「ったく、海兵になったはずが犬みたいになりやがって」
じんぺーが不機嫌そうに言う。
駄菓子屋で色々と懐かしい物買って、悦に浸ってたらこれだ。
「犬ってなんだよ」
「確かに。毎回飛びつかれる時、ラスキンさんとこのワンちゃんが、頭の中で強めにじゃれてくるんだよな」
ケンジがなんか言ってる。
そういやあそこのお家、でかい犬飼ってるな。
「なんだよ、ちっちゃい頃五人してよく飛びついて来やがったくせに」
「あれは君が無茶ばかりするから……」
「ルリが性別隠してたせいで、遠慮なんて頭になかったからね」
「……お前たち分かってて黙ってただろ」
ゼロとヒロはそういう所あると思う。
「そんな訳ないだろう」
ゼロが肩をすくめてそう言うけど、ミリも慌ててないのが余計怪しい。
もぐ、とよく分かんないどぎつい色した餅みたいなのにかじりつく。あまあま。
餅と水飴混ぜてんのかなあこれ。結構好き。
梨味って銘打ってるのがあるのも最高。それっぽい匂いがちゃんとするし、ほんとに果汁も入ってるかもなあ。
「しかし、お前猫みたいだったしよ、人に抱きついたりするとは思ってなかったぜ。どういう風の吹き回しだ?」
ワタルの質問に、自分でも少し考え込む。
「……猫、ねえ……うちのシロは別に、ツンツンした猫じゃなかっただろ」
「あの子は確かにそうだと思うけど……」
ケンジが納得いかなそうな顔してる。
けどシモツキ村の
けど、シロかあ……。
「いやえっと、多分そのシロに飛びつかれまくったのもあると思う」
シモツキ村でのあいつの話は、他のみんなにもしてある。
「あと、ええと……えーとさ……最初に軍艦に乗った時にさ、また会えなくなると思ってた両親がいたから……思わず飛びついてた」
「へえ」
意外そうな顔しつつも何か少し、嬉しそう……いや、楽しそう?な様子のゼロ。
今後これをネタにからかってきたりしたら、胸に沈めてやるからな。
「そしたらその……
甘えたら喜んでもらえた、そして自分もほわほわする。一石二鳥では? っていう……。
何だか皆吹き出しやがった。
「猫が犬になったのは、そういう訳だったのか」
くすくす笑ってるヒロ。
「かぁーわいー」
声音も表情も煽りでしかないケンジの腕に、ジト目でぎゅうっと絡みついてやる。
「ちょっお前、それはやめろって!」
「煽ってきたお前が悪い」
「タチが悪い……」
「何でこいつ女なんだよ……」
ワタルとじんぺーがジト目だけど、ケンジ酷かったろ今の!?
「君、女の子の自覚あるか?」
ゼロの苦笑ががひきつってる。
「あるよ! てか男の感覚忘れた! でもお前たちにイタズラするのが楽しい!」
「マジでタチ悪ぃ〜〜〜!!!」
ケンジが叫んだので腕を離してやる。
「あと『前』、胸か尻か腿か談義みたいなので盛り上がっただろ? 尻と腿は流石にアタックするのおかしいから、胸でいってるだけだよ」
「胸もやめろ!」
「往来でする話じゃねえぇええ!!!」
あははおもしろ。
「あ、そーだ、マキノさんとこの双子ちゃん見に行きたい」
「自由すぎる!!」
「往来嫌なんだろ?」
「小さい子のいるとこで卑猥な話する気か!?」
「んな訳ないじゃ〜ん」
「あぁ……もう……」
なんてバカ話をしながら、マキノさんのバーへ。
「ほら、カイト、コナン、ルリお姉ちゃんよ〜」
わー! 見た目もコナン君と黒羽君そっくりだ!
ちょっと後ろ髪がハネてる方が黒羽君だな。前世ではセットしてこれなんかなと思ってたけど。
けど名前、『新一』君じゃなくて『コナン』君の方なんだ。
……『カイト』君の片割れとしては『コナン』君のほうがそれっぽい、のか……?
もし記憶があるようなら、工藤君は不貞腐れそうだな。
今の所彼らは普通の二歳児でしかないから、ただだだ可愛い。
「ぼくコナン。おねえちゃんだれ?」
「ルリだよ。この村に住んでるんだけど、普段はお仕事で帰ってこれないんだ」
ちゃんと実家は残してあるし、島に帰ったらそこで生活してる。
断じて『引っ越した』んじゃないから! この村に住んでるから!
「なんのおしごとしてるの?」
「うーん。海兵だよ」
帰ったらさっさと着替えたから、今は海兵スタイルじゃないんだよなあ。
「かいへい?」
「海賊にメッするお仕事」
「かいぞく?」
「うーん。海で好き勝手してる奴ら?」
コナン君とカイト君から質問攻めにあった。
こ、これはかの、なぜなに期というやつ……!?
可愛いなあぁ。
あっはっは、とルフィが笑った。
「コナンもカイトも、マキノにルリの記事読んでもらってるくせに、全然覚えてねェのな〜」
ぷくうと膨れて二人はルフィを睨む。
睨んでてもただただ可愛い。
「お姉ちゃん本人に聞きたいのよね〜?」
マキノさんがにこにこ言うと、「うん!」と二人はこくこく頷いた。
はあ可愛い。
「どっちがお兄ちゃんなんだ?」
イタズラ心で聞いてみる。
「おれ!」「ぼく!」
全く同時に返答が来てウフフと笑う。
やっぱ譲らないよなあ。ぷうっと二人は睨み合ってるんだけど、それも可愛い。
「火種を撒くな」
「あでっ。だって可愛いじゃん」
ぺしっとゼロに頭はたかれた。
質問じゃなくイタズラだって、やっぱ気づかれてたらしい。
親のマキノさんはただただふふふと笑ってる。心が広い。
そのうちルフィによる『海賊王ごっこ』なるものが開催され、コナン君とカイト君はその手下役となり(どこか不満そうだけど)、わたしはそれを追う海兵役となった。
ケンジたち五人はライバル海賊団にされていた。
彼らもどこか不満そうにしてたけど、『海賊王のライバル』って、考えたらすげー奴らなんだけど。
でもその内、双子ちゃん除くみんなして本気な鬼ごっこになった。
いつの間にかギャラリーまで集まって、それぞれを応援してくれてる。
人数的にわたしとルフィ不利だろ。
でも、あはは、やっぱ、楽しいなあ。
ほんとフーシャ村大好き。
----------------------------------- side : Zoro
「もう! なんで島の反対側で子どもたちと鬼ごっこしてるの!」
「反対だあ……? あの尖った岩が目印だろ」
「えっ……ちょっと、あんな岩、どこにでもいっぱいあるわよ!?」
くいなが頭を抱えている。ゾロは首を傾げた。
「姉ちゃん! 鬼ごっこじゃねェようぅ! こいつおれたちを殺す気だ!」
「あぁん? お前らがおれの刀盗もうとしたから、取り返しただけだろうが」
「へえー……?」
くいなにまで冷たい目で見られて、子どもたちは身をすくめる。
「刀は剣士の命よ。それを──」
ポカン、とゾロが頭のてっぺんを叩かれた。
「なにをみすみす、子どもに
「ああ? お前が来ねえから昼寝してたんだ、仕方ねえだろ」
「来るわけないでしょ! あと物盗られるような寝方……ねえ」
こっそり逃げようとしていた子どもたちの前に、一瞬でくいなが現れた。
「ひっ」
「キミたちも悪いことしたの分かってる?」
「だ、だって……こんな所で寝てたのが悪いだろ!」
「寝てる人から物を盗るなんて、恥ずかしいわ」
「な、なんだと!」
「だって相手に勝てないから、動かない人を狙うんでしょう?」
「うっ……だ、だって相手は大人だぞ!」
「わたしもゾロも……わたしたちの友だちも、大人に負けたりしなかったわ」
「う、うそだ!」
「本当よ」
くいなは刀に触れることなく、重心だけ落としてみせる。
「キミたちにその頃を見せることなんかできないけど──そうやって鍛えてきた技をお見舞いされたくなかったら、二度と剣士の刀を狙うんじゃないわ。寝てても気付くわよ。ゾロみたいにね」
「うぅ……」
何も分からない子どもたちにも、その気迫が伝わってきた。
体勢から、『本当にそれができる』だろう雰囲気も読み取る。
だから。
「うわあぁああ!」
子どもたちは逃げ出した。
「……まったく、ああいう子たちは面倒なのよ? ウソの通報とか平気でやるんだから」
「……じゃ」
ゾロはぐーっと伸びをした。
「補給も済んだし、賞金首の情報も拾ったし……とっとと次の島行くか」
「……もう迷子にならないでよ?」
「なってねェよ」
くいなは肩をすくめた。
「さて、今度はゾロも仕留められるかしら?」
「あぁン? 全部おれがとっ捕まえてやる」
「その内ルリのとこに連行したいね」
「ああ。あいつが捌ききれないくらい大勢突き出してやる」
「
「その頃にゃ、鷹の目探して
「あはは、そうだね。のんびりしてたらルリに狩られちゃう」
「あいつは海兵だからな。七武海に手は出せねェ。ざまあねェな」
「ふふっ。わたしたちが鷹の目に対峙するってなったら、ルリもどうするかわからないよ」
「まあ、そうかもな」
──駆け出しの賞金稼ぎ二人の、快進撃は続く。