なんか時間がない×(オリジナル生徒の扱いに困る+対策委員会メンバーのセリフに困る+先生のセリフに困る)=投稿が遅れる
という方程式が完成していました。
このオリジナル生徒が一体どんな影響を及ぼしてくれるのか……楽しみですね。設定等は設定資料の方に後程追加しておきますので、読んでいただけると嬉しいです。
「えーっと、みんなでお昼寝でもする? ってお話だったっけ」
「違いますよホシノ先輩……」
捕虜(?)となったヘルメット団の少女1人を交えた作戦会議が、ホシノのユルユルな一言から始まった。アヤネがあきれ気味につっこみ、手にしていたタブレットで顔を覆うようにして天を仰ぐ。
「いやぁ〜、先生の指揮すごかったねぇ。まさか勝っちゃうなんて」
「勝っちゃうなんて、じゃありませんよ。負けたらこの学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」
「それはそう。にしてもさっきの戦闘の指揮、すごく的確だった。この先生、すごい人だよ」
「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。ママが帰ってきてくれたおかげでおじさんも安心して寝られまちゅ」
「いやいや、変な冗談はやめてよ! 先生困っちゃうじゃん! それに委員長はしょっちゅうどこかで寝てるでしょ!」
さっきから止まらないホシノのおじさん狂言で場の空気は一気に日常風景に戻る。取り残されているのは私と捕虜の少女だけだ。ほら、あの子も話についていけなくて私の方を見るしかなくなってる。
その後、ノノミがなんとなく話の流れをもとに戻し、アヤネがタイミングを見て話を始める。
「改めてご挨拶させていただきますね、先生。私たちはアビドス対策委員会です。私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネです。こちらは同じく1年のセリカ」
「どうも、先生」
よく見ると、アヤネの耳はいわゆる〝エルフ耳〟という耳輪が少し尖った形をしている。オペレーターとしての技術が非常に高く、私の指示が少し遅れた時の補佐だったり、ドローンによる弾薬補充のタイミングなどは身を見張るものがあった。セリカは先ほどの戦闘でシロコと一緒にステルスをしてもらった。身のこなしが軽く、動きも速い。彼女によく合ったスタイルだっただろう。
「こっちは、2年のノノミ先輩とシロコ先輩」
「よろしくお願いします、先生〜」
「覚えてると思うけど、最初に道端で会ったのが私。……いや、別にマウント取ってるわけじゃない」
ノノミはおっとりとして抱擁力のある雰囲気の、言ってみればお母さんのような感じのする少女だった。他の少女たちと比べて少し背が高く、発育もかなり良い。うん。健全。シロコは淡白なしゃべり方だが、その割に感情を感じる仕草が多い。さっきの戦闘ではセリカと一緒に組んでもらったが、シロコ主体で動いていたところを見るに、彼女のほうがポテンシャルが上なのだろう。
「そしてこちらが、委員長で3年のホシノ先輩です」
「いやぁ〜、先生よろしくね〜」
机に半ば突っ伏したような姿勢でホシノは顔を上げ、私の方へ軽く手を振った。こんな感じだが、さっきの戦闘では間違いなく一番の脅威という役にピッタリだっただろう。折りたたみ式とは言え鋼鉄製のバリスティックシールドを片手に持ったままショットガンを連射する様子は、見ていて怖くなる程には相手にしたくないものだった。戦闘前にアヤネが言っていた「キヴォトス全体で見てもトップレベルに近い」というのもあながち間違いではないのかもしれない。
対策委員会メンバーの紹介が粗方終わったところで、アヤネは武器類を全て取り上げられた少女のほうを見た。
「えーっと、まずあなたのお名前を聞いてもいいですか?」
「……小波さざみシュウ」
シッテムの箱でキヴォトスの生徒一覧を確認したところ、彼女本人と思われる生徒の項目が見つかった。元はそれほど規模の大きくない学園に所属していたが、何か問題を起こしたのか、今は退校処分となっている。その後の情報は載っていないが、まぁなんやかんやあって今に至る、といったところか。
「それじゃあシュウちゃんだねぇ。一応聞くけどシュウちゃん、今の自分の立場はわかってる?」
ホシノがふわふわした雰囲気のまま口を開いた。
「わかってるつもり。というかそこの大人の人なんなの……? 今までボディーブローで吐いたことなんてないんだけど……」
小波からの恐怖がこもった視線に、微笑んで小さく手を振り返す。これはしばらく怖がられっぱなしかもしれないなあ。
「その方は、最近設立された連邦生徒会直下の組織、シャーレの蘭先生です。私が送ったメールを読んで、わざわざアビドスまで来てくださったんです。弾薬類の補給も一手に引き受けてくれたんですよ」
「へぇ、それであんなに強気でこれたのか。あーぁ、失敗しちゃった……」
「失敗しちゃった、じゃないわよ! 私たちにとって見れば死活問題なんだから!」
セリカが小波の言葉に反応し、あわや手が出る寸前と言ったところまで一気に沸騰した。
「まぁまぁセリカちゃん、ひとまず勝てたんですから落ち着きましょ?」
「そうだよセリカちゃん。とりあえずその子は先生に任せよう?」
そういうホシノに背中を押され、小波の隣まで移動させられてしまった。
「よろしくね」
「ひぃっ!?」
「あはは……ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……そのためシャーレに支援を要請し、先生がいらしてくれたおかげで、その危機を脱することができました。先生がいなかったらさっきの戦闘で学校を乗っ取られていたかもしれません……本当に感謝しています」
アヤネからの感謝の言葉をほどほどに受け取り、先ほどから気になっていることを質問してみる。
「皆の力になれたみたいでよかった。ところで、さっきから気になってるんだけど、対策委員会ってなに? 生徒会じゃないんだね」
私からの質問に答えたのも、アヤネだった。
「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」
「うんうん! 全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです! 全校生徒と言っても、私たち5人だけなんですけどね」
「全校生徒が5人だけ? 他の生徒達はどうしたの?」
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして街を出ていった。学校がこんな状態だから学園都市の住人も殆どいなくなったし、そのせいでカタカタヘルメット団みたいなチンピラに学校を襲われる始末なの」
この世界の不良はだいぶんアグレッシブなんだな……と思いつつ、シャーレ着任直前にその様相を目の当たりにしていることも思い出す。銃弾と手榴弾で取っ組み合いのケンカをし、戦車砲でチャンバラするこの世界に慣れるには、まだ暫く時間がかかりそうだ。
「このまま襲撃が続くとじきに物資が底をつくのは目に見えていましたし、今回の襲撃も、実際はかなり危ないところでした」
「本当にいいタイミングで来てくれたんだよ、先生は。物資は殆ど後底をついていたし、さすがに今回は覚悟したもんね〜」
「うんうん! もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです★」
「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど」
シロコの指摘も最もだ。ああいう奴らはこちらが疲弊するまでしつこく、ネチネチとつつき続けてくるだろう。ほかに何か問題があるとしても、まずは校舎を守ることが最優先。彼女たちの生活の場を何としても守らなくてはならない。
「そこでね、ちょっと作戦を練ってみたんだー」
「えっ!? ホシノ先輩が!?」
「うそっ!?」
普段どんな態度でいたらそんな反応をされるのやら……
ホシノが立案した作戦はこうだ。まず、ヘルメット団の襲撃サイクルは3∼4日。一度の襲撃で受けた損害を立て直すのに同じだけの期間が必要だととらえると、今回むこうに与えた損害は今までよりも大きなものになっているはず。だからこのタイミングにこちらから戦闘を仕掛けて、前哨基地を制圧してしまおう。そういう作戦だ。
補給の面については私がいるから心配はいらない。
「……うん、いけると思う。奴らの基地はここから30㎞くらいだし、今から出発しよっか」
「それはそうですが……先生はいかがですか?」
「私も良いと思う。この際だ、ちょっと痛い目を見てもらおうか」
「あのー……」
私の隣から、申し訳なさげな声と、所在なさげにそろそろと手があげられた。
「えっと、わたしはどうしたら……?」
そうだ、小波をどうしよう。一応は捕虜という立場だし、ただでさえ4対1。そのうえ戦闘能力からみてもかなりの差がある。冷静になれば話が分かるタイプの子ではあるが、アヤネも一緒に校舎の外へ出ることになる今回の作戦では監視できる人員が誰もいない。
「確かに……みんなで出るつもりでいたけど、あなたのことを忘れてた」
「連れてっちゃえばいいんじゃない?」
そんなことを言い出したのはホシノだ。
「せ、先輩!? 何言ってるのよ! いくら今は危険じゃないからって、いつこっちを攻撃してくるかわからないじゃない!」
「その心配はないんじゃない? 戦闘に直接参加させるつもりはないからさ」
セリカはホシノの言葉にちょっと勢いをそがれ、吐こうとしていた言葉がたたらを踏んでしまったようだ。私はなんとなくホシノの言いたいことが理解できているが、きっとアヤネかノノミあたりも理解していることだろう。
「えっと、つまり小波さんは連れていく。でも戦闘に直接参加はさせない……ということは、先生だったりオペレーター役の私の傍において監視する、ということですか?」
「そゆことそゆことー」
「なるほど、たしかに先生なら小波さんが急に暴れても制圧できそうですしね★」
私を何だと思っているのだろうか。事実だから何も言わないけど。
セリカもまあ渋々といった様子だが一応納得してくれたようで、それ以上突っかかってくることはなかった。
「さて、それじゃあやっちゃおうか」