「ふふ、ミカさんやセイアさんとも親交がある貴女とお茶をしてみたかったんです」
「……それで、本音は?」
「あら、お茶をしながら話そうと思っていたのですが……そこまで急かすのでしたら早速、本題からいきましょうか」
「実は現状シャーレ唯一の正規部員である貴女に人探しを依頼したいのです」
「人探し……それは別に構わないが、ちなみに誰なんだ?」
「ええ、それは2年の阿慈谷ヒフミさんです」
「しかし……引き受けたのはいいが、彼女をどう探したものか……」
阿慈谷ヒフミのひととなりはなんとなくわかっているいるため、目的に関してはあたりがついているが、場所の見当は全くだ
そして彼女の目的が想像通りだったと仮定した場合1人で行動しているだろうから友人をあたっても意味がないだろう
しかし思い当たる場所をしらみつぶしに探し回ったとしても時間がかかりすぎるし見つかる可能性が低すぎる
ここは先生を頼ってみるか?
一応は連邦生徒会の所属である先生ならばそこの伝手からヒフミの居場所がわかるかもしれないし、現状一番頼れそうな人は先生しかいない
まだアビドスの依頼の途中だから忙しくて連絡に反応する余裕がないかもしれないが……
「だめで元々だ。先生に電話してみよう。」
思い立ったが吉日、早速先生に電話をかけてみる
コール音が鳴り響き
2回目に移行する前にかけた相手が出てきた
『“もしもし、どうしたのトワ?”』
「突然の電話ですまない。今、時間は大丈夫だろうか?」
『“うーん……数分程度だったら大丈夫かな”』
「そうか。それなら早速、本題に入るが……人を探しているんだ。しかしその子がいる場所のあてがなくて困っていてな。先生ならなにか対応策があるんじゃないかと思ったんだが……」
『“その探してる子が生徒だったら現在地を調べることができるよ”』
「本当か?!それなら教えて欲しい!」
『“それだったら探してる子の名前を教えてもらってもいい?モモトークにその子のいる座標を送っとくよ”』
「ああ。探しているのはトリニティ2年の阿慈谷ヒフミという子だ」
『“トリニティの阿慈谷ヒフミ……えっと……ちなみに特徴とかは……”』
「特徴?そうだな……金髪で、ペロロというニワトリのキャラクターのリュックサックを背負っている可愛らしい子だ」
『“ああ、うん……今、私たちと一緒にいるね”』
「なんだって?いったいどこにいるんだ?」
『“……ット”』
「すまない、よく聞こえなかった」
『“ブラックマーケットにいます……”』
「ブラックマーケット?なんでそんなところに……いや、先生がいるのはまだわかるが。なぜヒフミが?」
『“それは~……その……あっ、ごめん!もう行かないといけないから切るね!”」
「おい!ちょっと待ってくれ!……切れてしまった」
ブラックマーケットにヒフミが?
ブラックマーケットに行くのは校則違反のはずだが……
いや、ペロログッズのためならば犯罪まがいのこともやりかねない子だったな彼女は
一応、先生と一緒にいるから誘拐されるなんてことにはならないとは思うが……
「とりあえず迎えに行くか」
だが、行く前にこの服を脱いでおかないとな
流石に制服のままブラックマーケットに行くわけにはいかないだろう
どうも〜!先生で〜す!早速ですが私は今どこで何をしているでしょう!
正解は〜
「止まりやがれ犯罪者共!」
“ごめんねシロコ……わざわざ背負ってもらって……”
「ん、合法的に先生と密着できるから役得(先生のペースに合わせるよりこっちの方が早い)」
「シロコちゃん、思ってることと言ってることが逆になってますよ♧」
ブラックマーケットで生徒におんぶされながら逃げてるでした〜!
いやまあ大人として情けないとは思うよ?
けどさァッ、数キロを全力ダッシュは無理だよ!スポーツ選手だったわけじゃないしさァッ!
こんだけ走って未だに息切れひとつしていない彼女たちを見てると本当にキヴォトスの人って身体能力ってすごいんだなぁて感嘆しちゃう
“はぁ……鍛えないといけないなぁ……”
「ん、それならライディングがおすすめ。足腰がすごく鍛えられる」
「それシロコちゃんが先生といっしょにやりたいだけでしょ〜」
『皆さん次の十字路を右に曲がってください!』
通信機から飛んできた指示に従いコースを変える
オペレーターのアヤネが的確な指示をしてくれてるおかげで未だに戦闘0回だから彼女の存在はありがたい
帰ったら念入りに褒めてあげよう
そう考えているとふと視界の端に奇妙な光が見えたような気がした
けれど周りを見渡しても特に怪しいものはない
疲れからの幻覚だろうか
考えに耽っていたことによる見間違いだろうか
だが特に何か異常が起きた訳でもないからと気にしないようにした時だった
『ザザ……急にGP……が、聞こえ……ザザ……へん……!』
「アヤネ、アヤネ!ちょっと!なんで急に通信が繋がらなくなってんのよ?!」
「わたしの携帯も電波障害が発生しててつながりません!」
「ジャミング……でしょうか……」
「うへ〜だとすると厄介だね〜」
「先生のタブレットは繋がる?」
“確認してみるね。アロナなんとかできる?”
『むむ〜……確かに通信が行えない状態になってます……』
『ですが!このスーパーAIアロナちゃんにかかれば……できました!』
流石アロナ!
正直、通信妨害が入ってる中でなんでマップとセンサーの使用ができてるのかは疑問だけれども
今の科学力を遥かに凌駕するオーパーツだからなんかとんでもないスーパー技術のおかげなんだろうそうだろう
それはさておき
きっとこの赤い点が敵なのかな?
どのルートを通っても敵と鉢合わせることになってしまうな……
それならなるべく敵の少ない方へ
そうなると……
“みんな!50メートル先で左に曲がって!それと1人だけだけど敵がいるから交戦用意を!”
「えぇ〜敵と戦わないといけないの〜?おじさんもう走り疲れちゃったんだけどな〜」
「ですけど1人ならそんなに負担もないでしょうし頑張りましょう♩」
「そうね!追いつかれるわけにもいかないからさっさと倒すわよ!」
みんなの士気は上々(1人を除いて)
いや、ホシノも口ではああ言ってるけどショットガンのコッキングを既に済ませてるあたり準備は万端のようだし多少のアクシデントはあったけど順調に逃走できそうだ
そう考えていた
けれど曲がった先にいたのはその希望を一掃してしまうほどの圧倒的な絶望だった
5メートルを超すほどの巨体
身体を覆う戦車とは比べ物にならないほどの厚さを誇る装甲
その体格に合わせられた両腕はガトリングになっており
頭頂部には存在感を放つキャノン砲が取り付けられている
そんな暴力を具現化したかのような兵器が目の前で銃口を向けていた
「あれは……ゴリアテです!よほどの相手でもない限り使われることはないのに……!」
「確かに相手は1人だけど……」
「だからってあんなの瞬殺できるわけないじゃない!」
「どうしましょう先生……」
全員の表情に不安が浮かんでいる
いつもフニャッとした笑みを浮かべているホシノですら口を結び、緊張感を高めていた
みんなが解決策を求め私を見つめるが何も思いつかない
引き返す?
背中を向けた瞬間にハチの巣になってしまう
戦う?
その間にこちらを追いかけていた部隊に追いつかれて挟み撃ちの状態になる
相手はすでにガトリングの銃口を向けている
タイムリミットはもう近い
けれど口を開いてもそこから言葉が出てこない
銃身が回転を始める
間に合わない
そんな現実が私の頭を埋め尽くし、それでも諦めたくないと必死に頭を動かす
全てがスローモーションに映る視界の中心でこれまたゆっくりと動く敵のガトリング
それが突如空から落ちてきた光に貫かれ爆発した
予想外の事態に思考が止まる
それでもギリギリ回った頭は光の正体を確認するべきだと答えを出した
脳の指示に従い光の軌跡を辿りながら顔を上げていき
そこに神を見た
灰と白の
両手にはそれぞれ同色の盾と漆黒の銃
無骨なマシンの外観をしながら背中の突起から放出される光は翼を形造りそれの神秘性を演出している
2メートルを満たない程度の大きさでありながらその身から放たれる圧は
「ガン……ダム……」
誰かの呟きが耳に入る
“ガンダム……って?”
「ん、あそこ。おでこのところにそう書かれてる」
シロコの説明を基に《ガンダム》の顔を見る
唯一塗装された額の二本角のパーツ
赤色となっている角の付け根に文字が彫られていた
流石に遠すぎて肉眼では判別できないからシッテムの箱でズームしたけれども(逆にあれが見えるって生徒たちって視力もすごいんだ)
そこにはGUNDAMと書かれていた
ガンダム
そのような名前は聞いたこともない
暴走したオートマタの対処した経験は何度かあるがその中に空を飛ぶ個体はいなかったし
ロボットフィギュアの買いすぎでユウカに怒られた経験がある私でもガンダムなんて名前のロボットを聞いたことない
全く未知の存在
けれど私にはある確信があった
“みんな!とりあえずあれは無視して逃げるよ!”
「はあ!?無視して逃げるって、あんな得体の知れないのを無視なんてできるわけないでしょ!!」
「そうだよ〜先生。逃げてる間ビームを撃たれたらたまったものじゃないからね〜。ここはおじさんが囮に〜」
“大丈夫!あれは敵じゃないから!”
「敵ではないって、どうしてそんなことが……」
“勘!!”
「ええ!勘ですか!?流石に勘じゃ……」
「ん、私は先生を信じる」
「シロコちゃん……」
「私たちは先生の選択に何度も助けられてきた。今回だってきっとそう。だから私は先生に着いていく」
「だからって……あーもう!わかったわよ!けど後ろから撃たれたら許さないからね!」
シロコのおかげでみんな納得してくれた
前に進む私(未だにシロコに背負われている)にホシノがノノミが着いて行き
セリカも悪態を吐きながらも間に合うようにと速度を上げる
ヒフミは……いちおう着いてきてくれてるからよし!
空を見上げ、ガンダムを視界に収めようとして
それと目が合った
数瞬、見つめ合った後に頷くように顔を上下に動かしたのを見て
私の思いを聞き入れたのだとわかった
だから私は安心して前を走る
背後でパシュンという抜けたような独特な音と悲鳴が響くのを知覚しながらも決して振り返ることはなかった
“ここまで来ればもう大丈夫だよね”
『みなさんお疲れ様でした』
「いや〜アヤネちゃんとの通信ができなくなった時はどうなることかと思ったよ〜」
「ん、先生とあのガンダムのおかげで助かった」
「それにしても、もしかしてセリカちゃんまだお金のことを気にしてるのですか?」
「それはそうでしょ!あれだけのお金があったらどれだけ借金返済が楽になるか!それに絶対あの後、便利屋が拾ってるだろうし……」
「ははは……まああのお金はきっと持っててもいいことなかったと思いますし、あれで良かったと思いますよ?」
『あと数分でそちらに着きますのでもう少し……』
「ようやく合流できた」
「「「「「『“!”』」」」」」
「ど、どうしてこんなところに……?」
“もしかしてわざわざここまで来たの?”
「先生とヒフミちゃんは知っているようだけど君はどちら様かな〜?」
「ん?ああ、そうだな私は刹那トワ。シャーレの部員でそこにいるヒフミの同校の先輩だ」