「
壁の上から首をひょっこり出した五人組に、ゾロは交渉を持ちかけた。
「殺されやしねェよ、おれは、強いからね」
いつも通りぷるぷるしているコビーに、ルフィは笑顔で言った。
「んで、ケンジ、あいつ知り合いなのか?」
「多分。おいゾロ、どーしたんだ、ボロボロじゃねえか」
ケンジはゾロの凶悪な雰囲気に首を傾げた。
コビーに聞いた噂は本当なのだろうか。
「ァあ? ……何だお前か。とっとと縄ほどいてくれ」
「んー。お前が何したか次第かなあ」
チッとゾロは舌打ちした。
そして諸々あってゾロは開放され、一行はコビーと別れた。
ケンジとじんぺーは状況を大いに楽しんだが、ゾロはそんな二人にジト目を送った。
「お前が全然変わってなくて、俺は安心したよ」
ケンジがにこにこしながら言うと、ゾロは口をひん曲げた。
「何だそりゃあ」
「あっでも、ちょっと変わったかもな」
「ああ?」
「格好と人相? 何か悪そう!」
「ハァ!?」
いたずらっぽく言うケンジに、ゾロはピキッと青筋を立てる。
「そっちのグラサンの方が、よっぽど人相悪ィだろうが」
と、じんぺーを目線で指すゾロ。
「ぁあ? いい根性してんなてめえ」
じんぺーもピキッと青筋を立てる。
「はいはい、ケンカしないでねー」
「あはは、お前ら仲いいな〜」
「「どこがだよ!!」」
「ほら」
「……」
じんぺーとゾロは、なんだかルフィに嵌められた気がした。
「あっ、そうそう、その一本だけ白いのって、もしかしてくいなの刀?」
「そうだ。あいつは道場に戻ったんだが、船旅も楽しかったから刀だけでも連れてってくれ、だとよ」
「なーるほど。
とても納得した様子で掌に拳をぽんと落とすケンジに、ゾロはジト目を送る。
「さっきからケンカしてえのか、お前ら……」
「あはは、久しぶりに会えて、テンション上がってるのは本当だな」
にーっと笑うケンジに、ゾロは小さくため息をついた。
そして腹が減ったと言って鳥の返り討ちに遭い、恐らく食料として拉致されることになったルフィを追いかけ、一行はナミという少女とバギーというピエロ海賊に出会った。
「うっわ、バラバラ死体が動いてる……」
「言葉にするとホラーだが、現実はまるでギャグだな……」
ケンジとじんぺーが呑気なことを言っている。
檻の中のルフィ、真っ青なナミ、周囲に恐れられてはいるが負傷したゾロ、ついでに警戒されるケンジとじんぺー。
「おいみんな、ルフィの檻はピンピンしてる俺たちに任せろ」
「だな、頼んだ。ゾロは逃げろ」
「了解」
と言った後、ゾロはバギー一味に大砲をぶちかました。
それが煙幕にもなっている内に、じんぺーとケンジがルフィの檻を抱えて撤退する。
ひとまず屋根の上に身を隠して様子を伺い、やがてひと気のない道に降り立った。
「おいゾロ、少し休もう。応急処置するぜ。……んー、お前用のせりふとしては、『足手まといになりたくないだろ』かな?」
「ハッ……手当て頼むわ」
「モチのローン♪」
強情に鼻は鳴らしたものの、ゾロは道に転がり「あー血が足りねェ……」と言いながら、大人しくケンジの応急処置を受けた。
が、あくまで応急処置である。
「コレ、ちゃんとしたお医者さんに縫ってもらいたいなあ」
「要らん。寝りゃ治る」
「んな訳ないじゃん。あー、船医もほしいねえ」
「それは間違いねェ」
何て話していたら、いつの間にかルフィの檻のそばに犬が居た。
しかしその場に座ったまま全然動かない。
その内。
「死んでんのかな」
どすっ
なんとルフィが犬の両目に指をぶっ刺した。
「「ルフィーーー!?」」
じんぺーとケンジが慌てて犬に駆け寄る。
「お前、だいじょ……うおっ、気持ちは分かるが落ち着け! 目ぇ見せろ!!」
思いっきりルフィに怒りの制裁を与える犬を、じんぺーとケンジは二人がかりで引っ張りだし、目を覗き込む。
「ん。大丈夫、みたいだが……人間の目薬なんざ使っていいか分からん……お前、目ぇ水で洗うか?」
じんぺーが水筒をほいっと見せると、犬はワンッとひとつ吠えた。
なので蓋を開けて近づけると、上からかけようとした水を、犬は口を開けて飲んだ。
「あはは、お前喉乾いてたのか」
楽しそうに笑い、じんぺーはそのまま犬に水を飲ませた。
「目は平気かよ?」
聞くが当然「ワンッ」と元気な声が帰ってくるばかりで、分からない。
「うーん、痛そうにしてなくはあるねえ」
ケンジが犬の顔を覗き込む。
「おいルフィ、か弱い犬の目えなんか潰すのはやめろよ?」
じんぺーが肩をすくめる。
「おー。すまんすまん犬……」
ルフィは片方手を上げて謝ったが、犬はふんっと顔を逸した。
ルフィはぷんぷんになった。
ケンジとじんぺーは苦笑した。
ゾロはその傍らで、既に寝ていた。