うんこみたいな魔法。   作:ひつまぶし太郎

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この小説はうんこ魔法に絶望したうんこみたいな性格でうんこみたいな口の悪さの主人公が出てくるうんこ小説です。


増える話。

 

 

迷宮喰らい。

彼に対する呼び名は数多くあるが、その大半はあまりいい評判のものではない。

 

クズ。

クソ虫。

性格うんこ。

舐めプ野郎。

赤い悪魔。

目が死んでて嫌。

極東の恥さらし。

誉れなき侍。

地獄からの使者。

うんこみたいな頭。

刀振ることに能力全部持っていかれた男。

今世紀最大のバカ侍。

もじゃもじゃチンゲ頭。

耳で身長稼いでるチビ。

死ね。

殺す。

 

「いや言いすぎじゃね?俺結構人助けしてるよね?」

 

「と、言われましても…その…」

 

ギルドの受付嬢から改めて自分の評価を聞かされた水月は、普段の素行とは裏腹に割と普通にショックを受けていた。

自分の魔法を知られることをなによりも嫌う水月は、基本的に人当たりが悪い。

うんこ魔法に絶望して、この世全てを敵と見なすヤサグレ男はとにかく口が悪いのだ。

 

うんこで闇落ちして恥ずかしくないんですか?などと煽る奴がいれば、ヘスティア以外だと例外の数人を除いて水月は魔法を使ってでもそいつを輪廻の理から消し飛ばすだろう。

来世すら与えない。

 

とにかく親切なやつは全員うんこ魔法の秘密を狙っているスパイ。

それくらいの意識で水月は敵意を振りまいている。

まあ要するに、チンピラみたいな口調と、顔の良さを台なしにする粗雑な雰囲気と素行が、世間からの評判の悪さの原因だった。

一応本人の言う通り死にかけの冒険者を結構な数助けてはいるのだが、負債が大きすぎて挽回はできていなかった。

 

「はぁ~、これだから雑魚はよぉ〜!」

 

「そういうところでは?」

 

こういうところだった。

 

「それでは私、昼休みがもうすぐ終わりますから。これで」

 

「おーう。また来い。なんなら夕飯もこれにしろ」

 

「それは乙女的にちょっと…」

 

ひらひらと水月が手を振れば、その受付嬢は綺麗なお辞儀を一つしてから去っていく。

それを眺めながら、水月はため息を一つついた。

 

ちなみに神会で正式に賜っている二つ名は赤兎馬だ。

水月が普段赤い派手な羽織を黒の着流しの上に纏っていることからきた、割とまんまなネーミングである。

赤い兎馬(ロバ)

 

『安直すぎだろ』

 

兎☆火倭(うさ☆かわ)とかよりマシだろー?むしろこれだけまともな二つ名になるように頑張った僕に感謝してほしいね!』

 

『まぁ勇者(ブレイバー)とかよりマシか』

 

『君誰かに喧嘩売らないと死ぬ病気そろそろ治したほうがいいよ?お母さん心配』

 

『うるせーババア!俺が優しくするのはうんこ魔法持ってるやつだけだ!』

 

『この子ったらずっと反抗期!ていうかそれじゃあ自分にしか優しくできないじゃん』

 

とりあえず、だ。

不良剣士である水月は現在、バイトをしていた。

理由はダンジョンの大規模破壊によるペナルティとしてダンジョン一ヶ月出禁になったのと、借金が2000万ヴァリス発生したから。

普通に自業自得のペナルティである。

 

「あんた!ぼーっとしてないで働きな!」

 

「あいあい。…無駄に忙しいよなこの屋台。オラリオ暇人ばっかか?」

 

「ふっ、私の美貌のお陰だよ」

 

「らっしゃっせー、ジャガ丸くん1個一億でーすいかがですか」

 

「無視は悲しいじゃないか」

 

「はぁー…こんなとこでちまちま稼いでないでさっさとダンジョン行きてー…」

 

「あんまりぶつくさ言ってるとクビにするよ?あんた面接ほとんど落ちたんだろ?大変だねぇ世界最強って称号も!ぷっ、バイトに落ちる世界最強ねぇ」

 

「あーもう、やっぱ労働ってクソだな!」

 

当然悪い意味で有名な水月を雇ってくれる店など、低賃金かよほど人手不足なところしかあるはずもなく、無駄に高望みをしていた水月の就活はかなり難航した。

 

『うちの息子をよろしくお願いします…!』

 

『やめろ!ふざけんな!俺は働きたねえんだよ!せめてモチベの上がる器量よしの看板娘がいたり、汗水垂らさなくていいちょろい仕事がいい!』

 

『うわぁヤベー奴が来たにゃ…』

 

『世界最強の引きこもりとかいう一番厄介なドラ息子にゃ…』

 

『シル、つまみ出してもいいですか?』

 

『はぁー?派遣アルバイターのくせに偉そうなこと言ってんじゃねーよ!俺よりよえーくせによぉ!店長だせ店長!』

 

『帰りな。うちは不良の溜まり場でもなければ、社会復帰のための更生施設でもないよ!』

 

そもそも嫌嫌ヘスティアに面接に連れてこられて、キレ散らかしてるやつを合格にする店がありえないというのは大いにある。

 

ただ、さすがレベル8とも言うべきか、水月は文句を言いながらもムダに高い身体能力を活かして小器用にバイトをこなしていた。

なんなら、その精神年齢の低さも相まって、近所の悪ガキに人気だった。

あと時折見せる刀を使った凄技の調理も人気だった。

それを見た恩神のタケミカヅチに『武士の魂を舐めるな!』とキレ散らかされたので封印したけど。

 

「ジャガ丸くん、ください」

 

「…出たよジャガ丸姫」

 

そんな風に意外と楽しくやっている水月の前に、バイトを始めてから1週間、毎日のように出現するお得意様が現れた。

 

「私の名前はアイズ」

 

「ヴァレンなんとかさんな」

 

「そう」

 

「そうなのかよ」

 

彼女の名前はアイズ・ヴァレンシュタイン。

ちょっと以上に天然な剣の姫だ。

レベルは5。

所属はロキ・ファミリア。

 

「あと強さの秘訣もください」

 

「スマイルみてーに言うな。がむしゃらに剣振っとけ。それ以外言うことねーよマジで」

 

「こないだ無茶するなってリヴェリアに怒られた…」

 

「…ぁー、そうなの。うん。それはなんかすまん」

 

「……それにしてもなんで水月さんが屋台でバイトしてるんですか?」

 

「…1週間たってようやくこの違和感に気づいたのかこのポンコツ…」

 

「ここのジャガ丸くんが美味しくてつい…」

 

すっ、と恥ずかしそうに目線を逸らすアイズを前に水月はそのざんばら頭をかきむしった。

ひねくれてるせいで他人のまっすぐな感情が苦手な水月は、ドストレートに強さに対するリスペクトを向けてくるアイズの瞳が苦手だった。

端的に言うと調子が狂う。

 

「だぁー!もう!調子狂うんだよなお前さぁ〜!悪態つけよ、罵倒しろよ!きたねえ言葉でしかコミュニケーションとってねえやつにきれいな言葉使ってんじゃねーよ!ベート呼んでこいベート!サンドバッグにすっから!」

 

「ごめんなさい?」

 

「はぁ…はぁ……で?バイトしてる理由?ダンジョンぶっ壊して一ヶ月出禁なんだよこちとら!なのにペナルティは2000万ヴァリス!貯金は返済に使っちゃダメなんだと!クソが!わかったらこれ買えこれ!ハイパーウルトラジャンボ・ジャガ丸くんデラックス! 通常のジャガ丸くんの百倍の値段だけど買えんだろ一級冒険者!3000ヴァリスくらいはした金だろ!頼むってマジで、な?頼むよおおおおおおおおお!」

 

「……うるさい」

 

ハイパーウルトラジャンボ・ジャガ丸くんデラックス。

サイズはドワーフの拳5つ分くらい。

たぶんオッタルの御立派様6本分、こないだ確認したから間違いねぇぜという水月の宣伝文句は、当然の権利として屋台のおばちゃんに却下された。

 

明らかに通常のジャガ丸くんに比べて百倍のボリュームはないのに、値段は百倍。

ただ、ジャガ丸くんジャンキーのアイズからしても、その味は確実に三〇〇〇ヴァリスの価値はあった。

 

とりあえずアイズは8個(48オッタル)買った。

 

「美味しい…」

 

 

 

 

 

1週間と1日前。

 

「お前というやつは!お前というやつは本当に!」

 

「ぁあーぅぁあー揺らすな揺らすな」

 

「バカなのか!?上層の脇道で他の冒険者は見ていなかったとはいえ、ダンジョンの大規模破壊!ルドラ・ファミリアのやらかしを忘れたのか!ダンジョンの大規模破壊で生まれるモンスターはウラノスでも抑え込めないんだぞ!?」

 

水月は怒られていた。

二十歳の男がガチ説教を耳をふさぎながら聞き流す姿は、些か以上に情けない。

通りすがる人間がいれば思わず目を逸らしたかもしれないが、ここはそもそも人が通りかからない。

なぜならここは、ギルドの裏側。

神ウラノスが祈祷を捧げる神聖な場所の手前なのだから。

 

祈祷を捧げる部屋の前で、バカに騒がれるウラノスはキレていい。

 

「や、覚えてるよ?だってあのときアストレアの連中助けたの俺だし」

 

「…よかった、そこまで頭は空っぽじゃなかったんだな…」

 

「辛辣じゃね?」

 

「はぁ…これが世界最強か…」

 

「失礼じゃね?」

 

「全然失礼じゃない。というか覚えてるならなんでやった?」

 

「いやさ、俺もう深層()まで行かないとまともな経験値にならねーわけじゃん?」

 

「そうだな」

 

水月に説教をしていたその人物。

黒いローブに骨しか残っていない肉体を持つその人物もそこには異論が無いようで、素直に頷く。

それを確認した水月は、頰をかきながら気まずそうにつぶやいた。

 

「下まで行くのめんどくさくてさぁ…ジャガーノートの経験値が雑魚の割に美味かったの思い出したからやってみた。あいつ魔法使わない俺からすれば速いだけで脆いし」

 

「冒険者が冒険をめんどくさがるな!」

 

「うっせぇなぁいいだろ普通に倒したんだから!被害ゼロだぜ被害ゼロ。問題なんてなんも起こってねーんだよ、だからこの話も終わり!おしまい!それでいいじゃん!いいよね!?はいおっけーさよならベイビー!」

 

「…この!もういい!お前ペナルティ2000万ヴァリスな!貯金から支払うのは禁止!1から稼いでこい!あと一ヶ月ダンジョン出入り禁止!」

 

「おいおいキレすぎだろ。やだねー長生きって。高血圧になってしゃーねぇ。あ、心臓も血管もないか。じゃあ足りないのはカルシウム?ははっ」

 

「はいライン超え〜!ペナルティ追加な!そろそろ後進育成しろ!少なくとも一ヶ月以内に新人をヘスティア・ファミリアにいれること!できなきゃ借金2倍だから!」

 

「お前借金背負ってお荷物増やすのは無理ゲーだろ!なしすぎるって!あこらおい、消えんなフェルズ!…げぇ、ギルドの正式な書類としてペナルティ出してやがるふざけんな!?」

 

追伸。

新人のレベルアップ毎に借金1割減額。

 

「……くそめんどくせぇー!でも俺が悪いから何も言えねぇ〜!」

 

おそらくフェルズの最後の優しさで追加されたその一文を見ながら、水月はその場に蹲った。

 

 

 

 

 

さて、そんな自業自得な事の顛末でペナルティを背負った水月は、バイトの傍ら新人探しも行っていた。

だが、どいつもこいつもいまいちパッとしない。

そもそも水月の評価基準は、秘密を探りに来ないかどうかであり、それはつまり世界最強のネームバリューに惹かれてやってきた新人は全て落第だ。

そして、ヘスティアの選考基準もまた、甘いようでとても厳しい。

 

───善人で問題児ではないこと。

 

『僕はね、君で学んだんだ…。

手のかかる子は可愛いけど一人で十分だって』

 

とは、ヘスティアの言葉だが、この善人という部分がなかなか難しい。

あくまでヘスティアの主観でびびっと来たらだそうなので、十二年間新人が一人も入らない有名なファミリアとかいう、扱いになってしまっていた。

 

そもそも一人で大規模ファミリア並の働きをできる戦闘バカがいたために必要なかったのもあるが、巷では水月から一本取れないと入れないとか、弱い女性だと水月に食い物にされるとか、噂が噂を呼び入団希望者すら現れない始末。

あと普通に水月の評判がうんこなのもあって入りたがる人がいないのもあった。

 

とりあえず狙い目はオラリオに来たばかりで俺の悪名を知らないお上りさんでかつ腕っぷしのありそうなやつだな、なんて捕らぬ狸の皮算用をする水月の屋台の前でぐぅ、と腹の虫を鳴らしたその少年は、周りを見る余裕もないのか、何かを噛み締めるように首を振った。

 

「…いや、ダメだダメだ…まだファミリアも決まってないし、お金もないのに買い食いするなんてダメだ…!でもお腹減ったなぁ…そうだ。今日もしファミリアに入れてもらえたら自分のご褒美に買おう。…よし、頑張れ僕…!泣くな…!」

 

「はい1名様確保〜!!!!ジャガ丸くんなんて俺がいくらでも買ってやるよ!腹いっぱいにしてやるから泣くんじゃねえよ屋台の前で!ファミリアにも入れてやっから!な!?」

 

さすがにあんな迷子みたいな目をした欠食児童を見過ごせるほど腐ってなかった、と水月は後日語ったそうな。

 

「交差した兎馬と兎の物語は、オラリオに大きなうねりを引き起こす…かもしれないねえ」

 

「なに訳知り顔で頷いてんだババア」

 

「ふっ、案外あんたもお人好しじゃないか。見下げ果てた道に落ちてる犬のうんこから、旦那のうんこくらいに評価上げとくよ」

 

「どのみちうんこじゃねえか」

 

「最近うちの人下痢気味なんだよね…」

 

「知るか!あとおっさんの下痢よか犬の糞のほうがマシだ!」

 

「あの、ファミリアに入れてくれるって…」

 

「そうそう。ダンジョン出禁になってて借金2000万あるけど一緒に頑張ろうな」

 

「えっ」

 

「逃がさないぞ☆」

 

「えぇぇぇぇぇ!?ちょ、はな、はなしてください…!力強!?」

 

「お前も家族だ!ヘスティア・ファミリアへようこそ!とりあえず借金2倍回避できてよかった〜!」

 

なお、勧誘という名の詐欺・拘束・誘拐をした水月はヘスティアに怒られたし、ベルはヘスティアと普通に意気投合して入団した。

 




もはやこのタイトルのままいったらどうなるのか、みたいな実験してる気分です。
いくらメインで更新してる方を休んでるからってこれはひどい…。
良ければこのうんこ小説に評価と感想ください。

また妄想が溜まったら出します。 
でも今回が最終回かもしれません。
毎度そんな感じのうんこ小説です。
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