ゾロは様子を覗うことにした。
四年ぶりに再会した、刀を持たないケンジ。
得体の知れないじんぺー。
二人が実力者であることは薄々感じ取っていた。しかし何を思ってか、二人は一歩引いた所から一味を見守っているように見えた。
そのため手の内が測れない。
だからこその、お手並み拝見。
珍しく自ら前に出ていった二人を、ゾロは少し引いて雑魚共*1を斬り飛ばしながら、気取られぬようにして探っていた。
「温まってんなあ、じんぺーちゃん?」
「あ?」
ハート型サングラスなんていう、テンションの高いアイテムを掛けた男を、じんぺーは集中的に狙っていた。
「ウソップ差し置いて独りで特攻する、なんてさ」
ウソップは怪我を負ってはいたが、これは彼の戦いだ。余所者が前のめりになるのは、色んな意味で危うい。
「イカしたグラサンに嫉妬でもした?」
じんぺーにハートサングラスは似合いそうにない。
じんぺーは小さく舌打ちした。
「バァーカ」
じんぺーは横から襲い掛かってきた名も無き敵の、横っ面を殴り飛ばした。歯が飛び血が舞う。
「あいつに前衛は向いてねえ。適材適所だ」
「なるほど〜?」
ケンジはちらりとだけウソップの方を伺う。彼の手にはパチンコが握られていた。
心許ない気がしなくもなかったが、この世界のことである。侮れたものではない。
「おい、楽しくお喋りするな! ナメてんのか!?」
ハートサングラスの男──1・2のジャンゴが怒鳴る。
じんぺーは拳を交えながらニイッと笑った。
「ハッ、そんな腫れた顔で何言ってんだ。俺に一撃も入れられてねー癖によ」
「うるせェ! てかお前ッ、何でチャクラムと殴り合える!?」
ジャンゴが仲間の只中まで押し戻された原因だった。
「グローブが特別製なんだよ」
その実彼の黒い指貫きグローブは、見た目通りの量産品。
──違う、とゾロは思った。
彼はあの頃、見えないものをルリに散々斬らされた。
そのせいか目に見えずとも、じんぺーの拳の周囲に妙な力の流れを感じる。
「んな訳あるか! いや……薄いメリケンサックでも仕込んでんのか……!?」
「……まあ、似たようなもんか」
彼は拳全体でなく、グローブに隠れた部分──ちょうどメリケンサックを装備しそうなあたり──にだけ、器用に武装色の覇気をまとっている。
「クソ! お前らみたいな呑気なお子様は、まだまだおねんねの時間だろうが!」
日は、昇ったばかり。
「……ハァ?」
今はこちらに圧倒されているような相手が、
じんぺーは何か手があるのだろうと、一応警戒しながらも、変わらず殴り続ける。
「くそ! やめろ、やーめろって、ストップ!」
「敵に止まれなんて言われて、聞くやつがどこに居る」
そんな時である。
ズドドドド!
雑魚共が悲鳴を上げながら吹き飛んできた。
すり抜けた者たちの全ては、ゾロが堰き止めていた訳だが──。
「ウソップこの野郎!!! 北ってどっちかちゃんと言っとけェ!!!」
ルフィの到着だった。
「遅ェぞ船長」
言いながらもゾロは隣で不敵に笑っている。
「すまん!」
素直に謝るルフィだった。
「いや、ゾロも最初南西に突っ走っただろ?」
クスクス笑うケンジ。
ゾロは口をひん曲げた。
「さあて、我らが船長のお出ましだ。親玉は譲るぜ」
「なっ!?」
じんぺーの言にジャンゴは青筋を浮かべる。
「おれはお前にムカついてんだ! 逃がすかよ!」
「へえ?」
じんぺーはにやりと笑う。
「やたら目立つとは思ったが、やっぱ親玉はお前か」
じんぺーは本当の首謀者が誰かを聞いている。
そいつの周到っぷりから、この場の統率者が敵前に姿を現しているのか、一応怪しんでいた。しかしジャンゴのこの、思わずの発言は彼がそうである信憑性を上げる。
「さっさと潰さねえとな?」
ニヤリと笑って、自身の拳と拳を打ち付ける。
そのまま彼は一歩弾んで間合いを取ると、そこから助走代わりに宙へと跳んだ。
ただし、相手は覇気を使っている様子のない人間たちだから、自身も覇気は使わない。
「
降下しながら、勢いを乗せて、力強く、声を張る。
「
「ぎゃああああ!!?」
ジャンゴを含め敵たちが、悲鳴を上げて吹き飛んでいく。
「ルフィのパンチはこんなもんじゃねえからな」
薄く砂煙が舞う中、じんぺーはニヤリと笑う。
それは嘘でも冗談でも謙遜でもなかった。
覇気なしではルフィと彼らは拮抗する。五分五分だった。
悪魔の実の能力の有無や、この時期の一歳差はかなり大きい、というのもありはするだろう。
しかし前世生きた数十年分の経験等、という大きなアドバンテージが、ルフィの前ではしばしば薄れて感じられる。
だから彼らのルフィへの信頼は、その身体能力にもきちんと向けられていた。
(……覇気を皆に伝えるかは──どうしても慎重になる)
彼らは自分たちで覇気の存在に気付いてしまった。
同時に、日常には過剰だとも感じた。
加えて、これに頼ると素の身体能力を伸ばす邪魔になるとも。
(シャンクスやガープさんが子供たちに教えなかったのも、何か理由があるはずだ)
更には、ルリが「
つまり、人目に付けばじんぺーたちのように、自ら気付く者も出てくるかもしれない、ということだ。
──吹き飛んだ先で、巻き込まれなかった者たちが尻込みして硬直する中、ジャンゴが鈍く震えながら懸命に立ち上がる。
「クソッ! ナメやがって!!」
彼は紐をつまんでチャクラムを垂らした。
「さァ、この輪をじっと見ろ……!!」
ジャンゴは周囲の仲間に呼びかける。
「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは強くなる」
そして──
「うおああああ────っ!!!!」
「お前も催眠にかかってんのかァ!!!!」
そのゾロのツッコミは、敵味方問わずこの場の誰もが絶叫したいものだった。
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なかなかイメージに合う漢字が見当たりません。
もしいつの間にか変わってたら、ひっそり許してあげて下さい(コラ)。