----------------------------------- side : Red force
ウタが号泣している。
「……嘘、嘘嘘!!! ジャングズゥ!!! CぞだWNDI!?」
シャンクスは答えない。
俯いた表情も、分からない。
「そうさこんなの、嘘さぁ……だってあんなに、活躍、して……」
呟く声。
声なく涙を落とす者。
……やがて。
「どこの誰だか知らねェが、落とし前は着けてもらわねェとなァ……?」
ゆらりと立ち上がるシャンクス。
「お頭……情報は、おれが」
「ああ。頼むぞホンゴウ」
鬼の形相でゆっくりと歩き出すホンゴウ。
シャンクスは、ウタをそっと抱きしめた。
「……生きてるさ。あいつは怪我ばっかりするが、意外としぶといんだ」
「ッ! ずび」
ウタはしゃくり上げて、しかし。
「ゔ(ッ!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃでも、それでも、ウタは顔を上げた。
----------------------------------- side : Zoro
「……なに、これ……」
くいなが呆然としている。
ゾロは眉根を寄せた。
「あのバカが、勝ち逃げのまま終わらせる気か……」
思わず情けない言葉が漏れて、頭痛がしたように額に手を当て、首を振る。
「いや、あいつは約束破る奴じゃねェ。死体は出てねェんだ、どっかでピンピンしてるだろ」
くいなは俯いたまま黙っている。
「世界一の大剣豪になるのは、おれか、お前か、あいつだ」
ゾロの言葉に、くいなは顔を上げた。
「…………そうだね」
彼女は、ふっと、笑った。
「ねえゾロ、わたし、道場に帰る」
「ほお?」
「誰よりも強い剣士を育てて、あなたに送りつけるわ。永遠にね」
「何だそりゃ」
ゾロは困惑して口をひん曲げた。
「たくさんの最強の剣豪に囲まれて、倒されたくなかったら、さっさと世界一獲って、わたしも倒しに来てね」
「たくさんいたら最強じゃねェだろ!!?」
「……分からないわよ?」
くいなは意味深に笑った。
「……それでね、たくさんの最強と一緒に、ルリをどっかに連れてった奴を、思い切り懲らしめてやるわ」
笑っていたが、目の奥に極寒の炎が見えた気がした。
ふっとゾロは笑った。
「あいつが自分で逃げ出した可能性は?」
「そんなの」
くいなの目が細められて、ゾロは背筋が凍る思いがした。
「ある訳ないじゃない」
にこ、と彼女は笑った。目が閉じられている。
「世界一の大剣豪目指そうっていうのに、どんなモノからだって逃げる訳ないわ」
「……ハハ」
そりゃあそうだ。
「違いねェ。……お前はお前の道を進め、おれはおれの道を進む」
「うん。……次は、世界の頂で会おう」
くいなが帰還した道場では、それぞれが感情を爆発させていた。
しかし彼女の一喝で、多くがこれまで以上の恐ろしい鍛錬に励むようになる。
----------------------------------- side : friends
「ナグリの爺さんが何年もかけて集めた部品には、どうしても及ばねえ」
じんぺーは眉間にしわを寄せて考え込む。
「足りないよねえ」
ケンジも頭を悩ませる。
「ならさ! おれいらねェ船もらってくるからさ、それ改造しようぜ!」
「伝手でもあるのか?」
じんぺーがきょとりとして聞く。
「ねェよそんなもん! でも誰かくれるだろ! あ、そうだ、また山で肉獲ってきて交換してもらうのはどうだ?」
「あー、その手があったな」
ぽん、とケンジが掌を打つ。
ルリに口を酸っぱく『食い逃げすんな』と言われたルフィは、獲物をBや物と交換することを覚えていた。
ナグリと船を作った大切な思い出が先に立って、『船をもらう』なんて頭になかった。
……と言うより、小さかろうと船舶の値打ちは莫大、というイメージも大きい。本来、一時の狩りで賄える物ではないだろう。
しかしルフィの人柄とこの村の気質を思えば、無理でもない気がしてくる。
「そうと決まれば、誰が一番でかいの仕留めるか競争だな」
「お、いいねえ」
強気に笑うじんぺーと、乗るケンジと、
「おれが勝つ!!!」
走り出すルフィだった。
とある日、帰郷したガープとともに、憔悴したヤシロ夫妻が帰還した。
「僕たちが、絶対に見つけてきます」
「ルリはいっつも勝手にどっか行っちゃうけど、いつも絶対帰ってきますし」
ゼロとヒロが真剣に訴える。
アオイは目元を拭った。
「……そうね、そうよね……みんな、ありがとう……」
無理をしている笑顔。
手にぎゅっと抱えられた正義のコートは、畳まれた間から、黒ずんだ色が小さく覗いていた。
ひゅっと小さく喉が鳴るのを、どうにか抑える面々。
「……ゆっくり休んで下さいね」
ワタルと、恋人のナタリーが気遣わしげに夫婦を見つめる。
「……ふふ。ありがとう……」
「無理して笑わなくても、いいですからね」
ナタリーが言うと、アオイは目を丸くした。
そして、くしゃりと表情を歪める。
「……そうね……そうね……」
俯くアオイをデリックが支え、二人は家に帰っていった。
心配でついていくナタリーを、ワタルが追う。
「ガープさん。僕たち、海兵になりたいです」
四人の背を見送りながらゼロが言うと、ガープは驚愕に目を見開いた。
「しかし……海兵にならせても、ルリは守れなんだ……なのに、か?」
ゼロは首を振った。
「あいつはまたどうせ、自分から危険に飛び込んだんでしょう」
「だから、関係ないですよ。第一、ガープさんの言うこと聞かずに
にこにこされて、ガープは余計に胸が痛くなった。
「……すまぬ」
「ねえガープさん、そんなに卑下するくらいなら、教えてください。第14支部を襲ったのは、一体何ですか?」
「ッ」
ガープはゼロの問いに息を詰まらせた。
「新聞には、ガレオン船の不審な一団としかありませんでした。しかしあいつがそれだけしか掴めなかった訳ないです」
全く自覚してくれなかったが、公安トップの
『彼』は、全ての指名手配犯の顔を隅々まで完全に覚える、『見当たり捜査』だってこなしてみせたのだから。
「……今は言えなくてもいいです。海軍に、そこに潜入できるくらいの部署はありますか?」
ガープはますます目を丸くした。
「オレたちはそれを目指すつもりで、頑張りますから」
ガープの表情から『ある』と判断したヒロは、重圧すら感じる重い目をして言った。
「海軍本部に、連れて行って下さい」
ガープは、まだ十五の子供二人とは思えぬ空気に戸惑う。
一瞬瞑目し、
「……分かった。わしの扱きは、厳しいぞ」
ゼロとヒロは、ふわりと笑った。
「「よろしくお願いします」」
ガープは、訳も分からず苦笑するしかなかった。
------------------------------ side : Straw Hat Crew
完成した船は、キャラベルより小さい。しかし三人での船出なら充分以上だった。
見送りながら、マキノは「さみしくなるわね」と言い、村長は「海賊など村の恥じゃ」と言い、マキノの双子始め村の皆は沸いていた。
「やー、今日は船出日和だなー」
「ああ、いい天気だ」
ルフィとじんぺーは気持ちよく潮風を満喫している。
「……待って、あれ」
ケンジがギョッとした。
「おー、あいつ近海のヌシじゃん」
「……存在忘れてたわ」
覗き込むような仕草でのんびり見遣るルフィと、頭を抱えるじんぺー。
「よーし、あいつはおれに任せてくれ。借りがあるからな」
腕をぐっと引いて構えるルフィに、じんぺーとケンジはシャンクスのことを思った。
「10年鍛えたおれの技をみろ!!」
近海のヌシがガアっとその巨大な口を開けるが、三人とも落ち着いていた。
──ルフィなら余裕だ。
その確信があった。
「ゴムゴムの……
ズドオン!!
近海のヌシが大きくぶっ飛んで、遠くで海に落ちていった。
「思い知ったか魚め!!」
「あははっ」
ケンジが笑い、じんぺーは不敵な笑みを浮かべる。
「頼もしい船長だぜ」
じんぺーが言うと、ルフィもにぃっと不敵に笑った。
「だろ? よっしゃ行くぞ!!!」
ルフィは船首に仁王立ちして、両の拳を振り上げる。
「海賊王に、おれはなる!!!!」
ルフィが叫んで、そして、三人で拳をかち合わせた。