"とらぶる"だらけの選択肢 作:チョイス
とある日の土曜の昼過ぎの事だった。
あの日、結城家に遊びに行ってからというもの、暇さえあれば遊びに行くようになっていた俺はその日も例に漏れず足を運んでいた。
そして、そこで──
「ヒィヒィ……ふんぐぐぐぐぐ……!」
「はいジンさん、これで"483回目"だよ」
──美柑ちゃんを背中に乗せて腕立て伏せをしていた。
じぬぅ…!もうじんじゃうのぉ…!!
腕がぱんぱんなのぉ…!潰れちゃうのぉ…!
おほおおおお!しゅごいのおおおおお!(?)
美柑ちゃんを乗せた状態で腕立て伏せを500回。それが今回俺に課せられた試練である。
なんでこんなことをしてるかって?
選択肢曰く、この先の戦いについて行くために体を鍛えるべしとの事らしい。この先の戦いってなんぞ?
何?この世界ってドンパチ騒ぎが日常になる系世界なの?もういっぺん生まれ変わろうかしら。
500回は多くないかって?
ははは、出てきた選択肢がね──
【美柑ちゃんを抱き抱えながらスクワットを100回。おしりに手を回しその柔らかさを堪能しよう】
【美柑ちゃんを背中に載せて腕立て伏せ500回。おしりの感触を背中で楽しもう】
──これだったんですねえ。
おしりなんて触れません。そんなんしたら確実にロリコンです。それならもう腕立て伏せしかないじゃない…!
楽だけど社会的死か、しんどいけどまだ首の皮一枚繋がる方か……あれ?もう救いがねえなこの選択肢。どっちもハズレなんだよなあ。
「──だはぁ…!はぁ…はぁ…!」
「はい、500……ジンさんお疲れ様」
「ほ、ほんとに500回やりきった…!すげえぜジン!」
目を輝かせて興奮するリト。
フッ、だるぅぅぅお?(巻舌)
やめたくてもやめられねえのさ(諦め)
リトも腕立て伏せを隣でやってたけど20回目位でダウンしてた。最後まで一緒にやろうな!って言ったのにね。
マラソンで"最後まで一緒に走ろうな!"とか言ってたのに置いてかれた気持ち。
【美柑ちゃん褒めて褒めて〜】
【美柑ちゃん、俺たち結婚しよう】
疲れた体と精神に追い打ちをかけてこないで。
「美柑ちゃん褒めて褒めて〜」
「はいはい、よしよし」
ああ〜心がぴょんぴょんするんじゃあ〜。
小さなお手々に撫でられる頭。
何だこの母性は。小学生にもなってない子が出していい母性じゃないだろ。美柑ちゃん魔性の女説。これありますね。
【よし次は美柑ちゃんを肩車してスクワット100回。彼女の足を堪能させてもらおう】
【よし次はリトを背負ってスクワット500回。耳元で"頑張れ頑張れ♡ファイトだよ♡"と言ってもらおう】
貴様はただの悪魔だ。ふざけろクソッタレ。
もはやただの嫌がらせだろ。
なんで野郎を背中に乗せて筋トレしなきゃいけないんだ。もはや拷問だな。俺前世で極悪人だったとかなの?
「オラ来いリトォ!」
「お、おお……俺をおんぶしてどうするんだ?」
「スクワットだ!クソッタレェ!」
ふおおおおお!唸れ俺の足ィ!!
嫌なことはさっさと終わらせる。爆速で500回やるんだよォ!
「は、速い…!すげぇなジン!」
「そうだろ!すげぇだろ!そのまま耳元で応援してくれ!具体的には"頑張れ頑張れ♡ファイトだよ♡"てな具合に!」
「よ、よく分かんねえけど……分かった!」
分かんないけど分かった。さすがだリト。一文で矛盾してやがるぜ…。
次の瞬間、耳元で聞こえてくる言葉。吐息も感じる程の距離。
──頑張れ頑張れ、ファイトだよ
「きゃああああ!やっぱやめてぇ!」
「うわわわ!な、なんだよ、ったく……」
ひいいいい!心がぴょんぴょんどころか体がゾワゾワしゅるのぉ!
あ、美柑ちゃんがこっち見てる。やだ冷たい目。幻滅しないで。
口を尖らせて、擬音で言えばツーンってしたような顔。フッ、可愛い顔してんじゃねえか。
「はい、50……あと450回だよー」
美柑ちゃんの数える声が耳に入る。
……俺いつか死ぬね、これ。
ある日、日課の筋トレ(強制選択肢)のメニューのひとつ、ランニングをしている時だった。
普段は来ないような地区。そこの公園に寄った時だった。
「やーいやーい」
「うぇーん……ひっく……」
なんてことだろうか。小学生たちのいじめ現場に遭遇してしまった。
ドラクエで言うなら"やせいのイジメが飛び出してきた"だな(?)
男数人が囲んで眼鏡をかけた一人の少女に嫌がらせ。なんてこったい若人よ。お兄さん日本の未来の先行きに不安を感じちまうぜ。
……………は!(唐突な閃き)
そうか!俺が最近筋トレを始めた理由、"この先の戦い"ってのはこういう場面の事だったのかもしれない!
イジメられている少女を颯爽と助け、"ジン君(キュン"的な展開になるわけだな?さしずめあの男の子らはかませ犬と、そういうことだなッ!!?
「おやめなさいっ!」
「「っ!?」」
「だ、誰だ!?」
あ、あら…?
俺の見せ場を奪おうという不届き者はどこの誰だ!?
「それ以上やるなら……ケンカ
……あのお団子縦ロール……見たところお嬢様だな。小綺麗な服装でいじめられっ子のために助けに入るか。かっこいいねえ。
……俺がやりたかったやつぅー!
【すぐさま助太刀をし、いじめっ子たちを粛清する。慈悲は無い。両手両足を4本ほどへし折ってやんな!】
【暴力は良くないのでこの場を諌めることにする。目で訴えれば分かってくれるはずさ】
情緒不安定なのかな?差がすごすぎだろ。
別にそこまでしなくても良くない?軽々ライン超えさせてこようとするよね。4本言うけどそれ全部じゃん。大事なるて。
まあ下の方は……好きだな。強者の余裕的な?真に強いものは手を出さない的な。これ、アリです。行きましょう。
選んだ瞬間に体は勝手に動きだし、少女たちと少年たちの間に割り込んだ。
そのまま少女たちを背にし、視線は少年たちへ真っ直ぐと。腕を組仁王立ち。
「……え?」
「だ、誰ですの…?」
「な、なんだお前…!」
「いきなり出てきて…!」
「や、やっちまうぞ…!?」
………うん………うん?
体が動きません。どゆこと?
目で訴えるって……いや完全に動きが停止するの…?
ま、不味い!目の前の子達、拳握ったりバット振りかぶってるぅ!直撃しちゃう!
「………」
言葉も喋れねー!終わったァー!
「お……おらぁ!」
ぶへっ…!
い、痛すぎ……!遠慮というものを知らないのかコノヤロウ…!
あ、殴られた。脇腹蹴るのは待って……ぐえっ!これレバーに直撃してない…?苦しい一撃でしたがな。
先の戦いのためとはなんだったのだろう。これが戦いなのか。ただの一方的なリンチですこれ。
えと……沙姫ちゃんだっけ?俺の事たしけて?死んじゃう死んじゃう。ケンカクイーンなんでしょ?とっちめてやってくださいこのイジメっ子たち!
「あ、あなた達やめなさい…!」
そうだ!沙姫ちゃん!止めたって!こいつら人の心捨ててきてる子達だわ!
【我慢の限界だ。ケンカクイーンと手を組みイジメっ子たちをボコボコにして拘束だ。その後生きてることを後悔するほどの拷問を味あわせてややろう。まずは生爪を1枚1枚剥いでいこう】
【ケンカクイーンを手で諌める。イジメっ子達もいつかわかってくれるはずだ】
ぬああああああああ!分かったよクソが!
横から出ていこうとする沙姫ちゃんの前に手を出す。
「……っ、あ、あなた…!」
「…………」
あ、金的…!
痛いのに抑えられないこの苦しみ…!ヤバい…!助けて…!
【ケンカクイーンにタマキンを揉んでもらい痛みを和らげてもらう】
【この痛み、耐えてみせる…!】
耐えてやるぅぅぅぅ!!
こんな正義の心に溢れた純粋な子にタマキンなんて触らせられるかい!
「──ふぅ…ふぅ…」
「…………」
殴られ続けた時間も終わり。イジメっ子たちは肩で息をしている。
フッ、俺は耐えた。耐えたのだ。
絶対色んなとこ怪我してるけど耐えたった…!
「き、今日のとこはこれで勘弁してやる…!」
「………っ」
「べ、べーっだ…!」
諦めて帰っていったようだな。
俺も帰りたい、切実に。
「あ、あなた大丈夫なの…?」
「すぐに治療を…!」
【涙鼻水を垂れ流しながらケンカクイーンに泣きつく。むしろ抱きつく。慰めてもらおう】
【強がる。めちゃくちゃ強がる】
情けない姿なんぞ見せられるか!ええい!強がってやる!
「……痛くねえし」
「「「え?」」」
「別に痛くねえし。こんなんよゆーだし」
……う、うわぁ……いや、強がってるけどさあ。こんなThe子供の強がり方すんの?
もういいや、とりあえず帰ろ。
そのまま歩き出し公園を出ようと──
「お待ちなさい!」
「はい、なんでしょう」
──呼び止めてくるケンカクイーンこと沙姫ちゃん。
「私は天条院沙姫!あなたの名前は!?」
【ただの人です】
【唯乃ジンです】
おいこら、名前いじってんじゃねえぞてめえ。
「唯乃ジンです」
「そう……ジンと言うのね。あなたの名前覚えておいてあげるわ!」
「………えーと、あざます?」
なんだろう?よく分かんないけど気に入られた?
……やったぜ。
あと絡められそうなキャラは……だれだ?