元トリニティの生徒はゲヘナの風紀を守りたい。   作:スイソーミズクサ

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マリーって清楚ですよね。度を超えた清楚は非常にすけべなのです。
オーバーフローです。


三話 夏の合宿

 

「あの……シロウさん……その……」

「なぁに?マリー」

 

目の前で祈り跪いているマリーが後ろを振り向いてくる、不安そうな表情で顔を真っ赤にしている。

何だろうとシロウは思ったが気にせず頭の猫耳を触る、スベスベとした毛に包まれた柔らかな耳がなんとも心地良い。

 

「あの、耳を触るのは控えて頂けませんか?」

「なんでぇ……こんなに気持ち良いのにぃ」

 

伸ばしたら丸めたりしてさらに激しく弄り回す、それによるものなのかマリーの顔は更に真っ赤になった。

 

「あうぅ……やめて下さい……」

 

許容値を超え始めたのか涙目になり始めた、本来ならここでやめるべきなのだろうが、彼女は欲望に忠実なのでやめなかった。

 

「うへへへぇ可愛いねぇマリーちゃん、うっへへへへ」

 

気持ちの悪い鳴き声を口から出すシロウにの奇行に、マリーは羞恥に震えながら耐えていた。

 

 


 

 

「うへへへへ」

「おい!しっかりしろ!ここで寝たら死ぬぞ!」

 

突然喧しい声が耳元に響き。シロウは地面から飛び起きた。目を丸くし挙動不審になりながら周囲を見渡す。

 

「ここ……山……あっつぅ」

 

状況を把握した瞬間、恐ろしい熱気が体を襲ってきた、正確に言えば今襲ってきたのではなく、気づいただけだ。

 

「やっと気がついたか、やっぱぬるま湯お嬢様環境で過ごしてきたからか?こう言う所慣れてないのか?」

 

と言いながらイオリは飾り気のない黒い水筒を渡す、シロウはすぐにそれを受け取るが、直接口をつけることに抵抗を覚えたか口を離すようにして飲みはじめた。

 

「溢れてるけど、飲みにくくないか?その飲み方」

「だいじょぶだいじょぶ」

「大丈夫なら良いんだけど……飲み終わったら早く来いよ、まだ目的地にも着いちゃいないんだから」

 

そう言うと、イオリは先に進んでいった。

シロウは少しの間、木陰で休み、イオリの行った方向に向かった。

 

「意外と早かったな」

 

イオリが先に行ってからそんなに時間が経っていなかったからか、かなり早く追いついた。

 

「なぁイオリ……俺たちはなんで、夏場に登山してるんだ?しかもこの山なんかクソ暑いし」

「万魔殿の奴らが「最近の風紀委員会は弛んでいる、一度引き締めてこい」とか適当なこと言ったんだよ……因みにここはヒノム火山だ」

「夏場に火山とか頭おかしいんじゃあないか?現場分かって言ってんのか?そいつら」

「ただの嫌がらせだよ……議長のマコトが委員長のことを一方的に敵視してるから……」

 

俯いた顔から滴り落ちた汗は、地面に落ちた瞬間、濡れた跡も残さず蒸発していく。その様子を目撃したせいか、シロウの体感温度はさらに上昇した。

 

しばらく歩くと、山荘のような場所にたどり着いた。先に到着していた委員たちが、背負っていた荷物を山荘に運び込んでいるところを見ると、ここが目的地なのだろう。

 

 

シロウとイオリは、他の委員たちに続いて山荘の中に入っていった。山荘の中は、寝床にするには十分なほど清潔さだった。二人は他の委員たちと同じように一番大きな部屋に荷物を置き、再び山荘を出た。

 

 

 

「イオリ、ここで何日間過ごすんだ?」

「大体今日合わせて五日だって」

「五日かぁ……長いなぁ」

 

シロウは溜め息を吐きながら俯き、近くにあった小石を蹴った。

こうして暑苦しい夏合宿が始まった。

 

 


 

 

夏合宿は、まさに過酷そのものだった。

まず、夏の火山で行われている時点で当然だが、環境は非常に暑い。日差しが容赦なく降り注ぎ、地面は肉を置けば焼けそうなほど熱い。力尽きて地面に倒れ伏せば、間違いなく火傷を負ってしまうだろう。

 

とはいえ、救急医学部のメンバーが山荘に常駐しており、火傷や熱中症などの治療はすぐに施される。そのため、この合宿で重症者が出ることはほとんどなかった。

 

しかし、訓練そのものもまた容赦のない過酷さを誇っていた。

朝は午前3時に起床し、朝食を済ませた後、午前5時から火山を一周する走り込みが始まる。その後は、射撃、組み手、模擬戦、戦術訓練を昼食を挟みながら午後10時までびっしりとこなす。訓練が終わったら夕食を食べ、仮設シャワーで体を洗い、山荘で雑魚寝するというスケジュールだ。

 

ちなみに、食事はすべて給食部が用意した弁当で、五日間の合宿中、毎日届けられる。

 

このような生活が続いたせいで、大多数の風紀委員は二日目あたりから不満が出始めた。主な不満は、「シャワーの時間が短すぎる」「シャンプーのワンプッシュ制はひどい」「早く寝たい! 肌がアビドスみたいになっちゃう!」など。不満の内容は、どれもいかにも女の子らしいものばかりだった。

 

 

 

 

上記のことは全く改善されずに、時間は過ぎていく。そしていつの間にか最終日の夜になっていた。

 

シロウは山荘の壁に背中を預け、シャワーの列を眺めながら今回の合宿のことを思い返していた。

 

「シロウは良いよな髪が短くて」

 

先程までシャワーを浴びていたイオリは濡れた髪にバスタオルを擦り付けながら、シロウの髪を見て言う。

拭き方が適当なのか、服が肌に張り付いており、浅黒い素肌と黒い下着透けて見えていた。

 

「意外とセクシーなの着てるんだな」

「どこ見てるんだお前」

 

イオリはシロウの足を軽く蹴って、隣に並ぶ、頭皮から石鹸の優しい香りが漂ってくる。

 

「そう言えば、いつになったら給食部は来るんだ?もう十一時だし……」

 

昨日までは九時に弁当は届けられていたのだが、何故か今日は中々来ない。もしかして夕食抜きになるのか?と悪い想像がシロウの頭によぎる

 

「明日は……起きたら直ぐに、バスでそのまま帰るから……朝食はないよね」

「学園に帰るまで空腹で過ごすことになるな……」

 

シロウは半分諦めの思考に入りながら、空いた腹を軽くさすって給食部の車を待った。

 

そうしていると、車の駆動音が遠くから聞こえた。

その音は時間が経つにつれて段々と大きくなっていく、給食部の車だと確信したシロウとイオリは車が来たら、即座に弁当を貰おうと思いながら、直ぐに走れる様な体勢になる。

 

そして、そんな体勢のまま、待っていると。

山荘の広場に車が新入した……

 

「あれ?」

「なぁあれって、給食部のじゃないよな?」

「あぁ……あの車は……救急医学部?」

 

入ってきた車は給食部の黄色いトラックではなく、救急医学部の黒く物々しい緊急車両だった。

 

「……ここにいる部員を回収しに来たのかな?」

「そうだとしても明日で良くないか?なんでこんな夜中に……取り敢えず言ってみるか」

 

ここで無駄な考察をしても意味はないと思ったシロウはイオリと一緒に車の方へ向かう。

 

車の方へ向かうと、風紀委員長と行政官が生気が微妙に感じられない救急医学部の少女と何か話していた。

 

「おーいアコちゃん何かあったの?」

 

自分の上司にあたり、学年的にも年上にあたる行政官相手にイオリは

 

「イオリさん……ちゃん付けはやめてくださいと言いましたよね」

 

軽く青筋を立てながら行政官は此方へ振り返ってくる、相変わらず羞恥心が欠如してるとしか思えない格好だ。

 

「まぁいいじゃん、んで何があったの?」

「……あぁその……」

 

行政官は少しだけ答えにくそうに頬をかいた。

 

「給食部が弁当を届けられなくなったらしいわ」

 

溜め息を吐きながら、風紀委員長が長い髪とコートを翻して此方へ向いて答えた。

 

「つまり……夕食は無しということですかね?」

 

シロウは委員長に分かりきった質問をする、その質問にヒナは首肯する。

シロウとイオリはその様子を見て気分を落ち込まながら腹を鳴らした。

 

「いえそう言う訳ではないです」

 

その様子を見ていられないと思ったのか、救急医学部の少女が両手で紙を開けながら言う。

広げられた紙は月明かりによって少しだけ透けており、なにか文章が書かれているのが見えた。

 

「それって、給食部から手紙?」

「はい、読み上げますが、良いですか?」

「お願い」

「では読み上げます」

 

少女は委員長から許可を貰うと、機械的にも思える声で紙に書かれた内容を話し始めた。

 

『風紀委員会の皆さまへ

 

お世話になっております。給食部です。

 

本日は皆さまにお弁当をお届けすることができず、誠に申し訳ございません。お詫びとともに、その理由をご説明させていただきます。

 

実は、私たち給食部にとって希望の星であり、来年度以降の給食部を担う新入部員である愛清フウカさんが、グルメテロリスト「美食研究会」に攫われてしまいました。そのため、私たちは彼女を救出し、給食部の未来を守るために戦わなければならない状況にあります。

 

皆さまには大変なご不便をおかけし、心よりお詫び申し上げます。今後はこのようなことがないよう、万全を期してまいりますので、何卒ご理解いただけますと幸いです。

 

引き続きよろしくお願い申し上げます。

 

給食部より』

 

「残った風紀委員は何をしてるんですかね」

「……美食研究会って、なんだ?」

「美食美食って鳴き声みたいに連呼しながら、気に入らない店を爆破したりする集団だよ」

 

イオリは怨みの籠った声色で言う、何度か食事を邪魔されたことがあるのだろうか。

 

「でも、結局夕食は無いってことじゃ……」

「まだ追記があります、読み上げます」

 

そう彼女は引き止めるように言うと、続きの文章を読む。

 

『食材や調理器具に関しては、救急医学部のセナさんにお渡ししておりますので、それを使って夕食を何とかしていただければと思います。風紀委員会の皆さん頑張ってください、私たちも全力で取り組みます。』

 

「はぁ?」

「えっちょっ?は?」

 

「……食材や調理器具はこの緊急車両11号に積んでいます、弁当のレシピも貰ってきているので、これを参考に夕食を……」

 

そう言いながら、救急医学部のセナはレシピの書かれたメモを委員長に手渡し、車から段ボールに収まった食材や調理器具を取り出し始めた。

 

「……どう説明しましょうか……委員長」

「どうしたもこうしたも、作るしかないでしょみんなで」

 

委員長は身長に似合わない低い声でそう言うと、こちらへ向き直り。

 

「とりあえず、イオリと……シロウだったかしら?」

「あっはい」

「セナのこと手伝ってあげて、私とアコは他の風紀委員に夕食について伝えてくるから」

 

そう言うと委員長と行政官は風紀委員たちが集まっているところへ向かっていった、その背中をシロウは飛びそうな意識で見つめる。

 

「おい何ぼさっとしてるんだよ、早く手伝え」

 

イオリにごんごんと背中を叩かれる、強い衝撃により意識が頭に引き戻される。

 

「あっごめん……」

 

軽く謝るとシロウはイオリ達と共に荷物を車から取り出し始めた。

 

その後は様々なトラブルがありつつも何とか夕食を作り出し、それにありつくことが出来た。

夕食を食べ終わった後は、風紀委員のほぼ全員が幽霊の様にふらつきながら山荘へと入り気絶した。

 

 


 

 

「あっつぅぅ……煮干しになりそう」

 

合宿から帰ってきたシロウは、ヘルメットを被りながらそう呟く。

ヒノム火山よりはマシではあるが、それでも暑いものは暑い。

 

「そういえば……冷蔵庫にアイスあったよな……うへへへ」

 

冷房がガンガンに効いた部屋でアイスを貪る自分の姿を想像する、心なしか足取りが軽くなる。

 

「待ってろ俺のエデン!俺が証明してやる!」

 

妙なテンションになりながら、シロウはうきうき気分でアクセルをベタ踏みする。

 

しばらくすると、木造の建物が見えてくる。

住んでいたはずのアパートとは似ても似つかない建物が。

 

「ん?あれ?間違えた?」

 

バイクを道の端で止め、スマホで地図アプリを開く。

地図で自宅とピン留めされている地点を見るが、ピンが刺さっているのは自分の位置の目の前だ。

 

「……あるぇ?」

 

スマホから目を離して、アプリ上で自宅となっている建物を見る。

建物には温泉と書かれた看板が立てられている。

 

「おん……せん?」

 

嫌な予感がする、さっきまで暑かった筈なのに、身体の芯から冷えるような感覚に襲われる。

ダラダラと流れる冷や汗を袖で拭いながら、近所の人に話を聞いてみる。

 

「あの……ここってアパートありましたよね」

「あぁ……あったな」

「あった……」

「四日ぐらい前にな、よく分からんタンクトップの集団がな、よく分からんことを言いながらアパートを爆破しちまったんだよ」

「爆破……」

「それでな、その場所から温泉が沸いてな、連中はそれで満足したのかどっかに行っちまったんだよ、アパートの大家さんはそれを利用して温泉施設を突貫で建てちまったんだよ、ほんと強いよなぁ」

 

頭がグラグラと揺れる、今まで溜まっていた疲労感が一気に解放されそうになる。

 

「おい、嬢ちゃん大丈夫か?具合悪いのか?」

「私の……」

「私の?」

 

「私の家がぁ……」

 

彼女は自分のキャラを忘れて、断末魔の様な声を口から垂れ流しながら、熱いアスファルトに倒れ伏した。

 

 




そう言えば山海経イベントの告知が来ましたね、レイジョぉ
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