で迷惑すんだよ」

「……ニィイール……」

「事実じゃあるからな? 子供の大会に大人が混じっててみろよ」

「……そこまでの差あるゥ?」

「ニール! 大佐に失礼な物言いをするな!」

「……」

 

 ニールは口をひん曲げつつも敬礼した。

 う、うぅぅん……。

 

「……全く実感が伴っておりません。経験不足であります。上官に据えるには不適かと」

 

 先輩に敬礼しながら言うとたじたじされた。

 どうしても年功序列な精神性が抜けない日本人の性もあるんだよお。違和感と居心地の悪さしかない。

 正義コートは怖すぎて、支給されたそばから部屋に封印した。

 

「わたしが勘弁してほしいよおぉ……」

 

 壁にしなだれかかって、さめざめ泣きたい気分でいると、ジェナが背伸びしながら頭撫でてくれた。撫でられるの好き。ジェナが癒し、大好き。

 

 前までアイリッシュ准将との鍛錬は恐ろしかったのに、今は安心して組める癒しの時間になってる。

 うぅう。

 

 ……そのうち、支部じゃ昇級試験できないとかで、都度ガープさんに本部に連行されるようになった。

 

 ガープさんの軍艦は凪の帯(カームベルト)突っ切れるのと、そうすると東の海(イーストブルー)からマリンフォードへは赤い土の大陸(レッドライン)を跨がずに行けるのとで、案外往復に日数はかからない。

 どおりでガープさん、たまに東の海(イーストブルー)うろついてる訳だわ。

 

 マリンフォードに最初に行った時、

 

「こやつは探し物が得意なんじゃ。ついでにこないだの行方不明事件……」

 

 なんてガープさんが言い出したものだから、ここでも『ついでに(・・・・)』物探し人探しを回される。

 ……ガープさん、わたしを本部に留めようとしてない?

 御免被るので(サク)と付喪神さんたちにご協力いただいて、とっとと全部解決して試験受けて帰ってる。

 

 アーロンパークぶっ潰すためにみんなで鍛えなきゃならないんだから、第14支部を離れてる暇なんかないのだ!!

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