まーた殺人事件が起こり警察に事情聴取をされて、今。千冬達と一緒に警察の捜査を眺めていた。容疑者以外の客は全員が帰されたあとである。そう、一虎が容疑者になったのだ。というのも、被害者は毒を摂取してから少なくとも30分は経っているとのことで、30分以上前から店内にいた一虎が容疑者の1人になった。しかも被害者は1人で来ていて、容疑者全員が知り合いではないとのこと。容疑者が来てから30分前までの間で帰った人はいないので、店員含めた5人が容疑者として拘束されている。俺と千冬が残っている理由は一虎がなにかやらかさないかの監視である。
まぁ、なんでかコナン君達も残ってるんですけどねぇ?まず子供達だけで喫茶店にいることが違和感。え?阿笠さんが急用で帰った?さいですか…
それにしても俺の知り合いが疑われてることといい、毒で死んだことといい、前に青宗が疑われてたのに似てるな。ウケる。
1時間近くをコナン君達と駄弁りながら過ごしていたら急に刑事が一虎に近づいてきた。もう顔馴染みになった高木刑事と伊達班長である。いやに真剣な顔をしているが何か出たのか?
「羽宮さん、貴方傷害で捕まっていますね、それも二度」
『⁉︎』
「っあ…」
そっちかー、という気持ちだ。少し和んでいた現場が緊迫した雰囲気に変わり、コナン君達も含めた全員が一虎、そして俺達に厳しい目を送った。まぁ、俺は見逃さなかったが。真犯人であろう女がニヤリと笑ったのを。クソアマ。
非難の視線に耐えきれず千冬が一虎の前に出た。俺もそうしたほうがいいんかな?
「っ一虎君じゃねぇ‼︎一虎君はやってねぇ‼︎」
「千冬…」
「あー、高木刑事。俺もコイツではないと思います。一虎に毒を盛ろうなんて発想できっこないっすよ。バカなんで」
「ばっバカじゃねぇよ…」
「俺が勉強教えないといけなかった四馬鹿の一人が何言ってやがる?」
「うっ…」
とりあえず狼狽えてた一虎は少し本調子に戻ったみたいだし後は流れに任せるだけでいいな。
「でも‼︎人が簡単に変わるわけないでしょう⁉︎ソイツで決まりよ‼︎」
「は?」
「っな、なによ‼︎あたしはみんなが思ったことを言っただけ‼︎」
「伊達班長、一旦あのアマ殴っていい?」
「ダメに決まってるだろ」
「チッ。…じゃあ、俺からも言わせてもらうぞ。今叫んだ女、テメェが犯人だよな」
『えっ⁉︎』
流石に女がムカついたので暴露することにした。まぁ、コナン君も気付いてたみたいだし問題ないだろ。一虎のやつでそっちに注意が向いたみたいだけど。
「なっなにを根拠に…」
「んー、さっきから見てたら挙動不審だし。あと、服がちぐはぐだからなんとなく怪しくて見てたんだよな」
「ちぐはぐ?」
「あんなキャバ嬢みたいなドレスの上にパーカー着るのはおかしくない?元々キャバクラでバイトしてたからさ、気になったんだよね。そんで気になって見てたら執拗にフードのところ触ってるし。毒入ってんじゃない?」
「えっ」
「少し見せてもらえますか?」
「…はい」
女がしぶしぶパーカーを脱いで伊達班長に渡すと、案の定フードの中から毒と思わしきカプセルが出てきた。
「ほら」
「…っ」
「署までご同行願います」
「離してよ‼︎放せったら‼︎あのカズトラって男の方があたしより悪いじゃないの‼︎前科があるんでしょ⁉︎あいつが犯人なのよ‼︎」
「は?」
「なっなによ…アンタのせいよ‼︎アンタが変なこと言ったから‼︎」
「伊達、殴っていい?」
「ダメに決まってるだろ‼︎」
うーん、やっぱりだめかぁ。というか伊達以外全員があの女の剣幕に呑み込まれてるけど大丈夫か?警察も手が止まってるぞ?はーあこんなんだからサツは…後で一虎に謝罪させよう。俺のお気に入りだからな一虎は。よし。
「どーせアンタも犯罪者なんでしょ⁉︎ならあたしよりあっちを捕まえろよ‼︎」
「何言ってんだコイツ」
「間宮君…オレ、ちょっと外出てきます。一虎君も」
「おう偉いぞ。…で、アマ」
「あっ逃げた‼︎卑怯ね‼︎卑怯者‼︎さすが犯罪者だわ‼︎あははっ‼︎」
「なぁおねーさんさ、ヤクでもキメてる?」
「あはっ…は…な、なんっなんのコト?」
「伊達ー‼︎コイツヤク中‼︎罪状追加して。俺、嘘見抜くのは得意なんだ。…で、伊達、コイツ早く連れてけ。一刻も早く視界から消してくれ」
「…悪いな。後で羽宮さんにも謝っておく」
「おう」
流石伊達班長。俺がイラついてた原因にも見事に気付いてたな。とりあえず一件落着、とはいかなそうだ。コナン君が真剣な目で俺に話しかけたそうにしてる。
はーあ。説明もめんどくさいな。
「間宮先生。羽宮さんのことなんだけど…」
「コナン君。人間はそう簡単には変わらないよな」
「え?」
「変わらないが、でかいきっかけで今までを恥じて変わろうとすることはできる」
「う、うん」
「一虎は一度犯した罪を繰り返した。それは、反省をしていなかったからだ。それは良いことではないし庇いはしない。だがな、二度目の罪を犯したとき、一虎は自分の犯したことの重大さを自覚できた。そして、刑務所で7年間反省して、今変わろうと努力してるんだ」
「…そうなんだ」
「一虎は
「‼︎なんで、ボクが一虎さんを梵天だと疑ってるって気付いたの?」
「気付くに決まってるだろ。俺は君に注目してたからな」
「う…」
「君の視線は案外とわかりやすい。精々気をつけろよ、工藤」
「…はい」
さて、あのクソアマを調べるか。俺を怒らせたらどうなるか見せてやるよ。
てなわけでうちのハッカー親子、基ヒロキと樫村さんに奴の名前で調べてもらった。ものの10分で調べてくれた。流石だ。
さて、なんと奴が働いている店が灰谷弟がオーナーをするキャバクラだった。そして、その繋がりでヤクと毒を手に入れたルートも梵天のルートだと断定できた。とはいえその売人を調べると上納金をちょろまかしていることがわかったので灰谷弟と万次郎に断りを入れて警察に突き出すことにした。もちろん、クソアマに売っていたという情報も込みである。部下を使って警視庁の入り口に置いとかせたのでたぶんすぐ見つかるだろう。部下は捕まらないようにホームレスに金を握らせてやらせたと言っていたので足もつかないはずだ。それに売人も大して情報を知っているわけではなく、灰谷の名前すら知らないだろうし。アマと売人が会ってなんやかんやあるだろうな。本当はスクラップのところを警察に突き出すだけで済ませてやったんだから寛大な処置だろう。ま、精々少しだけ延びた寿命を震えながら過ごすといい。
店の外に出ると、千冬がいた。まだいたのか。一虎は帰らせたのか?
「間宮君、話したいことがあるんスけど」
「なに?俺今気分悪りぃのよ。オマエらも悪いだろうけど」
「相棒が、帰ってきたんです」
「帰ってきた?…あぁ、そういうこと。タイムリープしてきたのか」
「うす。パーちんの結婚式の時に。それで、俺とドラケン君で誤魔化しはしたんスけど…マイキー君が姿を消したこと、気付いちまって。どうにか諭したものの梵天について一虎君と調べ回ってるんです。…間宮君からも相棒に言ってやってくれませんか」
「俺が、花垣に?…はぁ、アイツが聞くとは思わないけどわかった。それとなく言ってみるワ」
「ありがとうございます」
そうか、花垣が帰ってきたのか。…万次郎はオマエに会いたくないのにな。一虎は、まぁわかる。7年経って謝れると思ったら万次郎が消えてたんだもんな。花垣はなんなんだ?目標だったヒナちゃんは生きてるし、みんな幸せだろ?なんで万次郎を探す?…傲慢だな。
本当に、アイツは俺の神経を逆撫ですることしかしねぇな。
「…あ、あと」
「なに?まだあんの?」
「今年ですよ、6月19日。絶っっ対来てくださいね‼︎最近間宮君忙しくて近況報告会にも来てねぇのに」
「あーすまんな…で、何曜?」
「たぶん、火曜ッス」
「えー、じゃあ仕事早めに切り上げるから夜な」
「うす」
火曜か。それなら俺が副顧問をしている空手部は顧問がいるし、仕事も俺の速度なら7時までには終わるな。
さて、喫茶店殺人事件から2か月。いよいよ6月19日がきた。俺は猛スピードで授業の準備もろもろを終わらせ武蔵神社に来ていた。懐かしいメンツが勢揃いである。一応一虎はタイムカプセルのときにいなかったので店番を任せたらしい。拗ねてそうだな。
あいつらは来もしない万次郎を待ち続け、結局夜になるまで開封しなかった。
それぞれ開封していくと、ペーやんからパーちんへの素晴らしい(笑)友情を見れたり、八戒や千冬の将来の夢(笑)を笑ったり、三ツ谷とドラケンに感動したり、スマイリーの叶わなかったストレートを想像して笑ったり、場地の誤字まみれの手紙に爆笑したり…
久しぶりに会ったアイツらは、やっぱり眩しくて。
俺が梵天に潜入することになった7年前から一切会わなかったことも、この間のパーちんの結婚式だって行かなかったことも、間違いじゃなかったと思った。
俺は昔から、コイツらが大嫌いだったから、なんて。
いまだに負い目でエマに告白すらできてないドラケンをイジりながら打ち上げにでも行こうかと話していると、花垣がなにかに気付いたみたいだ。
自分の手紙を開けてないことに今更気付いたらしい。バカだなぁ。まぁ、他の奴らが気付かないように色々話を逸らし続けたのは俺だが。きっと花垣は万次郎が入れておいたというビデオテープに気付くだろう。
万次郎はそれを見たら流石の花垣でも諦めると言っていたがにわかに信じられん。あの花垣だぞ?
それから数日後、案の定花垣は逆に奮起したらしく一虎と2人で梵天関係の店を強引に聞き回っていた。話が俺たちにも上がってくるくらいには騒いでいるらしい。
万次郎の耳にも話は入っていて、花垣に会いに行くと言ったらしい。春千夜が言っていた。
それなら、と俺は一虎に会って念押しすることにした。
花垣と一虎が別れたとの報告を聞いて、俺は一虎にメールを送った。梵天について大事な話がある、といえばあっちはすぐに食いついてきたので武蔵神社に呼び出した。
一虎との話し合いはすぐに済んだ。一虎が武蔵神社に来たところで、俺は一虎の背中に銃を突きつけながら一方的に話し始めた。
「もう梵天を追うな。死にたいのか?」
「…間宮。やっぱりオマエ、梵天の人間だったんだな」
「元は公安だ、捨てられたがな。…一虎、オマエは俺のお気に入りだからさ、殺したくはないワケ。だから、手を引け」
「…俺は、マイキーに謝りたい。ただ、それだけだ」
「万次郎に会ったところで殺されるだけだ。アイツはもうオマエが知ってる奴じゃない」
「じゃあなんで間宮は殺されねぇんだよ」
「俺はアイツにとって特別じゃなかった。それだけだ。春千夜もな」
「三途?場地が言ってたやつか。アイツはマイキーを裏切って天竺に行ったって聞いたぜ」
「ははっ、裏切ったフリだよ。裏切り者を殺すために。アイツは俺と同じ、万次郎至上主義者だ」
「…ふーん」
「もういいだろ一虎。万次郎は諦めろ、次は無いぞ」
「…絶対に俺はマイキーに『prrrr.prrrrr』…」
「…春千夜?…俺だ」
『塔矢さん‼︎ま、マイキーが…‼︎』
「は?おい‼︎万次郎がなんだ?」
『自殺、しました…サツが来る前に早くこっちに‼︎』
「は…?自殺?…っすぐ行く‼︎」
ブツッ‼︎
「おい間宮‼︎マイキーが、なんだって?」
「死んだんだ‼︎万次郎が、死んだんだ‼︎一虎、意味もなくなったな」
「は…嘘だ‼︎マイキーが、そんな…‼︎」
「オマエに構う暇はねぇ‼︎」
猛ダッシュで現場に駆けつけた時には、警察が彷徨いていて、万次郎と花垣の死体が運ばれる時だった。
その時久しぶりに、俺の視界から色が消えた。
そこからの記憶は、ない。