海上のカンパニュラ   作:千里亭希遊

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73.蒼炎???

おれの仲間に、手を出すなァアア!!!

 

 一瞬、音が消えたような気がした。

 

 そしていつの間にか戻ってきたそれは、自らの周囲でバリバリと鳴っていた。

 黒いものが放電か何かのようにエースを取り巻いている。

 黒い光? 黒は光を吸収するらしいのに?

 黒い──黒い、稲妻。これは、一体何なのだろう。

 

「エース!?」

 

 デュースが呼んでいる。

 

「……エー、ス」

 

 イスカの声がする。

 

 ──ああ、そうだ。

 

 エースの纏う炎がゴウッと渦巻いた。

 

炎戒(えんかい)──火柱(ひばしら)!!!!

 

「ぎゃぁあぁああ……」

 

 蛇が鎌首をもたげて一気に獲物に飛びかかるように、グワっとうねった炎が、相手を飲み込んで吹き上がる。

 その炎にも、あの黒い放電光が絡み付いていた。

 

 敵はもう、眼前には一人もいなかった。

 炎も黒い稲妻も消えていた。

 

 少しぼーっとする。

 

 額から垂れてきたものが地に落ちて小さく赤い点を描く。

 思えばそれ以外にもあちこち滲んでいた。掠り傷だが。

 

「ゼハハハハハハ!!! さすがうちの隊長だ!!! やっぱ持ってたんだな!」

 

 聞き慣れた笑い声がした。

 

 振り返ると、これまたいくつか傷をこさえているティーチが、大笑いを続けている。

 

「……一体何の話だ? ティーチ」

「ああ? 何ってお前、さっき黒い稲妻纏ってただろ?」

 

 ティーチはすぱっと笑うのをやめてきょとんとした。

 

「覇王色の覇気じゃねェか、とうとう奥の手出してきやがって」

 

 そう言ってまたティーチは心底楽しそうに笑った。

 

-----------------------------------

 

「最近、リンリンのとこは景気がいいな」

 

 白ひげは新聞を読みながら言った。

 

「四将星の一人がナワバリを渡り歩いてる。お陰で奴自身だけじゃなく、手下の賞金までじわじわ上がってやがる」

「シマで何かあったのかねえ」

 

 マルコは首を傾げた。

 

「さぁなぁ。その辺は記事にねェ」

「ナワバリ以外で寄られる島は災難だろうなあ。土地広げようとでもしてんのかね」

 

 サッチも首を傾げていると、二番隊隊長、エースが帰って来たようだった。

 

「ご苦労だったな、エース。それで、どうだった」

「……奴隷売買に有害薬物……ろくなもんじゃなかった」

 

 無事の帰還にも関わらず表情が暗かったのはそういうことか、と周りは納得した。

 

 ナワバリの中に不穏な流れのある島があった。

 だから実績のあるエースたち二番隊に仕事が回った。

 

 エースが親子盃を受ける直前、彼という人間を量るように任せられた島。状況は、盃を蔑ろにした酷いものだった。

 島をシノギに暴走していたその海賊一家が、白ひげに詫びを入れて廃業したことで一応のカタがついた。

 しかし今回は。

 

「町長をふん捕まえてきた」

 

 雑に後ろに背負っていた荷物(・・)を、エースはバンと床に投げた。

 

 海賊でも何でもない。島を治めるのは一般人(カタギ)のはずだった。それが白ひげ海賊団の旗を笠に着て、やってはならないことをした。

 エースはオヤジに会わせなければ解決しないだろう、と連行した。

 

「グルだったらしき奴らは、船の檻に詰め込んである」

「残念ながら黒だったって訳だ……後で島に寄らねェとな」

 

 突然町長が連れて行かれて、島は混乱していることだろう。

 

 白ひげに見下ろされて、町の長だった者は震え上がった。

 猿ぐつわの中で醜く呻いている。

 

「さぁて、町長サンよ……てめェの島は、羊にとって天国だってんで、毛織物だの羊の乳製品だの、いい品がたくさんあった。おれたちも気に入ってんだ」

 

 その島の衣料品を愛用している者もいた。

 日持ちのする発酵製品なども、航海の友に良い。

 

「だが最近、災害等々も起こってねェのに、それらの物流が急激に落ち込んだ。だってのに、町営に関わる奴らは羽振りがよくなった。いくらなんでも怪しいじゃねェか」

 

 縛られ転がされている町長は、ますます青ざめる。

 たかがナワバリの一つにそこまで目を光らせているとは、思っていなかったようだ。

 

 しかし白ひげ海賊団のナワバリでは、上納の金や品は要求されずとも、白ひげの信念に添った絶対の掟が敷かれる。

 それなのに何も関知せず放置する訳がない。

 

「ウチの息子が調べてみりゃあ、結果こうだ。シメシはつけねェとなァ」

 

 町長は猿ぐつわの下で必死に呻いた。

 

 確実に奴隷商や密売人と繋がっているだろうが、そのあたりをふん捕まえたところでこちとら海賊。

 見せしめ等を施してそこらへんに放置し、それを治安組織に拾わせる流れがそこそこ簡単なのかもしれない。

 

「……連れてけェ」

「うっす」

 

 誰もしたくもない作業が始まる。

 任される奴らには何で発散させてやろうかと、白ひげは思考を巡らす。

 

「ったく……あっちの島もイカレてねェといいが、な」

 

 マルコが顔をしかめた。

 

 他の隊に調査を任せた島への疑いも、深まってしまうというもの。

 

「何か、嫌な空気だなあ……ビッグ・マムのとこもこんな感じなのかもしれねェな」

 

 サッチが顔をしかめる。

 

「おいおい兄弟、辛気臭ェ顔すんなって。良い知らせだってあるんだぜェ?」

 

 ティーチが一人明るい声をあげて、皆の視線が集まる。

 彼が上機嫌でバシバシとエースの背中を叩いて、エースは「おい、やめろよ」と抜け出した。

 

「あのクズの雇ったチンピラの集団が、横から押し寄せて来たんだけどよォ、そしたら」

 

 フンっとティーチは少し自慢げだった。

 エースがその様子に口をへの字気味に曲げる。

 

「我らが二番隊隊長が、覇王色の覇気まとった炎で、まとめてぶっ飛ばしたんだぜェ? あれは爽快だった!」

 

 ゼハハと彼は、豊かな腹を叩きながら笑う。

 

「……ほう」

 

 白ひげ始めその場にいた者たちの空気が変わる。

 

「……意識的にやった訳じゃねェ」

 

 拗ねているのか照れているのかよく分からない表情で、エースは視線を下げ気味に彷徨わせていた。

 

 フッと白ひげは笑った。

 

「……覇気は、自分がそれを使えると認識してこそ磨かれる。まあ、覇王色は鍛錬なんぞ関係ねェらしいが」

 

 エースは白ひげと視線を合わせた。

 

「エースてめェ、強くなりてェとばかり言ってやがるが……目指すものは何だ」

 

 エースはじっと白ひげの目を見つめたまま、少し沈黙する。

 

「……おれは、仲間を守れる男になりてェ」

「それで?」

「…………名を上げてェ。誰よりも有名になる」

「もうなってるだろ。最強ルーキーなんて呼ばれた頃に、七武海蹴るなんて目立つことしやがったんだ」

「っ、それだけじゃ足りねェ、おれは……おれは」

 

 ぐっ、とエースは拳を握った。

 

「おれは、オヤジを海賊王にしてェ!!!!」

 

 白ひげがキョトリと目を丸くする。

 同様の反応を見せる者、ざわざわし始める者。

 

「グララララララ!! 他人のことばかりじゃねェか! 特に最後は余計なお世話だ」

 

 仲間に、他人の目が必要な『名声』と、オヤジ。

 

 しかし白ひげは海賊王にあまり興味がないらしい。

 

「……エース。てめェの青い炎は見つかったか?」

「!!!」

 

 今度はエースが目を丸くした。

 

『青い程高温の炎なんざ、この星すら壊すモンだ。あの太陽より熱いんだからな』

 

 過去、酒の肴に夜空を見上げながら、白ひげは言った。

 

『あの中の青いやつが、その熱さで燃えてんのさ。だが、この星の上じゃそれは、諸刃の剣だ』

 

 それを聞いて、エースは気落ちしたものだった。

 しかし。

 

『だが悪魔の実に関しては何もかもが未知数だ。てめェが「強い炎は青い」って信じてるんなら、てめェで何か掴んだ時には青くなるかもしれねェ。温度なぞ関係ねェ。……だが、偉大なる航路(この海)で実物を探してみるのも、面白ェかもしれねェな』

 

 そして、旅する中で、理由が温度ではないらしき炎はいくつか目にした。

 

 彼の中で『強い炎は青い』というイメージが強いのは自認するところだった。

 

 死んでしまったサボや、左目に消えない傷を負ったルリや、大事な弟であるルフィ、島の幼馴染たち、スペード海賊団時代から一緒の仲間、オヤジである白ひげと、他の兄弟たち。

 もっと言えば、命懸けでエースを守り産んでくれた母親。

 

 守りたいもの、守りたかったもの。

 

 もう失うのは嫌だ。

 だから強くなりたい。

 だから自分に足りないものを、しらみ潰しに探してきた。

 いつも引っ掛かるのは、自分の火が青くないこと。

 だから、まだ、強くなれるはずなのだ。

 

 ……覇気が、意識することで磨かれるというのなら。

 青い炎も、イメージ次第だというのなら。

 

「オヤジ、おれはまだまだ、強くなれるらしい」

 

 エースはニヤリと笑った。

 

「おれは、おれのやりたい事を全部やるために、強くなりてェ」

 

 白ひげも、周りの仲間たちも、ニヤリと似たように笑った。

 

-----------------------------------

 

「見てくれオヤジ!! これ、おれの弟なんだ!!」

 

 そう言ってルフィの手配書を示すエースは、誇らしげに笑っていた。

 

 そこに他の兄弟たちもやってきて、ルフィの『可愛い弟(・・・・)』っぷりを根掘り葉掘り聞き出す。

 

「アッハッハッハ! 何だそりゃあ、随分不器用な奴だな!」

「と思うだろ? でも結局最後にはうまくいくんだぜ。すげェだろ」

「それは、弟がすごいのか……?」

「ああそうさ。そういう奴が集まるんだ」

「成程???」

 

 そんなふうに盛り上がっている横で、ついでとばかりにマルコが、ぺらぺらと他の手配書と新聞記事を眺めていた。

 

「あぁ、コイツまた懸賞金上がったよい」

「ん? どうしたマルコ」

 

 マルコの呟きにサッチが歩み寄った。

 

「この……何か、雰囲気が怖ェ奴だよい」

「怖ェ?」

 

 一番隊隊長が怖がるとは一体どんな奴かと、サッチは手配書をのぞき込んだ。

 

「んっ」

 

 サッチは引いた。

 マルコが『怖い』と言った意味が分かった気がした。

 しかし強そうだとかそういった方向にではない。

 

「子供に見えるが……何だこの目。呪われそうだぜ」

 

 周りの全てを見下すような笑み。

 少し舌を押し出すようにしている口元に当てられた五本の指は、いかにも高笑いが聞こえてきそうな様だった。

 サッチが『呪われそう』と言った目は赤く、同心円状に影が差して見える。

 

「たしかこの前はヴェールで完全に顔が隠れてたんだがよい……決定的瞬間かよい」

 

 言われてみれば、ヴェールらしき布がめくれた一瞬であるようだった。

 懸けられた額は、88,000,000

 

「顔はまあ怖ェが、こんな子供(ガキ)が一体何したってんだ?」

「さァ」

「は?」

 

 サッチはぽかんとした。

 

「まさか、顔が怖ェだけで?」

「ンな訳あるかよい。こいつ自身が具体的に何やったかは分からんがよい、一緒にいる奴のせいかもしれんよい」

「誰だ?」

「ビッグ・マムんとこの、ナワバリあちこちうろついてる四将星だよい」

「……成程。景気いいな、ほんと」

 

 以前話していた、懸賞金がつり上がっている手下の一人らしい。

 

「てことは、ビッグ・マムの子供かねェ。まだまだ世に出てねェチビはいっぱいいるって話だろ?」

「いや……」

 

 マルコはぺし、と手配書の名前欄を小さく弾いた。

 

「四将星の兄弟だったら、これはおかしいよい」

 

 そこにあったのは『RUBY・D・AKESATO』の文字。

 

「D……」

 

 ぽつりと呟いて、サッチはエースとティーチの方を見た。

 彼らはエースと、ルフィとの特訓の話で盛り上がっている。

 

「気になるだろ、よい?」

「ああ。なんだかよく分からんけど気になる」

 

 Dとは一体何なのだろう。

 

「リンリンのとこにもDが居るのか」

 

 いつの間にか白ひげも手配書をのぞき込んでいた。

 

「オヤジ、Dって何だよい?」

 

 マルコが聞いてみる。

 白ひげはニッと笑った。

 

「まだ時じゃねェ」

 

 白ひげはくるりと背を向け去って行ってしまった。

 マルコとサッチは顔を見合わせて小首を傾げるが、つまりは今知らなくても支障はないのだと、賑やかな兄弟たちに目を向ける。

 

「……そういや、ビッグ・マムのとこのチビといえばよい」

「まだ何かあるのかぁ?」

「ちらほら海に出始めてる奴らはいるようだよい」

「へー。マジで景気いいなぁ」

「アケサト以外は懸賞金が懸けられる程のことしてねェのか、噂が流れてる程度だがよい」

 

 子供にまで懸賞が懸かりまくる世の中は、なんだか嫌だなとサッチは思う。相手がビッグ・マム(大海賊)の子供なのだから、それは的外れ(大きなお世話)かもしれないが。

 

「何でもウサギの被り物被った奴と、ウサギ耳の生えた奴が、コンビでこのへんのナワバリ見回ってるとか、よい」

「……」

 

 サッチは頭痛がしそうな思いで頭に手をやり、瞑目する。

 

「……別に他人の趣味をとやかく言うつもりはねェが、こっちのDといい、随分個性的だな」

「まあ、ビッグ・マムの所は、おとぎ話由来とか、菓子由来とか、ファンシー系とか……それがカラーなとこあるからよい。おれたちとは方向性が全く違うよい」

「まあ、そうだなあ」

 

 はぁ、とサッチは小さな溜め息をつく。

 

「しかしほんと、ビッグ・マムんとこは何があったんだろうな? ナワバリが一気に反乱でも起こしてるのか?」

「どうだろうなァ」

「オヤジ」

 

 白ひげがいつの間にか帰ってきて、マルコとサッチはそちらを向く。

 手には大きな酒瓶と大きな盃。

 止められているのにこの人は、と二人は苦笑いした。

 

「リンリンのナワバリは菓子の上納で成り立ってる。それが滞ったら上級幹部だって直接来るぞって、脅して回ってんじゃねェか」

「あぁー……普通は回収って傘下を回してそうだもんな。下手したら舐められだすか」

「それに、国に引き篭もっちまったら腐ってくだけだろ。たまには虎穴に落としてんじゃねェか。

 そういやぁ前にもあった気がするなァ。今回はちと新聞がうるせェ」

「ふむ……」

 

 マルコとサッチが難しい顔をしていると、白ひげが声を張った。

 

「おいてめェら、エースの弟の門出だ、宴を始めるぜ」

 

 ニィと笑って盃を持ち上げる白ひげに、兄弟たちはウオォと沸いて、楽しい大騒ぎが始まった。

 

 

 

 そのほんの少し後に、大事件が起きるなんて、誰も思ってないなかった。

 

 

 

-----------------------------------

 

「いやあ別に着替えなくても良かっただろ」

「衛生に気を配らなくて何がコックだ」

 

 ウサヘルはもちろんのこと、普段(・・)着で厨房に入る気は起きなかった。

 そのためサッチのコック服の予備を借り、髪をコック帽に突っ込んで、白いマスクを掛けた。

 

「にしてもお前はさあ」

 

 わざわざ身長を盛ったのは丈の問題もあるが、食いしん坊なエースなら絶対やって来るだろうと、その目を誤魔化す苦しい策でもあった。

 視線でそれを突っ込まれるのを察し、ポーシェはジロリとサッチを睨む。

 

「うるさい唾が飛ぶ」

「ひえっ、手厳しいなあ」

 

 そんなふうにワイワイしていると、ふっと気配を感じた。

 ああやっぱりエースだろうと、サッチがキッチンに入ったとなればつまみ食いしに来るだろうと──。

 

「っ駄目だ!!!」

 

 ポーシェは反射的にサッチを突き飛ばしていた。

 

 パリィン……ドッ! ドンッ!!

 

 軽い音と思い衝撃。

 明かりが落ちた音。それから。

 ……銃声?

 

 暗い。分からない。

 

「あれぇ? どっちだあ? ……仕方ねェなあ」

 

 暗闇の向こうから、自身の身体に起きている事態とあまりにも遠い、明るく楽しげな声がする。

 襲撃者、では、ない?

 

「誰、だ」

 

 ドンッ!!

 

「っぐうぅ……!」

 

 誰何の声への返答は鉛弾だった。

 

 熱い。冷たい。……冷たい。

 

「ゼハハハハハ!!! サッチ、こいつはいただいていくぜ」

 

 大きな笑い声。

 この声は、多分、宴にいた、でかくて黒い奴。

 

「ティー……チ!? く、そ……」

 

 朦朧とした様子でサッチが呻いている。

 その声を頼りに這う。手当て、しないと。

 

「ゼハハハハハハハハ!!!」

 

 ティーチと呼ばれた男の笑い声が遠ざかっていく。

 

「サッ、チ……サッチ……」

 

 手探りしてもぬるりとした液体の感触があるばかり。

 自分のそれなのか、サッチのそれなのか。

 

「え、……は!? サッチ!? っ、マルコ!!! キッチン来い!!! ──ティーチが、ティーチがやりやがった!!!」

 

 ああ、今度こそエースの声だ。

 マルコが来るなら、顔が見えないようにしてくれるはずだ。

 

 ポーシェは意識を手放した。

 

 起きた時には、サッチも命を取り留めたと聞いてホッとした。

 しかしエースが黒ひげを追いかけて行ったと聞き、妙な胸騒ぎを憶える。

 

おれが居たってなるとややこしいだけですから。あと、おれは怪我なんてしてません

 

 ウサヘルをにこにこさせるが、周りはみんなジト目だった。

 

くれぐれも色々内密に願います。おれも、怪我なんてしてませんから

 

 にこにこ。

 

 白ひげは大きく大きく溜め息をついた。

 

「構わねェが……せめて治るまで居ろ」

駄目です。とっとと帰れって言われてますし、怪我なんかしてませんから

「しかしなあ」

ジュレが頭撫でてくれますので

「……」

 

 そのジュレがジト目を送っているのはもちろん、ポーシェにである。

 

「もう。人ん()で怪我なんてして。白ひげさんたち、ほんとごめんなさい」

 

 ペコリと頭を下げるジュレ。

 いつもの間延びした喋り方でないのは、それだけ洒落にならない認識があるということ。

 

「頭を上げてくれ嬢ちゃん、これはうちの……いや、そうだな……ポーシェの言うようにが、一番なんだろう……」

 

 また白ひげが大きく溜め息をつく。

 

「……小僧、これは借りだ。覚悟しておけ」

えっ!?

「そういうのも筆談で書くのかよ」

 

 周りから似たような突っ込みが複数飛んでいく。

 

何にしろ、ですね。お世話になりました。サッチさんの料理おいしかったので、ぜひまた一緒に宴をしましょう。それでは

 

 そんなメモ用紙をピッと掲げつつ、ポーシェはしっかりとお辞儀する。

 

「せっかちだなぁオイ」

 

 数人は苦笑していたが、何かがこじれる前に、お互い離れるが吉だった。

 

(また、会えたらいいな。皆にも、エースにも)

 

 船長命令も仲間の静止も振り切って、一人で飛び出した彼が、心配で心配でしょうがなかった。







✦ポーシェ&ジュレ
 番外1登場のウサギコンビです。

✦アケサト
 アカツキやアカトキと迷って結局こうなりました。
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