TS異世界転生姫プレイ   作:パンデュ郞

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第39話:シャーロットとオークション二日目

 オークション会場内に移動し、俺たちは改めて周囲の確認をした。

 レイナード達の方を見る。二階には不審なところはなかったらしい。一階にも、特におかしなところはなかった。

 

 昨日と同じ席に座り、リヴェンと状況の確認をすることにした。

 

「んー、会場にも何もないとなると、どこになりますかねぇ」

「わからん。が、あいつは確実にどこかで準備を進めている」

「地道にやるしかないわけですね。世知辛いですねぇ」

 

 こっちにも同じぐらいの天才がいればいいのかもしれないけど。あいにくそんな当てはない。

 

「もし、直接対決になったとしたらどうしますか」

「それを避けるために動いているわけだが、そうだな……正面から戦った場合、勝ち目は薄いだろう」

「レイナード達がいてもですか?」

「ああ」

 

 レイナード達込みの話題は初めてだったけれど、それでも即座に断言された。

 卑屈になっているわけではもうなさそうだ。なら、冷静に分析してそうだということ。

 ごくりと唾を飲み込んだ。

 

「あいつが本気になれば、おそらく勝てる奴など殆どいない。現王すら怪しいだろう」

「なら、なんとしても直接対決は回避しないとですね」

 

 視線を隣からステージへ戻す。

 ステージの上に人が上がり始め、そろそろ二日目の競売が始まりそうだ。

 

「勝ち目があるとすれば……おそらく最初は手を抜いてくるだろうからその隙を叩くことだな」

「え? そんな慢心してくれるような相手なんですか?」

「ああ。あいつはそういう節がある。自らが強者だと理解しているからこそ、全力を出さずに相手の全力を受け止めて上から捻り潰す。それがあいつの戦い方だ」

 

 性格わっるいなおい。

 でもまあ、こちらとしては嬉しい情報か。わざわざ勝ち筋を用意してくれてるんだ。喜ばない理由はない。

 

 二日目の開始文句が告げられ、オークションが開幕した。

 今日は純粋に楽しむのではなく、周りの反応を窺うのに使う。

 先ほど聞いた話や、ホールで盗み聞きした話を頭に入れて、誰と誰が繋がりがありそうか。どんなものをどのグループが狙っているのかを情報と仕入れることにしたのだ。

 

 耳から情報を仕入れながら、目ではステージの上を見て、口ではリヴェンとやり取りを続ける。忙しいなこれ。

 

「不意を突く策とかあったりします?」

「あるわけないだろう。あるならとっくにやっている」

「そうなら、出たとこ勝負するしかないってのに変わりないんですね。やだなぁ」

 

 おっ。ステージの床が開いて下からショーケースが上がってきた。ああいう仕組みもあるのか。結構色んなギミックがあるんだな。

 

「具体的なお姉さんのスペックを聞いてもいいですか? どんなことをしてくるかとか」

「ああ、共有しておいた方がいいか。だが、あくまでも俺が知っている範囲だ。奥の手がどこまであるかは知らん」

「それでも、何も知らないよりかはマシですよ」

 

 よくよく見たら、ステージの上の面子昨日と少し変わった? 毎日交代制なのかな。

 はつらつと声を張り上げているから、四日間連続同じ人物がやるのは辛いのだろうか。

 

「使用武器は鞭。特殊な素材を使っていて、八つに裂ける。それぞれを魔力で動かすことで、一つの武器ながら多種多様な状況に対応するのが基本の戦闘スタイルだ」

「鞭、ですか。となると、射程が長いですね。手数もあると」

 

 常に先を読んでくる相手が手数を持って襲ってくる。この字面だけで相当なやばさがわかる。

 

「それだけじゃない。単体の強度が問題だ。バジリスクの鱗を仕込んでいて、単純な当たり合いでは金属製の刃物にも引けを取らない。むしろ、刃こぼれを誘発させてくる面倒な武器だ」

「変幻自在の凶器ですか。何手先も読んでくる相手が使うとなれば、相当厄介でしょうね」

 

 けれど、絶望するというほどではない。

 ちらりとリヴェンの顔色を窺うと、苦虫を嚙み潰したような表情をしていた。

 

「……後は、俺たちの一族にはそれぞれ権能と呼ばれる特殊能力が伝わっている」

 

 これを言い出すのに、相当苦慮したようだ。表情が物語っている。

 権能。それは魔法とは違うのだろうか。

 今のところ、血統による特殊能力の類は聞いたことがない。つまり、相当希少だ。

 

 権能についてよほど語りたくない何かがあるのか。それとも、口に出してはいけない口外禁止の内容なのか。状況的に、前者だと思う。

 でも、聞かないわけにはいかない。今は。

 

「その権能が問題なんですね?」

「ああ。正面からだと戦いにならない理由でもある」

 

 そんなになのか。それは、怖いな。

 待った。血統に依存するということは、リヴェンにもその権能とやらがあるのか?

 なら、それで対抗できる可能性は……いや、ないな。あるなら、こんな表情はしないだろう。

 

 それに……今は触れてほしくないように見える。

 だから、俺は気づかない振りをする。今は。それでいい。

 

「あいつの権能を一言で表すならば――」

「おおっと! これは驚きですよ!」

 

 彼が言いかけた言葉は、ステージ上から会場中に響き渡る声でかき消された。

 あまりの大きさに、俺たちは驚いて揃ってそちらへと視線を向ける。

 

「開始金額銀貨十枚の品に、なんとなんとなんと金貨二百枚が出ました! 入札されたのは二階席のお客様!」

 

 ステージ上の司会が大仰に驚いた身振りをして、入札者の方を指し示す。

 誘導にしたがってそちらへ視線を向けると、相手と視線が合ってしまった。

 

「……げっ。眼が合いました」

「あの馬鹿か」

 

 昨日廊下で愛人になれと言ってきたあいつ。自分はこれほど財力があるのだと見せつけたいのか、視線が合ったと気が付いた瞬間にこちらへ軽く手を振ってアピールしてきた。

 リヴェンも視線を向けたことを見ると、すぐにやめたようだけれども。

 

「今落札されたのは……東の国から伝わったお札? 魔道具の類ですね」

「なるほどな。そういう事か」

 

 リヴェンは即座に状況を理解したらしい。

 え、何か意図があっての行為なのこれは。

 

「おい、今回の品に入札していたのは誰かわかるか」

「え? えーと、三人四人ほどが回してたと思います。声を聴き分けてた限りですけれど」

「なら、競売における敵グループはそいつらだ。覚えておけ」

 

 はえ? 敵グループ?

 どういうことだろうか。

 わかってない様子の俺を見て、こいつは追加で説明を開始してくれる。

 

「先ほど競売におけるチーム戦の話をしていただろう」

「ええ、そうですね」

「今、あいつらも同じことをしていたということだ」

 

 なるほど、複数人の仲間内で値段を吊り上げて、他の連中の戦意を消す方法か。そう考えると、先ほどの品に入札していたのはあいつの仲間の可能性が高いと。そういうことね。

 でも、それと何の関係が? どうして敵だと断言できる?

 

 リヴェンはわかってない様子の俺を見て、言葉を続けてくれる。

 

「カタログによると、東の国由来の品はこのお札ともう一品出品予定だ。わざわざこちらに視線を寄こしてきたところを見ると、これは単純な宣戦布告だろう」

 

 ……は?

 ここまで言われれば何となくわかる。

 いや、偶然の可能性もあるけれど、あいつから感じる敵意を考えれば杞憂とも言い切れない。

 

「それって、もしかして……」

「ああ」

 

 リヴェンは深く椅子に座り直した。腕を組み、どこか呆れた様子だ。

 悪い意味で、毒気を抜かれた感じ。

 

「どこから情報が漏れたかは知らんがな。あいつら、明日の刀でも同じことを仕掛けてくるつもりのようだ」

 

 東の国の品由来の物を競り落としたのを見せつけて、俺たちは明日の東の国の品――刀も競り落とすぞ、と。

 その品が俺たちが狙っている品だと知っての行動かどうかはわからないけど、知っているような気がする。あの雰囲気、悪意を持っている人のそれだった。

 

「金貨二百もかけたのは、これだけ財力があると示威しているんだろう。お前らに勝ち目はないぞと、見せつけているつもりだ」

「ちょ、ちょっとそれまずくないですか?」

 

 流石に上層階級とまともな財力で張り合うのは厳しいものがある。

 更に、今から向こうを懐柔することもできないだろう。そうなると、思っていた以上に厳しい競りの勝負になってしまうはずだ。

 せっかくレイナードのおかげで敵が減って、競り落としやすくなったのに。全て白紙どころか悪化してしまったようなものだ。

 

「心配するな」

 

 それでも、リヴェンはうろたえない。こちらは想定の範囲内だという態度だ。

 

「元から予想はできていた。あの類の連中は、プライドばかりが高くてやり返さずにはいられないからな」

「な、なら勝ち目があるってことですよね?」

「当然だ。あいつはこちらを一介の冒険者と侮っている。だが、俺はそれを超えるだけの用意をしてある」

 

 いい憂さ晴らし相手を見つけたと言わんばかりの笑み。

 大分ストレスたまってたんだろうなと、察する。

 でもまあ、こっちの雰囲気の方が一緒にいて気が楽かな。楽しそうで何より。

 

「情報戦? 望むところだ。本来、俺の戦場はそっちだったんだからな」

 

 俺は苦笑いで答えた。

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