梵天主と米花町   作:よたか

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とある公安の独白part1

 

 

 

 

 

僕には警察学校時代の同期が5人いる。とは言っても勿論ただの同期ならもっとたくさんいるが、仲が良い同期が彼ら5人である、ということだ。

 

その同期のうちの1人、間宮塔矢の話をしよう。間宮は最初、よくわからない男だった。成績は僕や伊達班長に次いで良く、逮捕術や体術に関しては伊達班長に勝るとも劣らない程の実力者だった。そして、同じ教場ではあるものの誰とも仲良くしているところを見たことがなかった。かと言って無愛想で協調性がないのかと言われればそうでもない。ただ、気まずそうにするのだ。だから最初は誰も間宮に近づこうとしなかった。かくいう僕もその1人だ。

要は、間宮は孤立していたのだ。

 

それが変わったのは萩原が間宮に興味を持ってから。ハギが間宮に積極的に構い出してから間宮の気まずそうな態度はだいぶ軟化して、(自分で言うのもなんだが)僕や萩原達と並んでも引けを取らない綺麗な顔が男女共に惹きつけて、すぐに間宮の周りは賑やかになった。

僕はその頃はあまり間宮に関心を持ってはいなかったが、とある出来事で間宮に興味を持つようになった。

 

それは夏のとある日だった。僕達は外出届を出して渋谷の街に出ていた。そこで僕らは見たのだ。いかにも不良だというような男達と並んで歩く間宮を。

辮髪の、米神に龍の刺青が入った男や黒髪の長髪の男、金髪でマッシュの男、銀髪の長髪の男と黒髪で少し長髪な背の高い男、オレンジと青の天パの双子らしき男達。背の高い8人の不良らしき男達が並んでいる光景は人の視線を集めていた。彼らの顔がよかったというのもあるだろうが。

 

 

それで気になった僕達は間宮に直接聞いてみたのだ。彼らとの関係を。

警察官志望の彼がいかにも不良そうな彼らと連んでいるということに対して何も思わない訳はなかったからだ。

 

そこで僕達は間宮の過去を、彼を知ることになった。

 

間宮は僕達に問い詰められて、最初はとぼけていたが、やがて観念してポツポツと話し始めた。

 

間宮は元々暴走族で、関東制覇も成し遂げた族だったこと。一緒にいたのはその暴走族の副総長や各隊の隊長・副隊長達で、半年に一度の近況報告会だったこと。間宮は遊撃隊長だったこと。

間宮がその暴走族…東卍に入ったのは、幼馴染が総長だったからで、その幼馴染は…今、行方不明なこと。間宮はその幼馴染を探すために警察になることを決めたということ。

元々暴走族ではあるもののバイクの免許も取っていて、喧嘩も正当防衛を主張できるくらいしかしていなかったことから前科も無く、学校では優等生だったため内申も問題なかったらしいこと。

 

目から鱗だった。まさか間宮にそんな過去があるとは…

 

その後間宮は僕らにこう言った。

 

「過去のことについて反省も後悔もしてねェが、もうヤンキーに戻るつもりはねェよ。とんだ不良警官、の卵だな、ははっ」

 

それから僕らはより一層仲良くなれた。と、思う。

 

 

 

卒業が近づいて来て配属先が決まり始めていた頃。

配属先がわかっていたのは松田と萩原が爆発物処理班、伊達班長が捜査一課だということだけで、僕、景、間宮はまだ決まっていなかった。いや、隠していた。

 

だから僕が警察庁の公安に、景が警視庁の公安に配属された時、当たり前のように間宮もいると思っていた。だが、間宮はおらず、警察を辞めた旨を上司から聞いただけだった。調べてみても僕らとは違い間宮の戸籍は鬼籍に入っていなかったし都心部にあるキャバクラでボーイをやっていることも掴めた。間宮は本当に警察を辞めたのだと思っていた。どこか違和感を覚えたが。

 

 

その数年後、僕と間宮は再会を果たした。最悪の形で。

僕と景が潜入している組織…通称・黒の組織と協力関係にある日本を牛耳る裏組織・梵天の幹部として、間宮が僕に紹介されたのだ。危うく声を出すところだった。それは向こうもだったが。だが、納得した自分がいた。だってそうだろう?梵天の幹部はほとんどが間宮の不良時代の知り合いらしいから。

 

当時の僕はネームドになったばかりであまり信用も無く地位も下の方だった。同じく情報屋だった間宮に付いてその技術を盗め、という指令で数ヶ月の間間宮と共に任務に当たった。間宮は何も言わなかった。本当に警察を裏切って梵天になったのだとしたらなぜ僕のことを、そして僕より前に幹部になって顔を合わせていたであろう景のことを黙っているのかがとても気になった。だが聞けなかった。幹部になって日が浅く、盗聴器が仕掛けられていたからだ。おかげで登庁も一苦労だったがそれはまた別の話。

 

 

ある時、僕、景、僕や景より先にネームドになっていたライ、間宮、梵天No.3の三途春千夜の4人で任務に当たることがあった。三途は間宮のことを尊敬しているようで間宮に対しては敬語だった。間宮が言うに幼馴染らしい。納得した。警察学校時代に間宮が幼馴染のことをとても愛しているというのは嫌と言うほど知っていたからだ。幼馴染がNo.3の組織なら、間宮が裏切ったとしてもなんらおかしくは無い。そう思いながら間宮を完全に“犯罪者”として接していた。

 

間宮がよくわからなくなったのは景がNOCであるとバレかけた時だ。『スコッチはNOC』というメールが幹部全体に行き届いた直後、間宮からスコッチがNOCだというデマを流そうとしている公安職員がいるとのタレコミがあった。組織は元々公安職員の話をそこまで信頼していたわけではなかったため仮にも同盟相手の梵天の間宮を取りスコッチは疑いの目はあるものの生き延びた。

 

 

 

 

僕には、もう間宮がよくわからない。

 

 

 

 

 

それからおよそ2年。

最近知った。間宮も僕と同じ所属だったことに。そして、すぐに捨てられていたことに。自分が腹立たしかった。なぜ僕はすぐに間宮が裏切ったと思った?なんで僕は、あの時の間宮の言葉を信じなかった?なんで、なぜ、なぜ‼︎

 

 

上からの指示で間宮が公安であるとジンにリークした。吐きそうな気分の中、何も知らない間宮が来た。ジンが間宮に銃を突きつけNOCではないかと問うた。

 

僕を見た間宮の、悟ったような表情が、僕の心を抉った。

 

 

間宮自身の発言で一応疑いは晴れた。そのまま間宮と2人で任務に行くことになった。

車の中の空気は地獄のようだった。

 

 

間宮が、公安を裏切ると言った。なんとなく、わかっていた。さっきの間宮が悟ったのは、僕たちが先に裏切っていたことだろう。仕方がない、仕方がないことなんだこれは。僕は了承するしかなかった。

もう、自分が嫌になった。

 

 

そのせいか、任務でやらかした。間宮が怪我を負った。骨折とまではいってないだろうが、軽傷ではない。

 

 

 

ごめん、間宮。

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