皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第十二話 Oder wie eine Person(或いは人のように)

「殲滅は順調そうだな」

 

 

 

「はい。後は、大西洋と重桜に潜んでいるセイレーンのみです」

 

 

 

「そうか。ご苦労さま」

 

 

「は!」

 

 

 ゆかに報告した部下は下がっていく。

 

 

 皇国は別世界(ここ)で台頭してから、各地に艦隊を派遣。セイレーンを一方的に殲滅していた。

 それと同時に、それぞれの陣営のKAN -SENを航宙駆逐艦をもって宇宙から逐次監視していた。

 

 

「さて、少し謀略といこうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…貴方に助けられたのか…」

 

 

 エンタープライズはそう言った。

日本皇国が介入したあの戦闘で、ベルファストは、エンタープライズを庇いながらあの苛烈な攻撃を避けれるだけ避けていたのだ。

 そうしなければ、轟沈は免れなかったのだろう。もっとも、その元凶とも言える日本皇国側は、轟沈させるつもりは一切なかったのだが。

 

 

「すまない、迷惑をかけた」

  

 

「大事がなくてなによりでございます」

 

 

 エンタープライズは立ち上がって、机にのっていた軍用レーションを手に取り、扉に向かって歩き出した。

 

 

 扉から出たエンタープライズは、玄関に向かって廊下を歩き出した。

 

 

「安静にしていた方がよろしいのでは?」

 

 

「この程度の負傷は戦場の常だ」

 

 

 この言葉にベルファストは、あの時の様子を思い出す。

 明らかに重傷が多いロイヤル艦隊が、基地に運ばれていく様子をベルファストはしっかり目に焼き付けていた。その中には戦艦の姿まであったのだ。

 それに比べてエンタープライズなどは、まだまだ軽症の域に入るだろう。

しかし、それが蓄積されれば話は別だ。

 実際、修理が終わっていないまま出撃していたのだ。

 

 

「危ないところだったのですよ」

 

 

「そうだな。貴艦に感謝する」

 

 

 そうして、扉についた2人。

 

 

「朝食のお時間ですが?」

 

 

「これで十分だ」

 

 

 軍用レーションをベルファストに見せるエンタープライズ。彼女は、そのまま扉から外に出た。

その様子を見たベルファストは、ため息しか出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂では、KAN -SEN達が集って朝食を食べていた。

 

 

「食べないの?」

 

 

 ラフィーにそう言われてボーとしていたジャベリンは、ハッとしてこう言った。

 

 

「え?あっ、ごめんなさい、考え事してて…」

 

 

 慌てて食べ始めるジャベリン。

そんな彼女の頭の中には、あの時の事でいっぱいになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本皇国からの攻撃が終わり、各自味方の救助に入りながら撤退していく。その中で、比較的軽症だったジャベリンは同じく軽症だった綾波を見つめていた。

 

 

「バイバイ。またね」

 

 

 ラフィーは、綾波に手を振って去っていく綾波を見送った。

ジャベリンは、何故ラフィーがそんな行動に出たのか気になっていた。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ラフィーちゃん、どうしてあの時…」 

 

 

「ん?」

 

 

「ううん。なんでもない」

 

 

 

 それでも聞けなかった。そんなジャベリンは、誤魔化すように目の前のサンドイッチを口に運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車で移動しているプリンス・オブ・ウェールズとイラストリアス。その2人が話していたのは、エンタープライズのことだった。

 

 

 

「基地にひき続き、ホーネット艦隊も救われた。彼女の力は疑いようがない」

 

 

 

「でも、悪い予感は当たりました。ベルファストがいなかったらどうなっていたか」

 

 

 

「気になるのか?彼女のことが」

 

 

 

「うん。あの人は、ユニコーンちゃんを助けてくれました」

 

 

 

 それは、日本皇国が介入する前の戦闘の時、つまりアズールレーン基地襲撃の迎撃の際に、ユニコーンは加賀によってやられそうになっていた。それをエンタープライズはユニコーンを間一髪で救ったのだ。

 ちなみに、日本皇国はその時の戦いの時はまだ偵察している段階だった為、映像として保存されている。

 

 

「このまま、戦いですり減っていく姿を見たくはありません」

 

 

 イラストリアスのこの気持ちにプリンス・オブ・ウェールズは、目を瞑ってこう言った。

 

 

「ならば、陛下に掛け合ってみるか」

 

 

 彼女らを乗せた車は、陛下……クイーン・エリザベスがいる場所に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

「話は分かったけど、それはユニオンの問題ではなくて?私達が口を挟むことではないでしょ?」

 

 

 クイーン・エリザベスは話を聞いた後、一番にそう言った。彼女も、その周りにいるKAN -SENも日本皇国から受けた攻撃による傷は既に完治していた。

 ティータイムを満喫しながら話すクイーン・エリザベスだが、その答えは正論だった。

 

 

 

「そ、それは…」

 

 

 プリンス・オブ・ウェールズは言い淀む。そこに、ユニコーンから援護が入った。

 

 

「でもエンタープライズさん、ユニコーンのこと助けてくれたよ」

 

 

 その姿を見たイラストリアスは微笑み、口を開く。

 

 

「彼女の力はきっと、これからの戦いに必要になります。ここで終わっていい方ではありません」

 

 

 今のアズールレーンはレッドアクシズの脅威がある。セイレーンの脅威がある。それよりも脅威なのが、日本皇国。

 それらに対抗する為に、ユニオン最強であるエンタープライズの力は必要不可欠なのだ。

イラストリアスにとって、エンタープライズはユニコーンを救ってくれた恩人であり、人見知りなユニコーンが懐いている数少ないKAN -SENである。エンタープライズを気にする、気遣うのは、それだけの理由で十分なのだ。前者は、建前に過ぎない。

 

 

 

「断言するのね。理由を聞いても?」

 

 

 

「聖なる光の導きですわ」

 

 

 

 フッドのその質問にそう答えたイラストリアス。ウォースパイトは呆れたような表情をするが、彼女の勘は中々侮れないのは、フッドは知っていた。

 

 

 

「戦力的にも、エンタープライズはこの基地の主力となる艦です。彼女が抱える問題を見過ごす訳にはいきません」

 

 

 

 ここまで言われて何もしない彼女、クイーン・エリザベスではない。彼女はエンタープライズを見極めることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 工作艦であるヴェスタルはエンタープライズに物申していた。

 

 

 

「随分と無茶しましたね。エンタープライズちゃん!」

 

 

 

「やむを得ない事態だった」

 

 

 

「自分を大切にしなさいといつも言ってますよね」

 

 

 

「私達は戦う為の存在だ」 

 

 

 

「エンタープライズちゃん!!」

 

 

 

 エンタープライズは、踵を返してヴェスタルから離れていく。

 

 

 

「もう。世話の焼ける子…」

 

 

ヴェスタルはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 そして、それを影から見ている人物がいた。

 

 

 

「あれが、エンタープライズか…」

 

 

 

 そう呟いたその人物は、手に持っているカメラのシャッターを押した。

 

 

 

透過(とうか)

 

 

彼、無刈雅(むがりみやび)の持つ能力で、ありとあらゆるものを透過することが可能だ。

彼は、自分自身に対して能力を使用して、自分に当たる光を透過して一種の光学迷彩みたいにして隠密裏に行動しており、また、壁を透過して壁の向こうの様子を見ることができることから、諜報員として活動している。透過したものは、相手からは変わらないように見える為、強力な能力だ。

 

 

 

「確かに、武功艦の貫禄はあるな」

 

 

 

 史実のエンタープライズは、真珠湾攻撃を生き延びた幸運艦であり、太平洋戦争を生き延びた艦でもある。

 

 

 

「しかし、どこか危ういな…」

 

 

 

 彼にベテランの諜報員としての勘が囁く。

これからの計画の為に、エンタープライズ含む他のKAN -SENには、全員生き残ってもらわなければならない。

 

 

 

「独自行動は認められているけど…」

 

 

 

 使われなければいいなと内心、彼はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 アズールレーン基地に潜入している諜報員は彼だけではなかった。

 

 

 

「ここが別世界の地球で、あれが別世界の私達みたいな存在かぁ〜」

 

 

 

 艦娘の川内である。彼女は夜戦バカの一面があるが、日本がかつて世界に誇っていた文化、アニメや漫画などで忍者について触れて、今や、さながら本物の忍者である。夜戦バカは変わらないが…。

 

 

 

(全然、違うんだ)

 

 

 

 世界が違うから、そりゃそうである。

川内の目の前には、元気に水遊びしているKAN -SEN達がいた。

ビーチバレーを楽しんだり、海で泳いだり、ベンチでくつろいだり、様々だ。

 

 

 

(あっ、サメに襲われた)

 

 

 

 人間と違うKAN -SEN特有の力があるのか、見事にサメの口を手と足で閉じないように耐えている。

そんな彼女は、サラトガの艦載機の爆撃によって豪快に救出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「いつまでそうしているおつもりですか?」

 

 

 

 大雨が降って波が高くなる中、エンタープライズは海を眺めていた。その背後からベルファストが傘を持って来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何故私につきまとう?」

 

 

 ベルファストは少し考える仕草をしてこう答えた。

 

 

「陛下にはそれとなく探りを入れるよう仰せつかっているのですが、お恥ずかしながら私、そのような機微には疎いものでして」

 

 

「何が言いたい?」

 

 

「単刀直入にお伺いします。いつまであのような戦い方を続けるおつもりですか?」

 

 

 真剣な表情をしたベルファスト。彼女は続ける。

 

 

「貴方様は戦いを疎んじているとお見受けします。しかし、その一方で自らの命を顧みることはない」

 

 

 雨がさらに激しくなる。

それに呼応して、空がさらに分厚い雲に覆われていく。

 

 

「貴方の在り方は歪んでいる。このままでは、いずれ戦う意味さえ見失ってしまうでしょう」

 

 

「………」

 

 

 何も答えないエンタープライズ。

そこに、あり得ない方向から声がかかる。

 

 

「君はそれでいいのか?」

 

 

 バッと後ろを振り向くエンタープライズ。

警戒しながらその人物へと目線がいく。ベルファストも同様だ。

 

 

「何者だ?」

 

 

 

「なーに。ただの日本皇国の諜報員、スパイだよ」

 

 

 

「スパイだと」

 

 

 

「エンタープライズ様、お下がりください」

 

 

 

 ベルファストはエンタープライズを庇うような立ち位置に移動する。

 

 

「それより、君は本当にそれでいいのか?」

 

 

 

「何がだ」

 

 

 

「君の在り方だ。本当にそのままでいいのか?」

 

 

 

「ああ。私達は戦う為に生まれてきたのだから」

 

 

 

「…そうか」

 

 

 

 無刈はこれ以上質問をしなかった。

そして雨に紛れるように、ゆっくりと消えていった。

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

 これには2人は驚きを隠せなかった。そして、日本皇国への警戒レベルがさらに上がったのは言うまでもない。

 

 

 

 

(昔の隊長に似ているんだ)

 

 

 無刈は隠れた後、先ほどの会話を思い出していた。

エンタープライズの自らを兵器とする主張、

 

 

『戦う為に生まれてきた』

 

 

 その言葉で、隊長である大和ゆかの過去を知っている数少ない彼は、エンタープライズから目を離せなくなった。そして、過去の彼と重ね合わせていた。

独自行動をしてまで、彼女と接触し言葉を聞いた無刈は、より一層変えたい。そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 夜、救難信号をキャッチしたアズールレーンは、救助に向かっていた。

大雨の影響で海がひたすら荒れる中、クリーブランドを筆頭にハムマンを先頭にして前進していく。

 

 

 

「そろそろ近いはずなんだけど…」

 

 

 

「この嵐で遭難したのか?」

 

 

 

「かもね。………って!?なんでついてきてるのさ!エンタープライズ!まだ、傷、治っていないんだろ」

 

 

 

「!?。そのような状態で出撃なさっているのですか?」

 

 

 

 エンタープライズの状態を知っているクリーブランドが驚愕する。そして、事態を知ったベルファストがエンタープライズに聞く。

エンタープライズはまだ修理が終わっていない状態で出撃しているのだ。クリーブランドの様子も納得できる。

 

 

 

「待って!前方に何かが!」

 

 

 ハムマンが、何かに気付いた。

皆は目を凝らして指差した方向を見る。

それはセイレーンだった。しかし、様子がおかしい。

 

 

 

「戦闘の跡だ…」

 

 

 

 クリーブランドが呟く。この状況から分かることは、救助信号を出した船はセイレーンと戦闘していたということだ。

 そして、今も戦闘中かもしれないということ。

救援に行きたいクリーブランドだが、この天候では索敵もままならない。

 

 

 

「周囲の警戒を頼む」

 

 

 

 そんな中、エンタープライズが突出。1人で突っ走る形となった。

クリーブランドは思わずこう叫んだ。

 

 

 

「なんであいつはいつもああなのさぁ!!」

 

 

 

 クリーブランドその怒号は、波や大雨の音で掻き消されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 エンタープライズが救援対象と見られる船に着くと、そこには女性が2人いた。KAN -SENと思われる彼女らは、1人が負傷して意識がなくなっており、1人が庇うように抱きしめている。

エンタープライズに気付いた彼女は、警戒して睨むように見つめている。

 

 

 

(東煌の少女か?)

 

 

 

 この世界でいう中国に属する国家である東煌と見られるボロボロの彼女らを見て、やはり戦闘があったと確信できる。

 

 

 

「安心しろ。私はアズールレーンに所属するもの。救助信号を追ってきた。周囲のセイレーンはあなたたちが倒したのか?」

 

 

 

 アズールレーンと聞いて、警戒を解いていく彼女。

そして、その問いに頷く彼女。

 

 

 

「何があったか教えてくれ」

 

 

 

 エンタープライズは現在の状況を知ろうと、さらに問いかける。

俯きながら彼女は答える。

 

 

 

「平海たちセイレーンに追われてて、全部やっつけたけど姉ちゃん、私を庇ったから…」

 

 

 

「うっ」

 

 

 

 ここでもう1人の少女、寧海が目を覚ました。

 

 

 

「寧海姉ちゃん!!」

 

 

 

「平海…無事?」

 

 

 

 さっきまで意識がなかった寧海だが、平海のことを心配している。流石、姉妹と言えるだろう。その光景はエンタープライズにとって、姉であるヨークタウンと自身の会話を彷彿とさせた。

 

 

「良かった…うっ」

 

 

「姉ちゃん!」

 

 

「大丈夫だ。私達が助ける。仲間も時期に到着する」

 

 

 エンタープライズがそう言った時、セイレーンの一部が動き出した。まだ、倒されていなかったのだ。

 

 

「倒し損ねた!?」

 

 

「逃げなさい…平海」

 

 

「嫌だ!!今度は平海が姉ちゃんを助ける!!」

 

 

 2人のKAN -SENの会話が、ヨークタウンと自分に重ね合わさる。姉がいるエンタープライズにとって、2人は似ていたのだ。

 

 

 

「こっちだ!!」

 

 

 

 だからだろうか。エンタープライズは飛び出してセイレーンの狙いを引きつける。

そして、甲板をセイレーンに向けて航空機を発艦させて攻撃しようとするが、傷が治っていないのがここにきて響いた。

 火花が散る。発艦ができない。

 セイレーンが発砲する。攻撃態勢をとっているエンタープライズは反応できない。

直撃するかに思われるその砲弾。

 

 

 

「はぁあ!!」

 

 

 

それをベルファストが間一髪で防いだ。

 

 

 

「少しだけ、貴方のことが理解できました」

 

 

 

 そう言って魚雷を放つベルファスト。

 

 

 

「貴方、お人好しなのですね、エンタープライズ様」

 

 

 

 その言葉の後にセイレーンに魚雷が着弾。爆発、轟沈する。

そして、クリーブランドたちと合流したエンタープライズ。状況を見て、もう少し皆でこの海域に留まろうとする。

 

 

「おい!あれ!」

 

 

 そんな中、クリーブランドが最初に気付いた。

 セイレーンの増援がやってきたのだ。

 次々に砲撃するセイレーン。なんとか引きつけるエンタープライズたちだが、いずれ限界がくる。

それはすぐにやってきた。

 

 

「きゃあ!」

 

 

 1発、救援対象のKAN -SENらが乗っている船に直撃したのだ。幸い、小破ですんでいるが、それを境にさらに砲撃が激しくなる。

 このまま、やられるのか?それとも、望めない救援を要請するのか?

囲まれて絶望という2文字が頭の中によぎった時、ある音が近づいてきた。

 

 

 

 

 

 その音の方向に目を向けると、上にプロペラが着いている特殊な航空機が近づいて来ていた。

その航空機は、空中で静止するという今までの常識を覆すことをして、さらに機銃と思われるものから光が迸り、光の槍がセイレーンを次々と貫いていた。

 アズールレーンの救援艦隊の皆はその攻撃に見覚えがあった。それが確信に変わったのは、その航空機の側面に描かれている大きい日の丸を見てからだった。

 

 

 

「あれは…日本皇国!?」

 

 

 

「何をしに…」

 

 

 

 

 

 アズールレーンに潜入している巡洋艦川内から発艦したヘリコプター海鳥は悪天候でも、その影響を全く受けずに救難信号があった場所周辺のセイレーンを一掃していた。

 

 

 空中に静止した海鳥からロープが降ろされ、それを伝って降りていく人物がいた。

無刈雅だった。

 砲塔を無刈に向けて警戒するKAN -SEN達。

先に口を開いたのは、無刈と降下したもう1人の人物。

 

 

 

「大丈夫だったか?」

 

 

 

 司令官の大和ゆかだった。

 

 

 

「ああ。助かった。だが、敵であるあなたが何故助けた?」

 

 

 

 エンタープライズはそう問いかける。その質問は皆が気になってる質問だった。

 

 

 

「何故ね…簡単だよ。俺らは、セイレーンを殲滅する為に動いているにすぎない。アズールレーンとレッドアクシズに宣戦布告することで、人類が団結して、共通の敵を相手に対抗できるように仕向けているだけ」

 

 

 

「つまり、汚れ仕事を自らの国が請け負っているということですか?」

 

 

 

「……そうなるね。けど、俺たちにとっては問題はない」

 

 

 

「それはどうしてですか?」

 

 

「俺たちは並行世界から来たから」

 

 

 

「隊長!?」

 

 

 

 その言葉に皆が驚いていた。半信半疑っていうところもあるだろう。

 

 

 

「嘘…ではなさそうだな。そうじゃないと、今までの辻褄が合わなくなる」

 

 

 

「ご理解いただけてなにより」

 

 

 

 盲点だったと言わんばかりのエンタープライズ。

あれだけの力を持つ日本皇国という国が今まで聞かなかったというのも頷ける。

 

 

 

「それで、何が目的だ?私達が纏まってそちらに何かメリットはあるのか?」

 

 

 

「あるさ。セイレーン殲滅という大きなメリットがさ」

 

 

 

ゆかは、日本皇国が遭った被害の状況を話した。それが、異世界の門をくぐってきたセイレーンの仕業だと。

 

 

 

「そんなことが…」

 

 

 

「こちらとしては、セイレーンとかいう人類共通の敵がいるのにも関わらず、思想の違いだけで対立し、人類同士で争うのが理解できない」

 

 

 

「それは…」

 

 

 

 アズールレーン側は何も言えなかった。辺りが沈黙で包まれる。

その沈黙を破ったのは、ゆかであった。

 

 

「ともかく、宣戦布告は形だけで敵対する気はないと頭に留めておいてくれればいい。こちらとしても、その方が動きやすいし、セイレーンが殲滅し終わったら元の世界に帰る予定だしな」

 

 

 

ゆかは、ロープが吊るされているヘリコプターの下に向かう。無刈もそれに続く。

 

 

 

「それじゃあ、あとは任せたぜ」

 

 

 

 ロープを掴んだゆかは無刈と共に登る。

彼らはヘリコプターに搭乗すると、そのまま去っていった。

 その場に残ったのは未だに沈黙しているエンタープライズたち。

日本皇国について新たな情報が掴めたのはデカいが、今はこの状況を耐えるのが先。

引き続き、警戒をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く経つと、雨は止んで日が出てきた。

海も落ち着いてきて、穏やかになっている。

 

 

 

「私事で恐縮ですが、貴方に興味を持ちました。

僭越ながら、このベルファスト。エンタープライズ様に淑女としての礼節を教示させていただきます」

 

 

 

 ベルファストがスカートをたくし上げ、礼をしながら言う。

いきなりのことでエンタープライズは困惑し、こう言うのは当然だった。

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 大雨の時に無刈が接触したその後の会話も、今のこの会話も、接触した日本皇国についての話題が出てこなかった。それは、単純に頭から抜け落ちていたのか、それとも、そもそも記憶にないのかは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

「良かったんですか?本当のことを言って」

 

 

 

「問題ない。嘘か本当か、信じるのは向こうだし、それに…」

 

 

 

 無刈の疑問。ゆかはこう答え、頭の中である人物を思い出す。

 

 

 

「彼女が言うには、運命で見た通り(・・・・・・・)らしいしな」

 

 

 

「そうですか」

 

 

 

ゆかは無刈のその言葉に満足すると、船の先端に立つ。そしてこう呟いた。

 

 

 

「第一段階は終了。第二段階に移行。さて、

 

 

 

どこまで耐えるかな、セイレーンよ」

 

 

 

 

と……。

 

 

 

 そんなゆかの手には、表紙に『この世界で確認されたある国家勢力について』と書かれた、ある資料が握られていた。

 




キャラ紹介

NO.8
無刈雅
ネクロマンス所属 諜報員兼狙撃兵
ゆかの過去を知っている数少ない人物の1人。
実験体時代のゆかを知っていて、ゆかが反抗する手助けを裏からした人物でもある。
地球にいた頃は、ある敵の小国でスパイ活動していたところ、バレてしまったことがあり、その際に1人で能力をフル活用してその国を降伏させたことがある、最強の諜報員。
第三話で出てきた現地の諜報員とは実は彼のことである。
能力『透過』
ありとあらゆるものを透過させることができる能力。自身を透過して光を貫通させることで擬似的な透明人間を作り出したり、壁を透過して銃弾を壁越しに撃って命中させたりできる。一度、同僚から女性の服を透過して裸を見ないのかと聞かれたことがあったらしいが、そんなことはしないと返したらしい。

魔王編にて、登場させて欲しいキャラは?(参考として検討します)

  • レミリア・スカーレット
  • フランドール・スカーレット
  • 両方出して欲しい
  • 出さなくても良い
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