次に気がついた時、目の前にいたのはイザナだった。
イザナとしても万次郎が死んだことは堪えているのか目が淀んでいた。
「起きたか」
「…春千夜は?」
「サツの前で万次郎に駆け寄ろうとしたから部下を使って連れて帰ってきた。しばらく暴れ回っていたが今は寝てる」
「生きてるのか」
「テメェもアイツも、放っておいたらすぐ死にそうな面だな」
「真一郎くんが意識不明だった時のオマエと似てるダロ」
「はっ…相変わらずの減らず口だな」
そうして静寂が訪れる。数分、もしくは数十秒かもしれない。
この静寂を破ったのはやはりイザナだった。
「…間宮、俺の下につけ」
「誰がつくか。俺の王は万次郎だけだ」
「オレは万次郎程甘くねぇ、自分に忠誠を誓うわけでもない裏切り者を置いておくワケにはいかねぇな」
「知ってるよ。でも、今までの俺の功績に免じて死場所くらい自分で決めさせろ。死ぬ時は派手に死んでやる」
「ハッ…わかった。誰か連れて行くか?」
「いらん。…いや、春千夜が望めば。あと、何人か部下」
「引き継ぎはしていけよ。…“間宮塔矢”の死んだ後は興味がねぇからな」
「…ふん」
それから2日間準備をした。春千夜は俺に従うと言った。このまま生きていても意味がないから、と。
とりあえず、最後に一仕事をさせて樫村さん達を解放した。もちろん、必ず今までのことを口外しないと誓約書を書かせて。やはり何か隠しているみたいだが俺に害がないなら興味はない。
2日後、久しぶりに学校に出勤した。教頭から無断欠勤を叱られたが、殆どの教師は心配の声をかけてくれた。たぶん、二日間徹夜した疲れ切った顔を見て言ったんだろう。
授業をいつも通りしていたが何故か生徒からの反応が悪い。そんなに顔に疲れが出ているのか?
昼休みを挟んで5時間目。いやに廊下がうるさいと思ったら警察が来ていた。ついにか。これを待っていた。
ズカズカと教室になだれ込んできて、ずいっと俺の前に令状を突きつけてきた。橘じゃないようだ。
女子生徒達が悲鳴をあげ、男子生徒がざわつく中、サツ共はお構いなしに俺に近寄ってきた。よく見てみたら真ん中に立っているのはかつて病室です俺に食ってかかってきたやつだった。そりゃあ暑苦しいわけだ。別にもう取り繕う必要もないので唾を飛ばしながら何かを言うそいつの顔面を蹴り飛ばした。見事に扉まで吹っ飛んでいき、部下らしき奴らを巻き添えにして倒れ込んだ。一拍おいたあと、生徒達の悲鳴とサツの怒号が響き渡った。後ろについてきていたらしい教頭も、顔を真っ赤にしたり青くしたりと忙しそうだ。
「ん」
「な、なんだ‼︎何をする気だ⁉︎」
「俺のこと捕まえるんだろ。仕事しろよ無能」
「はっ…た、逮捕ー‼︎」
俺が手を出したにも関わらず動かない奴らには呆れ果てた。これでいいのか警察。
とりあえず騒ぎを聞いて授業中にも関わらず廊下に出てきた生徒達を尻目に、何も変わらない態度で外まで歩いて行った。どうせ何か保護者共からクレームが入るんだろうが、別に関係ない。興味もない。
捕まってから1週間。初日から今日までいろんなやつが面会と聴取に来た。俺の逮捕自体は今のままでもできるが、奴らが望んでいるのは梵天の内部情報だ。
初日の時点でどれだけ圧をかけたり脅迫まがいのことをしても俺が何も言わないどころか怖がりもしていない様子にしびれを切らしたのか、2日目からは降谷達元同期を寄越してきた。情に訴える作戦か?俺には意味がないのにな。
奴らは形式以上の聴取はしてこなかった。
公安の二人以外もなんとなく気付いていたんだろう。梵天の幹部であることになにも言われはしなかった。ただ、奴らは簡単な質疑応答を済ませるとそのまま駄弁り始めるのだ。結局、ただの雑談で時間を使い果たして、「それじゃ」と帰っていく。
聴取だけして帰っていくのはやっぱり公安組だった。なんか上司に言われてるのかもな。
こんなことを繰り返していたから4日目からは公安の人間が聴取に来るようになった。降谷達もお役御免みたいだ。
そうして公安の風見という奴に聴取されることになった。特に何も話すわけがない。
風見は他の奴らに比べて高圧的じゃなく、それが何故かと聞いたら、降谷の部下であると言った。ほーん、俺の話をよくしていたと?降谷が?へぇ。
そんなこと言われたところで俺が口を開くわけがない。結局雑談以外は口も開かず、1週間経ったわけだ。
後半には奴らも必死で殆ど暴力みたいなものもあったが、反社がそんなのにビビるわけがなかろう。しかも元はバリバリの不良だぞ?舐めてるのか。
奴らは俺がどうしても口を割らないと悟ったのか情に訴える作戦で来た。10年近く連絡も取っていなかった母親を連れてきたり、俺が殺した(らしい)奴の家族を連れてきたり。興味もない。
母親が来た時は、心にもない感謝だけしておいた。母親もどうせ俺を嫌っていたんだしなんの反応もないかと思えばなぜか泣いていた。意味がわからない。
とりあえずいつもの“いい息子”の仮面を被って話を聞いたら、自分のせいだ、自分のせいだーって。俺からしたら何言ってんだコイツとしかならない。しかも驚いたことにこれが嘘じゃない。本心で、自分が悪いと思っているらしい。残念ながら、母親のせいじゃない。なんてったって俺が母親に影響を受けたことなんてないからな。一緒にいた時間だって物心ついた後は殆ど朝と深夜だけだしな。たぶん、万作先生のほうが一緒にいた。そう思って、笑顔で言った。
「大丈夫、母さんのせいじゃないよ」
って。そうしたらまぁ、どうしたのか。もっと泣き崩れて何言ってるかわからないレベルまでになってしまった。流石に戦力外だと思ったのかサツがすぐさま連れて行った。その時、サツの一人から信じられないものを見るような目で見られたが、意味がわからない。普通だろう?母親思いの良い息子だろ?
反対に、俺が殺した奴の家族には冷たく接した。
半狂乱で、呪ってやる‼︎なんて言っているババアが、娘らしき人に支えられながら来た。とはいえ、俺に責任はあるのか?俺に殺されるなんてただの自業自得以外なんの理由もないだろうに。
話を聞いてみると、そのババアの息子が誰だかわかった。
ただの濡れ衣である。
そいつは、とある薬の売人で、上納金をちょろまかしていた奴だ。しかも年単位でやっていたため金額は膨大。ついでに敵対組織に梵天の仕入れ情報を垂れ込んでいたらしく、粛清対象に。殺ったは望月だ。冤罪だ‼︎
腹いせに、そんな奴は知らないと懇切丁寧に説明してババアを納得させ、真犯人の居場所はわかっている、と言って警察庁の住所を教えておいた。娘らしき人は冷静なのか、ババアに、絶対嘘だから信じちゃダメ‼︎と言っていたが、ババアはもう俺を信じ切っていた。ははっチョロいな。
それを聞いていた警察官は顔を真っ赤にして怒り、怒鳴ってきたが、俺からすれば面白さを倍増させるスパイスだ。ははっウケる。
結局ババアは面会室を飛び出していき、それを見た娘は俺をキッと睨んでババアを追いかけて行った。
そんなこんなで俺の1週間は比較的楽しく過ごせた。
万次郎はもういない、あの衝動を二度と見ることができない事実を受け入れるにはあまりにも足りない時間だったが、サツ共が俺の一挙一動で百面相しているのは気を紛らわすのに最適だった。
見張りの警察官に今は何時だと聞くと、16時27分だと返ってきた。
約束の時間まで残り3分。やはり俺の体内時計はだいぶ正確らしい。
急に時間を聞いてきた俺を不審に思ったのか、警察官は理由を聞いてきたが、体内時計を狂わせないためとお茶を濁しておいた。
3分後、建物内部で轟音がし、廊下が騒がしくなった。
「全員避難してください‼︎」という声が響き渡り、警視庁内にいる人間が我先にと走っていくのが聞こえる。俺を監視している警察官も、どうすればいいのかと上司に確認をするため、一度外に出ようとしていた。もちろん、俺がその隙をつかないわけがない。手錠がかかったままの両腕を振り上げ、後ろから首を締め上げる。警察官ももがくが、数十秒で落ちた。
ソイツのポケットから手錠の鍵を取り、手錠を外して服を剥いで着る。そして逃げる人間に紛れて外へ出た。
俺がいないことに気付いたのか、追っ手らしき奴らが出てきたが、全然追いつけないくらいの距離はあるためそのまま春千夜との約束の場所に向かう。
ちゃんと約束通りコンビニの裏手で待っていた春千夜の車に乗り込み、後ろからパトカーが十数台来ているのを尻目に発信せた。運転は俺である。
そこから始まるカーチェイス。発砲させないようわざと人通りが多い道を通り、超危険運転をしながら駆け抜けていく。
人通りが少ない道に出ると、すぐにパトカーからタイヤ目掛けて発砲された。ので、俺も春千夜にパトカーの窓向けてスタングレネードを投げさせた。残念ながら当たらなかったが、目眩しにはなったようで先頭の3台が脱落した。これ楽しいな。
そんなことを繰り返していると、目的の杯戸港に着くまでにはパトカーが4台にまで減っていた。そのうち一台は見覚えしかない白のマツダ・RX-7である。
目的の杯戸港に着いたが、あちらからしたらここに追い込んでいた認識らしい。
海の前で止まれば、降谷が投降を促してきた。
「お前たちはすでに包囲されている‼︎武器を捨てて投降しろ‼︎逃げ場はないぞ‼︎」
「誰がするかバァーカ‼︎‼︎」
俺の言葉とともに春千夜がパトカー目掛けて手榴弾をぶん投げ、俺はアクセルを力一杯踏み込んだ。
阿鼻叫喚のパトカー達の中から降谷の「やめろォォォォ‼︎‼︎」という怒号が聞こえる。
誰が辞めるかバーカ‼︎
窓を全開にしたまま、車ごと海へ飛び込んだ。
春千夜は、こっちを見て一つ頷くと、手に持っていた錠剤を飲んだ。毒薬だと偽って持って来させた、即効性の高い睡眠薬だ。
水が首のあたりを過ぎ、もう顔も埋もれている。
目の前が、白くなってきた。
意識を手放す寸前、春千夜に持って来させたボタンを押した。
こうして、間宮塔矢の人生は、幼馴染と一緒に幕を閉じた。
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「やめろォォォォ‼︎‼︎‼︎」
投げ込まれた手榴弾によってガソリンに引火し車が炎上している中、炎と煙の隙間から間宮の乗った車が海に飛び込むのが見えた。
そこで気付いた。間宮の狙いはこれだったのだと。
数日前、梵天のボスだった佐野万次郎の死後、梵天の情報を得るために証拠を捏造して間宮を逮捕した。捏造とはいえ、実際に間宮が犯した罪ばかりだった。
そこで梵天についての聴取が始まったが間宮は黙秘。普通の雑談などには応じるものの、梵天関連になると一切口を開かなかった。
痺れを切らした上層部が、軽い拷問のようなことをしても、間宮が口を開くことはなかった。
そこで、警察学校時代に交流が盛んだった僕達が聴取に当たることになった。
数週間ぶりに見た間宮の姿は、驚くものだった。
いつも自信にあふれていた眼は澱み、目の下に大きな隈をこさえ、さらさらとした黒い長髪はこれまでの数々の暴力と疲労でくすんで、飯も碌に食べていないのか頬はこけてしまっていた。顔色も悪く、ほんのりと赤かった唇は荒れて、何度も殴られたのか額には大きな青タンができている。
学校時代、よく美人だと言われていた人物だとは思えないほど老けてしまっていた。
これは、これまでの尋問のせいか、はたまた佐野万次郎の死が原因なのか。
恐らく後者であることは想像がついた。
幼馴染の話をする間宮は、まるで恋する乙女のように楽しそうで、愛おしそうな顔をしていたからだ。きっと、間宮にとって佐野万次郎は誰よりも大事な存在だったんだろう。
結局僕が聴取をしても、間宮が口を開くことはなかった。今まで、萩や松田、伊達班長に景がしても口を開かなかったんだから予想はついていた。
そして、四人が言っていたことがわかった。
間宮は、普段会話する時と、何かが違う気がした。大事な“何か”が欠けてしまっているような。間宮がそうなってしまうほどに佐野万次郎が大きな存在だったのか。あるいは、考えたくはないが、これが間宮の本性であるのか。
そうでないことを願いたかった。
数日後、警視庁の中や外で、突如爆発が起きたとの報告が来た。それに乗じて間宮が見張りの警官を倒し、逃げたとも。今はパトカーで追跡中だという。
急いで愛車に乗り込み、僕も追うことにした。
杯戸港の近くにいることに気が付き、指示を出して杯戸港に誘導することにした。そして、それはうまくいった。
もう逃げ場はなく、途中で投げてきていたスタングレネードも尽きたらしい間宮達に投降を促した。
そうして、今に至る。
親しい友人が、自死を選んだ。それは、遡れば我々公安のせいじゃないか。
車が沈んでいって数分。車の消火に四苦八苦していると、突如として轟音と共に水面から水柱があがった。
おそらく、間宮が自爆した。自分の遺体から何かが出ることを恐れたのだろうか?
次の日、破片に変わった車が引き揚げられた。一部の破片には血液がべっとりと付着していて、水中から歯や髪らしき物が発見されたため間宮と三途春千夜が死亡扱いになった。その時初めて知ったが、三途春千夜という戸籍は存在せず、本名は佐野万次郎と間宮の幼馴染である明司春千夜だという情報がわかった。今更これを知っても何になるのか。
そして俺はこの失態を上司に責められ、後始末に追われていた。
白昼堂々警察と容疑者がカーチェイス‼︎なんて美味しいネタをマスコミが放っておくわけもなく、警視庁、警察庁へのクレームや苦言を呈する電話が殺到しており、どの部署もてんてこ舞いだった。
間宮は自分の命と引き換えに警察全体のプライドと国民からの信頼を傷付けていった。
初めからこれが狙いかと気付いた時には思わず恨み言を言ってしまった。
僕にそんな権利なんてないのにな。
間宮の自爆からもう3年。2年前に例の組織を解体した。今は組織のバーボンとして情報が出回ってしまっていることを逆手に取り、組織の残党を追ったりきな臭い組織を調べたりとそれなりに忙しい毎日を送っている。また、表の顔を強化するためにもポアロではいまだにバイトを続けており、萩原達が来てはいじってくるのが悩みだ。
ヒロは警部補に昇格し、現場でバリバリと指示を出す立場になった。的確な指示は警察庁でも評判が高い。
コナン君、基新一君は組織を解体した後、志保ちゃんが完成させたアポトキシン4869の解毒薬を飲み、今では青年探偵として引っ張りだこだ。公安の仕事を手伝ってくれることもあり、警察内部でも一目置かれている。
志保ちゃんは解毒薬を飲み、元に戻った後、公安と司法取引をした。安全な生活を保障するかわりに協力者として働いてもらっている。今は東都大学院の薬学部に所属し、業界から注目を集めている。
赤井達FBIはアメリカに帰り、日本での違法捜査でこってり搾られたらしいが功績を認められてジェイムズ・ブラックの降格処分で済んだらしい。赤井も父親と恋人の仇を取れたからかすっきりとした顔をしていた。
「…むろさん、安室さん‼︎」
「あ、ごめんね新一君。どうしたんだい?」
「…あそこの奥の席の人、さっきからしつこく絡まれて困ってそうなんだけど…助けた方がいい、ですよね?」
「…そうだね。僕が行くよ」
新一君に言われて奥を見れば、茶髪の青年が派手な女性に追い詰められていた。確かに高い声が店内に響いている。こんなものに気付かないなんて、気が抜けているな。気をつけなければ。
「お客様」
「なに?アタシになん…か…」
「…」
「店内には他のお客様もいらっしゃいますので、少し声を抑えていただけませんか?それに、そちらのお客様も困っているようですし」
「は?そんなのアタシにカンケーなくない?てかそんなことよりぃ、お兄さんイケメンだねぇ、一目惚れしちゃったかも♡」
「…えっと…?」
「はぁ、連れがすんません。ミヤ、お前の声確かにうるせーワ」
「は…はぁ⁉︎アタシのせい⁉︎元はと言えばトーヤが浮気したからだろ‼︎」
「…とーや?」
「してねーよ。何回も言ってるだろ。…黙るか店出るか選べよ」
「…あーもーわかったってば。それで、あの女誰なのよ」
「だからお前が言ってる女が誰なのかわかんねーだろ?いつ、どこで見たんだよ」
「昨日‼︎新宿で‼︎髪の長い黒髪の女と歩いてたでしょ⁉︎」
「だからうるさいって。…すみません、店員さん。すぐ諌めますんで」
「は、はぁ…」
「あと、そこの彼が見かねて言ってくれたんですよね。お礼伝えておいてください」
「わかりました」
なんと、知り合いだったのか。入る時も別々だったし、席も隣だから初対面かと思ったんだが…
それにしても、男の名前はトーヤ…塔矢か?いや、まさかな。
「それにしても…ぶっ」
「なによ、なんか文句あるワケ?」
「昨日の新宿だろ?お前が見たの」
「そうだけど?」
「アイツ、男だよ」
「は?」
「ほら、よく話してるハルだよ。明石陽貴」
「ハルキ…え?アイツ、だって、え?アイツ金髪のツーブロじゃん‼︎」
「にひひ、罰ゲームでウィッグ被せて女装させたんだよ。似合ってただろ?」
「…はぁー。なんだ、怒って損した。トーヤ、今日奢りね」
「は?お前が奢れよ。慰謝料」
どうやら痴話喧嘩は終わったようだ。聞き耳を立てていた数人の客も、何事もなかったかのように自分たちの世界に戻っている。
「あの、店員さん」
「はい‼︎どうされました?」
「さっきはありがとうございました。俺じゃヒートアップさせるだけだったんで助かりました」
「いえ、解決されたようでよかったです」
「あの、店員さんお名前は?」
「安室透です。私立探偵をしています」
「あむろ、とおるさん。名前までカッケーっすね。俺、まみやとうやです」
「…っ」
彼が名前を言った途端、僕と新一君の間で、緊迫した雰囲気が流れ出した。
「へぇ‼︎なんて書くんですか?」
「真に谷で真谷、冬に也で冬也、っす」
「真谷冬也、ですか。綺麗なお名前ですね」
「安室さん…口説いてます?」
「まさか‼︎」
「あむろ…あ、ネットで噂のあむぴ‼︎」
「う…」
「ふはっなんだよそれ」
「3年くらい前からネットで話題のイケメン店員のこと。写真は出回ってないから顔は初めて見たケド」
「ふーん。確かに話題になりそうなほどイケメン」
「んね。アタシはトーヤの顔の方が好きだけど♡」
「さっき安室さんに浮気しようとしてたの誰だよ」
「それはノリっしょ?」
さっきまでの雰囲気が嘘のように軽口を交わしながら数十分後に彼らは帰っていった。
真谷冬也、か。見てみる限りだと間宮より5センチほど身長は高かったし、声も間宮より低かった。偶然名前の響きが同じだけ、という説が濃厚だが…どことなく、間宮に近しいものを感じた。私情だが、少しだけ調べてみるか。