海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

56 / 77
54.蒼炎??

----------------------------------- side : Ace

 

「マルコ、お前の火って青いよな」

「? 何だよい」

 

 航行中の甲板で、掃除などしつつのんびりしていた時のこと。

 

「……お前、強いよな」

「……。本当に何だよい?」

 

 真剣な顔をして言うエースに、マルコは首を傾げた。

 

「昔、幼馴染たちから、火は温度が高ければ色が変わると聞いた。強い火は青い、ってさ」

「……へえ。随分勉強熱心な奴らがいたもんだよい」

 

 そんな知識を求めるのは学者か職人くらいだろう。

 

「超高温で火が青くなるのは確かだがよい、おれの炎の青さは多分、そういうのとは関係ないよい」

「関係、ないのか?」

 

 エースはきょとりとした。

 

「ああ。……お前は、青い炎を見たことがあるか?」

「マルコの火」

「はは。そうじゃねェよい」

 

 キッパリ言い切ったエースは、もうすっかり可愛い『弟分』だった。

 

「自然界で青く燃えてる火なんて、この偉大なる航路(グランドライン)でもそうそうありゃしねェよい。……見てねェなら、強いかどうかなんて分からねェだろうよい」

「……ふうん」

 

 エースはどこか納得いかなそうだ。

 

「実際おれはお前が弱いなんて思ってねェが、それでも青くねェだろうがよい。お前が青い火を知らねェってだけだよい」

 

 エースは少し眉根を寄せた。

 

「……まあ、強い火は青い、って言った奴らの存在がお前にとってでかいんなら……オヤジに頼んで探してみるかよい、実際の青い火を」

「!! 見てみたい! おれ、強くなりてェんだ!」

「他の連中にとっても、楽しい物見遊山になるだろうよい」

「あはは、エースは真っ直ぐだなあ」

 

 サッチがニコニコとそう言いながら、二人に歩み寄ってきた。

 彼はぽふんとエースの頭に手を載せて、わしゃわしゃとかきまわす。

 

「あれだろ、幼馴染君がちょくちょく新聞に載るから、焦ってるんだろ」

「ち、違ェ、ってか、『君』じゃねェよ、あいつは女だ」

「え、マジ? 新聞って顔のドアップばっか載せるからなあ」

 

 サッチがきょとんとする。

 

「あ、さてはエース惚れてんなァ? 幼馴染ちゃん(・・・)、きれーな顔してるもんなァ」

「だからそれも違ェ! あいつは妹みたいなもんだ!!」

「イスカぁ、エースが二股してるよい」

「何言ってんだマルコてめェ!?」

 

 ぎゃーぎゃー揉み合っている三人に、イスカはくすくす笑った。

 

「私、ルリ幕僚長に頼まれたぞ? 危なっかしい兄ちゃんだから見ててやってくれ、って」

「ハァ!? あいつも何言ってんだ!?」

 

 腹を立てるエースに周りは皆笑った。

 エースには白ひげ海賊団や、かつてのスペード海賊団の他にも、賑やかな友人たちがいたようだ。

 兄貴分たちは、少し安心した。

 

----------------------------------- side : Red Force

 

「だっはっは、まさかルリが一躍有名になるとはなあ……」

 

 シャンクスが大笑いしている。

 

「いや、あの子流されやすいじゃん。気付いたらスゴイことしてました〜、とか、これからも山程重なるよ、きっと」

「あはは、ウタの言うとおりだろうな」

 

 ホンゴウは楽しそうに笑った。

 

「ルフィもそろそろ海に出るんじゃねェか? 楽しみだなあ」

 

 肉をかじりながら言うルゥに、赤髪海賊団はみんなして笑う。

 

「早く会いてェなあ〜」

「ウタ、フーシャ村で作ったやつ歌ってくれよ!」

「お、いいねェ!」

「あー、懐かしいなあ」

「いい村だよなあ〜」

 

 わいわいしながら、ウタのためのステージが整えられる。

 とはいえ、マキノのバーでテーブルの上に立ったような小ささは、今のウタにはない。

 

 だから今は、専用の敷物をちょうどいい場所に敷くくらいのものだ。

 それは時に、大岩の上だったり大木の枝だったりもするが、大抵は数個並べた荷箱の上となる。

 

「ふふっ、じゃあ、みんな聞いて──」

 

 朗々と響く天使の歌声。

 

 終われば──。

 拍手や口笛が飛び交う。

 

「ヒュー、やっぱ最高!」

「いつかワールドツアーやろうな〜!」

 

 喝采に応えてから、ふふっとウタは笑う。

 

「ルリともまた歌いたいなあ」

 

 シャンクスは目を細めて微笑んだ。

 

----------------------------------- side : Ruri

 

 第14支部では鍛錬だけじゃなく、もちろん新規海兵募集にも力入れてる訳なんだけど、ポスター作りやらコンサート公演やらもちらほらやった。

 音楽好きの隊は海兵楽団兼ねてた。言ってくれよ。

 ニールたちはそもそも音楽も見られての採用だったらしく、知ってたか察してたからしい。

 ……わたしはガープさんが何か言ったんだろう、うん。

 

 まあそういう兵力の底上げ、練度上げだけでなく、武器弾薬等々の装備充実も図り、そうしていたら海兵になってから二年が過ぎようとしていた。

 楽団からわたしの強襲部隊に引っこ抜かれたニール班も全員、コートを羽織るようになってた。

 

「お前にはぜっっったい勝つからな……」

 

 ニールはわたしがこんな階級になっても変わらず接してくれるから、いつの間にかむしろ癒しになってる。

 

「まだ言ってるの?」

「ニールお前、現実見ろよ」

 

 くすくす笑うジェナとブラッド。

 

「二人こそわたしを何だと思ってるんだ……」

「えっ?」

 

 ジェナとブラッドがきょとんとする。

 

「……ルリちゃん、自分がスーパースターなこと自覚してね?」

「……ぇえ……」

 

 ジェナ、何そのキラキラした名称……。

 

「妙な私語してないで、もう一本な」

「わあ……」

 

 きりっと竹刀を構えると、ジェナとブラッドはげっそりした。

 

「望むところだ!」

 

 ギッと竹刀を構え直したニールの赤毛が、なんだか眩しかった。

 

「ジェナ、合図──」

「ルリ幕僚長、不審船だ。お前らも一応来い」

 

 アイリッシュ准将の声がして、全員反射的にそちらを向いて敬礼した。

 

「「はっ!」」

 

 ……アイリッシュ准将とピスコ少将は、わたしがまだ『上官を必要としてる』んだって解ってくれてて、新兵の頃のまま接してくれてる。

『幕僚長』が特殊なおかげか、誰も違和感は持ってない……か、流してくれてる。

 

 しかし不審船か。珍しいな。

 航路申告なしは、ほぼ海賊旗掲げた海賊だし。

 申告忘れの商船とかなら、見つけたパトロール艦と話して終わりだ。

 

 一体何だろう。

 もしかして、また幽霊船か……?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。