本当に歩き去ったルフィに、ノジコは苦笑した。
「……悪いね。ルフィちゃんは、こういうの本人の口からしか聞かねぇんだ」
ケンジが苦笑しながら言う。
本人が自ら進んで明かすこと以外を、ルフィは聞こうとしない。それはもう、強情なほどに。
「恩人たちからの影響みたいなものだからね、確かだよ」
シャンクスはエレジアでの『冒険』について口を閉ざした。
大人には隠すべきことくらいあると、ベックマンに言われて、それを受け入れたのだろう。ルフィは「もう聞かねェ」と絶交をやめていた。
そしてノジコの話を聞いて、じっとケンジを見てきたじんぺーに、ケンジはコクリと頷いた。
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「知ってるか? お前らをぶっ潰そうと、入念に準備を重ねてた奴らのことをよ」
バキバキ、とじんぺーが指を鳴らす。
「は?」
「海軍
じんぺーは真顔で淡々と言う。
アーロン一味は、ひとつ間を置いて、どっと笑いだした。
「そりゃ、どっかの腰抜けどものことか? 噂はあったらしいがいっこうに攻めて来ねェもんでよ、存在も忘れてたが、知らねェ間に勝手に潰れてたんだろ?」
ケタケタと笑う魚人たち。
はん、と珍しくケンジが鼻を鳴らした。
「彼らが過ぎるくらい慎重になってたのは、初手でアッサリ軍艦沈められて、お前らが
「ハァ? 見苦しい言い訳だな」
「そんなちゃちなもんじゃねぇ。彼らは過去と同じ轍を踏む気はなかったんだ。実際お前ら、さっき軍艦軽く沈めただろ」
ケンジの反論に、しかしアーロンは鼻で笑うだけだった。
じんぺーがひたりとアーロンの目を見詰め、徐に口を開く。
「
魚人たちの顔色が硬いものに変わる。
「七武海の、ジンベエとかいうのとの繋がりはそこだった訳だ。お前らは過去そこに所属してた内、対人間に限り、『不殺』を否定した過激派なんだろ。……この海でそんなもんを本気で相手取ろうってんだ、時間をかけて当然だろう」
これには、アーロン一味に虐げられてきた人間たちも呆然とした。
中には、どうせ見捨てられたのだと、単なるポーズだと、怖気づいた言い訳だと、そう思っていた人間も少なくなかったからだ。
「つまり、そんな所から来たお前らがこの島でやってんのは、八つ当たりか、もっと言えば──」
「ただの、弱い者虐めだ」
ケンジの言を継いだじんぺーが、威嚇するように拳と拳を打ち付ける。
魚人たちは、一斉にビキィ、と青筋をたてた。
「人間どもに何が分かる!!!」
誰とも分からない声が飛んで来る。
「分からねぇよ」
バッサリとじんぺーが言い捨てて、魚人たちは逆に拍子抜けを食らう。
「何せ『人間風情』の発行する新聞に魚人が載るのは、悪行働いた時くらいだ。俺たちが、魚人は種族ごと人間の敵だと受け取っちまってた程にはな」
「けど、そうじゃないのを教えてもらったよ。特に
フン、とアーロンは鼻を鳴らした。
「おれたちはあんな腑抜けどもとは違う」
「どっちが腑抜けかな?」
「アァ!?」
ケンジの言に、アーロンは青筋を増やした。
「ケケケケケンジの兄貴ィ……あんな煽って大丈夫か……!!?」
ジョニーはオロオロした。ヨサクは神妙な顔で彼の肩にぽんと掌を載せる。あの人たちは止まる訳がない。
「……先に虐げ始めたのは、人間の方だとも聞いてる」
「……」
じんぺーの言に、アーロンは片眉を跳ね上げ、目つきがより凶暴なものになった。
「けどだからって、人間の、何も知りもしない、力もない一般人を、虐げていい理由にはならねぇ」
そう言ったケンジの目も、凶悪な光をみせていた。
魚人たちの幾人かが気圧された程には。
「それが俺たちの言い分だ。他の皆もそれぞれ何かある。だから──」
「俺たちは、お前らをぶっ潰す」
ケンジはポケットに手を両方突っ込んだまま、少し首を反らせて見下すように睨みつけた。
「て訳で、今日ここには
じんぺーは逆に、少し顎を引いて下から睨み上げる。
彼らの所持する宝石が、キラリと光ったように見えた。
「海賊が何故そう海軍の肩を持つ!!!!」
アーロンが叫ぶ。
「海賊だろうが海軍だろうが知るか。目的が同じってだけだ」
じんぺーが鼻を鳴らす。
「他人事だろうが! 偽善者が!」
アーロンが吼える。
「それが、完全な他人ごとでもないんだよねえ。なんで俺たちがこう、色々情報持ってると思う?」
ケンジが冷えたままの目で笑う。
「名前聞いたことくらいあんだろ、海軍幕僚長、
じんぺーが淡々と名を挙げる。
「俺たちの、幼馴染だ」
ドン、とケンジがそう締めた。
「「!!!!!?」」
次々に口にされたセリフに、周囲の多くが驚愕で固まる。
一瞬の間の後、アーロンがまた鼻で笑う。
「死んだ奴のことなんぞ、何とでも言えるだろうよ」
今度は麦わらの一味の内、四人が青筋を立てた。
「「死んでねェよ」」
アーロンは、鼻で笑う。
「お子様が夢見てんじゃねェ」
ざり、とほぼ同時に彼らの足裏が地を擦った。それぞれで構えを取っている。
「フン、言っとけ。けど、ここルリが言ってた島だったのかあ。こりゃますます退けねぇなあ」
そう言いながら、バキバキとルフィは指を鳴らした。
たまにルリとの会話に出ていたのは、第14支部の第一目標だったからだ。
「何だよ、どいつもこいつもそういう繋がりか? ちょっと疎外感あるぜ」
サンジが苦笑いしながらも、一緒に構えを取った。
「おれは違うぞ。てか、言えよ。たまに話題に上がってただろ」
ウソップが壁の向こうでぶんぶんと掌を振っている。
「別に普通だろ? おれたちが前から知り合いなのは、特別でもなんでもねェし」
ルフィがケロリと言う。
「おれは別でたまたま繋がっちまっただけだ。まあ、そのうちお前らも会うんじゃねェか? 誤差だろ」
ゾロはカチリと白い刀を歯で握る。
はは、とサンジは笑った。
「楽しみにしておくわ」
「うん。あいつ女だしな」
ルフィにとってサンジは、既に『女好き』のイメージらしい。
幼馴染たち以外は固まっていた。やはり新聞の写真だけでは分からないものらしい。
「……マジ?」
サンジがそうこぼしたのとほぼ同時に、周囲がザワザワする。
「個人情報勝手に漏洩すんな」
ルフィの頭にポカリと軽くじんぺーの拳骨が降るが、ゴムなため当然物ともしない。
「はぁー……新聞じゃ代名詞は階級ばっかだったしな……あと、写真、下手くそすぎんだろ」
サンジのげっそりした様子に、四人は肩をすくめる等の反応を見せる。
恐らく彼は直接会った人間に関してなら、“レディ”かどうかを間違えたりしないだろう。
「さーて、休憩のお喋りはここまでだ」
ルフィがニイッと笑う。
「ぶっ潰すぞ」
「おう」
ルフィは足を踏み出し、助走に入り、腕を伸ばして勢いを貯め──
「ゴムゴムの──」
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「ったく、さぁあ〰〰〰〰!? ほんっと、早いとこ船医見付けないとなあぁあ!?」
ベチィンといい音がする。
「痛っっってええ!!!? ケンジてめェ、おれは怪我人だぞ!!!?」
「だからだよ!!!」
「サディストかなんかかてめェは!!? どっか行け!!!」
「バカなの!!? お前たまにド天然だよな!!!?」
「あはは、仲いいなーお前ら」
「「ハアァ!?」」
「にしし」
「……大体、ケンジだって怪我してんじゃねェか」
「俺のは掠り傷だよ!!!」
「はいはい、うるさいわよ」
ごん、とゾロとケンジの頭に、ナミの拳骨が落とされる。
二人はその姿勢のまま声も上げられず懸命に耐えた。
「……なあおれ、実はナミが最強じゃねェかと思ってるんだ」
「当たり前だろ♡ ナミさんはあんなに可愛くて美しいんだから♡♡♡」
「……お前のダイヤ並のメンタル分けてくれねェか。変態部分はちゃんと返すからよ」
「アァ?」
宴を経て、ナミを改めて船に迎え、一味は
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手配書を手に、新聞記事をじっくりと読む。
「……麦わらのルフィ、か」
やがて彼は席を立ち、屋外へと歩み出た。
「てめえら!!! 船を出すぞ!!!」
「「ハッ!!!」」
彼らは我先にと船に乗り込んだ。
目標の進路は、恐らく──。
✦
原作ではやべードラテクかましてる時にやべー目をしておられます。
怒らせたら警察学校組の中で一番怖いのでは、という妄想です。
✦ネズミ大佐
ちゃんといて原作通りの有様です。
✦コノミ諸島の管轄?
ネズミ大佐が十六支部所属、そしてプリンプリン准将が七十七支部から来ていて、キッチリ定まってないんじゃないかなあという想定です。
ナミが八年前に沈んだのを見た五隻の所属は不明ですが、事態が特殊ですし当時東の海総出くらいになっててもおかしくなさそうだなあと。以来迂闊につつけない&管轄確定させないまま、とかじゃないかなあとかぼんやり思っています。そこから14支部のお話へ。
原作通りな部分を削ってると、どうにもルフィたちの活躍が抜けますね…。
どうしたものでしょう。
し、省略されてる部分できちんと大活躍なんです、難しい…。