----------------------------------- side : friends
「やっほー!」
毎度毎度テンションMAXで軍艦から飛び出してくるルリに、『らしくない』と皆は驚く。
ただし、そう『らしくなさ』を見せる程皆に会うのを嬉しがっているのだと思うと、悪い気はしない。
──しないのだが。
「ゼロー! ヒロー!」
毎回突進して抱きついてくるのには目眩がした。
「……こら! やめろ……!
ゼロとヒロが並んでいる所に飛び込んできた彼女に、ヒロが頬を染めて小声で抗議した。
しかし彼女はぎゅうっとしがみついて、二人の肩のあたりに顔を埋めて離れようとしない。どころかすり、と小さく顔を押し付けてくるものだから、ますます始末が悪かった。
……そんな体勢なせいで、腕が挟まれるような形に──。
「……君は恥じらいを覚えろっ」
べり、とゼロが首根っこを掴んで引き剥がす。
「ええ……だって久し振りじゃん……」
しゅん、と眉尻を下げられて少し良心にくる、が。
「そういう問題じゃ──」
「あっ、ケンジー!」
ゼロの抗議はみなまで聞かれず、今度はケンジが標的になった。
「げっ……え、ええと……よしよし……?」
抱きつかれて胸の辺りに額をすり、とされたケンジは、身体を硬直させながらもルリの頭を撫でてやる。
そうすると彼女は「えへへー」なんて嬉しそうにしながら、ますますくっついて来た。対してケンジはますます固まる。
それを剥がしたのは今度はじんぺーだった。
「お前バカだろ」
──が。
「じんぺー!」
当然次は彼が餌食になった。
「……」
ぎゅうっと肩に抱きつかれて、その肩のあたりにぐりぐりと繰り返し顔をこすり付けられて、じんぺーも固まる。
「いいなー」
「ルリちゃん可愛くなったよなあ」
「ちょっと前まで男の子かと思ってたくらいなのに」
なんて声が村のみんなから上がって、じんぺーは口角をひくひくさせながらジト目を送った。ニヤニヤが返ってきただけだった。
「おー、ルリ、お帰りー!」
「ルフィー!!」
ルリはルフィの方に飛んで行き、開放されたじんぺーは胸を撫で下ろした。
ルフィはルリより少し身長が低く、顔面がもろに埋められてしまった。
しかしルフィはものともしなかった。
「なんかお前柔らかくなったな〜、ちゃんと鍛えてるか? けど身長は越されちまったなあ」
ケロっとしている彼に、五人は慄いた。
その胆力を見習いた……いや、できる気がしない。
「鍛えてるよ!? あとで勝負しよ!! てかこの柔いのさあ、邪魔で困ってる」
「あはは、そうなのか? 女って大変だな」
「ルフィすげえな……」
ワタルの声がしてがばっとルリは顔を上げた。
そして彼の方に駆け寄っていく。
「ワタルー! 着々と男前になってんなあ!」
彼女はワタルの手を両方握ってぶんぶんと振り回した。
「……何で班長だけ扱いがまともなんだよ!!」
ケンジがまるで悲鳴のように叫んだ。
「えっ、だってワタルはリア充じゃん。会えて嬉しくてもくっついたらだめだろ」
全員頭を抱えた。
八年前の
それに嫌気が差した彼らは、ひっそりとフーシャ村に越してきた。
その娘の一人はクルマ・ナタリーという。前世ワタルの恋人だった人物だった。
彼女が思い出すことはなかったし、ワタルも無理に近づこうとはしなかったが、自然と再び付き合いだしたのだった。
「アオイさん! デリックさん! 見てないでこいつとめて下さいよ!!」
「うふふ、みんな反応が可愛いんだもの。でも、みんなはうちの娘が嫌い……?」
ケンジの訴えにしょんぼりとそう聞き返されて、全員固まった。
「そ、そういう訳じゃないです、けど……」
「そこじゃねえ……そうじゃねえ……」
ヒロがたじたじし、じんぺーがげっそりする。
「良かったわ。これからも仲良くしてあげてね」
「そ、それはもちろんなんですけど……」
ゼロは苦笑いした。
「あ、そうだヒロ、これ」
ヒロはルリから小さな巾着を渡された。
「あ……いつもありがとう……!」
毎回ヒロだけ何かを渡されているものだから、ルリは彼に想いを寄せているのではという噂が流れていた。
人前で渡すんじゃないと彼らが伝えたこともあるのだが、彼女はきょとりと「早く渡すにこしたことないんだからな?」と言うばかり。
ふふふ、と笑って眺める彼女の両親も、恐らく勘違いしていることだろう。
「あ、みなさん、悪いことしない限り好きにのんびりしてていいですからね……?」
「「はっ!」」
海兵たちがびしっと敬礼するのに気圧される。
いつからか、彼女の帰郷には彼女の隊の軍艦が遣わされるようになった。
彼女は少し居心地悪そうにしているものの、きちんと部下扱いするようには努めているようだった。
「ハッ。
じんぺーがげっそりした様子で言う。
「な、何だよ……全部ガープさんの陰謀だからな……」
今度はルリもげっそりとした。
「ばか。たびたび新聞を騒がせる『
ゼロが呆れたように言った。
しかし彼女は、少し俯いた。
「頭では、わ、分かっては……いるつもりなんだ……ちゃんと自覚してなきゃ、まともに務まらなかったり、問題が起きたりしかねない……でもまだ、早すぎて実感が追い付かないんだよ」
ふっ、と、ゼロは苦笑する。
「君の性格を思えば分からなくもない。……『前』だって働きに見合った自信を持ってくれなかったしな」
だけど、と彼は表情を引き締めた。
「今の立場じゃそれは命取りになりかねない。そんな様子なら君(独り)にこの海を任せられないから、僕は海兵になるよ。自分の意志でね」
「!」
ルリは瞠目した。
そして俯く。
「……言っただろ、腹くくって決めたことなら、文句なんか言わない。それに……今だってお前たちにはだいたい負けるんだ。そんな奴が偉そうに、お前たちの将来に口を出せる訳がない」
シモツキ村では彼女に遅れを取って見えたヒロとケンジも、今はそうでもない。刀だけを使っている訳ではないのもあるのかもしれない。
ふっとゼロは苦く笑う。
ぽん、と彼女の頭に掌を載せる。
「……君が心配で言ってくれてるのは、分かってるつもりだよ」
ふわふわと撫でると、彼女はえへへ、と気分を持ち直したようだった。
彼女が頭を撫でられるのが好きなのは、彼らには随分前からバレている。
ぺかーっとした笑顔で彼女は顔をあげた。
「ねえ、あとで皆でどっか行こ。市で食べ歩きでも、歌うのでも、鍛錬でも、部品拾いでも、なんでもいいからさ……一緒に遊ぼ!」
そんな様子に、ふふふと、彼らだけでなく、村人たちも微笑んだ。