TS異世界転生姫プレイ   作:パンデュ郞

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第51話:シャーロットと暗闇

「それじゃあ行きましょうか!」

「ちょっと待て」

 

 ダンジョン前で合流し、俺たちは装備を確認していざダンジョンへ! というタイミングで止められた。

 

「なんですか」

「なんですか、ではないだろう。なんだその装備は」

「なんだ、と言うと、必要な装備を整えただけですよ!」

 

 今回潜るダンジョンはかなり特殊な条件のダンジョンだ。

 一寸先は闇、という言葉が相応しい暗闇に包まれたダンジョン。不思議なことに、光があっても一定距離離れると見えなくなるらしい。

 だから、俺は全身に光を発することで全方位照らすことにした。

 決して暗いのが怖いだとかそういうわけではない。本当だよ? 怖くて少しでも明るくしようと考えたわけではないからな?

 

 まさかまさか、そんなアリスちゃんじゃないんだから。

 ああ、夜中に怖がって縋りついてくるアリスちゃんは本当にかわいい。犯罪臭はしないよ。今の俺は美少女だからね?

 閑話休題。

 

「何があるかわからない場所で、動きづらい恰好はやめろと言っているんだ」

「あっ! ちょっと、やめてください、私の装備を剥がないでください!」

「動きづらいだけだろう! あとはこんなにチカチカする奴がいると気が散る!」

「そんな殺生な!」

「騒ぐな!」

 

 そうして、大した抵抗もできないまま俺は身ぐるみはがされて、ヘッドにつけたランプと手に持ったランタン型の明かり器具しか残してもらえなかった。

 うぅ……。もうお嫁にいけない。

 

 あっ、ちょっとそんな本気でしょうもないものを見る眼で見ないでほしい。結構精神的ダメージが入る。

 

「ほら、行くぞ」

「ああ、待ってくださいって。もう」

 

 最低限の装備のまま、先に進むリヴェンの後を追いかける。

 ちょっと思うところはあるけれど、従うしかない。

 

 洞窟の入り口のようなところから中に入り、世界ががらりと変わる。

 

「うわっ」

 

 暗い。あまりにも暗い。

 十歩先は完全な暗闇。進むのには支障はないが、少し間違えると方向感覚を失ってしまいそうだ。

 これは……マッピング間違えたら二度と外に出られないかもしれない。

 周囲の光景が暗闇に包まれているだけでこんなに違うのか。夜道を歩くのとは違った怖さがある。壁も無機質な石壁だし、マッピングの手助けには一切なってくれそうにない。

 

「行くぞ」

「進む速度、少しゆっくり目でお願いします!」

 

 マッピングミスしないように、しっかり手に紙を抱えて進む。

 今回はこのダンジョンのマップを頭に入れている人物がいないので、マッピングしながらの探索になる。

 どのぐらいの広さなのかもわからないから、様子見様子見しながらの探索となる。

 一応、十階層ぐらいにいると思われるって注釈はあったから、その階層を目指すことにはなるか。

 

 今回はダンジョンに慣れるための探索だ。

 十階層までとなると、道中エリアボスも倒さないとだろうし、そこそこの装備を整えないといけない。

 今回のは、深く潜るために必要な事前調査目的みたいなものだ。

 

 欲しい情報は、出てくるモンスターの傾向とできれば対策。

 エリアボスは等間隔の階層に出てくることが多いから、できればエリアボスの階層も知りたいかな。

 だから、欲を言うのであればエリアボスの階層までのマッピング完了して、出てくるモンスターの傾向がわかれば万々歳かな。

 

 今回俺の両手はマッピング用の道具で埋まっている。

 前衛はリヴェン一人だから、これまでと違うけど大丈夫だろうか?

 

「リヴェンさんは大丈夫そうですか? 暗くて危ないですけれど……」

「ふむ、まあ問題ないだろう。気配まで消える闇ではなさそうだ」

 

 まるで、気配すら感じなくなるものがあるかのような。

 というか気配って何なんだろうな。俺はよくわからんのだけれど。感じたことないわ。部屋の隅走ってる虫の気配ぐらいだよ気が付いたことがあるの。

 

「じゃあ、いつも通り前衛はお任せします」

「ああ。そっちはしっかりマッピングしておけ」

「戦闘しながら方向覚えるの大変ですものね。任せてください!」

 

 役割分担の確認も終わった。

 さあ、いざ進もう!

 

 マッピングの基礎についておさらいしておこう。

 まず、マッピングにおいて最も重要なのは現在地と、出口だ。最悪でも生きて帰ることが求められる。そのため、どこをどのように進めば出口に戻れるかは最低必要条件となる。

 他にも、現在地がどの位置にあるのかも求められる。

 

 幸いにも、このダンジョンも迷宮型のようだ。扉がそこらかしこにあって小部屋が乱立しているようなダンジョンでないから、マッピングの手間はかからない。

 地獄だからなあのマッピング。一回だけやったことがあるけれど、二度とやりたくない。

 

 迷宮型のダンジョンでは、自分の歩幅を元にして曲道までの距離をおおよそ計るのが基本的なマッピング方法だ。

 最初の分かれ道までは真っすぐ、そこから右に進んで……といった風に紙にマップを記していく。

 

 そうしている間にも、なんか前方では戦ってる感じがする。

 てか足元にべちゃりと体液が飛び散ってきた。ひぇ。

 特に何も言われてないからマッピングに集中してるけれど、大丈夫かな?

 てか、この暗闇の中でリヴェンは本当に良く迷わずに進めるな。怖くはないのか? ないんだろうな。

 

「おい」

「はい?」

「行き止まりだ」

「あらら」

 

 どうやら最初に選んだ道は行き止まりだったようだ。

 迷宮型はこういうのが面倒臭いんだよな。先に進むために謎ギミックを解かなければならないダンジョンに比べればマシだけれど。入り直すたびに解き直しだから、ゲーム的だよなぁって思ったことがある。誰が直してるんだろうなああいうの。

 

「それじゃあ、一個前の分岐路まで戻りましょうか」

「ああ」

 

 踵を返し、隊列を入れ替えてきた道を戻る。

 

「しかし、不思議な闇だな」

 

 道中でリヴェンが話かけてきた。マッピングが終わっている場所だし、モンスターも来る途中に倒したから暇だったのかもしれない。

 

「不思議、ですか?」

「ああ。明らかに光が届くはずの場所にも、一定距離離れると光がかき消されている」

「ダンジョンですからね、そういうこともありますよ」

「それが俺からすると不思議な感性なんだがな」

「と、言いますと?」

 

 不思議だろうか? ダンジョンだから不思議なことが起こるのは当然じゃないか?

 

「ダンジョンと言えど、俺たちは入り口から入っているはずだ。ならば、ここは異界ではなく世界の地続きの場所であるはずだろう」

「ええ、まあ」

「ならば、俺たちの世界の法則が働いているはずだ。だが、ダンジョンの中では摩訶不思議なことが平然とまかり通る。これが不思議と言わずとしてなんとする」

 

 ……ああ、言いたいことはわかった。

 確かに、そこまで深く考えたことはなかったな。俺の場合、前世の記憶でゲーム的に考えていた面もある。

 そっか、現実世界の法則がダンジョン内でのみ通用しなくなってるわけではないものな。

 それなのに、ダンジョンの中では現実では考えられないようなことが起こる。これが不思議だと。

 

 んー、言われてみれば確かに。

 すっかり環境に慣れてしまった俺には出てこない発想だった。

 色々なことを注意深く見るリヴェンならではかもな。好奇心が強いというかなんというか、そういう面があるから。

 

「でもまあ、起こってるんだから仕方がなくないですか?」

「仕方がない、か。そう考えることもできるな」

「そうですよ。それに、考えてわかることでもないですし」

 

 考えて答えが出るのならいいけど、答えが出ないことを考え続けるのは単純に疲れる。

 時間を使うのなら、もっと有意義なことに使うべきだ。

 あっ、そろそろ分岐路に到着するな。

 

「ほら、そろそろ分岐路に着きますよ。その手の話は、探索が終わった後にしましょう」

「……そうだな。そうするとしよう」

 

 一旦は納得してくれたか。よかったよかった。

 

「それで、右に進めばいいのか?」

「ですね。この三叉路は右に曲がったので。左だと来た道を戻ることになります」

 

 地図を一応見返して、進む方向の指示は出す。

 マッパーの務めだからな。

 

 その後、何度も行ったり来たりを繰り返して、時間の感覚も失いながら俺たちは少しずつダンジョンの探索を進めていった。

 戦闘に関しては、リヴェンが新しく手にした刀が使い勝手がいいのか、それとも単純に弱いのか、片手間程度で進んでいく。

 

 結果的に、本日の最終結果は六階層のエリアボス前まで到達。

 そこまでのおおよその道のりのマッピングの終了という、見越してた最良の結果を得られたと言ってもいいだろう。

 

 ただ、道のりは長いから、ダンジョン内で日を超す準備は必須という結論に至って、本日は締めとなった。

 実際に捜索のためにダンジョンに潜るのは明後日。明日は準備に費やすと決めて、俺たちは本日の探索を終了とした。

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