幻想九尾の転移録《プロローグ》 ~聖女と歩む勇者の前日譚~   作:暦月

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 交流戦に時間を取られ過ぎて気付いたら一か月近く経ってた…

 ※注 今回は暴力等の描写が含まれます。




【色欲】

 

 

 初めての情事から数時間後――愛欲と子宮を満たしたアルシェは疲れて泥のように眠ってしまった。その彼女をお姫様抱っこで運び、近くの木に降ろす。一般的に性受容は受け止める女性側の方が長けているとされるものの、無尽蔵の体力と【色欲】を持つ湊よりアルシェの方が先に限界を迎えてしまったのだ。

 

「すぅー、すぅー…」

 

 よほど腕の中が気持ちよかったのか離れようとすると寝ながら抵抗してくる。服を着せる暇も無かったせいで上から被せたドレスがずり落ちてしまい恰好を整えてあげた。

 

 幼気(あどけ)ない顔で眠るアルシェを見て先程の行為を思い返す。温室育ちのお姫様が淫靡に乱れながらそれでも奉仕する姿を脳内再生していると無意識に手が伸びていたことに気付いた。それを反対の手で押さえ、ギリギリと力を込めたかと思えば……

 

「ッ――」ボギンッ!

 

 あろう事か自分の腕を折ってしまった…!

 

「……」

 

 力無くぶら下がる右腕を庇う様子もなく立ち尽くしたかと思えば、(おもむろ)に歩き出し森の中へと消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!”

 

 草花に掛かる朝露がすっかり落ちて幾万もの生命の(さえず)りが木霊するアトラスの森。そこに響き渡るは現存する全ての痛みを受けるかのように苦痛に喘ぐ男の断末魔だった。声の出所となった人物は泡を吹き蹲っている。

 

「五月蝿いなぁ静かにしろよ。アルシェには聞こえないだろうけど万が一ってこともある。まぁ静か過ぎてもつまらないんだけど…なっ!」

 

――ボギンッ!

 

“ィギア゛アアアアアアアアアアアア!!!”

「ハハッ、ほらあと少し」

 

――バキッ!

 

“ガッ~~~~~~~~~~~~っ゛!!!”

 

 その様子を見下しながら眺める湊。この世のありとあらゆる美を一心に詰め込んだかのような完成された顔立ちはしかし、一際の輝きを魅せるつつも行われるはそんな美しさとはかけ離れた何とも悍ましきこと。男の脚を握る左手に力を込め、それを別々の……人体構造的に決して曲がらない方向へと無理に動かす。

 

――バキィン!

 

“ギィイイイイイイイイイイイ!!!”

 

 太い割り箸が折れたような音が湊の耳に届く。それでも遊び(・・)足り(・・)ない(・・)のか今度はそこら辺の土を口に押し込んで窒息する様を哄笑した。

 

「ふぅ。なんとか付いたな」

 

 男は既にボロボロの状態だった。満身創痍という言葉すら生温いその仕打ちは、普通に生きる人にとって直視できぬ程に壊されている。

 

 顔に重い一撃を受けたことで鼻は歪み身体は傷だらけ。しかも剣を握る右腕は肩から先が消失しており、残った片腕もありえないくらいに捻じ曲げられ、肩から指先までは本来の半分の長さしかない。圧縮し体積が小さくなった腕からは骨がはみ出し、その内の何本かが地面に転がる始末。これで千切れていないのだから驚きだ。

 

“ヒュー、ヒュー……”

 

 脚にしても左はとんでもない圧で潰された形跡があって(ひしゃ)げたソレはなんとか原型を確かめられる程度。今曲げられた右足は計五回も同じ扱いをされ〝つま先が腹に触れる〟という普通では不可能な格好にさせられていた。

 

「大袈裟だな。【(ケガレ)】なら治せるだろそんな怪我」

 

 残虐な行いをした当人はそれを軽傷だと言ってのけた。しかもその言葉通り千切れていた右腕が生えると、捻じれた箇所もまるで時が戻るかのように治っていく。

 動けるようになった元盗賊(・・・)は弾かれるように距離を取り、凄まじい憎悪で湊を睨んだ。が、至極どうでもよさそうにその隙を見逃した。それによって更にプレッシャーが増すが湊の興味は惹かれない。

 

「【(ケガレ)】は俺がいた世界における超常現象の一つでな。発症すると理外の力を得る代わりに心と体を文字通り化け物へと変貌させてしまう。今のお前のように」

 

 アルシェの治癒(ヒール)並みに傷が全回復し、更には湊に匹敵するほどの膂力を誇る。これが(おおやけ)にされると世間は大混乱に陥るため、【穢】を知るのは一部の有力者と政府高官、それと『機関』の人間のみだ。

 

「つくづく癇に障る。それっぽっち(・・・・・・)の強化で俺に勝てると思ってんのか」

 

 湊はそれ等どれにも属していないが過去何度も襲撃に遭い、その全てで返り討ちにしている。中には穢の王を自称する大言壮語の大馬鹿も居たが『才能』を全て使い切る前に勝った。それこそ初日のオルガぐらい身体能力に差が無いと、スキルも魔法も無いただの肉体強化では正真正銘の才能の権化(バグチート)と渡り合うなど夢のまた夢だ。

 いや、後付けの力(ステータス)が有っても並大抵の相手では最早勝負にすらなるまい。この天才にダリミルに順応する充分な時間を与えてしまったのだから。

 

「おまけに頭も悪いと来たもんだ。大人しく縮こまっていればこんな仕打ちを受ける事も無かったのに」

 

“勇者アアァァ!!”

 

「来いよ醜男(・・)、いい加減引導を渡してやる」

 

 その男もつい週間前には湊と激闘を演じていた。男が(・・)全力(・・)()行使(・・)する(・・)()()しな(・・)()せい(・・)()負ける(・・・)可能性(・・・)()あった(・・・)が、アルシェを護ることに意義を見出せたお陰で川に落とす場外勝ちを収めた――当時の湊に納得いかない結末を迎えさせたほどの相手ですら今はもう完全に役不足だ。

 

 魑魅魍魎が跋扈するこの魔境で数週間生き長らえてきた悪運もここまで。本当に偶々『超感覚』の感知範囲に踏み入れてしまったせいで湊に捕捉された男スヴェンは簡単に接近を許し、治したばかりの右足を五枚おろしに気付いたらされていた。

 

“ギャアアアアァァァ!!”

 

 形状しがたい激痛、劈くような悲鳴。傷は治っても痛覚までは失われないのが【穢】のメリットでもありデメリットでもある。

 

「《幻痛(裂けろ)》」

 

“ア……?”

 

 更には霧魔法も行使し、左脚まで捌かれてしまった。

「霧」は他属性と比べて圧倒的に燃費が悪い。だがそれを抜きにすれば4つの性質を持つこともあり自由度はかなり高く、特に対象の脳に直接作用する「催眠」と「夢幻」を精神値が低い相手に使うとそれだけで勝負が成立しなくなる。

 

 上級魔法《幻痛》――湊が想像(イメージ)した怪我を相手に押し付け、恰もそれが本物かのように惑わす術だ。この魔法のメリットは再生持ちの相手にも有効な点であり、外傷が無いお陰で回復(ヒール)持ちや【穢】相手でもほぼ無効化できる。

 デメリットは魔法を解いたらダメージがリセットされることだが、幻術への耐性が低かったりこの魔法を長時間受けすぎると脳がその状態を正常だと錯覚してしまい解除後もその部位を機能不全に陥れることが出来る。よく言う暗示の類、所謂プラシーボ効果だ。

 

 痛みにのたうち回るスヴェンを追撃することも容易だが既に(・・)決まった(・・・・)勝負(・・)を急ぐ意味も無いだろうと考え、先に傲慢(こっち)の用事を済ませることにした。

 

 

 


 

個体名 スヴェン

 

種族:人間族(ヒューマン)  Lv78  

称号:「覚醒者」

状態:〈穢〉〈嫉妬Ⅳ〉

 

力:18450(↑7725)

体力:5045(↓6010)

俊敏:10380

精神:3130(↓5335)

魔力:2670

 

 

【通常能力】

《剣術 Lv12》 《魔交術 Lv4》

《魔纏 Lv10》 《身体強化 Lv10》

《威嚇 Lv9》 《夜目 Lv7》

《力強化(中) Lv8》《体力強化(中) Lv7》 

《観察 Lv7》 《集団戦術 Lv3》

《麻痺耐性 Lv6》 《毒耐性 Lv2》

 


 

 

 

「強化もらってコレとか終わってんだろ」

 

 属性スキルが無いのは予想してたが武技系以外の練度が総じて低い。穢(プラス)覚醒のお陰で膂力は中々のものだが本当にそれだけ。「体力」と「精神」に至っては論外だ。

 召喚直後とは言えこんなのに才能を使ったと考えたら怒りを通り越して頭痛がしてきた。

 

 もう深く考えず、さっさとお楽しみ(・・・・)に移ろう。

 

「という訳で、今からお前を殺すから」

 

“ウオオオォォ!!”

 

「アハッ♪」

 

 空気が変わった。

 身にまとう雰囲気が変わった。

 瞳の色が淡青色(ライトブルー)から深雪色(スノーブルー)に変わった。

 

 

 司る戒禁(せいしつ)が、変化した――

 

 

「あの時殺せないで良かった。獣の断末魔は聞くに堪えないし、ヒトを蹂躙(こわ)したくてウズウズしてたんだ」

 

 直前に迫っていた剣を紙一重で躱して通過した腕を横から受け止める。骨が砕けるぐらい力を込めて握り潰すと、今度は体勢が崩れてがら空きの膝に下段蹴りを見舞った。

 横合いから放たれた一撃は強烈で、スヴェンから地面を奪うに飽き足らず2mの巨体が派手に大車輪する。掴んで固定した腕を軸にまるでコンパスの如く円の軌跡を描くと、回転が終わった頃には腕が捩じ切れて身体別れしてしまった。

 

“ウッ、ギャアアアアァァァ!!”

 

「おっ、今度は成功か」

 

 肉の潰れる音と腕が裂ける感触に浸っていたが、すぐに飽きてしまい別の刺激を求めて目の前の異形を解体していく。そこに元人間に対する拒否反応や罪悪感は微塵も見られず、ただ己の欲求を満たすためだけに手を紅く染めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 この身体が人間でなくなってから違和感を感じるようになった。

 

 それは構造が変わったとか『超感覚』の範囲が伸びたとかそういった類の話ではなく、主に精神面で今までとは異なる変化が起きていた。

 先ず、自分以外の生物に興味を持つようになった。相手が自分に釣り合ってると判断を下さない限りは適当にあしらうか無視を決め込んでいたのが、自分に敵意を向ける獣にも目を向けるようになったのだ。

 

 そしてもう一つ、これが一番大きな変化だが「楽しい」「愉しくなりたい」欲求がバリバリ出てきた。

 

 これまで趣味と言えるのは温泉巡りぐらいで、それもどちらかと言うとゆっくりしたいが気持ちの大半だったのに気付けば自分から刺激を求めている。

 

 色欲とはすなわち「快楽」

 

 全ての動物が持つ最も根源的な欲求の一つで、だからこそ自分の遺伝子を持った子孫を残すという最大の宿命にコレが多かれ少なかれ関与する。中には人間のように子の繁殖より快楽を優先する種もいるから本末転倒な気もするが基本はそうなのだ。

 俺の【色欲の証】はそれを最大限まで高めてくれるが、ただドーパミンを放出するだけではQOLは成立しない。欲望を解放して初めて世界が色で満たされるのである。解放の仕方は何でもいいが、俺の場合は次の2つが特に効率よく発散できる。

 

 1つは淫欲。やはり【色欲】の名の通り性的欲求こそが最も効果を発揮しやすい。雄の本能を掻き立てる極上の(さち)がすぐ傍に控えているのもあって今度(・・)から(・・)はこっちが主な捌け口になるだろう。

 

 それなら今まではどうしてたかと言うと、もう騙る必要も無いと思うが害獣共を(いじ)って凌いでいた。それが最も自分の心を豊かにしてくれる最高のスパイスだからだ。

 

 一般的な例からは漏れてしまうが、世の中にはこうした異常嗜好により快楽を得る者が一定数いる。屍体性愛(ネクロフィリア)食人性愛(カニバリズム)動物性愛(ズーセクシャリティ)…etc.

 

 色欲(オレ)のそれは破壊衝動だ。形あるもの(ことごと)くを自分の手で壊し、その無様に崩れ果てるのを見て快感(エクスタシー)を得る比類なき悪癖。ヒトを慈しみ導く聖女姫のパートナーに相応しくないどころか真っ先に敵対するレベルの邪悪さだが、ようやく見つけた楽しみを手放す気なんてこれっぽっちも無かった。だって俺の人生だし我慢は勿体無いじゃん♪

 

 

 

 

「正直助かったよ。アルシェとヤッたはいいが味見(・・)で気絶しちゃってさ、仕方ないから他で暇を凌ぐところだった」

 

 おっと、この言い方は初めてにも関わらず数時間付き合ってくれたアルシェに悪いな。やっぱり最初は経験と体力を積ませて俺でも満足できるよう調教するか。

 

“っ、 味見……?”

 

 どっちにしろ負担は増えるだろうな、と―――なんか凄い勢いで回復してってるし元々不細工な顔が更に見てられないことになってるけどどうした。さっき溶かした脳みそ破裂しちゃった?

 

“殺ず殺ずゴロズッ!! アノ聖女はオ゛レのだっ――”

 

「………ああ、そう言えば分不相応にもアルシェを狙ってたっけ。でもご愁傷様、あいつは初めから俺のだし一番大事なものも既に頂いちゃった。でも俺は優しいから(笑) 思い出を共有するぐらいは許してやるよ」

 

 優しいと自称する割にはその間も意気揚々と男を嬲っていた。それはもうつり上がった口角が下がりきらないくらい愉快そうに。物理的な破壊は勿論好きだが、精神的に毀損れていく様を見るのも面白い。

 必死に努力して時間を費やして……醜く足掻いてそれでも地面に這いつくばる様を見ると嗜虐心が刺激される。今まで何度も同じ光景を目にし、然して興味を持たなかった他者の絶望というのを俺は今望んで創り出していた。

 

「アルシェの胸についてとやかく騙ってたな。じゃあ最後に教えてやるよ。確かに大きさも形も尋常じゃないが、何より凄かったは感触と感度だ」

 

 想像してみろ、少し弄っただけで喘ぎながらおねだりしてくるんだ。可愛いだろ?

 

“ヨクも横取りシタな!”

 

 最初は男も分からず呆然としていたが、その意味を正しく理解してからはそれまでの騒がしさから一転、痛みで歪めていた表情がまるで幽鬼のような形相へと様変わりしていく。男が話に食いついたのを確認して笑みを深めると、挑発気味にペロリと指を舐めた。これは二人でそういう(・・・・)行為(・・)にも及んだのだと暗に告げている。

 

“アレはっ、おでノォ――ぐギッ!”

 

「だから五月蝿い。いい加減分を弁えろよ 《幻痛(歪がれ)》」

 

 直前の怪我(イメージ)をもう一回食らわすと、現実で切断した腕には足を乗せてグリグリと踏み躙る。またその間、思考を並列させて骨や組織を潰す感触を楽しみつつ、もう一方の頭では男の上げる悲鳴をBGMにとある考えに耽っていた。

 

 アビリティの横にある見慣れない数値……普通に考えて上昇(バフ)下降(デバフ)を掛けられた時に現れる表示だろう。それぐらいはオタクの親友を持っていたから分かる。

 それではいつ、誰に掛けられたか。『完全記憶』を駆使してあの夜の出来事を追憶していく内に一つの結論を導き出した。

 

「成程、【嫉妬】っていうのはつまりそういう事(・・・・・)か。タチの悪さでは【色欲】と遜色ないな」

 

 一人納得した面持ちで頷くと、視線を元に戻してから今日一番の笑顔を見せた。

 

「でもまぁ。それはアルシェ一人だった場合だ。俺がいる限り指一本触れされない。それでも手を出すというなら腕ごと拐ってやるよ」

 

 折れてない方の手に槍を顕現させ、それをスヴェンの腕に何度も突き刺した。最初は振り下ろすだけの単調なものから次第にネチっこく、苦痛や痛みを与える為だけの拷問へと変化する。痛みを振り切って血走った眼を向けてくる男に嘲笑を送ると、顎を蹴って床に打ち付けた。その仰向けに倒れた男を見て、湊があることを閃く。

 

「そうだ、どうせ死ぬんだしコレ(・・)も要らなくなるだろ? 粛正も兼ねてついでに潰すけど良いよな」

 

 湊は右足を股の間――男の一物がある場所へと置いた。

 

“殺スッ、殺す殺す殺ず殺ズころずコロスゴロスゥ!!”

 

「嫉妬に呑まれたか。レベルⅣ……興味が唆られるな」

 

 クスクスと上品に嗤いながら股に乗せてた脚を上に掲げた。その際に爪先を少しだけ上げて踵に力がかかるよう修正を図る。

 

「俺も体験した事ないからさ。感想は結構だから態度でどんなものか見せてよ」

 

 そこで一瞬動きが止まって、次の瞬間には目的の部位――男の弱点に踵落としを決め込んだ

 

 

――ズンッ!

――ぶちゅり、びちっ!

 

 

「ッッ”イ”~~~~~~くぁwせdrftgyふじこlp◆ヰヱバロヤ○=j■Y%ア”!!?!!」

 

 

 そしてその一撃は、男の睾丸を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうっ! ご自分の腕を折るなんて信じられません!」

「だから悪かったって」

 

 あの後拠点に戻って起きたアルシェに腕を見せたら案の定怒られた。何時もより治療が遅いのは初体験のせいで身体が重いのか、それとも小言で忙しいからなのかプリプリ叱るアルシェを尻目に俺は一つ疑問を口にした。

 

「というか何で横に座ってんだ」

「え…? どうしてとは…」

 

 こてんと首を傾げる様子が可愛くてイジメたくなる。故に先程更新した中から使える記憶を引っ張り出し、それをアルシェに突き付けた。

 

「〝もう離れたくない。もっと強く抱きしめて〟」

「そ、それはッ!!」

「素直になるんだろ? ならこっちが空いてるぞ」

 

 目線より下……膝の上を指して彼女を誘導する。丁度身体が収まる形で入って来たアルシェを優しく撫でて緊張を和らげてあげた。今更だが【色欲】の悪癖と離れた時に何をしてたかは教えてない。知る必要も無い。

 

「アルシェ、いつもありがとな」

「私の方こそ、幸せを頂いてばかりですっ///」

 

………幸せ、ねえ。

 

 慰めたのは俺だけどそんな嬉しそうな顔見せられても正直困る。だってその綺麗な顔をぐちゃぐちゃに壊したくて堪らなくなっちゃうから。

 

 破壊の快楽に目醒めてしまった訳だが、対象が何でもいいかと言われたら当然違う。

 生来傲慢で友人を選り好みするような俺が誰でも大丈夫、質より数だから皆壊されに来て~なんて平等主義的な考えを持つわけ無いじゃん。嗜好にも好き嫌いはある。

 

 俺が快感を得やすいのは〝価値ある存在〟

 

 価値が高いと言っても色々あるが、一目で判断しやすいのは綺麗な物。

 そして、こうした綺麗なモノは往々にして多大な時間を費やしてる傾向にある。

 

 分かりやすく例を挙げるなら鍾乳洞。アレも石灰分を含んだ水滴が数十万年という非常に長い時間をかけたから人々を魅了する神秘的な光景を創り上げることが出来た。

 俺の食指を動かすのはそのような時間を掛けて生み出された、目を引く華麗で優美な様々。それを己の快楽(エゴ)で壊すことを想像すると……やべ、()ちそう。

 

「っ、カナエ様///」

「ご飯食べたら第2ラウンド行くぞ」

「さっきしたばかりなのに!? うぅ…頑張ります!」

 

 それで言うと雄大な自然を誇るこの大森林も俺の破壊対象だが、今はこの聖王女に夢中だ。

 

 アルシェが歩んできた人生は15年と今挙げたモノとは比ぶべくもない。しかし彼女が生まれてきた過程を辿ると、数百年という歳月をかけて優れた血同士を交配させ、より優秀な遺伝子を残し続けた果てに今がある。

 その結果【固有能力】という特異な力に目覚め、俺に並ぶほどの容姿も備えた王女が誕生した。数百年の蓄積と数万…いや数億人以上の人生を費やして生まれた結晶がアルシェ=フィリアムだ。

 時間✕容姿=価値◯で文句の付け所がない。

 

 そんなの……壊したいに決まってる。

 きっと筆舌に尽くしがたいほどの絶頂を得られるだろう。先程の醜男などとは比較にならない興奮を俺に与えてくれるだろう。

 だがそれを成した時、人生最大の幸福を齎してくれる代わりにその後はずっと空虚な人生を送る羽目になる。

 一瞬の快楽のために最高の(つがい)と人生を棒に振るうなど思慮の浅い落伍者のやることだ。自分は違うと証明するために今日まで必死に抑えてきたが、アルシェが完全に俺の(モノ)になったことで漸く我慢の紐を少し緩めることが出来た。

 しかし油断は禁物。たった数時間の交わり中も幾度となく殺しそうになったし、アルシェで物騒な妄想を膨らませたシーンは数知れず。

 

 欲望の矛先(アルシェ=フィリアム)は手に入った。

 

 ならば次やるべきは淫欲と破壊欲の両立。彼女に危険が及ばず、かつ最高の快楽を得るにはどうしたら善いか模索しないといけない。出来なければアルシェが死ぬ。

 

 

「じゃあ軽く3日ぐらい愛し合おっか」

「私死んでしまいます!?」

 

 果てることない欲望と絶対致死の悪癖、それが【色欲】の所持者が負うべき(カルマ)

 

 聖なる龍をして最悪と言わしめた伝説の狐の毒牙が、人知れず人類の希望たる聖女に突き立てられた瞬間だった。

 

 

 






――主人公サイドのプロフィール――

■天宮湊
年齢:16歳 男性
趣味:秘湯巡り
好きなもの:銀色の髪、綺麗な物、冬の湖畔
嫌いなもの:平凡で退屈な奴、時間

固有能力

【天付九属性】(「最大十二特性」「優先権」)
 10属性の力を操る。

【黎明の神器】(「性質付与」「三面作用」)
 槍と双刀を顕現できる。天付九属性と併用することで何かしらの力を発揮する。

【霧の妖尾】(「偽装」「眼尾共有」)
 霧属性のサポート1

【真偽の瞳】(「精神干渉」「真相見識」)
 霧属性のサポート2
 嘘やステータスを視ることが出来る。

本作の主人公。あらゆる才能と特殊な体質を持って生まれたせいで幼少の頃より人との関わりを避けてきた過去を持つ。自分と自分が認めた者以外の全てを下等と見做し、姿形だけ似ているという理由で彼らを粗悪品や劣等種と呼び忌み嫌っている。蓮と友達になってからは体面を装いつつ人との交流を行ってきたが、内心は以前のまま。アルシェのことは己の番とするほど好いており、特に能力による恩恵とはいえ自分を凌ぐほどの付与技術と回復魔法には一目置いている。何気に召喚された勇者の中では最年少。



■アルシェ=フィリアム

【挿絵表示】

年齢:15歳 女性
特技:楽器演奏、聖書の音読
好きなもの:国民や家族
苦手なもの:酸っぱい食べ物
好きな人:湊

クラス:支援超特化型(ハイ・サポーター)→ 結界師

固有能力

【聖者の瞳】(「予知眼」「千里眼」)
 二つの特性はどちらも単一不干渉空間たる運命に干渉し、その中で「予知眼」は予定調和の運命を視ることが出来る。この能力の本質は再編可能な運命の未来予測であり、数多ある分岐の中から高い確率の運命が優先して見せられる。そのため予定された運命が覆るほどの強い“外因”が加わることで未来は再編される。だがこの能力の特性上、能力保有者たるアルシェが起こす事象は全て織り込まれているため、彼女の行動で予定調和の流れを変えるのは実質不可能と言える。
そしてもう一つの特性「千里眼」は運命の集約点である“現在”を司る。これは見たい人物や場所を鮮明に思い浮かべることで発動可能となり、同時にこの時視た情景は自動的にマークされる。「千里眼」とは謂わば目印を設けて視点を切り替えるポイント転換の能力であり、これと「予知眼」を組み合わせることで過去に見た現在までの未来を視ることが出来る。そしてこの時の霊力消費量は各々経過した時間や目印までの距離により決まる。

【結界魔法】(「結界干渉」「万能効果」)
 特性「万能効果」は回復や付与魔法など、支援に関するあらゆる事象を引き起こす。それを「結界干渉」を用いて操作することで効果の底上げや霊力消費を抑えるといった操作が可能となり、またその時対象も任意に選択できる。結界は物理、回復、付与など用途に応じて使い分けが可能で、2つの特性のおかげで乱戦にも対応できる。

本作のメインヒロイン。フィリアム王国第2王女にして最大宗派セレェル教の聖女。非常に聡明かつ物腰柔らかな性格であり、先の襲撃では亡くなった者達に心痛めると共に、生き残ったサーナ達の無事を知って涙を流していた。湊には自身の危機を救ってもらった事から恋心を抱いており、後に自分の立場で彼に懸想して良いのか本気で悩んでいる。家族の事は大事に思っているが、同時に王家の中で自分だけ役割を全う出来ていないことに引け目を感じている。特に本来湊と添い遂げるべき(エリナ)には複雑な感情を抱いており、幼い頃からの憧れであると同時に彼女のコンプレックスの原因にもなっていた。湊に慰めてもらってからはその気持ちにも整理が付き始め、最近では想い人との繋がりを確信するに至り、心にも余裕が出てきた。




↓↓参考:召喚当初の主人公のステータス↓↓

個体名 カナエ=アマミヤ 
種族:聖人  Lv4
称号:「発現者」「傲慢の証」「勇者」「異世界人」「白銀の体現者」

力:320
体力:285
俊敏:400
精神:295
魔力:405
霊力:420

【固有能力】
《天付七属性》

【特殊能力】
《黎明の神器》

【通常能力】
《詠唱省略 Lv2》 《身体強化 Lv1》 
《思考加速 Lv1》 《気配察知 Lv3》 
《覇気 Lv1》 

《万能翻訳》


 ステータス≠合計値だとしてもよく勝てたな~と思ったら高評価、または感想よろしくお願いします。


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