皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第十四話 Schlacht in der zerstörten Stadt(廃墟街での戦闘)

 爆発後の混乱を利用して、なんとか孤島に潜伏することができたレッドアクシズ潜入団一行。しかし、この事は当然の如く重桜側には察知されており、重桜の追撃隊と量産型セイレーンが孤島を丸ごと包囲していた。

 

 

 その追撃隊には鉄血も参戦しており、ガチガチの編成となっていた。

 

 

 

 

 そんな中、潜伏場所では一時的に共闘することになったシェフィールドとエディンバラ、川内と明石、そして大和ゆかがいた。あの爆発からゆかがなんとか彼女らを連れて孤島まで運んだのだ。

 彼女らは、黒いメンタルキューブについて話していた。

 

 

「謎だにゃ…」

 

 

「本当に何もわからないのか?」

 

 

「わからないものはわからないのにゃ。明石はただの工作艦で、詳しいことはわからないにゃ」

 

 

 どうやら、本当に知らない様だ。

明石は怯えた様に頭を抱える。

 

 

「まさかセイレーンの横流し品だったにゃんて……これ絶対ヤバいヤツにゃ…おっかないにゃ」

 

 

 ゆかはため息を吐く。

オロチ計画の言葉は知っていても、その内容は知らない。つまり、何が目的かも知らない。

正直、手掛かりが皆無と言っても過言ではなかった。

 

 

「ただいま、戻りました」

 

 

「おかえりなさい。どうでした?」

 

 

 シェフィールドは付近の状況を伝える。

偵察機が哨戒していて、この島に隠れていることが向こうにバレていることが考えられる。

この状況がアズールレーン側に伝わっているのはほぼ確定でいい。救援を待つべきだとシェフィールドは主張する。紅茶を飲みながらなのは、流石ロイヤルといったところか。

川内とゆかは黙って聞いている。ゆかに限っては、この状況を既に知っている。

 

 

(救援は呼んだ。あとは、耐え忍ぶだけだが…)

 

 

 ゆかはチラッと川内の方を見る。

 

 

(大丈夫か?)

 

 

 ゆかは、川内の夜戦バカっぷりが発動しないか危惧していた。

 

 

「もっとも、あの重桜が黙って見過ごすとは到底思えませんが」

 

 

(だよね)

 

 

 川内は納得していた。

ゆかをチラッと見ると、目をつぶって紅茶を飲んでいた。見た目も相まって様になっていた。

 

 

「これ返したら、見逃して貰えませんかねー?」

 

 

「無駄に決まっているでしょう」

 

 

「だな。向こうの重要機密を握っちゃってる訳だし…」

 

 

 良くて収容、悪くて殺害。艦艇目線だと良くて拿捕、悪くて撃沈。口封じしてくるのは目に目えてくる。

 

 

「明石、捕まったら三味線にされるにゃ!!」

 

 

 明石は泣き出す。エディンバラはアワアワとしている。

 

 

 外はレッドアクシズに囲まれている状況。この状況を抜け出すのは、ゆかや川内の手にかかれば簡単なのだ。しかし、ロイヤルメイド隊とは一時共闘しているにすぎない。軍事的にも手札を見せるわけにはいかなかった。

 このことが、2人を悩ませていた。

 

 

 

 

 

 

「「「司令官が孤立!?」」」

 

 

「いえ。正確には、あえて川内と孤立することでこちらの手札の公開を最小限にしている状況です」

 

 

 日本皇国異世界派遣艦隊一同は、ゆかの孤立に驚きはあったものの心配する声がちらほら上がるだけで、「アイツなら大丈夫だろ」という思考になっていた。ゆかの規格外の強さと前例がある故のことだが、日本皇国が普通ではないことの一例でもあった。

 川内と一緒に派遣された艦娘不知火は、ゆかと川内の救援要請を受け入れて準備をしていた。さっきの訂正していた人物が不知火だ。

 他にも派遣された艦娘はいるが、いつか紹介するとしてここは割愛しよう。

 

 

「タイミングを見て、現場に着く様調整しましょう」

 

 

「え?でも、なるべく急いだ方がいいんじゃ…」

 

 

「不知火に何か落ち度でも?」

 

 

「そうだぞ。新米の君にいっておくが、司令官は規格外だから、きっと無事だ。それに、あたかも今助けにきましたという感じにしないと、こちらの手札が一部向こうにバレる可能性がある」

 

 

「は、はい…」

 

 

 艦隊勤務を長年しているベテランと不知火の言葉にたじろぐ新兵。彼は、後に2人のこの言葉の意味を理解するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、量産型セイレーンの方を見ているKAN -SENがいた。

 

 

「この子たち平気かしら?向こうに操られない?」

 

 

「母体はオロチの方だから、乗っ取られることはないって赤城先輩は言っていたけど…」

 

 

「赤城先輩ね…あの人は一体何を企んでいるの?」

 

 

「翔鶴姉」

 

 

 翔鶴と瑞鶴だ。翔鶴は赤城のことを信用していなかった。あまり情報を出してくれず、オロチ計画の内容も知らされていない。故に知っている事は計画が存在しているというだけだ。

 

 

「私、ああいう腹黒い人、苦手なのよね」

 

 

 その言葉に、翔鶴の性格をよく知っている瑞鶴のこめかみは、ピクピクと震えていた。

 

 

 

 一方、高雄は刀を鞘に入ったまま杖みたいに突き立てて立っていた。目を瞑って瞑想している高雄は、この前の戦いのことを思い出していた。

 

 

(拙者が至らぬばかりに敵を取り逃してしまった。この汚名はなんとしてもそそがねば)

 

 

「もう高雄ちゃんってば、また難しい顔してる」

 

 

「!?愛宕!」

 

 

 そんな高雄の背後から頬を突いた同型艦愛宕がそこにいた。

 

 

「ほら、肩に力入りすぎてるわよ」

 

 

「や、やめっ」

 

 

 愛宕のスキンシップとも言えそうで言えないスキンシップ。その横では、綾波が見ていた。

 

 

「綾波ちゃんもどう?」

 

 

「いえ、綾波は遠慮しときます…です」

 

 

「どこをさわっている!!」

 

 

 なんとか振り払った高雄。愛宕は後退する。

高雄は声を上げる。

 

 

「まったく…任務中だぞ!真面目にやれ!!」

 

 

「は〜い。島の様子はどう?」

 

 

 愛宕のその質問に答えたのは、瑞鶴だった。

 目を閉じ、偵察機に神経を集中させる。廃墟と瓦礫が建ち並ぶ街の中から見つけ出すのは困難だった。

 

 

「隠れるには絶好の廃墟。見つけるのは骨が折れるな…」

 

 

「焦っても仕方ないわ。偵察機が帰ってくるのを待ちましょう」

 

 

「でも、扶桑さん。攫われた明石ちゃんが心配だよ。あんまりのんびりしてはいられないよ」

 

 

 古鷹の言葉に頷く扶桑。そんな時、こちらに向けて駆け足で寄ってくる足音が聞こえた。加古だ。

 

 

「鉄血艦隊より報告です。アズールレーン艦隊を発見したと!!」

 

 

 

 

 

 アズールレーン艦隊は、戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』、『オクラホマ』を中心として、他に、空母『ホーネット』、『エンタープライズ』、巡洋戦艦『レパルス』、重巡『サフォーク』、『ノーフォーク』、軽巡『クリーブランド』、『ベルファスト』、駆逐艦『ジャベリン』、『ラフィー』などで、構成されていた。

 

 

「先手を取られちゃったな」

 

 

 望遠鏡で、重桜の艦隊を確認するクリーブランド。

 

 

「だが、2人があの島に潜んでいることは確実となった」

 

 

 プリンス・オブ・ウェールズはそう言う。

 しかし、救出は至難の業だった。包囲を突破するのは大変で、尚且つ潜んでいる味方を危険に晒しかねない。

 

 

「ベルファストはどう考えているだろうな」

 

 

 

 

 

 

「奇妙な話だ。船なのに、メイドとか、女王とか……まるで人間の…」

 

 

 

「まるで人間の真似事だ。そのようにおっしゃりたいのでしょうか?」

 

 

 エンタープライズとベルファストは一緒の場所にいた。2人はそこで話をしていた。

エンタープライズが黙り込むと、ベルファストは話を続けた。

 

 

「変わりませんよ」

 

 

 エンタープライズはベルファストの方を見る。

 

 

「人も船も違いはありません。等しく心を持つ、命でございます」

 

 

「いや、我々は戦う為に生まれてきた。人間とは違う」

 

 

「はい」

 

 

 エンタープライズの意見に納得するベルファスト。

 強大な力を持つKAN -SENには、やるべき事があるとベルファストは言う。敵を倒すだけじゃない、大いなる責務があると。証明しなければならないと。

 

 

「証明?」

 

 

 ベルファストは微笑みながら言う。

 

 

「どんな過酷な世界であっても、人は気高く生きることができるのだと」

 

 

 迷える人々の模範となる。その為に、私たちは優雅でなければいけないと。ベルファストはそう言った。

そして、その人生をサポートするのがメイドの仕事だとも。

 

 

「ユニオンとは違う考え方だな」

 

 

「当然です。だからこそ、我々アズールレーンは手を取り合うのです」

 

 

 ロイヤル、ユニオン、東煌、アイリス、北方連合。アズールレーンは、これらと手を取り合っていた。また、かつては、鉄血、重桜とも取り合っていた。

 

 

 

 

 

 ジャベリンとラフィーも、2人で話をしていた。

 

 

「綾波ちゃん、来てるのかな?」

 

 

「かも、しれない」

 

 

「次会ったら、私は…」

 

 

 

 

 

 

 

 別の場所では、同じように綾波も迷っていた。

 

 

 

「悩み事?悩みなら、お姉さんが聞いてあげるわ」

 

 

愛宕が言う。綾波は、先程の高雄に対するスキンシップを思い出していた。

 

 

「綾波は大丈夫です」

 

 

「そこまで警戒しなくても…」

 

 

 綾波は愛宕から離れていた。

 

 

 

 

 

「戦うのはそんなに気が進まない?」

 

 

 核心に迫る言葉。愛宕のこの言葉は今の綾波に突き刺さった。綾波は見透かされたかのように、驚きで目を開く。そして、決心したようにポツポツと話し始める。

 

 

「戦闘は嫌いじゃないです」

 

 

「好きでもないでしょ?」

 

 

「綾波は、重桜のみんなが好きです。大事な仲間なのです。でも…

向こうも同じなのです」

 

 

 アズールレーン側も綾波たちと同じように、仲間がいて笑い合っている。綾波にとってそれは、今でも、重桜でも感じていたことで、向こうでも同じだと思い知らされた。

 

 

「変な感じです」

 

 

 それが、綾波のモヤモヤの原因である。

綾波にとって向こうの2人組、ジャベリンとラフィーのことが頭から離れない存在となっていた。敵どうしなのにと綾波は悩んでいた。

 愛宕はそんな綾波を優しく抱きしめた。

 

 

 

 

 

 各陣営が準備を進める中、それら全ての動きを知っている者がいた。言わずもがな、日本皇国である。人工衛星代わりにしている航宙駆逐艦からの映像をリアルタイムで受信していた。

 

 

「川内、そろそろだ」

 

 

 ボソッと誰にも聞こえない声で言うゆか。

 

 

「わかった」

 

 

 同じ声の大きさで答える川内。

この最低限のやりとりは、だれにも気づかれなかった。

 

 

 

 

 

「そろそろですね」

 

 

 日本皇国派遣艦隊はステルスモードで、ある程度まで接近していた。

 

 

「戦えるっぽい?」

 

 

「それは状況次第です。夕立」

 

 

 他に派遣された艦娘である夕立神通。夕立は暇そうにゴロゴロしていた。

 

 

「司令官、大丈夫かな」

 

 

「吹雪ちゃん、心配しすぎっぽい」

 

 

「でも…」

 

 

 もう1人の艦娘吹雪が、ゆかのことを心配していた。いくらゆかの強さを知っているとはいえ、心配なのは変わらないのだ。

 

 

「吹雪さん。なら、提督の無事を信じましょう」

 

 

「……はい!」

 

 

 神通のこのフォローにより、吹雪の表情はいつも通りに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに、

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が開始された。

魔王編にて、登場させて欲しいキャラは?(参考として検討します)

  • レミリア・スカーレット
  • フランドール・スカーレット
  • 両方出して欲しい
  • 出さなくても良い
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