海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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63.明かされぬもの

 子分のたまねぎから「怪しい奴らがいたんです」との報告を受けたキャプテン・ウソップは、たまねぎ含む子分たち三人を引き連れて偵察に向かった。

 

 港でもない場所に停泊する正体不明の小さな船。

 それに乗って来たらしいのは、ウソップと同年代と思しき五人の少年少女だった。

 彼らの一般人然とした様相に、ウソップは毒気を抜かれる。

 

「怪しいかあ? ただの旅行者じゃねェか?」

「でも、こんな所からこっそり上陸してるんですよ?」

「うーん。知らねェ島で港の場所分からなかった、とかかもしれねェだろ?」

 

 しかし。

 

「ところで、さっきから気になってたんだが……あいつら何だ」

 

 緑髪の男に気付かれてしまった。彼らは木の陰に隠れて様子を伺っていたというのに。

 一般通過旅行者が、気配察知などできるものだろうか。

 

 よく見れば、腰に刀を三本も差している。

 

「うわああああ見つかったあああ!!!」

「お、おいお前ら! 逃げるな!!」

 

 キャプテンだけを置き去りに、子分三人は一目散に逃げて行った。

 ウソップは小さく溜め息をつく。

 

「で、お前は何だ」

 

 再びそう問うてきた男の吊り目は、妙に恐ろしく見えた。ウソップはせめて、牽制だけはしておくことにした。

 

「おれはこの村に君臨する大海賊団(・・・・)を率いるウソップ!!!」

 

 腕を組み、大音声でハッタリをキめる。

 

「人々はおれを称え、さらに称え、〝我が船長〟キャプテン・ウソップと呼ぶ!!」

 

 それは嘘だと早々にバレたが、話す内に意気投合と相成った。

 

「けど何で逃げなかったの? あんな嘘までついて」

「嘘、嘘、ってさっきからお前よォ」

 

 ナミに言われてウソップは口をひん曲げた。

 

「何よ、嘘は嘘でしょ。ともかく、わたしたちが本当に悪い海賊だったら、あんた弱そうだし、殺されてたわよ」

「おめェハナ()からツメ()まで悪意しかねェな?」

「わたしはあんたみたいな長い鼻してないわ(確信犯)」

「おれの鼻は関係ねェ。……はは、もし悪い海賊だったら、か。……それが逃げる理由になるのか?」

「!」

 

 ナミは目を丸くした。

 

「お前らだって、この海にいるんなら知ってんだろ? 去年、躍起になって戦力増強してたらしき海軍支部が、たった一隻のガレオン船に潰された。あの特殊階級持ちの若ェ将校ですら殉職しちまった。……これからだったろうによ」

 

 ルフィたち四人が内心でぴくりと反応する。

 ナミは別の意味で少しだけ眉間にシワを寄せた。

 

「立て直しには時間がかかるって話で、海賊その他無法者どもが、デカイ脅威がひとつ減ったってテンション爆上げしてやがる。そいつらが明日にも襲ってくるかもしれねェ。平和ボケしてたらあっと言う間に挽き潰される」

 

 ウソップは小さく息をついた。

 

「だからおれは逃げねェ。つか、誰だってそうだろ」

 

 真剣な顔で毅然と言うウソップを、ナミはじっと見つめる。

 そしてふっと笑った。

 

「弱いくせに」

「うるせェ。お前こそ強そうにはとても見えねェが?」

「失礼ね? わたしはこの海で何年も一人でやってきたのよ。ナメないで」

「はあ? それこそ嘘だろ」

「何ですって?」

 

 ナミはジト目を送りながらぷうと膨れた。

 

「お前ら仲いいな〜」

 

 ルフィが機嫌良さげににししと笑う。

 

「どこがよ!」「どこがだ!」

 

 ほぼ異口同音の二人にルフィは「ほら」とますます笑う。

 ナミとウソップはお互いジトリと睨み合った。

 つい最近同じ目にあったゾロとじんぺーは、顔を見合わせて肩をすくめ、苦笑した。

 

 そして何やかんやで、島を本当に襲う気満々の海賊団が現れる。

 

「あのさ、気のせいかしら」

 

 村へと続く一本道で待ち構えていると、ナミが聞き耳を立てた様子で言う。

 どうやら彼らは場所を見誤ったらしかった。本当の現場へと、一斉に走り始める。

 

 しかし。

 油で滑ったナミが、ゾロを身代わりに踏んづけて行った。

 

「うっわマジかナミちゃん、シビれる〜……」

 

 そう言って笑いながら、ケンジは油の上に星の砂を敷き詰めて固め、足場を作る。

 

「…………ありがとよ。ったくあの女……」

「あれっ皆もういないんだけど!? 薄情!?」

「チッ……ここから北だろ、とっとと行くぞ」

「ちょっ、ゾロそっち南西!!」

「……」

 

 言葉を失い何とも言えない表情になったゾロは、大人しくケンジの後に続いた。

 一番に走り出したはずのルフィは、何故か社長(せんちょう)出勤になる。

 

 既にひと悶着起きていたらしく、じんぺーがナミとウソップに「退がってな」と笑っていた。

 彼が突っ込んで行った先、わらわらと駆け上る人だかりに、ケンジはシモツキ村でのとある一件を思い出し、ふふっと苦笑する。

 

「なあゾロ、なんかあの時のアンデッドの群れみたいじゃねえ?」

 

 カチリとゾロはくいなの刀を歯で握る。

 

「……そんなこともあったな」

 

 三刀流で話す様子を見るたび、どうやって話してるんだろうと、ケンジの内心にハテナがひょこひょこ浮かんでは消える。

 

「そういやケンジ、もう刀は握らねェのか?」

 

 敵陣に向かって走りながらゾロが問う。ケンジも後を追うようにして走る。

 

「んー、アテもないしな」

 

 かつてガープに貰ったモノは、綺麗に手入れして村に置いてきた。

 彼の意思と真逆の海賊になるなら、持って行けない気もしたからだ。

 

 そして、平和なフーシャ村には武具屋などない。

 

 ひゅんっとケンジが手を振り抜くと、現れたのは白い刀──だろうか? 言わずもがな星の砂製だ。

 

「外見だけは似せられるかもしれないけど、ただの棒にしかならねえ。さすがに『刃』を作るのは無理な気がする」

 

 ケンジが白い刀を解いたため、さらりと星の砂が散っていく。

 

 話している内に、接敵。

 ゾロがばっさばっさと斬り捨て、ケンジが体術と星の砂の雨で次々に昏倒させていく。

 

「ソレで刀造れたら武器屋が食いっぱぐれるな」

「はは、そうかなぁ?」

 

 ケンジは苦笑しながら、頭上で星の砂の塊を作った。

 

「ルリちゃんなら、棒でも斬っちまうだろうけど」

 

 少しだけゾロがぴくりと止まったような気がした。

 そしてフッと笑う。

 

「やっぱあいつイカレてんな」

「あはは」

 

 雑談しながら往なされて相手が怒り始めていたが、彼らはどこ吹く風だった。

 

 少し向こうで既にじんぺーが暴れているのだ。ケンジがヒュウと口笛を吹く。

 

「さっすがじんぺーちゃん。負けてらんねえよなあ」

「あいつはちょっと早く飛び出しただけだろ」

 

 ふふっとケンジは笑った。

 

「ゾロがコケてたせいでな?」

「あぁ?」

 

 青筋を立てたゾロの悪ノリと苛立ちは、クロネコ海賊団に向けられた。







御守り(アクセ)
【挿絵表示】
 彼らにアクセなんて解釈違いってかたは画像見ないで下さい。元は巾着に宝石だけ入れて持ち歩いてる設定でした。突発的に原作と違う要素を入れてみたくなっただけです。
 成長した顔まだ出せてないから載せときたかったのもあります。自己満足です。
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