【RC&レジガール二次創作】ノバシェード残党北欧某国ちはや山荘事件   作:G-20

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 【RC&レジガール二次創作】ノバシェード残党北欧某国ちはや山荘事件第二話。今回は会議回となっております。何しろノバシェード対策室や北欧某国は投入する部隊が多いですから基本方針の策定や部隊投入の調整に兵站の調整、そして戦闘序列の策定など警備開始前にやることが盛り沢山な訳で。しかもノバシェード対策室、北欧某国警察に北欧某国陸軍及び北欧某国空軍と参加組織も多いので紛糾する要素も増加することはあれど減ることは無いという…
 とはいえ結論が出ている事項があるだけまだマシなのが救いか?
 そしてノバシェード対策室派遣部隊に襲い掛かるノバシェードを超える敵とは何か。
ヒント:2月の北欧が舞台。

 それでは戦略決定や戦術の決定される過程をお楽しみください。


 今回は会議回ということで専門用語が多く出てくるので用語解説をおいておきます。
 〇〇✕△△mm□
  弾の規格を表す表記で、これで弾薬の種類を表す。
  読み方は、〇〇が弾を撃つ銃の口径で、△△が薬莢の長さ(=薬室の長さ)となる。最後の□は薬莢底部のリムと呼ばれる空薬莢を銃から排出するための張り出しの大きさを表すのだが、実は無印、SR(セミリムド)及びR(リムド)の3段階での表記だったり。
  なので例え同じ12.7mm銃であったとしてもブローニングM2(12.7✕99mm)とデザートイーグル(12.7×33mm)で弾を共用することは出来ないのだ。
 機銃
  機関銃とも。弾を撃った時に生じる反動や発射瓦斯(ガス)を利用して装弾機構を操作することで弾を連続して発射する武器で、主に複数名で運用される。
  割と歴史がある分結構分類が複雑。
  ざっくり分けると、
   航空機が使う航空機銃
   頑丈な架台に据えられて航空機を撃つ対空機銃
   主に陸戦部隊で使用される三脚や簡単な銃架に据えられて多人数で運用される重機関銃
   歩兵分隊で使用される銃に付いた二脚で地面に置かれて2〜3人で運用される軽機関銃
  の四種類がある。
 小銃
  歩兵一人一人が持っている長物武器。
  これも幾つか種類がある上に複数の基準があるためオタクが居るのも納得な程凄まじく複雑怪奇だったり。
  長さでの分類だと、
   歩兵銃
    歩兵が使うことを想定した長い小銃。
    長いのには装填された火薬を燃やし切るためや突っ込んで来る騎兵から身を守るためといったちゃんとした理由があるのだが、現代では化学の発達から短い銃身でもしっかり燃やしきれかつ銃身が炸裂しない火薬や燃焼速度の高い火薬の燃焼に耐えられる銃身が開発されたり、機銃の登場や戦車の発達で騎兵そのものが居なくなったり都市化が進んだことで小銃を撃つ空間が狭くなっていったため現代ではあまり使われなくなっている。
    実はこれも小銃と呼称されることが多いためややこしい。
   騎銃
    英語名はカービン。元々馬上で扱いやすいように短くした小銃だが、車内や屋内で使いやすいことから自動車化歩兵や機械化歩兵が一般化したりヘリで飛び回ったりするようになった現代ではこちらの方が主流。陸自の20式はこちらに分類されることも多い。
  となる。
 携行対戦車兵器
  歩兵が戦車に立ち向かうための武器。実は第一次世界大戦末期に登場しているのだが、本格的に開発されたのは第二次世界大戦中だったり。
  これも幾つか種類がある。
   対戦車銃
    第一次世界大戦末期に登場した携行対戦車兵器。
    大きいライフルで戦車をズドンと撃つ。戦車の発達により対戦車砲が大型化して機動力が損なわれていったのにそれよりも小型軽量な対戦車銃が付いていける筈も無く敢え無く消滅する……かと思われたのだが、ベトナム戦争中にある米兵が何を思ったのかブローニングM2重機関銃で狙撃したことがきっかけで長距離狙撃用の狙撃銃として復活した。
   バズーカ
    モンロー・ノイマン効果を利用することで厚くなった戦車の装甲をブチ抜けることが判ったのがきっかけで開発が始まった次世代の携行対戦車ロケットランチャー。
    バズーカ自体は固有名詞なのだが、これに分類される武器は全てバズーカかバズーカの改良型かバズーカのコピーなので分類そのものをバズーカとした。
   無反動砲
    弾を発射するのと同時に後方に発射瓦斯(ガス)やカウンターマスを放出することで反動を抑えた武器。
    モンロー・ノイマン効果を利用することで戦車の装甲をブチ抜けることが判ったので開発されていった。
    そしてドイツではパンツァーファウストという傑作兵器が生み出され、銃が無いのに対戦車兵器持ってる歩兵という状態を生み出した。
    第二次世界大戦後ソ連がパンツァーファウストをパクって改良して出来たのがテロ組織やアフリカの紛争地帯で多用される、ロケットランチャーと勘違いされることが多いRPG-7である。どうして砲弾にロケット付けたかって?射程が短いからだよ。
   携行型対戦車誘導弾
    携行対戦車兵器では最も新しく登場した。
    初めは対戦車ロケットをラジコンで操縦するという代物だったのだが、技術の発達によりウクライナ侵攻で一躍有名になったFGM-148「聖ジャベリン」などのような撃ちっ放しが出来たり遠くから撃っても命中が期待出来たりするものが登場した。因みに、マル9(財務省)は理解していなさそうではあるが、どうあがいても戦車の代わりにはならない。


ノバシェードを超える敵。

 ちはや山荘派遣幕僚団は2024年2月20日0300時にオーファズヘブンに降り立った。オーファズヘブン事件から復興した同市美しかったが、まだ暗い時間帯であったこともあり彼等はその美しい街並みに目もくれずに手配した自動車で一路オーファンズヘブンから30km離れたところにある避暑地の街の警察署に設置された現地本部へと向かった。現地で北欧某国は国王の名において軍を動員したと聞いたが、流石に北欧某国郵便はまだ赤紙を配達しきれていないのか道中は心配に反して非常に空いていた。

 

 そして冬の山道を自動車に揺られること3時間、ちはや山荘派遣幕僚団は現地本部へと到着する。日の出前で未だに薄暗い現地本部となった警察署の駐車場にはパトカーや警備輸送車がぎっしりと駐車している。見切り発車させたノバシェード対策室の各部隊は疾うに到着していたらしい。

 中には佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官の姿を認めると挙手の敬礼を送る者も在り、彼等に対して答礼する。そうした中で現地本部が設置された警察署の署長室に入ると中にはドナルド・ベイカー警察長官やカイテル警察最高司令部総長、ヨードル警察最高司令部警備局長、クレーブス警備局幕僚長、アンポンタン人事局長にゲッベルス広報局長、ボルマン官房長、ヴァイトリング警備第一部長、フェーゲライン警備第二部長ら北欧某国警察の幹部が詰めている。マルヤマ参事官とドナルド・ベイカー警察長官は旧知の仲である。

 早速警備会議……と言いたいところだが、昔からの俚諺でも「腹が減っては戦はできぬ」と言う。なので朝食を摂ることにした。朝食はオートミールで作られたプーロと呼ばれる甘いミルク粥*1であった。

 

 そして朝食を終えると、警備会議の前に現場を踏もうとなったためちはや山荘派遣幕僚団は数台の乗用車に分乗してフェーゲライン警備第二部長の案内でまず第一現場の山荘、そして「ちはや山荘」へと向かう。山荘にはDShK38二挺、W85式12.7mm高射機槍二挺、シェードガン一挺、F7対戦車ロケット擲弾筒*2、12.7✕108mm弾12,500発、RPG-7の弾頭5発、後ろにも牽引具が装備されている二輪馬車及び馬4匹が遺留品として残されていた。余程慌てて移動したのだろう。加えて近くの小山で地元警察の警察犬アルフ・フォン・ベイカー号が爆弾の材料や資料、刻印が削られた跡が残っている35×32mm擲弾40発及び毛布9枚が埋められていたのを嗅ぎ当てて掘り出すという手柄を挙げた。

 「ノバシェード残党の一味が坂を駆けあがってちはや山荘に入る前に、機動隊員が放った一弾がそのうち一人に命中したそうです。飛び上がって倒れたという話です。犯人は17人居て、そのうちの一人は間違いなく手負いです。*3」警備実施担当のヴァイトリング警備第一部長がちはや山荘派遣幕僚団に説明する。

 問題の「ちはや山荘」は鉄筋コンクリート製三階建てで日本好きな北欧某国人が経営する山荘である。かなりの高地で寒気は厳しく、夜間は零下25℃にまで達する。「特殊部隊の通信隊とドローン班はこの辺りで玉砕しました。収容した遺体から摘出された破片から彼等が所持するグレネードランチャーの射程は1,000m以上と判明しました。」ヴァイトリング部長が大楯を構えながら説明する。射程1,000m以上の擲弾筒は非常に厄介だ。「こりゃあ北欧の”千早城”だな。」佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は思わず印象を漏らす。「実はちはや山荘の名称はその千早城からとられたそうで。」佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官が漏らした印象についてヴァイトリング部長が解説する。雪に覆われた30度もの勾配の谷側斜面は木々も生えておらず、視界が約2kmも広々と開けている。装甲警備車を登攀させることはおろかB.A.V.A.R.F.の隊員が登っていくことさえ難しい。登っても登っても雪や氷で辷り落ちてきてしまうだろう。その斜面の上に空高く三階建ての「ちはや山荘」が”千早城”のようにそそりたっている。下から見上げると四層の城砦だ。

 14世紀の武将楠木正成が現在の大阪府で旗揚げし、金剛山に築いた「千早城」という山城で押し寄せる幕府の大軍をさんざんに悩まし遂に守り抜いたという故事が現代まで残っている。「ちはや山荘」はまさに天然の要害で攻めるに難く守るに易い地勢となっている。

 四層の一番下は崖に張り出した山荘を支える太いコンクリート柱によるピロティ。一階と二階はロビーや台所、応接室、客室となっている。三階はきのこの傘のように大きく張り出した客間で、崖側に大きく張り出したバルコニーがある。

 山側は道路と三階が同じ高さにあり、玄関は一階で道路から手摺の付いた石段を数m降りてから更に7〜8m進んだところにある。報道が映すのは報道陣が陣取っている山側からの一続きの山地から7〜8mの地隙を隔てた三階であった。だから山側から攻めようにも建物に直に車輌を着けることが出来ないから白兵戦に肉弾戦となることだろう。

 偶然とはいえどうしてこのような天然の要害を選んで立て籠ったのだろうか。第一現場の山荘ならまだ攻めやすかっただろうに。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は愚痴を零したくなった。

 ちはや山荘は不気味に静まり返っていた。

 山荘包囲の部隊はノバシェード対策室の応援200人を含む3,200人。

 「山荘にいる諸君に告げる。君たちは完全に包囲されている。逃れることはできない。これ以上罪を重ねることはやめなさい。管理人の奥さんは全く関係ない人だ。早く返しなさい。君達の仲間はすでに逮捕された。君たちも抵抗をやめて出てきなさい。君達の家族や友人もみんな心配している。無駄な抵抗をやめて出てきなさい。」メガホンを使って機動隊広報班員が、籠城しているノバシェード残党に向って説得広報を続けている。しかしながら応答は全くない。

 そんな中1406時、突如三階東側の窓から発砲した。銃声は静寂な山々に響きわたり峰から谷へエコーする。それからその日ノバシェード残党は一切発砲してこなかった。

 

 2024年2月20日1430時、オーファズヘブン経由でノバシェード対策室警備局長、斉藤参事官、長田警視の三人が現場視察にやって来た。再び「ちはや山荘」の現場に赴いてヴァイトリング部長がノバシェード対策室警備局長らに状況説明をする。その後ノバシェード対策室警備局長による記者会見で「焦って人質に万一のことがあってはならないので、持久戦も已むを得ない。人質の救出が第一なので時間がかかっても犯人説得に全力を挙げる。」と持久戦の方針が打ち出された。

 「ノバシェードちはや山荘籠城事件警備本部」が設置された警察署の二階会議室で、北欧某国警察、ノバシェード対策室、北欧某国陸軍、北欧某国空軍の合同警備会議が開かれてドナルド・ベイカー警察長官が警備本部総長*4、マルヤマ参事官が派遣幕僚団長、佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は警備実施、警備広報竝総括特別幕僚長にそれぞれ任命された。*5

 「警備局長より持久戦の方針が示されたが、まず『ちはや山荘』に対して兵糧攻めは効くかどうか、管理人のスヴァンホルム氏に聞いた食糧、燃料などの備蓄状況を報告してください。」と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は警備会議を仕切る。北欧某国の警備情報と公安捜査担当のシュペーア外事局長が説明する。「スヴァンホルム管理人の話ですと、穀類100kg、プロパンガスのボンベ大16本、20日分。灯油1,000l、食糧としては穀類の他に各種缶詰*660個、各種調味料相当量、酒類多数、それに今日、24人の宿泊客が予定されてましたので紅鱒、鳥の腿、おでん24人前、野菜24人前。水は水道*7ですが、タップリあります。」

「いかんな、それは。ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんを入れて18人としても10日や20日は楽に持つから兵糧攻めはダメだね。時間がかかりそうだな。」と一同は顔を見合わせる。

「電話は?回線(ライン)は通じているのか?」

「通じてます。電話ですが、かけてもベルは鳴ってるんですが、誰も応答しません。」

「電話はかけ続けろよ。犯人が電話に出たらヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんは無事か、無事ならその証拠を電話口に出せというんだよ。」

「武器、弾薬はどうだ?」とマルヤマ参事官。

「現在把握しているうち、山荘に置いて逃げた重機関銃4挺とシェードガン1挺、F7対戦車ロケット擲弾筒1門が回収されていますから最大でもAK小銃8挺と5.8mm自動小銃8挺、大口径水冷式と思われる狙撃銃が2挺、対戦車ロケット擲弾筒が6門。弾薬は最低でもそれぞれ7.62✕39mmが540発、5.45✕39mmが180発あると考えられますが、両者とも予備弾を携行していることが確認されているため最悪の場合双方とも10,000発以上あると想定されています。一方5.8mm小銃弾は採用国が著しく少なく、かつ衰退しているテロ組織に公然と販売する国が居るとは考えられないことから、既に撃ち尽くしたと考えています。問題は第一現場近くの小山で押収した35×32mm擲弾とRPG-7です。犯人は35mm擲弾筒を保有していませんが、第二次世界大戦で日本軍の兵士が擲弾筒の砲弾を投擲して戦った記録が残っていることを考えると決して油断出来る材料ではありません。そしてRPG-7は対戦車戦闘に用いるために開発された兵器ですから、例えHEであっても殺傷力は大と判断されます。加えてHEATも押収しているため下手をすれば楯を構えていてもぶち抜かれます。」とヘーグル刑事部長の報告である。ノバシェードは幾つかの事件でRPG-7を撃ってきたし、持っていれば殺すつもりで撃ってくるに違いない。その覚悟で作戦計画を立てなくてはいけない。

「後方支援の関係はどうですか?宿舎は?警備食は?通信は?」

「食事は多数の業者から朝昼各40,000食、各種スープ40,000食、牛乳30,000本を調達します。宿泊施設はスケートセンターの水を抜いてリンクに寝袋で寝られるようにしたほか、他の施設から5,960人分、加えて地域住民の御好意により各住宅に23,000人分を確保しました。特別派遣幕僚のみなさんは、警察共済組合の寮『高原ホテル』に宿泊して頂きます。通信については電話公社や携帯電話会社及びインターネット回線業者に早期2,500回線の増設を手配中です。」こんな具合に緻密な警備会議が続き、この日は暮れた。

 

 ノバシェードを超える最大の敵は、標高1,000mを超える現場周辺一帯の寒さだった。日が沈むと忽ち気温は零下25℃となる。

 「高原ホテル」に案内されてみると、そこはネイミングの良さとはおよそかけ離れたひなびた警察職員宿舎で、夏季の避暑用施設だから非常に寒い。ストーブのような暖房器具などあるわけもなく、風呂も一人用の小さな浴槽を交代で使う外ない。布団も夏用の薄いもので、マルヤマ参事官と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は四畳半程の相部屋で一つの夜具(ラックまたはボンク)に震えながらお互いの体温で温めあいつつ同衾するというありさま。

 余りの寒さに湯上りの濡れたタオルが各々の自室に戻るまでの間にピンと凍ってこわばってしまう。

 その上深夜明け方お構いなしにかけてくる取材記者たちの取材電話。やっと凍えた体が温まってきたかと思うと呼び出され、やっと眠ったかと思うと起こされる。そうやって不機嫌な気分で夜具に潜り込もうとしたら、マルヤマ参事官の寝息が布団の口元のところで霜になり凍り付いていた。つまり室温が氷点下なのである。

 だが、彼等は極一部を除いて未だ知る由もない。この寒さがノバシェードなどよりも遥かに兇悪な敵であるということを、そしてその寒さが”攻囲部隊”の士気に係わる恐るべき事態を引き起こすことを。

 

 

 明けて2024年2月21日。外は快晴だが相変らず寒さは厳しい。

 0700時、建てつけの悪いドアを開けたてし、廊下をみしみしいわせながら、マルヤマ参事官以下幕僚団の面々が朝食会場に指定された大広間に集まってくる。

 ドナルド・ベイカー警察長官も「高原ホテル」備え付けの防寒マントをワイシャツ、ネクタイの上に寒さ凌ぎに羽織って坐っている。

 朝食は北欧らしさのある白米で出来たプーロのヴァイキング。

 佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官はドナルド・ベイカー警察長官とはかねて面識があるが、その将器は未知数であると見ている。ことの成否はドナルド・ベイカー警察長官の采配の振り方に如何かかっている。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は総括兼警備実施兼広報担当の特別派遣幕僚長として補佐に誤りなきを期すべくドナルド・ベイカー警察長官の観察を怠らない。とはいえ極限環境下で二十四時間ともに過ごす現場では、人間関係が濃密だから、下から観ていると上の人の全人格は二、三日で丸見えになってしまうのだが。

 マルヤマ参事官は元FBI外事担当捜査官であり、丸顔で目の大きいハンサムなナイスミドル。外柔内剛、柔和な容貌のかげにいうべきことを上司に向って直言する気骨を秘めた、見かけによらぬ図太い神経の持ち主である。

 沈思思考型で重厚、剛直な感じのドナルド・ベイカー警察長官と円転滑脱で頭の回転の早い陽気なマルヤマ幕僚団長とはいいコンビだ。広報担当の菊岡理事官が旺盛な食欲を発揮している。

「記者たちが待っているから早くいかなくちゃ」なんて呟きながら何回もプーロをお代わりしている。

 よく食べる奴だ。だが待てよ、どこかおかしい。よく見ると彼、皿は卓上に伏せたままにしてコップにせっせとプーロをよそっては食べている。思わず笑ってしまう。「菊岡君、それコップだぜ。」と注意すると、「あ、そうでした。」頭をかく。

 無理もない、事件発生以来、夜を徹して現場付近まで急行し、何百人といううるさい報道陣を相手にまる2日間眠っていなくて"マイナス頭"になっているのだから。

 重苦しい朝食の席に、時ならぬ哄笑がわき起こる。大いに結構。警備指揮幕僚団が青筋立てていがみ合い、笑いを忘れたとき、それこそ警備本部の危機なのだ。

 0800時、オーファンズヘブンから30km離れたところにある避暑地の街の警察署署長室で出席者を限定した最高警備方針会議がドナルド・ベイカー警察長官を中心に催された。

 署長は細かい気配りをして、ストーブで部屋を暖め、みんなに熱いお茶を勧めるなど精一杯遠来の助っ人をもてなそうと一生懸命だ。

 自署の管内で発生した事件に強い責任を感じ応援に心から感謝していることが明らかで、いかにも実直朴訥な警察署長である。警備実施担当幕僚長は長官直筆のメモを片手に、この警備の基本方針についてノバシェード対策室の考え方を披露する。

 「まず第一に、人質、ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんを救出することが本警備最大の目的です。次は今までのところ犯人側からは何の要求も出されていませんが、無用な要求には絶対に応じないこととします。特に長官は人質交換の要求には一切応じるなと強く言っておられます。特に政・財界の要人、警察幹部との交換は絶対に拒否すること。警察官や民間人で身代り志願者が名乗り出ても一切認めないこと。獄中の同志の釈放要求にも一切応じない。それから銃器の使用はノバシェード対策室長官指揮事項とします。特に射程が長く殺傷力の強いライフルや火砲竝ミサイルについては長官許可とします。」

 そう説明すると反論が出た。

 「それはどうでしょうか。警察官の身が危ないというときもいちいち長官に指揮伺いするんですか。我々は某山荘で正当な警察職務執行として拳銃を使用しましたが、ノバシェード対策室はあれをどうお考えなんですか?」

 地元を代表してフェーゲライン警備第二部長が質問する。

 「某山荘の拳銃使用私は正当使用だと思います。今申し上げているのは人質の生命の安全を第一にということで『ちはや山荘事件』のことをいっているんです。某山荘のときは人質はいなかったじゃないですか。」と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官が答える。

 「正当防衛、緊急避難はどうですか?」

 「長官はそこまで言っていません。」

 「では犯人らが銃を乱射しながら強行突破しようと突撃してきた時はどうですか?」

 「その場合は『やむを得ない場合』に当るから彼らを阻止するための銃火器類使用は認めるという方針でいかがですか。但し人質を楯にしている場合は別命あるまで発砲を差控えるということでどうです。そんな場合は警察長官指揮で使用すべきでしょう。」ドナルド・ベイカー警察長官の顔を見るとドナルド・ベイカー警察長官は黙ってうなずく。

 警備会議はさらに続き、弁護団との接見要求や魯包囲網を解けといった要求、あるいは既に押収した核兵器の返還要求も原則拒否、ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんを釈放するという条件での逃走用ヘリや自動車保険の準備は交渉に応じる。まだ基礎になっていない最近捕まった魚みたい名前の魯西亞シェード兵とヨセフィンさんとの交換は柔軟に応じるなど「NO、BUT」交渉の原則に則って無用な要求には「NO」、人質救出につながる可能性のある譲歩可能な要求には柔軟に「BUT」で行こうということが決っ足り。

 さらにいずれの場合でも、

 (1)交渉責任者をきちんと決め、それ以外の人は勝手な受け答えをしない。

 (2)要求が出されたら昼夜を問わず最優先事項としてドナルド・ベイカードイツ総統に速報すること。

 (3)必ず人質が生きていることを証明させること(電話口に出せ、ベランダの姿を見せろと言う。)。

 (4)深夜犯人らが強行脱出を試みたときの信号は信号弾2発の打ち上げとする。

 など、「ちはや山荘」警備の基本方針を固めた。

 なお北欧某国警察庁はすでに要員、装備、資器材の応援をノバシェード対策室、北欧某国軍に対して要請済みだったが、さらに北欧某国が加盟している北大西洋条約機構*8を加えることも決定した。

 以上のような基本方針を決める戦略会議についてはノバシェード対策室長官の指示事項はすんなりと受け入れられた。

 次の大きな検討事項は「ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんは生きているのか。」「犯人は一体何人なのか?」ということだった。

 2月19日時点で三界北向きベランダで犯人たちがバリケードを構築し始めた時、ネッカチーフを被った人物の姿が包囲した北欧某国警察機動隊員によって目撃された、との報告がある。

 人質にされたヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんがバリケード作りを手伝うわけがない。多分縛られてどこか一室に監禁されているのだろう。

 そうなると犯人たちの中に赤軍の女兵士がいるのか。それとも単に暴漢のためにヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんのネッカチーフを被った男性なのか。北欧某国で逮捕された犯人たちの様相からみて「ちはや山荘」に立て籠ったソ連赤軍の中に女性が混じっていることは十分に考えられる。

 そして犯人グループは一体何人なのか。17人なのか、18人なのか。そのうち1人は北欧某国機動隊員の放った拳銃弾で負傷しているはずと北欧某国警察側は主張するが、それならなぜ医師の派遣を要求しないのか。

 警備会議の結果、

(1)ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんが生存しているかどうかを確認する。

(2)犯人の数と面割りを行う。

(3)武器の種類と弾薬保有量を確かめる。

ことなどを目的に、

一、特型警備車やIFVを山荘に接近させ、強行偵察を行う。

二、高性能隠しマイクを山荘内に投入し、会話などを傍受する集音作業を行う。

三、強行偵察に対して窓を開けて発砲する犯人の面割り写真を撮影する。

四、犯人側を挑発して発砲させ、武器の種類を確認し、大楯、ヘルメットなどの耐弾性をテストし、犯人側の弾薬をなるべく消耗させる。

ことなどを決定した。

 

 警備会議の議題が地元北欧某国警察とノバシェード対策室竝北欧某国軍応援部隊の任務分担、指揮系統といった具体的な戦術会議に移行した途端に、警備会議の空気はにわかに緊張し、激しい言い合いが始まった。

 警備戦略会議は「おとな」の会議で、極めてスムーズに進行したが、戦術会議に移行した途端に、かねてから憂慮していた通り"官僚的セクショナリズム"が頭をもたげ、北欧某国警察側が「ノバシェード対策室や軍の応援は無用です。AFVや防弾車に放水車を貸してもらえばすべて我々でやります。」と強硬に言い始めた。

 ドナルド・ベイカー警察長官は黙ってやり取りを聞いている。

 カイテル警察最高司令部総長やヨードル警察最高司令部警備局長、クレーブス警備局幕僚長はドナルド・ベイカー警察長官の怒りを買ったことが知られたのか"セクショナリスト"を抑え切るのは無理だ。どうやら"セクショナリスト"の総帥はフェーゲライン警備第二部長のようで、モーンケ機動隊長も同調する。ヘーグル刑事局長はフェーゲライン部長を睨みながら黙っている。ヴァイトリング警備第一部長やボルマン官房長はもっと柔軟な考え方のようだ。

 なんとか折り合いをつけさせようと佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官が調停を試みる。

「その独立自尊のプライドと気概は壮とするも、そうつっぱらないでノバシェード対策室や軍の応援を受けたらどうですか。装備や車だけ借りてやるって言うけど、車輌と徒歩の連繋動作は慣れていないと難しいし、放水車の扱いだって現北欧某国警察は初めてでしょう。*9その後の対ノバシェード警備でも北欧某国では本格的な実戦はなかったでしょう。ノバシェード対策室は何年もの間改造人間に始まり怪人、量産型怪人、始祖怪人と何千回と経験して今日に至っているんです。だから……」

 「では局付、お訊ねしますが、ノバシェード対策室は高緯度地方に於ける冬季山岳戦の経験、ありますか?」とフェーゲライン警備第二部長。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は思わず鼻白む。*10

 「そうでしょう。それだったら我々と同じじゃないですか。しかも我々は山荘で撃ち合いをやったんだ。一日の長があるんです。」とフェーゲライン部長が言い張る。

 夜を徹して遥々応援に来たノバシェード対策室の幹部たちにとって、こんなことを言われて愉快であるはずがない。クニマツ広報課長も石川警備部付警視正も北欧某国装甲集団*11司令官ヘイスカネン中将もみんな黙りこくっている。

 法律論でいえば指揮命令権はあくまで北欧某国警察長官にある。ノバシェード対策室派遣幕僚たちや北欧某国陸軍装甲集団司令部参謀は、調整や助言は出来るが、警察に対する指揮権がないことはいうまでもない。

 こうなっては仕方がない。北欧某国警察を立ててやっていくしかない。

*1
フィンランドの代表的な朝食メニュー。因みに一般には白米で作られるそう。

*2
北朝鮮製のRPG-7。魚みたいな名前のテロ組織(享楽殺人集団)が使っていたという噂もあるそうなので同じテロ組織(享楽殺人集団)のノバシェードが使っていても違和感は無いですよね♪

*3
なおその一弾は着用していたボディアーマーに防禦されたため無傷である模様。

*4
閣僚クラスなので総長じゃないと職の格が低過ぎるのですよ。

*5
軍関係者は格の都合で警察や対策室の指揮下に入ることになった。

まあ警察は閣僚(ドナルド・ベイカー警察長官)がお出まししていますから、ねえ。

なお国防長官はフィンランドの向こうの国の動向を注視しているため参陣せず。何せ主力が壊滅して国内ではもう殆ど実力部隊を有していないテロ組織と隣国(ウクライナ)侵略中の核保有国(魯西亜聯邦)とでは隣国(ウクライナ)侵略中の核保有国(魯西亜聯邦)の方が余程危険な訳で。

*6
北欧が舞台なので「あの」悪名高い缶詰20個も含む。

*7
本作の北欧某国の水道はそのまま飲めるものとする。

*8
第二次世界大戦後アメリカやイギリスを中心とするヨーロッパ諸国がソビエト社会主義共和国連邦に対抗するために形成した軍事同盟。冷戦という状態からドイツの復興を助けたりドイツ再軍備宣言を承認したりした。そして冷戦後はテロリストとの戦いの中心となったが、2022年に魯西亞がウクライナを侵略したことで北欧諸国が加盟して対魯西亞同盟という性格に変化した。因みにウクライナが加盟したがっている軍事同盟でもある。

*9
北欧某国警察はオーファズヘブン事件で壊滅した上に僅かな生き残りを政治的理由から陸軍装甲師団や第八装甲擲弾兵旅団に持っていかれたため経験者が払底した状態となっている。

*10
因みに今作登場の改良型マスライダーの性能要求にも反映されている。

*11
装甲師団と第八装甲擲弾兵旅団をまとめて指揮統制するための作戦単位。本事件では本装甲集団司令官が北欧某国軍部代表となっている。




 という訳で会議回でした。え?鉄パイプ爆弾?ノバシェードは戦車を開発してのけた(https://syosetu.org/novel/344846/にて複数登場)上に怪人を量産した実績がある(https://syosetu.org/novel/128200/97.htmlにて多数登場)組織ですよ?ノバシェードからしたら鉄パイプ爆弾の間合いなら黒死兵突っ込ませた方が早いです。それに鉄パイプ爆弾は赤軍系テロ組織の発明品ですし。あと籠城せる戦闘員の一部が何故か制式手榴弾持ってますし。
 佐々さん、肩書が長いですが、所属組織をもう一方の原作に合わせているだけで実は元ネタの方*1と殆ど同じ肩書という。
 ではノバシェード残党に関して今回新たに判明したことです。
 使用武器
  重機関銃
   三脚などに据えられて大人数で運用される機関銃。
   当然とても重いので機動的な運用は出来ないが、精度が良いため防禦戦闘で用いられる。
   特に精度が優れるものは偶に狙撃銃として使われることもある。
   実はフィールドストリップ*2中だったり整備中だったりですぐに射撃出来る状態に無かったことが判明した。
   なお本作では今回でノバシェード側の重機関銃の出番は完全に終了となる模様。
   DShK38
    旧ソ連が開発した重機関銃で、12.7✕108mm弾を使用する。
    実は結構古く、第二次世界大戦ではIS-2やSU-152などに搭載されて運用された。
    ノバシェード残党が残した遺留品の本銃には車輪と防楯が装着されていたそう。
   W85式12.7mm高射機槍
    中国のある組織が開発した輸出向けの重機関銃で、12.7✕108mm弾を使用する。
  F7対戦車ロケット擲弾筒
   北朝鮮により生産されたRPG-7。
   遺留品の弾頭からこれ以外に魯西亞製と中国製のRPG-7シリーズが存在すると考えられる。
 使用弾薬
  RPG-7
   HE
    日本語では榴弾と云い、軟目標(ソフトターゲット)を攻撃するための弾。
    主に炸裂で生じる弾片(スプリンター)によって周囲に危害を加える。
    RPG-7では歩兵支援火器として運用される際に使用される。
   HEAT
    日本語では成形炸薬弾または対戦車榴弾と云い、主にAFV(装甲戦闘車輌)を攻撃するための弾。
    RPG-7ではメインとなる。
    命中箇所次第では現代の第三世代主力戦車すら撃破可能だったり。
  12.7✕108mm弾
   ソ連が重機関銃用に開発した銃弾で、東側諸国にて多用される。
   ノバシェード残党が遺留品として残したのは持ち出すことが出来なかった重機関銃用の弾薬である。
  35×32mm擲弾
   中国のある組織が好んで使っている擲弾。
   
 輸送車輌(?)
  馬
   皆さん御存知の四足歩行動物。
   結構繊細で知らない人が後ろに立つと蹴ったりする。
   昔から戦争に用いられてきたが、現代戦で使われるのは非常に稀である。そのため遺留品の馬は銃撃戦で逃げ出したのを周囲の人達が保護したもの。
   後にフィンランドで盗難された馬だと判明した。
  前車
   火砲などを馬で牽引する時に使用する車輌で、馭者を乗せて弾薬などを搭載して後ろに被牽引物を繋いで運用される。
   本作では「後ろにも牽引具が装備されている二輪馬車」としてDShK38重機関銃牽引用として登場。

*1
『連合赤軍「あさま山荘」事件』の著者にして主人公。当時警察庁に所属。

*2
前線で整備する為に行われる簡単な分解作業。

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