海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

63 / 77
61.道化師

約束は守る(・・・・・)

 

 壁の上から首をひょっこり出した五人組に、ゾロは交渉を持ちかけた。

 

「殺されやしねェよ、おれは、強いからね」

 

 いつも通りぷるぷるしているコビーに、ルフィは笑顔で言った。

 

「んで、ケンジ、あいつ知り合いなのか?」

「多分。おいゾロ、どーしたんだ、ボロボロじゃねえか」

 

 ケンジはゾロの凶悪な雰囲気に首を傾げた。

 コビーに聞いた噂は本当なのだろうか。

 

「ァあ? ……何だお前か。とっとと縄ほどいてくれ」

「んー。お前が何したか次第かなあ」

 

 チッとゾロは舌打ちした。

 

 そして諸々あってゾロは開放され、一行はコビーと別れた。

 ケンジとじんぺーは状況を大いに楽しんだが、ゾロはそんな二人にジト目を送った。

 

「お前が全然変わってなくて、俺は安心したよ」

 

 ケンジがにこにこしながら言うと、ゾロは口をひん曲げた。

 

「何だそりゃあ」

「あっでも、ちょっと変わったかもな」

「ああ?」

「格好と人相? 何か悪そう!」

「ハァ!?」

 

 いたずらっぽく言うケンジに、ゾロはピキッと青筋を立てる。

 

「そっちのグラサンの方が、よっぽど人相悪ィだろうが」

 

 と、じんぺーを目線で指すゾロ。

 

「ぁあ? いい根性してんなてめえ」

 

 じんぺーもピキッと青筋を立てる。

 

「はいはい、ケンカしないでねー」

「あはは、お前ら仲いいな〜」

「「どこがだよ!!」」

「ほら」

「……」

 

 じんぺーとゾロは、なんだかルフィに嵌められた気がした。

 

「あっ、そうそう、その一本だけ白いのって、もしかしてくいなの刀?」

「そうだ。あいつは道場に戻ったんだが、船旅も楽しかったから刀だけでも連れてってくれ、だとよ」

「なーるほど。くいな(保護者)が帰っちゃったから、ゾロあっちこっちでやらかしてああなった訳かあ」

 

 とても納得した様子で掌に拳をぽんと落とすケンジに、ゾロはジト目を送る。

 

「さっきからケンカしてえのか、お前ら……」

「あはは、久しぶりに会えて、テンション上がってるのは本当だな」

 

 にーっと笑うケンジに、ゾロは小さくため息をついた。

 

 そして腹が減ったと言って鳥の返り討ちに遭い、恐らく食料として拉致されることになったルフィを追いかけ、一行はナミという少女とバギーというピエロ海賊に出会った。

 

「うっわ、バラバラ死体が動いてる……」

「言葉にするとホラーだが、現実はまるでギャグだな……」

 

 ケンジとじんぺーが呑気なことを言っている。

 

 檻の中のルフィ、真っ青なナミ、周囲に恐れられてはいるが負傷したゾロ、ついでに警戒されるケンジとじんぺー。

 

「おいみんな、ルフィの檻はピンピンしてる俺たちに任せろ」

「だな、頼んだ。ゾロは逃げろ」

「了解」

 

 と言った後、ゾロはバギー一味に大砲をぶちかました。

 それが煙幕にもなっている内に、じんぺーとケンジがルフィの檻を抱えて撤退する。

 

 ひとまず屋根の上に身を隠して様子を伺い、やがてひと気のない道に降り立った。

 

「おいゾロ、少し休もう。応急処置するぜ。……んー、お前用のせりふとしては、『足手まといになりたくないだろ』かな?」

「ハッ……手当て頼むわ」

「モチのローン♪」

 

 強情に鼻は鳴らしたものの、ゾロは道に転がり「あー血が足りねェ……」と言いながら、大人しくケンジの応急処置を受けた。

 が、あくまで応急処置である。

 

「コレ、ちゃんとしたお医者さんに縫ってもらいたいなあ」

「要らん。寝りゃ治る」

「んな訳ないじゃん。あー、船医もほしいねえ」

「それは間違いねェ」

 

 何て話していたら、いつの間にかルフィの檻のそばに犬が居た。

 しかしその場に座ったまま全然動かない。

 その内。

 

「死んでんのかな」

 

 どすっ

 

 なんとルフィが犬の両目に指をぶっ刺した。

 

「「ルフィーーー!?」」

 

 じんぺーとケンジが慌てて犬に駆け寄る。

 

「お前、だいじょ……うおっ、気持ちは分かるが落ち着け! 目ぇ見せろ!!」

 

 思いっきりルフィに怒りの制裁を与える犬を、じんぺーとケンジは二人がかりで引っ張りだし、目を覗き込む。

 

「ん。大丈夫、みたいだが……人間の目薬なんざ使っていいか分からん……お前、目ぇ水で洗うか?」

 

 じんぺーが水筒をほいっと見せると、犬はワンッとひとつ吠えた。

 なので蓋を開けて近づけると、上からかけようとした水を、犬は口を開けて飲んだ。

 

「あはは、お前喉乾いてたのか」

 

 楽しそうに笑い、じんぺーはそのまま犬に水を飲ませた。

 

「目は平気かよ?」

 

 聞くが当然「ワンッ」と元気な声が帰ってくるばかりで、分からない。

 

「うーん、痛そうにしてなくはあるねえ」

 

 ケンジが犬の顔を覗き込む。

 

「おいルフィ、か弱い犬の目えなんか潰すのはやめろよ?」

 

 じんぺーが肩をすくめる。

 

「おー。すまんすまん犬……」

 

 ルフィは片方手を上げて謝ったが、犬はふんっと顔を逸した。

 ルフィはぷんぷんになった。

 

 ケンジとじんぺーは苦笑した。

 ゾロはその傍らで、既に寝ていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。