砲撃とめられる上、相手も撃ってくる、となるとそれで諦めてもよさそうなものだけど、如何せんこちらの砲撃も効いてる様子がない。
更に、近付かれるに連れて向こうの射程範囲も広がってしまう訳で。
網で捉え損ねた分は跳んで追い、それぞれ幾つかにぶった斬る。
「朧水月!!! ──返し水月!!!」
──抜刀を起点に
ゼロたちと組んでドラム叩いてたんだ。リズムを取るのが板についてて、その感覚に乗るのが一番動きやすい。
キンッ
──九連撃が、一つの音になる。
砲弾は細切れになって失速し、バラバラと地面に落ちていく。
「速ェ……見えねェー……!」
誰かの呆けた声がする。
「たるむな! アイリッシュ准将の見込み通り数人魚人がいる、海に引きずり込まれるなよ!!」
叫ぶ。
「「ハッ!!」」
頼もしい返事。
そして──敵船が少し沖で停止した。
「銃士隊、行動開始!!」
「「ハッ!」」
「防護柵から無理に顔を出すなよ! まずは陸に上がらせることだ!」
「「ハッ!」」
バラバラと敵船から人が飛び降りてくる。
多分、小舟を出せば各個撃破されると判断してのことだろう。砲撃を防いでいた何者かは個人ってことだ。
向こうも銃撃してきたから、斬れるだけ斬って避ける。大砲を弾き返すのも忘れない。
──何だあれ? 船上を、見聞色で、探る。
ひょこりと顔を出したのは、
……ピンクの、うさぎ?
それを、さっきの黒服が、弾丸から守って、る?
あぁ、やっぱリあの黒服は──。
本部には『可能性アリ』で連絡したものの、間違いになんなくてよかった。
でもあのうさぎはドコの何なのか分からない。
ミンク族? 悪魔の実? ……アクセ?
黒服は雇われての乗船か? だから海賊旗を掲げてない、のか?
「私がいっぱい気絶させるから〜、みんなは早く探しものを見つけて来て〜」
ピンクうさぎ、何をやる気だ……。
「何か来る!!!」
警告しながら網を広げる。
「!?」
ピンクのうさぎの、巨大な前足が飛ぶように伸びてきた。
網で押さえたけど、こんなんで叩かれてたら『気絶』で済むのか分かったものじゃない。
「あ〜、防がれた〜……」
足が引いていく。そしてしょぼくれた声がする。
この場にそぐわぬ舌っ足らずな女の子の声。
訳のわからない状況に目眩がしそうだけど、ぼんやりしてる場合じゃない。
「悪魔の実の能力者だ! あれもできるだけわたしがとめる! ──ロプロプの
砲弾とうさぎの足両方とめるとなると心許ないから、網を張って左右は建物に巻きつけ、掌から切り離す。
けど、歩兵に斬られるわなあ……。
素でも普通の縄よりは丈夫になったけど、まだまだだ……。
地を蹴って上に飛ぶ。
──ゾロが『一刀流』ってつけるのは刀三本あるからなのかなあ。
ぼんやりと一瞬、シモツキ村で技名を叫び始めた時のことを思う。
「──夜白流抜刀術・
上から突きの雨を降らせながら、敵の中に突っ込む。
じいちゃんの剣術を、わたしは知らないけど。
どっかで見てたら叩き直してくれないかな。
「幕僚長!?」
ニールの焦った声がするけど、ちゃんと帰る目算立ててるからね。
「──乱れ水月!!!」
着地の瞬間自陣方向に地を蹴り、前方への突きを繰り返しながら帰る。
べ、とニールに小さく舌を出すと、ピキッと青筋立てられた。
……心配ありがとうな。
砲弾とウサギの足を察知したら網を張る。
敵船が砲撃準備してる間に敵陣に切り込む。
それを繰り返すけど、前線は押されていくし、少しずつ仲間も斃れていく。……くそっ。
わたしのカバー範囲外に広がっちゃってた戦線に、うさぎの足が突っ込んだ。
……敵味方問わず倒れたんだけど!?
けどほんとにただ気絶してるだけだ。誰も潰れてない。
縄を伸ばして寝てる味方を絡めとって、自陣の奥に放り込む。着地が多少痛くても勘弁してね。
あんな一気に無防備にされちゃたまらない。危なすぎる。
いっそ船上に襲撃仕掛けるか……?
いや、あの黒服がいる限りそんなん下策だ。多分あいつを刺激しちゃいけない。
「──
複数の銃弾や斬撃、打撃を全部斬り払う。
いくつかは相手の武器が壊れたようだった。
縄が目立つのか、段々わたしに敵が集中してきた気がする。ウチの支部は日頃の鬼訓練の賜物で、支部にしちゃ珍しく正義コートいっぱいいるから、コートだけじゃ敵の目を引かない。
これでいい、わたしは、妙な階級作られたくらいなんだ、一個部隊任されてるくらいなんだ、これくらい往なせなくて何だ!
ヤケクソになりそうなのを抑えて、自分のリズムを忘れずに立ち回る。
時に
「ねえ、あの女の子すごくない? このままじゃ探し物できなそう……」
船上の会話を捉える。
さっきといい、探し物って何なんだ。
「……邪魔だな」
嫌な予感がした。
「みんな退がって!!」
思わず叫ぶ。
跳んできたのはうさぎの足。網を広げて押し返す。
「も〜!」
悔しそうな声がする。
うさぎの足の影から──
ブワッ
と──
切るような風圧。
「うわあぁああ!!」
周りで、後ろで、悲鳴が上がる。次々にそれは広がる。
赤い色とともに。
黒い影が残像のように踊る。
……やめろ。
赤い、もの。
やめろ。
「──やめろおぉおおお!!!」
叫んだところでそいつは当然、とまらなかった。