廃墟街での戦闘からしばらく経った頃…………
「司令官!アズールレーン艦隊とレッドアクシズ艦隊が出航しました!」
「ヤツは?」
「出航したようです!おそらくは介入するつもりかと!」
ヤツとは、人工島に大規模基地を造っていた謎の国家のことを指す。
航宙駆逐艦からの監視で、基地が既に完成していることは分かっていた。後はいつ行動を起こすかを考えていたが、まさか予測通りだとは思わなかった。
「俺たちも出るぞ!ステルスモード起動!進路を交戦区域に向けろ!」
ゆかは艦隊にそう指示した。ついにあの謎の国家と交戦することになると思いながら……。
アズールレーン陣営では、ユニオンとロイヤルの連合艦隊を組んで航行していた。
廃墟街で起こった日本皇国と戦闘での傷は完治している。よって、戦闘に支障はない。
ジャベリンとラフィーは、海面を見つめて重桜の綾波を頭の中で思い浮かべていた。
彼女らはあの時の………日本皇国との戦闘で大破した綾波を憂いていた。
「向こうには綾波ちゃんが…」
ジャベリンは呟く。その様子を見たラフィーはジャベリンの手に自身の手を翳した。
ジャベリンは自信がついたような表情を浮かべた。
「大丈夫。どうすればいいかまだ分からないけど、もう迷ってはいないから」
一方の綾波は、まだ迷っているような表情をしていた。特に日本皇国との戦闘の際に何故、敵である筈の2人を庇ったのか。綾波はその答えが分からなかった。
「元気ないわね。この前からずっと変よ?」
「なんでもないです。大丈夫です」
綾波のその答えを聞いた時雨は、笑顔を浮かべてこう言った。
「安心しなさいな。この時雨様には、幸運の女神がついているんだから」
「雪風様もなのだー!!」
「はいはい。忘れてないわよ」
綾波はその様子を見て微笑みつつも、艦隊の進行方向の方を見て自身の答えを探していた。
「お膳立てはしてあげたわ。後は貴方次第よ………赤城」
オブザーバーのその言葉が引き金となり、赤城は呪文を唱える。
「天津風、雲の通い路吹き閉ぢよ……をとめの姿…しばしとどめん!!」
……それは唐突に起こった。
アズールレーン艦隊の周りに無数の赤い雷が落ちた。そのまま雷が発する光は増大し、艦隊は見知らぬ海上に跳ばされていた。暗黒界域と呼ばれるその場所は、赤城が呼び出したセイレーンの激しい攻撃で出迎えられた。
ステルスモードで付近を航行していた日本皇国派遣艦隊も問答無用で転移に巻き込まれた。跳ばされた場所は、レーダーによってアズールレーン艦隊から離れていることが分かった。
「艦長。付近にアズールレーンとレッドアクシズのKAN -SENと見られる反応があります。また、ステルス中の日本艦隊も捕捉しました」
「そうか…。いつでも攻撃できるな?」
日本皇国派遣艦隊から離れた場所で、謎の基地から出航してきた艦隊が攻撃準備を整えている。
その装備は、日本皇国が元いた世界の技術レベルと同レベルの技術で作られていた。
「はい!いつでもいけます!」
暗黒界域に転移した影響で航宙駆逐艦からの連絡が途絶えた日本皇国派遣艦隊は、レーダーと航空機による偵察を行いながら、KAN -SENどうしの戦闘の推移を見届けていた。
そんな中、大量のセイレーンがアズールレーン艦隊に襲いかかる。そのセイレーンが日本皇国派遣艦隊にも襲いかかった。日本からすればセイレーンなど敵ではないのだが、数が多かった。
日本皇国派遣艦隊は陣形を変更する。中心に空母が来るようにして、その周りに護衛の駆逐艦が配置された。
「ミサイルは使うな!それ以外で片付けろ!」
ゆかは艦隊にそう命令した。その命令は、ゆかの謎の艦隊と相対する為に弾薬を温存させたいという意図が丸分かりだった。
この戦闘には艦娘も参戦していた。
神通を旗艦とする、川内、吹雪、夕立、不知火の艦隊だった。
艦娘部隊には兵器使用制限が出されていない為、初手で艦対艦ミサイルの飽和攻撃を神通の合図で敢行した。その後は各自散開。海上でゲリラ戦を開始した。
戦場は瞬く間に、陽電子砲や誘導弾が飛び交う地獄と化した。
神通は、約101ノットの速度で駆け抜けながら腕についている主砲の陽電子砲でセイレーンを薙ぎ払っていて、川内は、「夜戦だー!!」とはしゃぎながら(空が夜の暗闇に似てるから)神通と同じような戦闘をしていて、吹雪は、お手本みたいに確実にセイレーンを葬っていく。夕立は、約130ノットを超える速力を出しながらセイレーンに肉薄。その周りのセイレーンを誘導弾や陽電子砲で薙ぎ払いながら、肉薄したセイレーンを撃破し、それらの動作を繰り返し行ってこの海域のセイレーンを荒らしまくっていた。不知火は、確実に撃破するのはいいが、過剰とも言える攻撃を時々行っていた。
艦隊周辺のセイレーンを一掃した頃、ゆかたちは天に登る光を見た。ゆかは光の柱の方向から、KAN -SENどうしの争いが起こっている場所であると結論付けた。
光の柱付近では、KAN -SENどうしでの戦闘は停止していた。全員、光の柱に気を取られていた。
そしてその空中には、エンタープライズが佇んでいた。海は荒れ、降り注ぐ雨は、エンタープライズの負の感情を表しているかの様だった。
赤城がやられ、暗黒界域が崩壊するのが時間の問題となった現在。その時、上空に聞いたことのあるような音が聞こえてきた。しかしその音の出所は、皆が見たことのある航空機のものではなかった。あの時と全く別の機種が出している音だったのだ。
その航空機は、上空に展開されていた重桜、アズールレーンの艦載機を次々と撃墜していく。頑張って撃墜しようとしても、圧倒的な速度で振り切られて戻ってきた航空機にやられる。
制空権を失った両陣営に、航空機は搭載しているロケット弾………空対艦ミサイルを発射した。光の槍となって襲いかかるその兵器は、日本皇国との戦闘の際に見たことがあった。
彼女らの持つ兵器では防ぐことが不可能な兵器。しかし、ある程度着弾位置をずらすことはできる。装甲が硬い部分に当たることで被害を最小限にする。
急な動きは艦船では出来ない芸当だ。KAN -SENのように人型だからこそ、そのような調整ができる。
しかし、それでもジリ貧なのは変わりない。
航空機を撃ち落とそうにも速すぎて当たらない。日本皇国の攻撃を思い出すが、今回はそんな比じゃなかった。
既に離脱したKAN -SENが何隻か出ている。そんな状況の中、さらに増え続ける航空機の相手は不可能に近かった。
「隊長。なんか呆気ないっすね」
「そうだな。所詮、第二次世界大戦レベルってとこだろう。一番警戒すべき日本皇国とやらも動く気配がなさそうだしな」
空を飛んでKAN -SENを攻撃している航空機のパイロットが言う。彼らは、無線でやり取りして連携しながら真下のKAN -SENを攻撃している。それは日本皇国によるKAN -SENへの攻撃よりも容赦がなかった。
日本側はダメージを与えるだけで他に何もしていない。しかし、謎の国家側は轟沈させるつもりで攻撃してきている。日本のミサイルを実際に食らったことのある彼女らはなんとか反応できてるが、所詮それだけで、音速を超えるミサイルを迎撃することはできない。
瞬時にボロボロになっていくKAN -SENたち。それでも、必死に空に弾幕を撃ちまくっていく。
その様子は、湾岸戦争のイラクがアメリカのミサイルを撃ち落とそうとする様子を彷彿とさせた。
空は数百機の航空機で覆われている。それらの航空機がミサイル発射体制に入った瞬間だった。
突如、周りの景色が一変した。
赤城が倒されたことで崩壊寸前になった暗黒界域が、ついに崩壊したのだ。
周りは雪が降っていて、氷があちらこちらにそびえ立っていることから、北極みたいな気候の海域にいることが分かる。
空を覆い尽くしていた航空機はいつの間にか消えていた。その事を確認したそれぞれ離れた場所にいる両陣営は、数少ない休憩をとる。
「司令官!航宙駆逐艦との通信が回復しました!映像出します!」
その海域に転移したのは日本皇国派遣艦隊もだった。
周りが氷がそびえ立つような気候の海域に転移したことは艦隊の皆を驚かせた。
そのような状況の中、遮断されていた航宙駆逐艦との通信が回復したのだ。
そこから撮られた映像を出す隊員。その映像には、謎の国家にやられたであろう損傷を負ったKAN -SENらが映っていた。
「司令官!!奥の方から!」
別の隊員が指差したところには、謎の国家の航空機がKAN -SENがいる場所に接近している様子が映っていた。
「いたぞ!KAN -SENだ!」
無数の航空機がKAN -SENに殺到する。アズールレーン艦隊もレッドアクシズ艦隊も対空砲火を浴びせるが、全く当たらない。逆に航空機はミサイル発射体制に入り、飽和攻撃を実施する。
マグレで撃ち落とすことがあったが、それだけで、ミサイルはKAN -SENに次々と突入していく。 ミサイルは、比較的損傷が浅いKAN -SENから着弾していく。
「お願い!当たって!」
「はあぁぁぁぁ!!!」
それぞれの陣営が必死に抵抗する。
アズールレーン側は必死に弾幕を張り、レッドアクシズ側は弾幕を張りつつも式神を盾にして防いでいる。
そんな時だった。
「味方機被弾!結界で耐えました!」
「何!?どこからだ!」
光の矢が飛んできて航空機に着弾したのだ。被弾機は結界で耐えていたが、その攻撃が飛んできた方向を確認すると、そこにはエンタープライズがこちらに弓を構えて佇んでいた。しかし、彼らが知っているエンタープライズとは雰囲気が違う。その意見は、下で見ているエンタープライズ以外のアズールレーン側のKAN -SENらも一致していた。
「姉ちゃん…」
ホーネットが心配そうに見ている。
「エンタープライズだ!全機、目標をエンタープライズに向けて攻撃せよ!」
その声が無線を通じて航空機全体に届けられると、航空機の標的がエンタープライズのみに変わり、彼女に攻撃が殺到する。対艦ミサイルの雨になって彼女に襲いかかるが、彼女は巡航ミサイル並の速度で避け始めた。自分にとって致命傷になりかねないミサイルを持っている弓で撃ち落としつつもしっかりと避けている。たまに航空機にも反撃を行うが、効いていないことを認識すると避けることに専念していく。
そんなエンタープライズの変わり様にKAN -SEN一同は困惑していた。
「対抗…できてる」
誰かがそう言った。しかし、反撃できなければいずれ限界がくる。
それはすぐにきた。
エンタープライズにミサイルが着弾し始めていた。それでも彼女は、いくらダメージを負ってもミサイルを捌き続けていた。それは誰の目に映っても異常だと言わざるを得ない。
そして、ついに1発のミサイルがエンタープライズに直撃しようとしていた。
誰も動けなかった。アズールレーンも、レッドアクシズも誰も動けなかった。見ていることしかできなかった。
「姉ちゃんー!!!」
ホーネットが叫ぶ。それでも時間は止まってくれない。ミサイルは誰の目にも直撃するコースを辿っているのは明らかだった。既に沢山のダメージを負っているエンタープライズに直撃すると致命傷になり得るミサイルを迎撃すらもできない。
………1人だけ動いた者がいた。
氷の壁が砕け散って出てきたのは綾波だった。
彼女は飛び散った破片を足場に空中へと飛び上がって、ミサイルへと突っ込んだ。
綾波は思い出していた。
ジャベリンとラフィーと相対した記憶。
敵どうしなのに戦わないことに苛立った記憶。
その頃から気持ちがモヤモヤとすること。
そのモヤモヤの答えは未だに見つかっていない。
(綾波には、どうすればいいか分からないです)
けれど、綾波の体は動いていた。
「でも、これは違う!嫌なのです!!!」
綾波はミサイルを斬り落とした。しかし、ミサイルを斬り落とした際に起きた爆発に綾波は巻き込まれた。彼女の意識はまだあるが、重力に従って落下していた。
「綾波ちゃん!!」
ジャベリンが叫ぶ。綾波の落下先には、暗黒界域に続くだろうゲートが開かれていた。
「行きなさい!!」
ベルファストが後を押す。
ジャベリンとラフィーは頷くと、ボロボロの体に鞭打って2人で一斉に飛び込んだ。ジャベリンはアンカーを氷の壁に刺して命綱代わりにして、ラフィーは綾波の手を掴む。その後にジャベリンがラフィーの手を掴む。
こうして、綾波が救出された。
「ミサイルが斬り落とされました!!」
「隊長!どうしますか!」
「目標そのままだ!一番厄介なヤツを先に仕留める!」
エンタープライズは、ミサイルを斬り落とした際の爆発に巻き込まれた綾波を見て正気に戻った。彼女は、正気じゃなかった影響なのか憔悴していた。
そんなボロボロの彼女が、先程みたいに降り注ぐミサイルを迎撃したり、避けたりすることをできるはずもなく、ミサイル発射態勢に入るのをKAN -SENらは黙って見ているしかできなかった。
「まるで、嬲り殺しだ…」
航空機は1発ずつミサイルを放つ。今のエンタープライズに迎撃する力が残っていないことが分かっているのだろう。KAN -SENは艦娘と同様に普通の軍艦より頑丈なのだ。よって嬲り殺しのような状況になるのも必然だった。
そして、対艦ミサイルの同時飽和攻撃をする為の発射態勢に入る航空機。その動きはエンタープライズにとって命の危機を感じるのに充分だった。
「姉ちゃんー!!!」
ホーネットが叫ぶ。それでも時間は止まらない。止まってくれない。
エンタープライズは、目の前の航空機の編隊を見ることしかできない。
誰もが諦めかけたその時だった。
「!?ミサイル接近!!回避運動!!」
多数の航空機が突如、飛んできた光の槍に当たって爆散したのだ。
それに続くように第二波の光の槍…………空対空ミサイルが飛んできて上空にいる航空機を壊滅させた。
謎の航空機を壊滅させたミサイルを発射したと思われる航空機が、彼女たちの上空に飛来した。
その横に描かれている日の丸の国籍マークに彼女らは見覚えがあった。
「日本皇国……」
そんな海域に落下していく爆散した謎の航空機の国籍マークには、鉄十字が描かれていた。
「第一次航空隊より入電!!奇襲に成功したのこと!!」
「そのまま制空権維持に務めさせろ!!」
日本皇国派遣艦隊内では、パイロットと整備兵が慌ただしく動いていた。そう。第二次航空隊の発艦準備である。
「ナチスに目に物を見せてやれ!!第二次航空隊、準備でき次第発艦せよ!!」
そうして、カタパルトからの射出される震電。全て発艦したと認識した第二次航空隊は、編隊を組んで敵艦隊のところに向かう。
謎の航空機は、謎の艦隊は、謎の基地を造ったのは、全て元の世界に存在したドイツ第四帝国だった。彼の国は別世界を観測し、その世界に軍を転移させて侵攻していたのだ。
ドイツ第四帝国。
その国は、第五次世界大戦の後に建国された国家で、れっきとした覇権国家だ。第五次世界大戦初期に起こった第一次欧州攻防戦は欧州に、中期に起こった第二次欧州攻防戦は欧州と日本軍に甚大な被害が出た。その被害の大きさから、民衆は救いを求めた。日本は距離の問題とアジアの安定化という問題があった為に支援ができなかった。その結果、別名ヒトラーの生まれ変わりと言われるヒトラーを総統とした(実際に生まれ変わり)第四帝国が建国されたのだ。欧州大陸全体を本土とし、群雄割拠している周辺諸国を攻め滅ぼして支配した。元の世界では、日本とアメリカの存在が抑止力となっていたが、日本が元の世界から転移したことで抑止力が意味を為さなくなったのだ。
問題は元の世界からKAN -SENの世界を観測できている、また軍を派遣できるということ。いずれ、日本がいる世界も観測されたり、軍を派遣したりしてきてもおかしくないのだ。
ゆかが、第十二話の最後に手に持っていた資料は彼の国の資料だった。
つまり、ゆかはある程度前から警戒していたことになる。
ゆかが最初に気づいたのは航宙駆逐艦からの画像を見た時からだった。
海上に堂々と基地を造っていたのだから当然と言えば当然だ。
その基地がドイツ第四帝国の基地だと確信したのは、その基地に彼の国の国旗が掲げられていたからだった。
その基地には、大勢の歩兵、大量の戦車、大量の航空機、大量の艦隊が配備されていた。
そのことから、この世界を侵略すると予測したゆかは、いずれナチスとKAN -SENが衝突するとして、先にミサイル攻撃などを見せることで対応をし易くさせることにした。セイレーンへの報復とこの世界の人類に団結をさせることを口実として攻撃を仕掛けることでだ。実際、廃墟街での戦いの時は重桜とアズールレーンは協力して日本皇国を退けようとしていた。また、今回のナチスからのミサイル攻撃を避けられずとも装甲が硬い場所に着弾位置をずらすことができた。このことから、ゆかの謀略は成功だったと言えるだろう。
「今更、敵対する理由はない!!全力を持ってKAN -SENを守れ!!」
『はい!!』
ゆかは艦娘にそう指示する。
指示を受けた艦娘は、海面に降り立ってKAN -SENがいる方向に舵を取る。
「いたぞ!!情報通り戦艦30隻、空母10隻、巡洋艦75隻、駆逐艦150隻の大艦隊だ!!仕留めるぞ!!」
第二次航空隊隊長の加賀利は、第五次世界大戦を生き残った猛者であり、当然ながら練度は高い。
そんな彼に鍛えられた第二次航空隊の者たちは皇国内では上位に入る程の途轍もない強さを持っていた。現に、敵艦から発射された艦対空ミサイルを避けつつも、空対空ミサイルやガトリングレールガンで撃ち落としたりするなど離れ技をやってのけた。
「敵主砲、エネルギー反応!!」
「わかってる!!ブレイク!!」
そんな彼らだが、敵艦の主砲から放たれた陽電子砲による迎撃を避けていく。
避けていくと、次は濃密な弾幕が彼らを出迎えた。彼らはそれを悉く避けていく。
ミサイルの必中距離に入ると、全機が発射態勢に入った。
「全機、発射せよ!!」
加賀利の声で一斉にミサイルが発射される。装填されたミサイルも発射しつつだ。
同時飽和攻撃。それが彼らが実施した戦術だ。
彼らが乗っているのは震電。震電一機あたりの空対艦ミサイルの搭載量は30発。
第二次航空隊の規模は100機。つまり、30×100で3000発の飽和攻撃が敵艦を襲った事になる。
実際に、ナチス艦隊は大損害を負うことになる。
「敵ミサイル発射しました!!数3000!!そのうち本艦に10発!直撃コースです!!」
「何!?弾幕展開しろ!!本艦は回避運動!!」
「ダメです!間に合いません!!」
このように、第二次航空隊は迎撃が間に合わない距離から空対艦ミサイルを撃っていた。
ミサイルは、敵艦に張ってある結界を無効化した後にもう1発のミサイルが敵艦に着弾。続けてもう1発、もう1発と次々に着弾する。
最初の1発で結界を無効化された後に着弾したもう1発のミサイルにより駆逐艦は一撃轟沈。巡洋艦は3発以上受けて良くて中破、悪くて大破及び轟沈。空母は5発以上受けてなんとか中破、戦艦は9発以上受けて良くて小破、悪くて中破だった。それでも、ある程度の数を受けた戦艦や空母は大破や轟沈までいっている。
「被害は!?」
「はい!!只今集計終わりました!!
戦艦 轟沈15、大破5、中破7、小破3、
空母 轟沈4、大破1、中破5、
巡洋艦 轟沈45、大破25、中破3、小破2
駆逐艦 轟沈127、大破18、中破5
の大損害です!!」
この報告を聞いて、艦隊が受けた被害の大きさにこの艦隊の司令官は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「基地に撤退要請は?」
「出しましたが、応答ありません」
司令官は、少し考えた後に部下の兵士たちと目を合わせてこう言った。
「仕方ない。残存艦隊を率いて敵艦隊に突撃する。この決断に異議ある者は?」
その質問に答えた者は誰もいなかった。兵士らは皆、司令官と共に戦場で散る覚悟があったのだ。
「そうか………ありがとう」
司令官はそれを理解したのか、礼を言った。こんな司令官に仕えてくれてありがとうと。
残存艦隊のうち、中破で済んだ空母から残った航空機が発艦していた。
敵艦隊の位置は既に把握しており、発艦した航空機が編隊を組んでそこに向かって飛んで行った。
「これより、敵艦隊と砲撃戦を行う。ワープ装置起動!!」
「座標入力完了!!いつでもいけます!」
「よし、ワープ開始!!ワープ完了後、すぐに砲撃開始!!」
残った艦隊は砲撃戦に移行すべく、敵艦隊との距離を詰める。
敵艦隊の背後にワープして一気に突き崩す。
「司令官!!艦隊後方からワープ反応!!」
「マジか!?総員、砲撃戦用意!!発艦した第三次航空隊は制空権
維持を!」
ゆかは、陣形を空母を後ろにその他は前にという陣形に組み替えた。
艦隊の目の前には、薄らとワームホールみたいなものが広がっていた。
そして、そこから軍艦が姿を現すと敵艦は即座に砲撃を開始した。
ナチス艦隊の奇襲によって始まった砲撃戦は、戦艦を持っているナチス側の優位に進んでいた。
この戦いは、敵味方入り混じる混戦となっており、小回りが一番利く駆逐艦が大いに活躍した。
「敵主砲にエネルギー反応!砲撃来ます!!」
「回避うn……」
「別方向から砲撃!!回避できません!」
絶対数が少ない日本艦隊は駆逐艦の速度を生かして敵を翻弄していた。
それでも数の力は凄まじく日本艦隊は苦戦していた。
「敵陽電子砲、結界で耐えました!!結界損耗率75%!!判定中破です!」
陽電子砲を一度でも受けると、装甲を貫かれて一撃で轟沈する可能性がある。それ故に陽電子砲の撃ち合いとなったら結界は艦艇の生命線となり、結界の損耗率を見て進退の判断を下すのは当然だった。
「駆逐艦じゃ、戦艦の砲撃を防ぐのは一撃が限界か……」
一撃で結界を半分以上削られた駆逐艦。その事から後一撃で結界は破られると分かる。その情報は艦隊内に共有されている。だから他の駆逐艦が救援しに行こうとするが、敵艦に遮られて不可能になる。それを察したこの駆逐艦の艦長は以下の電文を味方に打って敵艦隊に突撃した。
『コレヨリテキカンタイニトツゲキス』
その電文を見たゆかは舌打ちをして、第五次航空隊の発艦を急がせた。
発艦作業中にも空母に付いている主砲で妨害してくる敵艦と応戦している為、発艦作業に時間がかかってしまった。
第五次航空隊全機の発艦が終わると、急いで味方艦隊のところに急行した。
第五次航空隊が現場に到着するまでに新たに3隻の駆逐艦が結界損耗率80%を超えて、大破判定となっていた。
既に撤退命令が出されており、それでも逃げられない状況に陥った味方を逃がそうと大破判定の駆逐艦が身を挺して守っていた。
「射程距離に入り次第、撃ちまくれ!!」
この航空隊の隊長がそのような命令を出す。
そして二度目の合計3000発の空対艦ミサイルが発射された。この攻撃に気付いた敵艦は迎撃しようとするが、その時に日本艦隊から猛烈な攻撃が浴びせられて少ししか迎撃できずに艦艇に突入するのを許してしまう。
ナチス艦隊はそれでも必死に迎撃していた。基地から何の連絡もなく、後に引けないこの艦隊は、損害を出しながらも見事に迎撃を成功させた。
一方、別の場所。残った航空機をかき集めたこの編隊は2450機の大編隊となっていた。
これを迎撃しに来たのは、第四次航空隊。規模にして200機だが、震電は前世界で参加した国際演習で暴れ回って相手のパイロットにトラウマを植え付けかけた機体だ。また、前世界で日本はアメリカのように物量作戦ができなかった為、常に一対一だけでなく一対複数の訓練を受けている。だからなのか、単独相手より複数相手の方が得意とかいう人が現れることがあった。偶然にも、第四次航空隊にはそのタイプの人間が半数以上いる。つまりどういうことか?
敵編隊は第四次航空隊の土俵に上がってしまったということだ。
第四次航空隊は瞬く間に100機以上を撃墜。
格闘戦に移行した彼らは、散開して航空機を悉く撃墜させる。
それでも編隊は、物量に物を言わせて強引に突破。突破できた980機は編隊を組んで日本艦隊に向かう。
少ししたところで、再び空戦が始まった。
制空権維持の任務に就いていた第三次航空隊120機と第四次航空隊を突破してきた980機との対決だった。
攻撃を先制したのはナチス側だった。発射された14700発の空対空ミサイルを変態的な機動で避けたり、空対空ミサイルで撃ち落としたりするが、120機のうち37機が撃墜するという損害を受けた。反撃として1245発の空対空ミサイルを放つが、撃ち落とせたのは257機と3割にも満たない数だった。数的不利のまま日本側は格闘戦に突入した。
この航空隊は第四次航空隊より練度が低い。だが、第四次航空隊のようにいかなくともここは突破させないと必死に撃ち落としていった。結果的に120機のうち無人機47機、有人機17機の合計64機が撃墜されたが、ナチス艦隊の艦載機980機を全滅させることに成功したのだった。
「司令官!艦隊が撤退していきます!!追撃しますか?」
「いや、いい。こちらの方が損害がでかいんだ。撤退してくれただけでも御の字さ。
全艦に伝令!これより基地に帰投する」
そうして艦隊が反転した時だった。
日本艦隊の方から飛んできた青白い光にナチス艦隊は呑み込まれた。
光が収まるとそこには、ナチス艦隊の姿はどこにもなかった。
日本皇国派遣艦隊旗艦瑞鶴の飛行甲板にて、手のひらをナチス艦隊があった場所に向けている人物がいた。
「………強くなってきている」
大和ゆかだ。ナチス艦隊を呑み込んだ先程の青白い光は彼の仕業だった。
【マスタースパーク】【
原作のマスタースパークに威力増加×100のバフを付けた技で、威力は艦隊を消滅させるぐらいだ。そのような威力でもナチス艦隊の結界は一瞬だけ耐えていた。ゆかはそのことに懸念を抱いていた。
「本隊の戦闘が終了しました。KAN -SENの護衛任務を解いて艦隊に帰還します」
艦娘の神通はそう言った。ボロボロの状態のKAN -SENでは基地に帰ることはできないと思うが、なんとか帰る分だけの力は回復したようだ。
「な、なんで助けたの?」
瑞鶴は帰還する艦娘を呼び止めて聞く。帰ってきた答えは瑞鶴にとって予想外のものだった。
「私たちはそもそも貴方たちと敵対する気は一切ありません。セイレーンを殲滅する為、ナチスを倒す為に一芝居打っただけです」
その筋道は全てゆかが考えていた。
この世界に来てから、航宙駆逐艦の映像を見てナチスが侵攻の兆しを見せていることが分かった。
だから、セイレーンへの報復と同時にナチスの侵攻を阻止する計画を立てた。
そのことを神通は瑞鶴に伝える。
「この話を信じるか信じないかは貴方次第です。ですが、私たちの目的はあくまでセイレーンとナチスの侵攻軍の殲滅。それだけは覚えといて下さい」
そのまま去ろうとした神通だったが、「あっ」と忘れてたものを今思い出したかの様に言い、戻ってきてこっそり瑞鶴にある物を手渡した。
「これを貴方に渡して置きます。これはどんなに遠くても相手に繋がる通信道具と考えれば大丈夫です。一緒に渡したメモの通りに操作すれば使えますので。それでは」
神通は次はしっかりと戻っていった。
瑞鶴は、渡された物を見つめるとどうすればいいか、悩み始めるのだった。
ドイツ第四帝国異世界侵攻軍基地
「侵攻艦隊が全滅?」
「はい。KAN -SENと交戦したまではよかったのですが、日本皇国が介入し始めてから戦局が変わったようでして……」
基地司令官は悩む。このままだと日本皇国によって侵攻失敗の可能性すらあった。
だが、ここで幹部が口を挟む。
「何だと!?極東の猿に負けたというのか!?」
「はい…。そのようです」
幹部は怒鳴った。実はドイツ第四帝国では人種差別が広がっており、この幹部は日本を含む外国人種は劣等民族だという考えを持つ勢力の1人である。
幹部は頭に血が上ったまま、戦力の再編成を部下に指示していた。
その様子を見て基地司令官は頭を抱える。基地司令官はナチスの中で比較的まともな部類に入る人物だ。
(どうして、こうなったんだろうな……)
ため息を吐きながらそう思う彼。幹部は彼と管轄が違う為、なんも意見を出せないのだ。
しかし、基地防衛用の戦力を引き抜くことは流石に見過ごせない。
「防衛用の戦力を引き抜くことは許可できません」
「何だと!?じゃあ、どうやって侵攻するというのだ!!」
「そもそも侵攻艦隊が全滅してる時点で侵攻作戦は破綻しています。なので今は基地防衛に主力を置くべきだと思いますがどうですか?」
その言葉に言い返せない幹部。
それ程までに、日本皇国と海戦の損害は酷かったのだ。
それでも基地防衛用に、戦艦25隻、空母15隻、巡洋艦104隻、駆逐艦193隻が配備されていた。日本は既にこのことを航宙駆逐艦からの映像で把握していた。
この後も会議を重ね、結局基地防衛に主力を置くことが決まったのだった。
作者です。
謎の勢力の正体が分かりましたね。
実はずっと前から計画していて、いつか出そうと思っていました。
ちなみに、タイトルがドイツ語なのは意図的にドイツ語にしたので、伏線と捉えても構いません。尚、google翻訳を活用しています。
それとゆかがついに動きましたね。
一瞬だけでしたが、ゆかの強さがお分かりいただけたのではないかと思います。実際、ゆかの強さはこんなものじゃありません。ゆかの戦闘についてはいつか出したいですね。
補足
ゆかは砲撃戦になった時に何故、最初ではなく最後に魔法を撃ったのか?
単純にフレンドリーファイアの可能性があった為。最後はこちらは撤退していて、相手は追撃せずに反転した為、充分な距離を稼げたのでぶっ放した。
もう一つは、纏めて撃破しようとしたから。ゆかの容赦の無さが窺える。
結界の損耗率
結界は無限に耐えられるという訳ではなく、一定以上の攻撃を受けると破られる。
それを防ぐ為に結界の残りの耐久度を数値で表すようになった。その数値を損耗率と言う。
損耗率は以下の三段階に分けられる。
11%以上30%以下・・・小破
31%以上79%以下・・・中破
80%以上 ・・・大破
尚、10%以下は無傷と捉えても良い。
この回では陽電子砲を耐えていたが、駆逐艦サイズだと1発しか耐えられない。
もし2発目を食らったら結界が破られて、3発目で止めを刺される。
それじゃあこの回に出てきた判定大破の駆逐艦は何故耐えられていたのか。
実は何回か直撃を受けている。それでも耐えられていたのは、ゆかが指揮を執りながら結界を一時的に強化して損耗率が増えないようにしていたから。幻想を操ることができるゆかだからこそできる芸当である。
魔王編にて、登場させて欲しいキャラは?(参考として検討します)
-
レミリア・スカーレット
-
フランドール・スカーレット
-
両方出して欲しい
-
出さなくても良い