【RC&レジガール二次創作】ノバシェード残党北欧某国ちはや山荘事件 作:G-20
そして高緯度地方に於ける冬季山岳戦の猛威がノバシェード対策室や前線部隊を襲います。
あと本作では「テロリストに名前は要らない。」というある国の議会でなされた提言に基づきノバシェード残党は全員名無しです。
因みに探偵の真凛・S・スチュワート氏の調べによると、本作に登場する組織で名前が一致するものは88%の確率でたまたま名前が同じなだけの別物なのだそうです。加えて氏名が同じ者はほぼ間違いなく同姓同名の別人であるとのことです。
オーファンズヘブンから30km離れたところにある避暑地の街で"見慣れぬ薄汚い男女がキャンプ地じゃないところでキャンプしている"と通報した小母さんの身に危険が迫るという一報が現地対策本部に入った。
或る心無いマスコミがこの小母さんの住所と実名をニュースと新聞で報道したことでPKKを名乗る過激派脅迫電話や脅迫状が舞い込むという騒ぎになった。直ちに署員10名を小母さんの家に配置して身辺警戒に当たらせる。
2024年2月21日早朝から行われた山荘の実況見分の結果、現場から多数の指紋が採取された。そしてそのうちの一つからノバシェード残党の一人の身元が明らかとなる。
同日1200時過ぎ、人質ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんの夫が激励の手紙と共にバナナ、リンゴ、みかんを盛った果物籠を差入れたいと言い出した。問題は、誰が届けるかである。
「オレが届ける」と北欧某国軍装甲集団司令官ヘイスカネン中将がこの危険な任務を買って出る。とはいえ流石に将官を出して万一殉職してしまった場合の影響から幕僚団の殆どから反対されて沙汰止みとなった。
次いでアーヴィング捜査官やフリーデリーケ隊長にカズハ隊長が志願するも、それぞれ、人質無視して勝手に突っ込んで行く可能性がある、万一殉職した場合隷下部隊の前身組織の実績から手綱を握れる者が居なくなる恐れが極めて大である上人質の精神状態に大きな悪影響をもたらす可能性がある、4年前のビッグノア事件を考慮すると激情に駆られて任務を放擲する恐れがあるという理由から却下されることになる。
その後装甲師団に所属する
ヘルメットを脱ぎ、拳銃帯革などをはずして丸腰になったカゲネック少佐は、「スヴァンホルムさん、御主人からの差入れの果物です。ノバシェード残党の諸君、撃つんじゃないよ。ちゃんと受け取ってヨセフィンさんに渡しなさい。」と大声で呼ばわって手摺りのある凍てついた階段を降り、山荘の玄関に手紙入り果物籠を置き、悠然と引き返す。無謀に近い大胆さである。
幸い山荘内の犯人たちの発砲はなかった。息をひそめて見守っていた警備本部はほっとする。果物籠は夜になってもそのままで、山荘正面の崖の上に設置された大型投光機の光の輪に照らし出されて放置されていた。
同日1230時頃、突然ノバシェード対策室本部からの通報で警備心理学の先生方を送るから籠城事件処理のために心理学的な指導を受けよ、という指令が来た。そして1548時、一行はノバシェード対策室のV-22ヘリコプターで警備本部近くの臨時ヘリポートに降り立った。
早速現場を視察したいと諸先生方が言われるので、土嚢を積んで死角を確保した散兵壕や交通壕を通って山荘の近くの第一地点と命名された地点の山荘から射撃されないよう死角を選んで案内する。
見渡す限りの山も谷も白雪におおわれ、ところどころ雑木が枯れ木のように林立して針葉樹が白い綿帽子をかぶって立っている。空気がきれいだからか白砂糖のようにサラサラして真っ白だ。滑らないように一歩一歩踏みしめながら歩くと足元でキシキシと雪がきしむ。零下何度なのだろう。手の指先、足の爪先は凍えて痛い。吐く息が白くたなびき、意地悪な谷風に耳は千切れそうだ。風に吹かれた目から涙がとめどなく流れ、鼻と喉の奥はマラソンのときみたいに熱く乾く。
散兵壕の中から見上げるとぬけるように青い空が果てしなくひろがっている。「蒼穹」という言葉はこういう空を言うのだろうか。地上の人間たちのことなど全く無関心な空だ。「ちはや山荘」の警備が成功しようが失敗しようが、この澄んだ青空は何時でも青空であり続けるのだろう……と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は感傷的になった。
第一地点から約800m先にそそり立つ「ちはや山荘」を、警備心理学の諸先生に散兵壕の中から見てもらう。現場では広報哨で機動隊の広報主任の巡査部長がハンドマイクを握りしめ、懸命の説得を続けていた。
「山荘内の諸君に告げる。君達に人質にされている奥さんはふだんから体が弱いので、御主人や両親、家族の人たちは大変心配している。はるばるスウェーデンから駆けつけている人もいる。君達が関係のない奥さんを人質にしていることを知り、大変嘆き悲しんでいる。これ以上関係のない奥さんを苦しめることをやめて、一刻も早く家族の元へ返してやりなさい。」
突然諸先生の一人が口を挟む。「あっ、今の言葉はまずい。犯人を刺激する。あっ、またいった。ダメダメ、もう言ってはいけない言葉を十もいった。私が心理学的に分析していい広報案文を作ってあげるから、これまでの広報文、全部まとめて私に渡しなさい。」
極寒の雪の中で凍えそうになりながら懸命の説得広報を続けていた若い巡査部長は、いきなりハチャメチャに批判されたものだから、口惜しそうに唇をかんで沈黙する。
ノバシェード対策室次長のお声がかりで来たものだからか、いいとこ見せようと張り切りすぎである。
流石に心理学の泰斗の先生方は口出ししない。そもそも口出しした先生の専門は筆跡鑑定である。
「ここは最前線の現場ですよ。今までの広報文渡せってったってそんなこと不可能ですよ。みんな一生懸命やってんだから。そうだ、あとから心理学的に分析してもらったって役に立ちゃしない。それより先生、その言ってはいけないとやらの言葉を避けて、心理学的に効果のある模範的な広報を、一つお手本としてやってみせて下さい。おい、広報主任、ハンドマイクを先生にお渡ししろ。先生がお手本を示して下さるから。」
先生は手を振って「いやいや、私は直接広報をやるわけじゃない。広報案文の心理学的分析のお手伝いに来ただけで……」
「そうでしょう。では現場は現場にお任せください。」と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官キッパリと告げる。
広報主任の巡査部長君は、わが意を得たりとばかり佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官の顔を見て、諸先生には隠れて佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官に向かってニッコリ笑う。
警備本部に戻ってから先生たちの助言を幹部一同で承る。
「現状では心理学的にはノバシェード残党側が有利で、警察側で逆に追い詰められている。疲労を避け、交代で休息することが大切。隊員が十分情報を知らされておらず、インフォメイション・ハングリーとなってイライラしている。情報をこまめに全隊員に伝達せよ。人間は四十時間眠らないとまいってくる。明かりや音による陽動作戦で犯人たちを眠らさないようにせよ。山荘が静まり返っているのはよい兆候ではない。人質の身の安全が心配。」
先生方の意見を要約するとこういうことである。そのあと広報主任の広報に口をはさんだ先生がマネージャー役をやっている。テレビ出演のための取材だったのかと警備本部の幹部は一様にいやな顔をしている。これは“心理学的に”まずいんでないの?皆の前でテレビ出演の段取りつけるのは。マルヤマ参事官が珍しく怒り、ノバシェード対策室本部の警備局長にみんなが聞いているところで抗議の電話をかけている。現場は忙しいんだからアカデミックな心理学の分析や、テレビ出演の取材の協力は出来ないという趣旨の文句をつけている。みんなそうだ、そうだといった顔つきでマルヤマ参事官の抗議電話をうなずきながら聞いている。
この心理学騒動のさなか、
北欧某国国王陛下が陣中見舞のため行幸なされた。
北欧某国国王陛下はドナルド・ベイカー警察長官らを激励為されると事件対処にあたる警察官や北欧某国軍人及び応援のノバシェード対策室派遣部隊に差入れをなされた。
ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんの実父が来署された。「早く突入してヨセフィンを助け出してほしい。」という強い申し入れだ。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官が「警察は万難を排してヨセフィンさんを救出しますから、どうかお任せください。」と言うと、かなり激昂して「あんたらは命が惜しいのかッ!」と面罵した。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は疲れていたのかムッとしてあやうく怒鳴り返すところであったが辛うじて自制する。
1435時、ノバシェード対策室本部のV-22ヘリコプターで籠城しているテロリストの母親二人が到着する。
そして薄暗くなった1500頃、山荘近くの広報哨から呼び掛けを行う。
寒風吹きすさぶ零下二十数度の雪地獄からマイクをシッカリ握りしめて涙にむせびながら切々と訴える二人の母親の呼びかけは、峰に谷に展開して、耳を澄まし静まり返って聞いていた、何千何万という機動隊や将兵と報道陣の心を打った。はじめは甘い母親の呼びかけに舌打ちしながら聞いていたノバシェード対策室の面々も、約三十分にも及ぶ涙の訴えを聞いているうちに子を思う母親の愛情の深さに打たれて黙りこくってしまう。広報班の機動隊員も思わずもらい泣きの涙があふれてきて記録が出来なかった。
しかしながらそれでも山荘は暗闇の中で寂として静まり返り、不気味な沈黙を守っている。
この日は夜になってから気温が急速に下がり、零下二十六度。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官がひとまわり第一線を巡視すると隊員たちは風除けに雪のかまくらを造り、筵や炭俵を雪の上に敷き、足踏みしている。凍傷にかからないように手を出動服の下に差し入れ、足踏みして警戒に当っている。どうやら防寒靴が必要なようだ。
そんな中B.A.V.A.R.F.のチャーリーチームで一つの椿事が発生した。幸子が口を押さえながら「歯がぁ。」とうめき声をあげる。士気への影響を重く見たちはや山荘派遣幕僚団は直ちに彼女をオーファズヘブンの歯科病院に後送した。。ちはや山荘派遣幕僚団が原因を調査すると、それは直ぐに判明した。なんと弁当が現地に配達した頃にはカチンコチンに凍って文字通り歯が立たないのだ。
地元の御好意の炊き出しで、ちはや山荘派遣幕僚団がよかれと思って準備し配給したカレーライスが安食堂のガラス・ウィンドウに展示されている蠟細工の見本みたいに凍りついていた。
これでは食べられないと回収されたカレーライスは、今度は一度温めて溶かしてからカレーお握りにして再配分されたのだが、これまた黄色い氷の玉になっていた。おまけに北欧某国軍が作った食事すらも北欧某国警察機動隊やノバシェード対策室派遣部隊に届くまでの間に凍りついてしまう。*1
ノバシェード対策室本部からキッチンカーを派遣させ*2て山上の隊員たちに温食給与を行い、一杯のお湯を飲ませるのが喫緊の課題であった。警備本部は早速防寒靴とキッチンカーの手配を行う。同時にヘイスカネン中将はNATOを通じてMCW*3を手配する。
2月22日も快晴。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は昨晩も記者の一人に0400まで粘られたためまた寝不足となる。加えて暖房器具が整わないので室内温度が零下三度。濡れタオルは掛けたままの姿で凍ってつっぱりかえっている。
まだストーブも入らないので、またも寝息が口元の毛布で氷になっている。
1023時、犯人の母親二人を乗せた特型警備車が山荘玄関前約十メートルまで接近し、犯人らに対する説得を再開した。
「ちはや山荘」を取り巻く警察部隊や報道陣は固唾をのんで犯人側の応答を聞こうと耳を澄ましている。すると突然、一発の銃声が静寂を破った。
"ダーンッ"
ライフルだ。奴ら、ものも言わずに発砲しやがった。乾いた銃声は谺となってシャーン、シャーンと峰に谷に響き渡る。
このひとでなしめ。泣いて訴えている母親に向かって発砲するとは何ていう奴らだ。と、また続けて一発。
"ボン"
この力強いこもったような銃声は、恐らく擲弾筒だろう。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官がそう思っていると擲弾が約十メートルに接近した特型警備車の機関室前面の格子(?)に命中、これを貫徹すると機関室内で炸裂、
"ボン"
と擲弾筒を発射し、モンロー・ノイマン効果により生じたメタルジェットによってその防弾板と防弾ガラスを穿つ。そして飛散したメタルジェット残渣や爆発により砕けた装甲背面の破片が運転席に座る運転手の顔面を襲い、運転手は重傷を負った。
母親たちの必死の訴えに対する息子たちの、あまりに非情な答えだった。
あーあ、こいつら実の母親に向けて本気で殺すつもりで撃つのかい。
そういう奴らかい。じゃあ機動隊員に向かっても本気で殺す気で撃ってくるに違いない。
それにしてもなぜ何も言わないんだ。アジ演説もぶたない、電話が通じているのに何の要求もしてこない。ただ不気味に沈黙していて、答えは銃声のみ。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は疑問に思う。
もしかして、ヨセフィン・マリア・スヴァンホルムさんはすでにこの世の人ではないのかもしれないか、という不吉な予感が佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官の頭をよぎる。出会いがしらにもののはずみで殺害してしまって、自暴自棄になっているのでは?だから電話口にも出せないし、ベランダにも姿を見せないのか。いや、まてよ、中にいるのは違う人なのかもしれない。
やはり強行偵察を繰り返して面割り写真を取り、犯人を特定した上で肉親を連れてこないと見当違いをやっているのかもしれない。
スヴァンホルムさんは生きているのだろうか。生きていれば、有利な交渉材料として、ベランダに連れ出して、まだ生きている証拠を見せた上で逃走用の車やヘリを要求するという反応があっていいはずだ。
この不気味な沈黙は一体何なんだろう。
佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は何か鬼気迫るものを覚え、その背筋に冷たいものが走る。
それはそうと擱座した特型警備車は煙幕弾及び催涙弾の援護の下決死隊を送って人員のみ救出し、車輌自体は爆破処分とした。
この日の1020時、警備本部に「救援連絡センター・モップル社」と名乗る四人が訪れ、連名の申し入れ書をドナルド・ベイカー警察長官に提出し、面談を求めた。
「なんだい、モップル社ってえのは?」佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官が報告者に尋ねる。
「来訪者は次の四人です(以下名前生年月日欠)。大学教授、反党学生運動をやってモスクワから除名処分を受けた人。二人目はモップル赤軍派、エンデバーランドの某修道院長。三人目はケンブリッジ大学助教授。ケンブリッジ大学卒、反代々木・反党グループ。もう一人は、エンデバーランド大卒、弁護士。以上です。」報告者は答える。
「それで?」佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は続きを促した。
「弁護士がリーダー格のようで『事態は極めて切迫している。ノバシェード犯人と教授または弁護活動を通じて関わりを持つ私達は事態の好転を期待し、直接彼らと会って話したい。人命にかかわることだから貴職は私たちの希望を入れて頂きたい。』ということのようです。検討の上回答すると言っときました。また後でくるそうですが、断りましょう。」報告者は続けると提案する。
そこで佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は「長官を会わせるわけにはいかんが、私が会おう。来たら通しなさい。」と指示する。
お昼過ぎ、再度来訪したモップル社代表は署長室に入ってくるなり極左過激派救援対策センターの弁護団特有の挑戦的な口調で「折角私たちが話合いで事態の平和的解決をはかるためノバシェード残党の諸君に会わせて欲しいと申し入れたのに、警察当局はそれを拒否するんですか。」と切り出した。
「いえいえ、そんなことはありませんよ、誰も断ると言っていませんよ。わざわざ遠路お出で頂いて誠に御苦労さまです。どうぞ説得して下さい。」佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は快諾する。
相撲の手でいえば肩透し、はたきこみという奴だ。彼らは当然官僚的に拒否されることを期待していたにちがいない。拒否されたらすぐ記者クラブに行って「平和的解決に協力しようと思ったのに拒否された。警察はノバシェード残党の同志たちを射殺しようとしている」とぶちあげるつもりだったのだろう。どうぞどうぞといわれてモップル社の代表たちは、明らかに意表を衝かれて動揺していた。
「ほんとにいいんですか?」モップル社代表は動揺のままに佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官に尋ねる。
「どうぞ。おーい、広報班。先生方を山荘内に御案内しろ。
この予想外の対応にモップル社の先生方はみんな顔を見合わせてモジモジしている。
「但し、条件がありますよ。一つ、身の安全については自己責任の原則。二つ、対話にあたっては通謀にわたることはしないこと。三つ、現場の警察官の指示に従うこと。以上三点については確認書、ほら、貴方たち以前の事件のときもよく書面の確認し要求したでしょう、あれですよ。確認書を書面で署名捺印して提出して下さい。」
佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官がそう言うと、
「あのう、彼らは我々に向かっても撃つでしょうか?」モップル社の代表は急に不安になったのか佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官に尋ねる。
「そりゃあ撃ちますとも。実の親に向かって発砲する手合いですからね。ではどうぞ気を付けていってらっしゃい。」佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官はモップル社代表からの質問に答えると、モップル社代表を朗らかに送り出そうとした。
佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官の回答に怯えたモップル社代表はヒソヒソ相談したあげく、
「私どもの一存ではどうも……本部と相談してから返事します。」と言って早々に退散した。
後刻「確認書は出せない。無条件で合わせてほしい」と再度申し入れがあったが、それではダメだと断ると、記者クラブで自分たちに都合のいいことばかり言って北欧某国警察竝北欧某国軍及びノバシェード対策室を批判する記者会見をやり、オーファンズヘブンから30km離れたところにある避暑地の街の中国系住民が営むホテルに宿泊してノバシェード残党支援の宣伝活動を開始した。
彼らが附近住民や野次馬に配ったビラや発信したSNSの投稿には「ノバシェード残党銃撃戦断固支持。ノバシェード対策室核ミサイルで空爆を企む。威嚇ではなくて本当だ。ノバシェード対策室から大型爆撃機50機を集めた。」とあった。そのSNSの投稿には「ノバシェード対策室そもそも核持ってないよ(意訳)」や「そもそも大型爆撃機有るならビッグ・ノア事件であそこまで苦労してないよ(意訳)」というノートやツッコミがついていた。そしてそれらのツッコミは全てデマであるという発表が
野次馬の数が次第にふくれあがり、警備上の問題になり始めた。
山荘区画の入口で交通遮断して上には行かせないように規制してはいたが、違法駐車は北欧某国史上類を見ない程となり、なんとか監視の目をくぐって「ちはや山荘」を一目見たい、写真を撮りたいと犇めいている野次馬の数は数千人にふくれあがった。野次馬たちは至るところから見物に押しかけてきている。この寒いのにミニスカートの女性もいる(凍傷にならないといいけど)。なかには天体望遠鏡をかついでいるものまでいる有様。屋台が立ち並んでいて、温かい食べ物をほおばっている野次馬もいる。
そして2024年2月21日の夜、1925時頃には第二地点のバリケードを乗り越えて立入禁止区域に侵入した男を検挙した。男は取調べで「人質の身代りとなるためにきた。」と供述した。そこでドナルド・ベイカー警察長官らは留置場に入れることもないだろうと温情をかけて、取調べの警察官や警察署長を通じて今後二度とこのような行為を行わないよう説得し2320時釈放した。
その温情が悲劇を引き起こそうなどとは、この時誰一人として思いもよらなかった。
翌日1140時、思いもよらない至急報が突然現地警備本部に飛び込んできた。
「犯人説得のためといって山荘に接近した民間人が撃たれましたッ!男は昨夜の男と同一人物ッ!」無線モニターががなる。
ドナルド・ベイカー警察長官以下幹部は顔色を変え、一斉に顔を見合わせる。どうして?一般人は立入禁止で数km前から検問所、阻止線を設けて警戒している筈で、白昼そんな事が起こるわけがない。
報告によると、正午前後山荘の斜面の視界がひらけた雪と氷のスロープを、エンデバーランドの近くにある市から来た画家と記者が警戒線を突破して山荘に近づこうとして発見され、取り押さえられた。
だが、その騒ぎのすきを縫って昨夜の男が斜面をよじ登り、山荘を廻って玄関に到達した。そして前日カゲネック少佐が玄関前に置いた果物籠を取り上げ、玄関のドアを半開きにして内部に呼びかけていたらしい。そこを山荘内から狙撃され、玄関前に倒れたと言う。
「ヨードル君、行こうッ!」佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官はヨードル北欧某国警察警備局長に声をかけ、現地警備本部を飛び出して、パトカーに乗ってサイレンを鳴らしながら現場へ急行する。
署の前や山荘地帯入口附近に何百人と蝟集する野次馬が興奮してどよめき、「何かあったらしい。」と叫びあい、なかには佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官たちに向けてカメラを構えシャッターを切るのもいる。
カーブの多い上り坂の山道をスリップしながら登りつめると塹壕や交通壕を辿って山荘から約800m離れた崖側の死角に設置された最前線指揮壕に辿り着く。
「どうなった!!」
「男は山荘玄関のところに倒れたままです。今救出のための決死隊を編成中です。ロープをかけて引き摺りあげるしかありません。あッ、局付、今立ち上がったそうです。階段を登ろうとしている模様!!」
山荘から狙撃されないよう死角を選んで正面玄関前に接近すると、黒っぽいオーバーを着たズングリした大男が、雪に凍りついた階段を手摺りにすがりながら這い上がってくるのが見えた。
機動隊員や北欧某国軍装甲擲弾兵数名が走り寄って大楯や自身が着ているボディアーマーに防弾ヘルメットで防護する。顔面蒼白、豊頬、180cmくらいの肥った巨漢で、ボサボサ髪の頭を右手で撫でながら自力で歩いてくる。
駆け寄って「おい、大丈夫か!!」と声をかけると「ああ痛え、オレか?オレは大丈夫だ。」と呟く。
「担架だ、担架前へ。頭撃たれたのか、どれ、ちょっと見せてみろ。」といって、佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官はその巨漢にちょっとかがませて後頭部を見てみると右側に大きな瘤ができて血が滲んでいる。
よかった。固い頭蓋骨にあたって弾がそれたんだ。救急隊員が壕内に担架をひろげる。「歩いちゃダメだ、ここに寝ろ。」「ここに寝るんか?」
そう言いながら巨漢は右を下にして横になった。ちょっと反応が鈍い。脳震盪を起こしている模様で意識が朦朧としている。と、むっくり体を起こした男は「こっち側、下にすると痛えよ。」といって寝返りを打つ。ああ、これなら大丈夫だ。
そう判断した佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は携帯無線機のボタンを押し、「局付から本部。現着し被害者救出。後頭部に大きな瘤。意識あり、歩いて自力脱出。生命に別状なし。」とやってしまった。
救急車はサイレンを鳴らして一路病院へと山を走り下りてゆく。これにて一件落着。あとは原因を究明して直ちに再発防止措置を講ずることが大切だ。と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は思っていた。
ところが、驚いたことに男の怪我は擦過傷どころではなかった。病院にてレントゲン写真を撮ったところ、なんと弾切れとなっている筈の5.8x42mm小銃弾3発が右耳後ろ数cmのところで盲管銃創となって脳内に留まっていて重態とのこと。なんで?さっきひとりで歩いてちゃんと話もしたのに。患者はただちに開頭手術のためエンデバーランドの病院にアメリカ空軍のC-130戦術輸送機とV-22ヘリコプターを乗り継いで移送され、弾の剔出手術を受けたが、2024年2月24日に帰らぬ人となった。
これで犯人に5.8×42mmDBP191小銃弾*4が補給されたことがわかった。
身元調査の結果男は麻薬の件で何度も警察に厄介になったことのある薬物中毒者と判明。動機に関しては本人が死亡したのでついにわからず終いだった。幸い記者クラブは、この事件ではあまり騒がなかった。
2024年2月24日中にこの事態を受けてNATOはプロペラ機では間に合わぬとアメリカを通して日本から航空自衛隊のC-2戦術輸送機を運用する第402飛行隊を呼び出し、同時に大統領を通じて議会に要請し、2024年2月26日アメリカ陸軍の医療部隊とアメリカ空軍の航空管制部隊をオーファズヘブン近郊に展開した。呼び出された第402飛行隊は、国内手続きに若干手間取りながらも*5、2024年2月28日払暁オーファズヘブン国際空港に展開した。
男を救出して現地警備本部に戻った佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は前日に引続きドナルド・ベイカー警察長官の“御前会議”の形で今後の警備実施についての北欧某国警察と北欧某国軍及びノバシェード対策室との任務分担、役割分担をめぐる"セクショナリスト"の頑強な拒否反応をなだめるべく、手を代え品を代え説得に努めた。
「強行偵察はやはり慣れたノバシェード対策室や軍偵察大隊に任せた方がいいと思います。それから面割り写真撮影についてですが、動きの早い警備写真の撮影は何万枚もの現場写真を撮った実績のあるノバシェード対策室警備一部の現場採証班か高速で移動する目標の偵察写真の撮影に慣れた偵察大隊にやらせるのがいいでしょう。
それから通信ですが、聞いてるとどうも共通波の30メガ帯の通信系で『ちはや山荘』警備もやっておられるようだが、本格的なドンパチが始まると、とても共通系の一波だけでは混信してどうにもなりませんよ。
ノバシェード対策室は警備専用の150メガ帯の通信系を第一波と第二波とふた波もってます。だから一系統丸ごと基地局から中継基地局、無人中継局、リモコン受信機から個人用受令器まで、そっくり1セットノバシェード対策室から借りて、それに山岳地帯で不感地帯だらけのようだから、無人中継基地を沢山設置する、これは通信局から来た技官にお願いしたらいい。
通信系統図がまだ出来ていないようですね、各級警備本部の有線、無線通信は『発』と『受』をハッキリ分けておくこと。さもないと命令を下そうとする指揮命令の発信電話機に、情報報告が入ってみたり、補給関係が混信したりするから電話機は発受及び任務分担を明示しておくことです。
また心理学の先生が言ってたように、休養が大切。長官は0100時から0400時まで眠ってください。その時間帯、マルヤマ参事官に起き番お願いします。食う、寝る所に住むところ、そういうロジスティックス、しっかりつめましょう。」と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官。ところが地元は素直じゃない。
「局付、お言葉返しますけど、こんな重大な時に、なんで睡眠時間の割り当てだの、弁当のこと、最高警備会議で一々細かくやるんですか。そんな小さなことは下に任しておいたらいいんです。不眠不休、寝食を忘れて火の玉のようになってやるべき時でしょう。
強行偵察はノバシェード対策室や、まして軍にやらせるなんてとんでもない。我々がやります。
通信もこれまで共通波のパトカー・メガで上手くやってきたし、いざとなれば我々にだって経験を積んだ通信宰領官がいる*6ので、優先通話方式で捌きますからノバシェード対策室の警備波なんていりません。なんなら
写真にしてもそうです。少し北欧某国警察を過小評価してるんじゃありませんか。ウチには北欧諸国警察写真コンクールで優勝した鑑識課のカメラマンがいるんですよ。」
"セクショナリスト"総帥のフェーゲライン警備第二部長が青筋立てて、口角泡を飛ばして反論する。
「北欧諸国警察写真コンクールで優勝したとは知らなかった。それは失礼しました。しかし強行偵察の重車輛の運用、特に放水はやったことのない北欧某国警察機動隊*7だけではムリと思いますよ……」
激論を交わしている最中、至急報が入った。
「機動隊員二人及び警察用装甲車が撃たれました!!」
ドナルド・ベイカー警察長官ら首脳部は愕然として、顔を見合わせる。いま現在、部隊には行動命令は一切出ていないので全隊待機中のはず。なんで撃たれた?
「どうしたんだ。」
とドナルド・ベイカー警察長官。
「北欧某国警察機動隊が警察用装甲車使って山荘に接近したところを撃たれました。」
マルヤマ参事官が、
「誰もそんな命令、出しておらんぞ。長官、あなたの指示ですか?」
「いや、私は命令していない、さっきからここでみんな会議してたじゃないか。」
「じゃあ誰が命令したんだ。ヨードル警備局長、君か?なに、してない?軍だったら命令無しで勝手に部隊行動起こして負傷者が出たりしたら軍律違反で、軍法会議ものだぞ!命令も無しに勝手なことをやるんじゃない!」
温厚なマルヤマ参事官が顔を真っ赤にして怒っている。"セクショナリスト"のフェーゲライン警備第二部長やモーンケ機動隊長も、さすがに軍隊経験があるだけあって事の重大性はよくわかっていると見えて、悄然としている。
きけば鑑識班員3人が、北欧某国警察の写真器材が不足で、超望遠レンズの装備がないことから、山荘の銃眼から一瞬のぞく銃口の写真を撮影することが難しいと思った。そこで北欧某国警察機動隊1個分隊がそばにいたので、警察用装甲車をちょっと出してくれないかと頼んだのだという。警察用装甲車を楯に山荘に肉迫し、銃眼を撮影しようというわけだ。
気軽な気持ちで低速で警察用装甲車を山荘に接近させ、車体に隠れて道路を第一地点から徒歩で前進した。ところが警察用装甲車と徒歩隊員の連繋動作というのは彼らが思ったより難しく、車と隊員の歩調が合わず、また凍った道路に足を滑らした隊員がいたこともあって、徒歩隊員が銃眼に対して露出したところを狙撃されたのだ。
分隊長は7.62×39mm小銃弾の右膝貫通銃創をうけて倒れた。警察用装甲車はそうとは知らずに玄関前に前進して停止する。
野晒しになって倒れている分隊長を救おうとした隊員に向かって第二発目が発射され、撃たれた隊員が首筋に盲管銃創を受けて倒れる。
被弾した隊員に当たった弾は5.45x39mm小銃弾で、弾は脛骨にも頸動静脈にも神経にも当たらず、柔らかい部分にめりこんでいて、奇跡的に殉職を免れたが、口もきけない重傷だと言う。
この事件は、任務分担と指揮系統を巡る"セクショナリスト"の主張に痛撃を与える結果となった。しばし激論が交わされたのち、ドナルド・ベイカー警察長官の決断で以後強行偵察など山荘周辺における警備実施は一切ノバシェード対策室及び北欧某国軍に任せるという決定が下された。
きっとくるぞ、くるんじゃないか……と佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官が思っていたら、思っていた通りきた。ノバシェード対策室長官から厳しい叱責の電話がかかってきたのだ。
それもまた、佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官宛だ。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官を名指しで電話口に出るように言っていると言う。ドナルド・ベイカー警察長官かマルヤマ参事官を ればいいのに、佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官の方が言いやすいのだろう。
「本部と第一線の指揮命令系統がシッカリしとらんのとちがうか?焦るな、キミはせっかちだからあかん。ゆっくりやれ、と言うただろう?人質だけでなく警察官の命も大事にせなあかんがな。油断があるぞ。ああいう隊員の負傷はあかん。それに、同じ人物に二回も警戒線を突破されるとはなっとらんぞ。警察長官にキミからようく言うとけ。ノバシェード対策室長官が怒っとったとな。それから警察長官に深夜第一線を激励巡視せよと言うとけ。」
この場にて電話口で「私の責任じゃありません。北欧某国警察の"セクショナリスト"がいけないんです」なんて責任回避するわけにはいかない。
責は一身に受けるが、こんな軍律違反は二度と許してはならない。
佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官の任務はノバシェード対策室長官、同次長、同警備局長の新案特許、複数箇国にまたがるテロリスト取締りのための初の国際警備官である。
この新案特許はかつて連合赤軍の僅かな生き残りが中東に逃走してそこで現地の不満を抱えた組織と接触し、何者かが彼らにオウム真理教の手法を伝授したことで恐るべき国際テロ組織に変貌させたという轍をにどと踏まないようにという考えから発案された。だが、この上層部の新機軸は各国の多くの政治屋や報道関係者からはあまり快く思われていないし、まして各国の警察上層部は当然反発し、白眼をむく。*8
もともと佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は我慢強い方ではない。それを我慢に我慢を重ね、なるべく地元北欧某国をたてるようたてるよう務めてきたつもりだった。もう忍耐も限界だ。怒りがこみあげてくる。
佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官はプライドの高い北欧某国警察の反感を買うことは覚悟の上で、大声で怒鳴った。指揮官は人気稼業ではない。
「ノバシェードに対してこちらはオール警察軍*9で取り組んでいるんだ。私が今まで言ってきたことの意味が今日こそわかっただろう。私たちは人質の命はもとより何百何千という警察官や幾万もの軍人の命を預かっているんだ。以後つまらん我を張って出さなくてもいい犠牲者を出したら、それこそ容赦せず懲戒処分にするぞ!
怪我をした二人は誠に気の毒で罪はないが、北欧某国警察警備局の幹部の責任は大きい。私がノバシェード対策室長官から指揮権を与えられ、正式に派遣された警備実施指揮幕僚長であることを忘れないように。以後私の了解なしに部隊を動かしたものは警察長官に申し上げて即刻解任する。」
佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官はここ数日事ごとに逆らっていた"セクショナリスト"の北欧某国警察の幹部をねめ廻して語気鋭く申し渡した。
みんな悄然としてうなだれている。ドナルド・ベイカー警察長官もマルヤマ参事官も佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官を信任してくれていると見え、沈黙していることによって佐々ノバシェード対策室警備局警務局監察官に「ネガティヴ・コンセンサス」を与え、佐々ノバシェード対策室警備局警務局監察官を支持してくれた。
この騒ぎの最中北欧某国の極左政党である社会党の機関紙の記者が佐々ノバシェード対策室警備局警務局監察官に会いたいといっていると、クニマツ広報課長と菊岡理事官がいってきた。北欧某国社会党の機関紙本社社会部大衆運動係の記者だそうだ。なんだろう?モップル社の面々は反イスラエル派でノバシェードのシンパだが、北欧某国社会党は何を言いたいのだろう?
佐々ノバシェード対策室警備局警務局監察官は会見に応じた。記者に「どんな御用です?」ときくと、ちょっとあたりをうかがって声を潜め、とんでもないことを言いだした。
「ノバシェード残党の要求として北欧某国社会党の書記長か議員のどちらかを身代りに連れてくれば人質を返すと言ったという話があるそうですが、その真偽のほどはどうですか?また本当だとしたら警察当局の方針はどうなんですか?本部から確認して欲しいと言われてきたんです。」
さては反北欧某国社会党の誰か、人の悪いのがいて、北欧某国社会党へのイヤガラセにそんなガセ情報を流してるんだな。
「そんな話、聞いたこともありません。事実では無いです。かりに政界の誰かとの人質身代り交換の要求があったとしても、警察の方針はそういう『無法な要求』には一切応じないということですから、心配は無用です。」
記者は納得して帰ってゆく。大事件にはいつでもこの種のデマがつきものなのだ。
2月22日午後、北欧某国警察留守刑事局長*10から電話があった。
「必要なら15頭まで警察犬を派遣する用意がある。北欧某国警察の上層部でいろいろ議論したが、警察犬が撃たれてもやむを得ない。警察官が殉職したり軍人が戦死したりするよりましだ。北欧某国警察の警察犬は銃を持っている犯人に噛みつくよう訓練してある。山荘の中に入れて犯人に噛みつかせろ。」とのこと。
この電話を受けて警察犬を見ておこうと思い立った佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官は第二地点附近で待機している数頭のシェパードを連れた鑑識官たちに会いに行く。見事なシェパードたちがきちんとお坐りしている。
鑑識官たちは名警察犬が可愛くて可愛くて仕方がない。それを北欧某国警察の上層部は山荘内に犬を突入させて噛みつかせろという。彼はなんとかそんなむごい使い方をさせまいとして、いろんな理由をあげて訴え続ける。
「犬の嗅覚は人間の一万倍なんです。だから催涙ガスの臭いには耐えられません。犬は色盲で暗闇じゃ目が見えないってこと、御存知ですか。暗闇の中では犬は嗅覚だけが頼りなんです。銃を持った犯人にかみつくよう訓練してあるとおっしゃいますが、訓練士が一緒に中に入ってその犯人を指差してあいつが悪い奴だ、かかれといって初めて噛みつくのでありまして、バリケードを築いた山荘内ではそんな余裕はありません。
それに犬は興奮すると警察側のライフル狙撃手や催涙ガス射手も敵とみなすこともあります。」
なるほど、警察犬たちは催涙ガスの臭いを嗅ぐとキュンキュン鼻を鳴らしてへたりこんで歩くのを拒否する。佐々ノバシェード対策室警備局付警務局監察官も犬好きだから鑑識官たちの気持ちはよく分かる。
ノバシェード残党の犯人らが銃を乱射しながら斜面を駆け下りたときこそ、アルフ・フォン・ベイカー号たちが活躍する時なのだ。「ちはや山荘」内での警察犬の使用は無理のようだ。野外でならすでにアルフ・フォン・ベイカー号は2月19日に犯人が隠匿した物資の発掘に大功をあげている。
早速ドナルド・ベイカー警察長官とマルヤマ参事官に意見具申し、警察犬5頭は野外決戦や逃走者の追跡に使うことにして、第一、第二地点に常時待機させることとした。
という訳で現場は色々とトラブル続きのようです。
しかも糧食トラブルが原因でB.A.V.A.R.F.から後送者が発生するという。とはいえ今回はB.A.V.A.R.F.を4チーム動員している上に予備戦力としてエレン・アーヴィング捜査官率いるアーヴィング戦闘団6名や新たな特殊部隊も投入されているため、1人が後送された程度なら問題なく警備を継続出来ます。
とはいえ1人抜けた分確実に残った隊員たちに負荷がかかるのでどうにかやりくりして休息時間を確保する必要がありそうです。という訳で次回に犯人を寝かさずに攻囲側が夜ぐっすり寝るための作戦が決行されます。しかも北欧某国軍装甲集団司令官ヘイスカネン中将がかなり気合を入れて準備しているみたいなので、成功すれば犯人側のコンディションは最悪まで落ち込んで機動隊が突入したとしても応戦どころではなくなることでしょう。
そして、オーファンズヘブン事件程ではないにせよ、大きな事件なので当然デマが飛び交ったり裏でそれを利用した情報戦や宣伝戦が繰り広げられたりします。モップル社によるプロパガンダ活動や
そしてトラブルや騒動だらけの回でしたので今回は犬の話で締めることにしました。
現状警備実施幕僚団内での意思疎通が十分かと言われると、正直微妙かもしれません。
それではノバシェード残党に関して今回新たに判明したことです。
使用武器
擲弾筒
詳細不明なれどPV-2特型警備車の機関室を狙えるなど通常の擲弾筒よりも弾道がまっすぐなようだ。
恐らくHEAT*1を使用したのだと考えられる。
山荘外の味方
ASH新聞とどこかの新聞が作ったプロパガンダ機関。
設立時にテレビと新聞の報道は全て正しいからファクトチェックしないと言い放つ。
どうやら今回はノバシェード方の宣伝戦の一翼を担うようだ。
モンロー・ノイマン効果を利用することによりライナーによるメタルジェットで装甲を穿つ。
実は命中時に起きる現象はAPFSDSと同じであり、HEATが火薬の燃やし方の工夫と薄く貼ったライナーで発生させているのに対しAPFSDSは高初速による力技で発生させているという違いがある。