元トリニティの生徒はゲヘナの風紀を守りたい。   作:スイソーミズクサ

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デスクワークエアプ侍兼、経営エアプ

内容としては、Vol.1の一話と二話間です。

番外編なので書き方がいつもと違うと思いますが気にしないで下さい。


番外編
会計係の日常


 

「失礼します」

 

そう言って私は静かなオフィスで一人パソコンを打ち続ける一人の大人に頭を下げた。その大人は私の存在に気づくと、パソコンと向き合っていた顔を上げて、私を見た。

 

“おはようユウカ”

 

大人は微笑みながら、向かい側の席に座るように促してくる。それに従って私はその席に腰掛けた。

 

“ごめんねユウカ、いきなり来てもらっちゃって”

「いえ、丁度暇だったので大丈夫だったんですけど……今日の当番ってシロウさんでしたよね?何かあったんですか?」

“ちょっと問題起こしたらしくて、謹慎中らしいんだ”

 

謹慎中とは一体何をやったのだろう?風紀委員にしては不良の様な雰囲気を感じていたが、その雰囲気通りの人物だったのか?

 

「まぁいいです、とりあえず今日の分をこなしましょうか」

“分かった、じゃぁとりあえずこれを纏めておいてくれない?”

 

そう言いながら、先生は自分の机の上に乗っている、以前よりも増えた紙束から幾つかの書類を取り出して私に渡した。

 

ペラペラと書類を捲り大まか内容を確認する。

 

「……各校の武器の流出状況ですか……ざっと見たところだと、トリニティとゲヘナが多いですね」

 

“そうだね……あそこは規模も人も多いからね、もしかしたら管理が行き届いてないところもあるのかも”

 

先生の話を聞きながら私はパソコンを立ち上げて、表計算ソフトを起動する。目の前の画面に無数の四角で区切られた空間が出現する、その四角に文字や数字、数式などの情報を入力していく。

数十枚の書類に刻まれた情報の全てをまとめ上げて入力するだけの単純作業、パチパチとキーボードの打鍵音が響くだけの空間、それが私にとってはとても心地の良いものだった。

 

そう、黙々と作業をしているうちに、書類の束は消え去った。息を吐き伸びをした私はチラリと先生を見る。先生も丁度終わっていた様で肩を回していた。

 

“ふひぃと終わったぁ……”

 

先生はぐでんと顔を机に突っ伏した。私は席から立って近くの棚から二つのマグカップを取り出した。それにインスタントコーヒーを入れて、事前に沸かしておいた電気ケトルからお湯を注ぎ、スプーンで混ぜた。

 

「お疲れ様です先生」

 

コーヒーを目の前に置いて、労いの言葉ををかける、最近は毎回こんなことをしている気がする。

 

“ありがとう、ユウカの淹れてくれるコーヒーは美味しいね”

 

先生はそう言いながら起き上がり、目の前に置いたコーヒーを啜った後に

一点の曇りも無い笑顔を私に向けてくる、顔が熱くなるのを感じる。

 

「美味しいって……インスタントですよ、分量だってラベルに書いてあることをそのままにしてるだけですし」

“いやいや、愛情だよ……ユウカの愛情が美味しいんだよ”

 

何を言っているんだろうこの人は、そんな非科学的なこと……いやある得るのか? 例えば料理とかを自分の為に作ってくれた思うと感情が高揚して、より美味しく感じたりとか……

 

“どうしたの?そんなに難しい顔をして”

「いっいえ、なんでもありません」

 

私は頭の中に浮かんだ考えを振り払う、そして目の前にあったコーヒーを一気に喉に流し込んだ。

 

そして、手持ちは沙汰になった頭を動かす為に、スマホを起動し、経営シュミレーションゲームを起動した。

 

内容としてはカフェを経営するゲーム、これが中々奥が深い。位置情報を利用したゲームなのだが、実際に自分が訪れた場所に出店することが可能で、人通りが多い場所は繁盛しライバル店が出現する。これだけで人通りが少ない所で唯一のカフェとなり利益を独占するか、多い所でライバル達とせめぎ合い利益を伸ばしていくか。これだけでも戦略性が生まれる。

それ以外にも価格や給与、店のレイアウトなどを変えたりなど、かなり自由度が高い。

 

私は給与と人の配置の項目を見ながら、頭を捻った。そうしている内にある思考が生まれた。

 

「そう言えば先生、今シャーレに所属している生徒ってどのくらいいるんですか?」

“えっえーと……えーとユウカとハスミ、スズミ、チナツ、シロウ……”

 

指で一ニ三と数えていく。そして手が完全に開かれた瞬間に、私に掌を向けてきた。

 

「五人ですか……少ないですね」

“そうかな?”

 

先生は頭を傾ける、私はその呑気な様子に少しだけ呆れてしまう。

 

「何というかこのままだと、先生は過労死する気がします」

“そこまで!?”

「日に日に増えてるじゃないですか、仕事」

“いやでも、今の所、大丈夫だし……一応ユウカ達が手伝いに来なくても一人で済ませるくらいの仕事量ではあるし”

「今の所、じゃないです!その内、二人がかりでやらないと絶対に終わらない量になりますよ!」

“だって……”

「だって、じゃないです!先生が過労で倒れたりしたら、連邦生徒会長が失踪した時に逆戻りです!」

 

ダンと!机を叩いて叫んでしまった、声を瞬間的に出し過ぎたせいか喉が痛む。その痛みで頭が冷えていく。急激に恥ずかしくなってくる。コホンと咳払いをしてポカンとしている先生を見つめる。

 

「えっと……私が言いたいのは、今は大丈夫でも、その内二人がかりじゃ無いと終わらない量になるでしょうし、今、所属している生徒は普通の生徒と比べて忙しい人ばかりですし、私たちが誰一人来れない時もあるかもしれないので、そうなる前にシャーレに所属する生徒を増やしましょう」

“うっうん”

 

煮え切らない様な雰囲気の先生を睨みつける。どうせ先生のことだ生徒の時間を奪いたく無いとか宣うに違いない。

 

“あんまり、生徒達の時間を取りたくないんだけどね”

 

ほら言った。

 

「そんなこと考えなくて良いんですよ、別に強制でもありませんし、給与だってでますし、バイト感覚でやる子が殆どだと思いますよ」

“そう……かな?”

「そうです、とりあえず募集でもかけてみましょう、シャーレって公式のSNSアカウントありますよね」

“あぁ……うん、これだけど”

 

そう言いながら先生は自分の懐からスマホを取り出して私に見せる。画面にはシャーレ公式と言う名前の簡素なアカウントが映っていた。

 

「「シャーレの公式SNSを開設しました、気軽にご相談ください」……フォロワー数1000人……もう少し活用しません?」

 

私は先生からスマホを受け取り『シャーレ』と検索する。検索結果は芳しくない。

 

“いや、こう言うのってよく分からなくて”

「取り敢えず、今日こんなことしましたーとかシャーレでしてることを積極的に発信していきましょう、ざっとエゴサしてみた感じ、殆どの人たちがシャーレの仕事のことをよく知らないみたいですし」

 

先生は不思議そうな顔をしながらうんうんと聞いている。

 

「とりあえず、募集の投稿しますね」

“うん、お願い”

 

私は生徒募集の内容を投稿した。

 

「まぁ、正直今の状態だとこの募集を見てシャーレに所属しようと思う生徒は多分いないでしょうけど」

“えっじゃあどうするの”

「それは……そうですね、頼み事をするついでですし」

 

私は席から立ち上がって荷物を持った。

 

「ミレニアムに行きましょう、先生」

 

私は先生の目を見てそう言った。

 

 


 

 

“ここがミレニアム、凄い……未来都市みたい!”

 

先生は新しいおもちゃを与えられた子供の様に目を煌めかせて、周囲を見渡す。

 

「先生行きますよ”

“ちょ!もうちょっと見ていかない?”

「別に遊びに来たわけじゃないんですよ」

 

私は先生の深く握って、引っ張る様にして連れて行く。そうして歩いている内にミレニアムの正面玄関まで辿り着き中に入った。

 

“そう言えば聞いてなかったけど、どうしてミレニアムに?”

「ここで、直接シャーレの募集を行おうかと……ポスターとかを張り出して……取り敢えずヴェリタスに向かいましょうか」

“ヴェリタス?”

「ウチの学校の非公認部活です、セミナーのお願いを聞く人達じゃありませんけど、私個人としてお願いしたら聞いてくれるでしょうし」

 

そう言いながら私は先生と共に、廊下を歩き、いくつかの曲がり角を辿りヴェリタスの扉の前に立つ。チヒロ先輩がいないと良いが。

 

「……さてと、じゃあ先生行きますよ」

“うん”

 

私はヴェリタスの部室の扉を開いた。部室の中は薄暗くサーバーやモニターなどなどの機械が並んで光を放っていて、目が痛い。

 

中に入ると同時に、誰かがこちらに向かってくることに気付いた。メガネに薄いブロンドの髪、コタマ先輩だ。

 

「珍しいですね、ヴェリタスにユウカが来るとは、其方の大人は?」

「コタマ先輩、少し用事があって……あっこちらはシャーレの先生です」

“ドーモ、シャーレノセンセイデス”

 

コタマ先輩の質問に妙な回答をする先生を睨みつけると、先生はしゅんとしぼんだ。

 

「要件は一体なんでしょうか?」

「ちょっとね……マキに用事があるの、どこにいるの?」

「マキは今ゲーム開発部にいるはずです、「新作のゲームを買ったからやろーよ」と言ってました」

「全く……あの子達は……」

 

結果も挙げずに一体何をやっているのか。昨日の部長会議で今学期までに成果を挙げなかったら廃部って言ったのに。何なら規定人数も満たしてないわよね、あの子達……

 

“どうしたの?ユウカ、すごい顔してるけど”

「えっあぁ、大丈夫です」

 

どうやら知らない内に深刻な顔つきになっていたらしく、先生を心配させてしまった。とりあえず出直しましょうと先生に言ってヴェリタスの部室の扉に向かう。するとガチャリと扉が開いた。

 

「いやぁ楽しかったよ、モラルハザード8:アウトランド……げぇー!?ユウカ!?」

 

開いた扉から現れたマキは私の顔を見るなり、叫んだ。まるで化け物にでもあったかの様な反応だ。

 

「なによその反応!?」

「えっなんでユウカ先輩がここに……」

「マキに用事がある様です」

 

怯えるマキに対してコタマ先輩は声をかけた。マキはその言葉に更に体を震え上がらせた。

 

「えっえ?私に用事?えっうそもしかしてバレた?」

「何がバレたかは知らないしあとで詳しく聞くけど今はどうでも良いわ、マキ、貴方にお願いがあるの」

「いやだから何!?セミナーがヴェリタスにお願いすることないでしょ!?怖いよ助けてコタマ先輩!」

「人を妖怪みたいに怖がらないでよ!」

 

マキは汗をダラダラと流しながらジタバタする。

確かに私は冷酷だと自分でも思っているが、ここまで恐れられる言われはない筈だ。

 

“あの、私が用があるんだよ、えーとマキ?”

 

背後から先生が軽くパニックになっているマキに声をかける。その声にマキは動きを止めて首を傾げる。

 

「えっと、だれ?」

“あっごめんね、私はシャーレの先生だよ”

 

そう言いながら、先生は胸ポケットから職員証を取り出して、マキに見せる。

 

「シャーレ?最近災厄の狐が起こした騒動を治めたっていう?その先生が何の様なの?」

“ちょっとお願いがあってね、マキにしかできないことだと思うんだけど”

「私にしかできない……」

 

マキは先生を言葉に目をキラキラとさせ始めた。そして先生は私の方を振り返る。

 

“詳しくはユウカから聞いて欲しいんだけど……ユウカお願いできる?”

「あっはい……マキ、貴方にポスターのデザインを頼みたいのだけど」

「へ?デザイン?」

「ほら、貴方よく落書きしてるじゃない」

「あれは落書きじゃなくてグラフィティ!落書きなんかと一緒にしないで!」

 

似た様なものじゃない、そう口から出そうになるが何とか抑える。もし言ってしまえば、いろいろとパーになってしまう。

 

「えっとごめんなさい……そのほらデザインは結構オシャレだなと思ってて、貴方にシャーレの部員募集のポスターをデザインしてもらえれば、人も集まるかなと……」

 

少ししどろもどろ気味になってしまったが説明をした。

 

「なんだそんなこと?なら任せて!私がとびきり良いのを描いてあげる!」

 

マキはそう言うと、すぐに自分のパソコンのある席に飛びかかる様に座った。

 

「先生!何か要望ある?」

“あぁうーん……分かりやすい様にかな”

「おっけー」

 

そう言うとマキは、ペイントソフトを立ち上げて描画を始めた。とても機嫌が良いのか鼻息を歌いながら作業している。

マキの作業を待っていると、コタマ先輩が先生の隣に並ぶ。

 

「そう言えば、シャーレの生徒募集と言うのは、まだ開始していないのですか?」

“いや?いつでも大歓迎だけど”

「じゃあ応募します」

 

コタマ先輩は淡々とした口調でそんなことを言った。

 

“分かった、スマホ出して”

「はい」

 

コタマ先輩はスマホを取り出した、先生は懐から白いタブレットを取り出し、コタマ先輩のスマホにくっつけた。そして数秒後にピコンと音が鳴った。

 

“はい、これにサインを書いて”

 

画面には青い封筒の様なものが映っていて、その封筒には記入欄らしきものがあった。コタマ先輩はそのタブレットを受け取り、記入欄に名前を書いた。

 

“はい、これで終わりね、これでコタマはシャーレ所属になったよ”

「えっそれだけで!?」

 

たったそれだけで、手続きが完了してしまうのかと私は驚きの声を上げた。

 

“そういえばユウカは最初から名簿に入ってたから見せてなかったね、まぁ私も今回が初めてだけど”

「いや……えぇ」

 

本当に良いのだろうか……普通こう言うのって誓約書とか交わすものじゃ……

 

「これで私もシャーレの所属ですか」

“うん、仕事については今後連絡するから……えっとモモトークのIDもお願い”

「分かりました」

 

心なしか先生とコタマ先輩の距離感が近い様な……なんで私こんな思考になってるのだろう……

 

「終わったぁ!!」

 

後ろでマキの慶の声が聞こえた、私はびくりと背中を揺らして振り返る。

振り返った先には満面の笑みマキがいた。

 

「見て見て、先生出来たよ!」

 

マキはぴょんぴょんと幼い子供の様に跳ね、パソコンの画面を見せつける。先生はその様子を見て微笑んでいる。

 

“ありがとうマキ、よく出来てるね”

 

先生はデザインを見てマキを褒め、頭を撫でた。マキは少しだけ顔を赤くしながら嬉しそうにしていた。

 

「まぁ……うん、良いわね、ちょっとサイゲデリック過ぎる色合いな気もするけど……」

「分かってないなぁユウカ先輩は芸術を」

 

少し小馬鹿にするかのようにマキは言う、少し腹が立つか声を荒げてはいけないと思って我慢する。

 

「とっとりあえず、これをキヴォトス中に掲示していきましょう私が話を通しておきますので」

 

私はそう言うと、セミナーの連絡網に連絡を送った。

 

「そういえば先生、さっきシャーレはいつでも大歓迎とかなんとか言ってたよね?」

“うん、いつでも募集してるよ”

「じゃあ、私も良い?」

“良いよスマホを出して”

 

マキは先のコタマ先輩と同じ様に、スマホを取り出して先生のタブレットにくっつけた。そうするとタブレットに再び封筒が出現する。

さっきと違うのは、封筒の色が紫ということだ。

 

「私とは色が違いますね」

“本当だね、こういう遊び心なのかな?”

「入れる理由がよく分かりませんけどね」

 

何が違いがあるのだろうか……一年と三年の違いとかだろうか。そう考えている内にマキは封筒にサインを書いた。

 

「取り敢えずこれで、私もシャーレの所属って訳だね!」

 

マキは上機嫌に笑う、非常に可愛らしかった。

 

 


 

 

その後、マキが描いたポスターを印刷し、ミレニアム内に貼り回った。その結果何人かの生徒……エンジニア部二人とC&C二人、ヴェリタスのハレが加入することとなった。

 

その結果、私が先生と会う日が減ってしまったが……まぁ大したダメージじゃない、うん大したダメージじゃない。




番外編は一人称の予定です。

よかったら、感想と評価よろしくお願いします。
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