元トリニティの生徒はゲヘナの風紀を守りたい。   作:スイソーミズクサ

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先生のキャラが分からない。
今回で一応プロローグ最後です。


七話 ハロー先生

 

「チナツ、頼める?」

 

魔王の様に椅子にふんぞりかえる銀髪の少女……ヒナは目の前にいるメガネの少女……チナツに言う。

 

「はい委員長、任せてください」

 

チナツはそう答えて、執務室から出る。そしてそのまま外に向かう。

風紀委員会の本部から出ると、チナツはスマホで連邦生徒会と検索する。

 

「なにしてるんだ?チナツ?」

 

チナツがスマホをポチポチしていると、低く柔らかい声が耳に入ってくる、チナツはスマホを触る手を止めて声のした方向を見る。

視界に映ったのは薄いブロンドの髪を短く切り、見た目だけなら優雅そうな少女……桐藤シロウだった。

 

「確か……シロウさんですか、今日はお休みのはずでは?」

「休みにしたんだけどさ……ちょっと色々あってね……暇になっちゃったんだよ」

 

シロウは恥ずかしそうに頬をかく。

 

「そうなのですか……私は今から連邦生徒会に行こうとしてるのですが……」

「連邦生徒会か、委員長に頼まれたのか?」

「はい、矯正局の生徒が一部脱走したと言う情報が入りまして、その事実の確認をと……」

「なるほどなぁ、何で行くつもりなんだ?」

「直通の電車があるので、それで行こうと…っ?…」

 

チナツはそう言うと、止めていた指を動かし、スマホを操作した。運行情報のサイトを確認すると、運転見合わせと表示されており、再開日時も未定だった。

 

「……あちゃあ、多分線路でも爆破されたか?」

 

シロウはチナツのスマホを覗き込みながら言う。何故あまり話したこともないのに、こんなに親しく接されるのだろうと彼女は思うが口には出さない。

 

「とりあえず……急いでるなら、俺のバイクに乗せるけど」

「いいのですか?」

「うん、二人乗りはしたことないけど大丈夫だ」

 

何故不安になるような情報を付け加えたのだろうとチナツは思いながら、「ありがとうございます」と頭を下げる。

 

「んじゃ、駐車場に行くか」

 

 


 

 

「……つきましたね」

「初めて来たが……こんな感じなんだな連邦生徒会事務局」

 

二人は連邦生徒会事務局の前に立っていた。

ゲヘナともトリニティとも異なる建築様式で作られた純白の建物は見たものを圧倒する迫力を持っていた。

 

「取り敢えず入りますか」

「あぁ」

 

チナツはシロウと共に事務局の中に入った。

 

事務局の中はざわついており、さまざまな学園の生徒たちがいた。チナツ達はその人混みを掻き分け、待機するためのスペースを何とか確保した。

 

「多いですね」

「まぁ最近問題多いしな、ゲヘナが常に治安悪いせいで分かりにくいけど、他の自治区とか無茶苦茶治安悪くなってらしいし」

 

そんな会話を交わしながら、チナツ達は連邦生徒会長が現れるのを待つ。

 

「そう言えばさ、直接ここに来なくても電話やらメールとかで確認を取ればよかったんじゃないか?」

「委員長も何度か試したそうですが、返事が返ってこなかったみたいで……」

 

チナツはシロウにそう答えると、シロウは少し難しそうな表情を浮かべ、俯いた。暫くしてエレベーターのベルが鳴った。

 

生徒達は一斉にその方向を見る。

そこにいた全員があのふわふわとした雰囲気を持つ連邦生徒会長が出てくると予想……望んだ。

 

そしてエレベーターから出てきたのは。

 

「では、先生、こちらへ」

 

連邦生徒会長とは対照的な冷たく鋭い雰囲気をまとった主席行政官、七神リンが、大人と共にエレベーターから現れた。リンは一瞬だけ此方を見ると、すぐに近くの非常出口に手を伸ばす。

 

「ちょっと待って!やっと見つけたわよ、代行!連邦生徒会長を連れてきて!」

 

待っていた生徒の内の一人が、その場を立ち去ろうとするリンを引き留めた。リンは眉間に皺を寄せ、溜め息を吐いた。

 

「どうされましたか、ユウカさん?」

「どうしたもこうしたも無いわよ!今の状況分かってて言ってるでしょ!」

 

今にもキー!とハンカチを噛みだしそうな勢いのユウカはリンに詰め寄る。それに続くような形でチナツを含めた他の生徒たちもリンの元に向かう。

 

「主席行政官、お待ちしておりました、今の状況について説明をお願いできますか?」

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されてします」

 

次々と同じような言葉を言う生徒達、リンは隣に居る大人に目配せする。

 

「面倒な人たちに捕まってしまいましたね、どうしたのですか、各学園からわざわざ訪問してくださった、生徒会、風紀委員会、その他の時間を持て余している皆さん」

 

苛立っているのかリンは刺々しく嫌味な言い方をする。愛想のかけらも無い、その対応は生徒達の不安を更に大きくした。

 

「暇そ……大層な身分の方々訪ねてきた理由は、よく分かっています、今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うため……でしょう?」

 

「やっぱり分かってるじゃない! なんで何もしないのよ!連邦生徒会なんでしょ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありましたが、事実でしょうか?事実であるなら、脱走した生徒たちの情報を」

 

「不良たちが、うちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に増えてきました、治安の維持が厳しくなっています」

 

「戦車やヘリコプターなどの、出所の分からない武器の不法流通が2000%も増加しました、これでは正常な学校生活に支障が生じてしまいます」

 

そう生徒達は次々と自治区で起きた問題の説明を求める。

 

「こんなに酷い状況なのに連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」

 

ユウカは追い詰める様にリンににじり寄っていく。リンは心底面倒そうな表情をしながら、こめかみを抑え始めた、何か悩んでいるようだ。

やがて決心したのか、リンはユウカ達の目を見つめて答えた。

 

「はぁ……連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

 

彼女は悩んだ末に誤魔化さないと悟ったのか、衝撃的な言葉を口にした。

 

「……え!?」「……!!」「やはりあの噂は……」

 

「結論から言うと「サンクトゥムタワー」の最終管理者がいなくなったちめ、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回する方法を探していましたが……先程まで、そのような方法を見つかっていませんでした」

「先ほどまで……ということは、今は方法があるということですか、首席行政官?」

 

そう黒いセーラー服を纏う生徒……ハスミはリンに問いただす、その問いにリンは首肯し、隣にいた大人に目を向ける。

 

「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

“えっ私?”

 

チナツ達の目線は一斉に大人……先生の方へ向いた。急に視線を向けられ驚いたのか挙動不審になる、その大人に生徒達は懐疑を向けた。

 

 


 

 

弾と硝煙、火花が嵐の様に吹き荒れる、その発生源はマスクに白いばつ印を付けた生徒たち、一般的にこのキヴォトスでは不良と呼ばれる者達だ。

チナツ達は遮蔽物に隠れて様子を伺っていた。

 

目的は先生をシャーレに送り届け、サンクトゥムタワーの制御権を手に入れることなのだが、不良達がその道に屯しているせいか先に進めない。

 

「うっわ……本当にDUかよ、ここ」

「酷い有様ですね」

「まさかゲヘナと協力するなんて……」

「閃光弾準備しておきますね」

「なんで……私が……」

 

各々そんなことを口にしながら、戦闘の準備をする。

 

「先生はここで待機していてください、銃弾に当たってしまえば先生は死んでしまいますから」

“わかった”

 

チナツは後ろにいる先生に、そう言いながら周囲を見渡す。

 

「なんなのよ本当にっあいたぁ!?」

 

隣にいたユウカが悲鳴を上げながら後ろに倒れた、その声にチナツはびくりと体を震わせる。チナツは額を抑えながら悶えるユウカに声をかける。

 

「大丈夫ですか?」

「うっうぅ大丈夫、と言うか……あいつら違法JHP弾使ってるじゃない!?」

 

ユウカは自分の額に当たったであろう、先頭が大きく開いた弾丸を摘みながら言う。

 

「一度頭を隠してくださいユウカ、それに、ホローポイントは違法指定されてはいません」

「うちの学校ではこれから禁止になるのよ!跡が残るじゃない!」

 

ヒステリックを起こした母親のような口調になりかけながらユウカは言う。

 

「そもそも!なんで私がこんなところにいなきゃいけないの!私はセミナーの……生徒会の一員として連邦生徒会長に今の状況を説明して欲しかっただけなのに!その為に来たのに!なんで他校の風紀委員と一緒に戦う羽目になるのよ!」

 

ユウカはそう言い終えるとふぅと溜め息を吐いて、頭を抱える。

そんなユウカの様子を見て、先生が口を開いた。

 

“そう言えば、ここにいるみんなは別の学校なの?”

「一応私とシロウさんはゲヘナ学園の生徒で、同じ風紀委員ではありますが、一緒に活動したことは殆ど無いですね」

「私とスズミさんは同じトリニティではありますが、私は正義実現委員会、スズミさんは自警団というそれぞれ別の組織に所属しています」

 

先生はふむふむとうなづきながらユウカの方を見て。

 

“ユウカはセミナーだっけ?”

「はい……セミナー……ミレニアムサイエンススクールの生徒会で会計をやっています」

“そっかぁ……その良かったらだけど、戦闘の指揮は私に任せてくれないかな”

 

先生は微笑みながらそんなことを言う、その場にいた全員がその言葉に「はい?」と困惑の声を漏らす。

 

「えっと……先生、その……先生は一般人ですよね?キヴォトスの外から来た……」

 

ユウカは先生にそう聞くと、先生は首を縦に振る。

 

“まぁ、そうなんだけど……聞いたところだと、ここにいるみんな、一緒に戦ったことはないんでしょ?”

「まぁそうですけど……」

 

ユウカの返答を聞くと先生は遮蔽物の外を指差す。指差す先には沢山の不良、大体一小隊程だろうか。

 

“このまま戦っても、多分負けると思う、もちろん、君たちの実力を疑っているわけじゃない、ただ、お互いの戦い方を知らないままじゃ、みんなバラバラに動いちゃって思う様な戦い方が出来ないと思うんだ”

 

先生は全員の顔を見渡しながら言う。

 

“でも、全員と戦い方を把握して、それを考慮した作戦を錬る時間は今の私達には無い、だから私に任せて欲しいんだ、拙い指揮になるとは思うけどバラバラに動くよりはマシだと思うから”

「成程、分かりました、先生の指揮下に入らせてもらいます」

 

スズミは誰よりも先に返事をする。それに続くように他の生徒たちもそれに了承していく。

 

“じゃあ、スズミは閃光弾をあそこに投げて、私が合図するから、シロウとユウカは不良の子たちが目が眩んでいるうちに先陣を切って、ハスミはユウカ達の援護をチナツは住人や生徒達の救護をお願い”

「「「「「了解(((しました)))」」」」」

「じゃあ数えるね」

 

先生がそう宣言すると指を三本立てた。

ハスミはインペイルメントに銃弾を込める。

 

 

「サン」

 

シロウとユウカは銃を構え走り出す準備をする。

 

「ニー」

 

チナツは治療薬の残数を確認する。

 

「イチ」

 

スズミは閃光弾を構える。

 

「ゼロ」

 

スズミは閃光弾のピンを抜き不良の集団に投げ込んだ。

不良達は投げ込まれたモノををなんだなんだと目を向ける、そしてそれが閃光弾であると理解した頃に、閃光弾は炸裂した。

 

地上に太陽が現れたのでは無いかと思ってしまう程の爆発的な閃光、それをもろに浴びた不良達は悲鳴を上げる。

 

そして閃光が消え去ると共にユウカとシロウ、そしてスズミが遅れて突撃する。

 

「目がぁぁぁ!きゃん!?」

 

ユウカは二丁のSMG、ロジック&リーズンを複数人に連射し制圧する。会計とは言ってはいたが中々の戦闘技術だ。

スズミは的確に急所に蹴りを入れながら懐から取り出した縄で不良達を縛り上げていく。

シロウはネバーダイで不良達の頭を撃ち、スタンガンを首に当てて気絶させていく。

ハスミはその戦闘をインペイルメントを構え、援護射撃を行う。

 

そうしていくうちに不良達、全員を無効化し、その場を静圧することに成功した。

 

「制圧完了」

 

スズミは無効化された不良達を電柱などに縛り付けながら、そう呟く。

 

「上手くいきましたね先生」

「なんというか、今までより、やりやすかったような……」

「やっぱり、そうよね?」

「……指揮、これがあるだけでこんなに戦いやすくなるのか」

 

生徒達は一斉に先生の方を見る、先程まで怪しむ様な視線とは違う、尊敬にも近い感情を含んだものだ。

 

“あはは……上手くいったなら良かったよ、とりあえず進もうか”

 

先生は少しだけ顔を顔を赤くしながら、そう言った。

 

 


 

 

生徒達は不良達を制圧しながら、シャーレへと向かう道を進む。

 

「もっもうシャーレの部室は目の前よ!」

 

ユウカは息を荒くしながら言う。明らかにヘロヘロになっている。

先生はそんなユウカを心配そうな目で見ながら走っていると、手に持つ端末から連絡が入った。

 

「今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました」

 

端末からリンの声が聞こえる、全員が走りながら、その端末の声に耳を傾ける。

 

「ワカモ、百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です」

 

「「「「「ワカモ!?」」」」」

“ワカモ?”

 

その場にいた生徒達が驚きの声をあげる、先生は誰?と言った感じで首を傾げる。

 

「似たような前科がいくつもある危険な人物なので、気をつけてください」

 

プツンと端末の通信が切れる。その場に重たい空気が流れる。

 

「ワカモってあの極悪犯罪者!?」

「確か災厄の狐とも呼ばれる生徒ですよね、まさかそんな生徒が脱獄していたとは」

「まぁそれならこの状況も納得できるか、直接戦闘は避けた方が良いかもな先生」

 

先生はワカモとは?となっていたが、生徒達の反応から危ない生徒ということを理解した。

そんなことを言っていると、シャーレ前の広場まで着いた。

 

ダン!!

 

砲撃音が広場の中心から鳴る、砲弾がこちらに先生に向かって迫ってくる。

 

「先生!!」

 

チナツはすぐ近くにいた先生を抱きつき、守るようにしてそのまま前方の地面に飛び込み、砲弾をかわした。

 

 

「だっ大丈夫ですか先生!」

“ありがとうチナツ、助かったよ”

 

顔を赤くしたチナツは先生を安全な場所に隠れさせる。

他の生徒達も車などの遮蔽物の後ろに隠れる。広場には戦車が一台それを取り巻くように不良が数人。

 

「クルセイダー1型……!私の学園の制式戦車と同じ型です」

「不法に流通された物に違いないわ!PMCに流れたのを不良達が買い入れたのかも!」

「とりあえず、ゴミってことだろ!さっさと壊すぞ!」

 

シロウは興奮気味にそんなことを言うが彼女には戦車を貫く程の火力はない。

 

“とりあえずスズミは閃光弾をお願い!ユウカとシロウは戦車の周りの子たちの撃退を、ハスミは徹甲弾とかそう言うの持ってる?”

「こういう時の為に持ち歩いています」

“じゃあお願い!戦車の周りが片付いたらお願い”

 

先生はそう言うと、数秒後にゴーサインを出した。スズミが閃光弾を投げ、不良たちの目を眩ませる。その間に、ユウカとシロウが素早く不良たちを無力化した。

 

そしてハスミは黒い何かを銃身に纏わせる。

 

「撃ち抜く……!」

 

黒い何かは赤黒い光に変わり徹甲弾と共に打ち出される。その光を纏った徹甲弾は戦車の燃料タンクを貫き爆裂させた。

それにより戦車は内側から爆発して、中にいた生徒は吹き飛ばされ、近くの建物に頭から突っ込んだ。

 

 

 


 

 

戦車の処理を終えた、生徒達はシャーレの前にいた。

 

「やっと着いたわね」

「ふぅ!終わったぁ……」

 

全員が緊張の糸を切ってふぅっと息を吐いた。

 

「「シャーレ」部室の奪還完了、私も、もうすぐ到着予定です、建物の地下で会いましょう、先生」

“分かったよ、えーと……リンちゃん”

「やめて下さいその呼び方」

 

そう苛立った声で言いながら端末の通信を斬られた。

 

“とりあえず、みんなありがとう、後は一人で大丈夫だと思うから、一人で行くね”

 

先生は生徒達に頭を軽く下げ、シャーレの中に入って行った。

生徒達は軽く手を振った後にシャーレのドアの前に座り込む。

 

「とりあえず先生が帰ってくるまで待機か……」

「そうですね……」

 

シロウとチナツは持ってきていた水筒を飲む。ハスミはその様子をじっと見つめる。

 

「……飲みたいのか?」

「いえ、結構です」

 

ハスミは目を細めながらシロウを見つめる。

 

「あの……なんだ?」

「……貴方、ナギサ様の妹さんですか?」

「だったらなんだよ」

 

シロウはハスミの問いに喧嘩腰で返す、ハスミはその返し方に溜め息を吐いて。

 

「いえ、昔、遠目で見た貴方はとても気品に溢れた人物に見えたのですが、その……少しがっかりしてしまって……」

「何が言いたいんだよ!」

「シロウさん!!」

 

シロウは声を荒げて手に持っていたネバーダイをハスミに向けようとするがチナツに腕を抑えられる。

 

「ハスミさん……あまりそういう事には触れない方が良いと思います」

「そうですね……すみません、疑問に思ってしまったもので」

「うっ……俺も悪かった」

 

スズミがハスミを注意をする。

注意を受けたハスミはシロウに軽く頭を下げる。シロウは頭を下げたハスミを見て頭が冷やされたのか、頭を下げた。

 

だが空気は気まずくなってしまった、その空気のまま生徒達は先生が来るのを待った。

 

すると

 

パリーン!!

 

「きゃーー!!」

「えっ?いたぁ!?」

 

突如背後のドアが破られた、そして破られたドアのすぐ正面にいた、シロウは思い切り、ドアを破った存在に背中を踏み抜かれた。

他の生徒達は痛みに悶えるシロウを見向きもせずに、去っていった人物に目を向ける。

 

「あれってワカモよね」

「黒い着物に白い狐の仮面、間違いなくワカモですね」

「なぜシャーレから……」

「潜伏してたのではないでしょうか?」

「それって先生が危なくない?」

「……とりあえず行きましょうか」

 

生徒達は先生が心配になったので、シャーレの中に入ることにした。

 

シャーレの中は曇り一つ埃一つ、指紋一つない新品ピカピカの状態だった。だが電気は付いていない。

 

「うぐぐ……結構綺麗だな」

「そうね……さすが新築」

 

シロウは痛む背中をさすりながらそんな感想を述べ、ユウカもそれに同調する。しばらく廊下を歩いていると明かりがついた。

 

「明かりがつきましたね」

「サンクトゥムタワーの制御権が戻ったみたいです」

 

チナツはスマホの通知のその事実を確認する。

 

「その通知が来たってことは、先生は無事ってこと?」

「そう言うことになりますね」

 

廊下の真ん中に立ち止まり話し込んでいると。

 

“やっ、みんなどうしたの?”

 

突然、背後から声をかけられ生徒達はびくりと背中揺らして、振り返る。

振り返った先には朗かな笑顔で手を振っている先生がいた。

 

「先生でしたか……びっくりさせないでください」

“そんなにびっくりしなくても……”

 

先生は肩を落として、悲しそうにする、その仕草は非常に子供っぽい。

 

「何をやっているですか先生……」

 

先生の背後から現れたリンがそう言って溜め息を吐いた。

 

 


 

 

仕事を終わらせたシロウとチナツはバイクでゲヘナまで帰ったいた。

 

「大変でしたね今日は……」

「そうだなぁ……委員長に何日か休みもらわないと割りに合わねぇなぁ」

「シロウさんさ今日お休みだったはずですよね……休みの日に勝手に出ていって、働いたのにそういったことを要求するのはちょっと……」

「うっさいわい」

 

チナツはシロウの冗談に真面目に返す。

 

「そう言えば、チナツ……先生はどうだった?」

「先生ですか?良い人だと思いましたけど……どうかしましたか?」

「いや、なんでもないんだけど……まぁうん、その……いいや」

 

シロウは途中で言葉切り上げる、チナツは言葉の続きが気になるが、追求してもはぐらかされる気がしたのでやめた。

 




多分、段々とシロウの影が薄くなる予感がする。

因みにストックはこれが最後なので、次までいくつか開くと思います。
十月中には出します。

出来れば評価、感想をお願いします。多分やる気が出ます。

9/26追記 
明らかに間違ってる所や気に入らない個所があったので修正しました
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