オリキャラのみで、多数登場しますが、基本的に再登場の予定はありません。
「おう、
「刹利が学校に捕まってたんだよ。おい、
「抜かせ、こちとら体力がものをいう職業だぜ?お前のような、机仕事とは違うんだよ。
お前こそ、少し見ない内に衰えたんじゃないか?腹のあたりとか?」
「てめぇ、言いやがったな!」
夕方、学校に迎えに来た父の車に乗り、父の古い友人である
中学時代からの悪友らしく、お酒が入ると父はよく大吾おじさんとの武勇伝を語ってくる。
高校、大学とラグビー部に所属しフッカーというポジションをしていたという大吾おじさんは地元の高校生からは『熊店長』や『一人世紀末』と呼ばれる程に筋肉質で大きい。
ちなみに、父もラグビー部にウィングというポジションで在籍していたので細身でがっしりとした躰つきをしている。
自分はラグビーについて詳しくないので、具体的に実際にどんな事をするポジションなのかは知らない。
大吾おじさんが経営する『男飯』という定食屋は、普通盛りが他店の大盛り並で値段も安く、それなのに素材もこだわったものが使用されており、近所にある中高男子校生運動部御用達のお店である。
しかし、『男飯』は雄々しいだけの店ではなく、大吾おじさんの大きな手から創作されたとは思えない繊細なスイーツの数々も揃っており、女子中高生にも人気が高い。
自宅から少し離れた位置にあるため頻繁に通うことはないが、それでも2週間に1回のペースで訪れている。
先月は自分の受験準備や父の出張の関係上の都合で来ることができなかったので、久しぶりということになる。
「大吾、頼んでいたのモノは出来てるか?」
「おうよ、刹利ちゃんのお祝いだぜ。見たら目ん玉飛び出るような出来栄えだぜ」
「悪いな、無理言って」
「いいってことよ、親友の頼みだしな」
どうやら、サプライズ的な何かがあるらしい。
父が内緒で何を用意したのか非常に気になるが、それを聞くというのは無粋というものだ。
「あら、刹利ちゃん。いらっしゃい」
「お久しぶりです、さやかさん」
「ああ、もう‥‥かたいかたい。もっとフランクでいいのに」
父と大吾おじさんの楽しげな様子を眺めていると、さやかさんに話しかけられた。
20代前半にしか見えない用紙と外見をしているが大吾おじさんの妻で父達よりも歳上である。
大吾おじさんと歩いていると初見では絶対に夫婦と思われることはなく、良くて親子、悪くて暴漢扱いされ通報されたりする。
自他共に認める『男飯』の看板娘であり、人妻と知りつつも思春期真っ只中の男子中高生を魅了してしまっているらしい。
最も、大吾おじさんが怖すぎるので手を出そうとする勇者は未だ現れていないそうだ。
「アナタ、久しぶりに陽ちゃんに会えて嬉しいのはわかるけど、お客さんを待たせちゃダメでしょ?」
「おっと、すまねぇ。陽司、話は後だ」
「ああ、こっちも止めて悪かったな」
「気にすんな。刹利ちゃんも楽しみしておけよ!」
「はい、楽しみにしてます」
さやかさんに店の奥にある6名用座敷席に案内される。
いつもならカウンター席なのだが、どうやらサプライズにはここでなければならないようだ。
「そういえば、陽ちゃんから聞いたわよ。IS学園に合格したんだって?」
「ええ、まあ」
「すごいじゃない!頑張ったわね!!」
合格を自分のことように喜ぶさやかさんに抱きしめられる。
デニム生地のエプロンの硬さとその下の豊満な胸の柔らかさ、矛盾する2つが合わさり不思議な心地良さを演出していた。
長年使い続けたエプロンに染み込んだ食べ物の香りに刺激され、お腹が鳴る。
「おやおや、刹利ちゃんは食いしん坊ですな」
「う、うぅ~~‥‥さやかさん、意地悪だ」
「だって、なんだか刹利ちゃんがお澄ましさんなんだもん」
「別に澄ましてなんかないぞ。ただ、落ち着きを持とうとしているだけっさ」
「そうそう、刹利ちゃんはこうじゃなきゃ」
面接試験の為に1ヶ月近くかけて矯正してきた言葉遣いが崩され素の口調が引き出される。
自分の素の口調は少し語尾がおかしい。
どうしてこうなったのかは知らないが、少なくとも物心ついた頃にはこうだった。
「はは、さやかさんにかかれば刹利もお手上げだな」
「うるさい!父さんは黙ってて!!」
「はい」
なかなかの大声で父を怒鳴りつけるが、騒がしい男子中高生の声の中に消える。
目立っていないことに安堵して一息つく。
実際のところは物凄く目立っているのであるが、会話の途中で出てきた『IS学園』という単語に反応して誰も関わろうとしていないだけである。
女性優遇の社会で幼い頃から過ごしてきた彼等にとってIS学園の生徒というのは手を伸ばすことも憚られる高嶺の花なのだ。
「母ちゃん、刹姉に構ってないで手伝ってくれよ」
「はいはい、わかったわよ」
私に構ってばかりいるさやかさんを呼びに一人息子である
健康的に焼けた小麦色の肌、さやかさんに似たの中性的な顔立ちをしているが大吾おじさんに似て身長は高く、身体は男らしく筋肉質に引き締まっており無駄がない。
来年中学に入学する1年生であるが、2つ隣の町にあるスポーツ強豪の私立中学に特待生として入学が決まっている。
優吾がやっているのはバスケで、持ち前の強靭な身体と超小学生レベルの身体能力を活かしパワー・フォワードというポジションをしている(耳にタコができそうになるくらい説明されたがよく覚えていない)らしい。
バスケの小学生大会では全国に進み3位にもなった。
小学校ではモテモテで、クラスには『巻島ハーレム』なるものが存在するらしいが、優吾自身は心に決めた人がいるらしく全て断っているらしい。
産まれた時からの付き合いなので知らないことはあんまりないのだが、そんな人が今まで居ただろうか?
優吾はどう思っているのか知らないが、自分にとっては大切な弟だ。出来ることな力になってやりたいし、いくらでも相談にも乗るつもりだ。
「久しぶりだな、優吾」
「あ‥‥うん、久しぶり、刹姉。その、合格おめでと」
「ありがとう。優吾も明星学園だっけ、合格おめでとう」
「べ、別に、俺の実力なら当然だし」
「おっ、言ったな。生意気だぞ、うりうり」
少し調子に乗っている優吾の頭を抱き寄せ、整髪料でカッコつけている髪をグシャグシャと強く撫でる。
バスケで鍛えられた反射神経で回避しようとしたが、生憎生半可な反応では自分の反応速度を超えることなど無理だ。
「や、やめろよ、刹姉‥‥」
「あらら、優吾。顔が真っ赤よ」
「母ちゃんは、さっさと父ちゃんの手伝いに行けよ!!」
「はぁ~~い」
優吾に怒鳴られさやかさんが退散してゆく。
しかし、せっかく整えた髪の毛をグシャグシャにしているというのにあまり抵抗してこない。
自分が女だからって遠慮しているのだろうか、可愛いやつめ。
「ほらほら、早く逃げないともっとグシャグシャにするぞ」
「うぅ‥‥耐えろ。耐えろ、俺の理性」
なんだか必死に耐えているようではあるが、抵抗しないのなら容赦はしない。
「巻島のやつ、あんな綺麗なお姉さんにとイチャイチャしやがって‥‥羨ましいだろ、常識的に考えて」
「全くです。ですが、あの方の存在があるからこそ彼は強く純粋でいられるのでしょう」
「勿体無い奴だお。少し目をそらせば、美少女ハーレムがあるのに」
「お、お前ら‥‥覚悟しろよ」
近くのテーブル席にいたクラスメイトにからかわれ、優吾はようやく抵抗を始め拘束から抜け出す。
いじるのはもう堪能したので、自分もあっさり開放する。
抜け出した優吾は、持ち前の高い機動性とステップワークで3人との距離を一気に詰め、語尾に『お』がつく小太りの少年を捕まえヘッドロックをかけた。
「おおおおお、割れる割れる割るッ!頭が割れちゃうおぉ~~!!」
「うるせぇ、反省しろ!」
「無茶しやがって」「貴方の犠牲は忘れません」
明星学園に入学が決まって少し大人びたような気がしたが、やっぱりまだまだ子供っぽい。
「優吾!騒いでねぇで、さっさと戻ってきて手伝え!!」
「ええ、もう少し刹姉と話しててもいいだろ!?」
「心配しなくても、大丈夫よ。刹利ちゃん達、今日は泊まっていくらしいから」
「マジで!!」
ちょっと待とうか。
大吾おじさんの家には、長期休暇の時などによく泊まるのでこれが初めてではないが、今日泊まるなんて聞いていない。
学校から直接こっちに来たので、泊まるのに必要な諸々の準備だってしていないのだ。
「ちょっと父さん、どういうこと!自分、何も準備してないぞ!!」
「大丈夫、父さんがちゃんと準備しておいたからな」
真偽を問い正そうと振り返ると、既にビール瓶1本を空にした父の姿があった。
「ていうことは、まさか自分の部屋に入ったの!あれだけ勝手に入らないでって言ってるのに!!」
「い、いいじゃないか。家族なんだし」
「家族でもダメなものは、ダメ!!」
今朝も言ったばかりなのに勝手に入って、しかも泊まる準備のために自分の私物をいじるなんて。
反抗期や思春期の少女みたいに父のことを汚いとか思っているわけではないが、それでも下着等に触れられるのは抵抗がある。
「うっ、大吾!刹利が‥‥刹利がぁ!!」
「お、俺にふるんじゃねぇ!なあ、母ちゃん」
「う~~ん、これは陽ちゃんが悪いかな?」
涙を流しながら調理場へと走り去っていった父を見送り、溜息をつく。
全くいい年なんだから、娘にちょっときつく言われたくらいで何も泣くことなんてないのに。
「刹姉、今日はISの事いろいろ教えてくれよ」
「いいぞ。どうせ、明日は休みだしいくらでも語ってやるからな」
「よっしゃ、テンション上がってきたぁーーー!!」
やっぱりISに興味があるのか。
あの機械的なデザインは、どう考えても女の子よりも男の子ウケしそうだ。
そろそろ中二病の発症時期に差し掛かる優吾にとってISの存在は、最も近しい非日常への架け橋になっているのだろう。
「優吾、哀れな奴だお」
「言ってやるな、常識的に考えて」
「距離が近いと、異性として認識されない。ゲーム的には美味しいんですが、リアルだと笑えませんね」
ディランさんから貰った『ハービック』のISに関する資料もあるし、受験の為に『打鉄』や『ラファール・リヴァイヴ』、『ストラトス・イーグル』等の有名量産ISなら色々調べたし、一晩かけても足りないくらい教えてやろう。
いつも自慢を聞いてるんだから、今日くらいは聞き役に回ってもらうぞ。
◆
「では、改めましてぇ‥‥刹利ちゃん、合格おめでとう!」
「「「「「「おめでとう」」」」」」
「ありがとうございます」
さやかさんの言葉に他が続く。
今日はお祝いのために営業時間を早めに切り上げてくれたらしく、稼ぎ時だというのに店内には自分と父と巻島一家、そして優吾のクラスメイト3人しかいない。
夕食を軽く食べているので、テーブルの上に並べられているのは簡単につまめる物やスイーツ系が主だ。
そんな中でテーブルの中央には十何人分と疑いたくなるくらい巨大なケーキが鎮座している。
きっと、父と大吾おじさんの用意していたサプライズというのはこの事だったのだろう。
確かに、目玉が飛び出しそうになるくらい驚いた。
「けど、良かったんですか。僕たちみたいな部外者も参加して?」
「何言ってんだお、お祝いは大人数でした方がいいに決まってるお」
「確かにそうだが、少なくともお前が言うことじゃないだろ」
この3人であるが、なかなか個性的である。
「お前ら、刹姉に迷惑かけたら‥‥捻るからな?」
「「「どこを!!」」」
ちなみに、この3人も明星学園に推薦合格している秀才である。
傍から見れば優吾も含めてバカルテットという言葉がしっくりきそうな4人組ではあるが、人は見た目によらないらしい。
「それにしても、刹利ちゃんがIS乗りか‥‥なんだか想像つかねぇな」
「ああ、俺もだ」
「おいおい、親のお前がそんなんで大丈夫か?」
「大丈夫‥‥だと思う」
「陽司、お前も不安かもしれないが‥‥一番不安なのは刹利ちゃんだっていうことは忘れんなよ」
「そうね、刹利ちゃんは弱音を吐かない子だから気をつけないと」
父達が何やら話し込んでいるが、優吾達の方が騒がしくてよく聞こえない。
「そういえば、せつりんは専用機とか貰ったのかお?」
「せ、せつりん?」
「てめぇ、店の裏に行こうぜ‥‥久しぶりにキレちまったよ」
「ーーーッ!!」
せつりん呼ばわりに、何故か優吾がキレて小太りの少年の頭を掴む。
ミシミシと頭蓋骨が軋む音がこちらにまで聞こえてきそうな痛そうなアイアンクローを決められ、少年は声にならない悲鳴を上げながらもがく。
「馬鹿な奴だ。わざわざ虎の口の中に飛び込むんだからな」
「そうですね。まあ、いつものことですが」
この2人は本当に小学6年生なのだろうか、変に落ち着きすぎて年上にすら見えそうになる。
「あのバカがご迷惑をおかけしました」
「友人代表として、謝罪します」
「別に、あれくらいなら気にしてないぞ」
「だそうだぞ、優吾。そろそろ開放してやれ」
160cmぴったりの自分より頭半分位高い『常識』が口癖の少年がそう言うと優吾はしぶしぶと小太りの少年を解放する。
この少年は、暴走気味の優吾達の中でいつも仲裁役をしているのだろう。
謝る時の姿も妙にサマになっていたし、いつも一緒に頭を下げているに違いない。
「死ぬかと思ったお」
「だったら、もう少し考えて発言すべきですね。専用機は代表候補や大企業の契約操縦者じゃないと貰えないんですよ」
「そうなのかお?」
「お前はもう少し新聞を読むべきだろ、常識的に考えて」
もう1人の少年は至って普通の体型で、特に目立つ容姿はしていないが、参謀的なポジションなのだろうか小太りの少年に対してISについて色々教えている。
「つまり、IS学園に合格したばっかりの刹利さんに専用機を手に入れる方法はないんですよ」
「なるほど、さっぱりわからんお」
「まあ、説明したところで理解してくれるとは思っていませんが‥‥結構腹立ちますね」
付け加えるなら、温厚そうに見えて意外と短気のようだ。
「刹姉、ごめん。騒がしい奴らで」
「気にしていないさ、むしろ見ていて楽しいぞ」
「なら、良かったけど」
「そうだ、いいもの見せてやるぞ」
夕食を軽く食べたあとに少し時間があったので車から持って来ておいた鞄から『ハービック』のIS資料を取り出す。
「じゃ~~ん!本物のISの資料だぞ!!」
「「ええぇ~~~!」」
この資料の価値を理解できたのか背の高い少年と参謀役の少年が驚く。
まあ、驚くのも無理はない。IS雑誌なんかとは違い、自分が取り出した資料は普通では知ることができないようなマニアックなデータまで記載されており、IS企業に知り合いがいなければお目にかかることは出来ないレアものなのだ。
「「そんなに凄いのか(お)?」」
「凄いなんてレベルじゃないだろ」
「本物IS資料、しかも『ハービック』社のモノなんて、マニアに売れば数十万は下らない代物ですよ」
「「数十万!!」
「ちょっと見せてもらってもいいですか!?」
「ああ、いいぞ」
IS資料を背の高い少年に渡すと丁寧かつ素早く内容に目を通してゆく。参謀ポジションの子もその横から必死に覗き込んでいる。
やっぱり、男の子には堪らない一品だったらしい。
「なあ、これって‥‥」
「ええ、一般に出回っているはずがない今年度の最新版ですね」
「ああ、『ハービック』本社の人から直接貰ったからな」
「直接?」
そういえば、『ハービック』と契約したことを言ってなかったことを思い出した。
胸ポケットに放り込んだままだった『ハービック』の社員鉦を取り出し、制服の襟に付ける。
「そ、それは!」
「君達には、ちゃんと自己紹介していなかったな。
自分は、IS開発企業『ハービック』専属IS操縦者 重善 刹利だ。よろしくな」
「「「「「「ええぇーーーーーーーーッ!!」」」」」」
今日一番の驚きの声が、『男飯』の建物を揺るがした。
用語解説
『ストラトス・イーグル』
アメリカ製第2世代型量産IS
『統合生産計画』によって開発された量産ISで、アメリカのIS企業が合同開発した『量産IS最高傑作』『世界最強の量産機』と名高い機体。
第2世代中期に開発されながらも機動性、索敵、射撃能力、耐久性の全てがハイレベルで完成されており、パッケージ換装によってあらゆる要求にも答えられるようになっている。
唯一の欠点は、その高額すぎるコストで1機当たり打鉄1.8機分となっている。
なので、それを皮肉るように『半専用機』と呼ばれることもある。