海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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ROMANCE DAWN
60.出会う


「仲間はあと10人は欲しいなあ」

 

 ルフィが腕をぐるぐると回しながら、ワクワクした声で言った。

 

「へえ、どんな奴が欲しいんだ?」

 

 ケンジは何となく問う。

 

「えっとな、強い奴と、コックと、音楽家と〜」

 

 強い奴……どいつもこいつも強かったな。

 コック……ゼロとヒロとルリがいりゃ、毎日美味いメシが食えただろう。

 音楽家で浮かぶのはやはり、ウタとルリ。

 

 今は仲間に引き入れられない顔ばかり浮かんで、じんぺーはふるりと小さく首を振る。

 

「あと、やっぱ海賊旗だな!!!」

「あー。ヒロに描いといてもらうんだったなあ」

「そうだねえ、得意そう」

 

 じんぺーとケンジの頭には、かつてヒロがデザインした警察学校体育祭の教場旗が浮かんでいた。

 

「ヒロって絵得意なのか?」

「うん。センスあると思う」

 

 ケンジは懐かしさに目を細める。

 

 そして唐突にハッとした。

 

「なあ、コンパスは持ってきたけど、そもそもどっちに進むんだ?」

「……南西じゃね?」

 

 じんぺーの顔が少し引きつった。

 

「いや……フーシャ村が東の海(イーストブルー)のどこにあるかによっちゃ……」

「……確かに」

 

 じんぺーとケンジは目を泳がせた。

 

「んなもん、どっかの島で聞けばいいんだ。誰か知ってる奴がいるさ」

 

 からっと笑って言うルフィに、二人は成程と頷く。

 閉鎖して立ちゆく島はそうない。だから誰かしら航海に出ている者が居るはずだ。

 

 ルフィは一見行きあたりばったりに見えて、結構的を射る。

 二人は彼をそういう風に見始めている。

 ふと、ルリの言が思い浮かんだ。

 

『あいつらは、あれこれすんなって常識押し付けるより、好きにさせとかないと寧ろ前に進めない気がするんだ』

 

 そうかもな、と思いながら、ふっと二人は笑う。

 

「おー! 早速島だぞ!」

 

 ルフィがわくわくした声を上げる。

 

「わーほんとだ、自然いっぱい、って感じ……いや、人いなそうじゃね」

 

 ケンジはじいっと目を凝らす。しかし遠すぎた。

 

「おい! あっち渦だ、でかいぞ!!」

「うわっマジだ、迂回しよう!! 取り舵っ」

 

 ケンジは舵を切った。

 しかしそれだけでは巻き込まれそうだった。

 

「じんぺーちゃん、左に漕いでくれ!」

「おう」

 

 そして彼らの船は島の左に回る。が。

 

「……なあ、この辺変な感じしね?」

「あぁ……渦できてたことといい、妙な海流に囲まれてやがる」

 

 舵を握って、櫂を取って、二人は手で感じ取った。

 

「あの島、多分一度入ったら出れねえぞ」

「えー、面白そうだな!」

「ばかやろう」

 

 きらきらしたルフィを、じんぺーはばっさりと切り捨てた。

 

「ここを旅の終わりにしたいか? 俺は嫌だね」

 

 じんぺーは顔をしかめる。

 こればかりは『押し付け』なければ進退窮まる。

 

「えー、どうにかなるだろ」

「これはならねえよ。もっと推進力のある船がないと駄目だ」

「俺もあの島は嫌だなあ。綺麗なだけで何もなさそう」

 

 ケンジも顔をしかめている。

 

「海賊王なれねえぞ」

「肉ないなあそこ」

「!! なら行かねェ!」

 

 二人は胸を撫で下ろした。

 

「そのうち次の船買いに行こうぜ、これには仲間あと10人は乗らないよ」

「おう。次もこれくらいカッコイイのにしよう!」

 

 ルフィがにこにこしていると、二人はどこか安心する気がした。

 

 ──三人は知らない。

 その島は、かつてエースが彼の右腕となるデュースと出会い、また、メラメラの実を拾った『美しすぎる島・シクシス』だった。

 

 そして三人は、別のとある島に辿り着く。

 

「樽が転がってるぞ。ここは人がいるな」

 

 浜にあった色々な残骸をつんつん蹴るルフィに、じんぺーは漂着物でないことを祈った。

 

「ああ、人の気配はするぜ。でもなーんか、嫌な感じする」

 

 ケンジが眉根を寄せてそう言った。

 じんぺーも注意深く探ると、かすかに人の気配を拾った。

 ……ケンジの、「ヒト」に対する見聞色はずば抜けている。

 

「んー! じゃ、おれ『潜入』して来るわ! 泥棒・巡査(どろじゅん)のやつ!」

「は?」

 

 見遣った時には、ルフィはキレイに残っていた樽の中に入って、猛スピードで転がっていった。

 二人は頭に手をやった。

 

 泥棒・巡査(どろじゅん)とは彼らの『前世』では鬼ごっこの類だったが、フーシャ村の子どもたちにその遊びを教えると、何だかどんどんルールが増えて行った。元警察官たちが調子に乗って、色々と子どもたちの疑問に答えたのも一因だろう。

 

「潜入にしちゃ、騒がしいなあれ」

「元気だねえ」

 

 二人はくすくすすると、慎重に『人の気配』に近付いて行った。

 

 そしてしばしばぷるぷる震える少年──コビーに出会った。時にルフィに「おれお前キライだなー」などと言われており、じんぺーとケンジは苦笑する。

 

「おれがなるって決めたんだから、そのために戦って死ぬんなら別にいい」

「!!!」

 

 ルフィの言に、コビーの目が光を灯す。

 

東の海(イーストブルー)支部最強の海兵は、ぼくと同い年だったんです」

 

 少年はぎゅっと拳を握った。

 

「海兵になりたかったぼくは、彼に憧れました。だけど、彼は死んでしまった……」

 

 コビーは、俯く。

 

「ぼっ、ぼくはっ、その憧れに──いや、彼の分もっ、えらくなるんです!」

 

 少年の決意を聞いて、三人は眩しげにふふっと笑う。

 ……『彼』、じゃないけどね。とは思いながら。

 

「そんなに言われて、あいつ嬉しいだろうなあ」

 

 ルフィの言に、コビーは目を丸くした。

 

「……え!!! ルフィさん、まさか知り合いなんですか!?」

「ん? ああ……おれたちの幼馴染だよ。あと死んでねェ」

「え!? いやそれは……!」

 

 新聞には、撃たれた上に、何度も刺されたとあった。

 

「……死んでねェよ、あいつは」

「……っ」

 

 ふっとアンニュイに笑う三人に、コビーは何も言えなくなった。

 

 ──そして。

 

「一番イカついクソばばあですっ!!!!」

 

 コビーの夢を阻んでいた『クソばばあ』は、ルフィによってぶっ飛ばされた。

 

「──え? ロロノア・ゾロ?」

 

 コビーの話にケンジが反応する。

 

「ケンジさん、あいつを知ってるんですか……?」

「うーん。同姓同名の別人じゃなければ、ね」

 

 ケンジは話の内容に首を傾げていた。

 

 そうして一行は、海軍基地を目指して海をゆく。







 警察・泥棒(けいどろ)泥棒・警察(どろけい)か議論は聞いたことがありましたが、ウチの地元は泥棒・巡査(どろじゅん)でした…全然聞かないの悲しかった…。
 だから(?)別世界の話にはぶち込んでもいいよね?

 基本原作沿いなので、はじめこのRD編は書かないつもりでした。
 しかしこれまで、オリ主の成長(最初は弱い)に焦点があり、警察学校組(最初から強い)やルフィたちの様子は書けていないため、いい機会なのかもしれません。
 また、ほんのり原作と違う?付け足される?場面もちらほら浮かんだため、書いてみることにしました。

 とはいえ原作からの引用はできるだけ避けたい訳でして、しばしば不自然に話の流れがぶっ飛ぶかもしれません。

 という訳で、うさぎの出番は更に後回しになりました。
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