ナチス艦隊との海戦で大破判定になった駆逐艦を本土へ送り返して、まだ残っているナチス侵攻軍との決戦の為に追加戦力を得た日本皇国派遣艦隊。その指揮を執っている大和ゆかは航宙駆逐艦の映像を利用してナチス侵攻軍の基地を監視していた。
「明らかに硬くなってきているな」
ナチス軍は防御に主力を置いたのか、基地の要塞化が進んでいた。見ただけで分かる程、基地は広くなってきていて攻略するとなると骨が折れそうなくらいだ。
「ん?」
すると、ゆかは何かを見つけた。
その何かは複数あり、その全てが黒い幕で覆われていて全体像を見ることはできないが、何かの装置だとギリギリ推測することができた。
「…………転移装置?それにしてはやけに小さいな……。なんか複数あるし…」
現状の日本側が持っている情報だけでは何の装置か、推測することしかできなかった。なので、ゆかはこの装置に嫌な予感を感じつつも、脅威ではないとして放置することにした。
この判断が間違いだったと知るのは、もう少し後になる。
ゲート付近の無人島を改造して簡易の派遣基地と化したこの島に日本皇国派遣艦隊は停泊していた。ここで補給や乗員の休息を行う。陸軍が建てたプレハブ小屋を拠点として、各自思い思いの時間を過ごしていた。
「それにしても、アズールレーンと講和できるなんてな…」
ゆかは呟く。
日本皇国の思惑に気付いたアズールレーンが、セイレーン及びナチスに対抗する為に日本皇国に講和を申し出たのだ。KAN -SENや既存の兵器では全く歯が立たないのも一つの要因だろう。
日本皇国としては、もうこの世界ではナチスやセイレーン以外に敵対するつもりはないのでこの講和を即座に受け入れた。
こうして日本皇国はアズールレーンのことを気にせずに、また協力も視野に入れて戦う事ができるようになった。だが、ゆかにはある懸念があった。
ナチスの戦力が拡大してきているのだ。予測だと、近いうちに戦闘艦だけで合計300隻以上に達するとのことだ。その為、ゆかはさらなる追加艦隊を呼ぼうか迷っていた。
「どうすっかな……」
ゆかは1人、空を見上げてそう呟いた。
アズールレーン基地では、捕虜となっている綾波にその監視役のジャベリンとラフィーが基地を案内していた。とはいっても、綾波が捕虜というのはあくまで建前なので彼女らは自由に動き回れる。
「しばらくこっちで暮らすんだから、色々と準備しないと」
綾波は周りを見渡しながら、ジャベリンとラフィーの後ろを着いてきている。
周りには、沢山のKAN -SENたちが笑顔で暮らしている様子が綾波の目に映っていた。
すると、綾波の足下に野球のボールが転がってきた。転がってきた方向を見ると、軽空母『ボーグ』がこちらに向けて「こっち、こっち〜」と言いながら手を振っていた。
綾波はボーグのグローブに向けて投げる。投げたボールはしっかりとボーグのグローブの中に収まった。
「綾波って船は貴方ね?」
突然かけられた声に反応して後ろを振り向く綾波。そこには、駆逐艦『チャールズ・オースバーン』を筆頭とした駆逐艦『オーリック』、『サッチャー』、『スペンス』、『フート』の5人組グループ「リトルビーバーズ」がいた。彼女らは、綾波が重桜のKAN -SENで、重桜の仲間を庇って戦ったということに言及した。それに対し、綾波は何か言われるんじゃないかと警戒する。だが、結果はその真逆だった。
「仲間の為に我が身を投げ出す。正義ね!!」
予想外の言葉に綾波は戸惑いを隠せない。そんな綾波と、その様子を見ていたジャベリンとラフィーに向けて、チャールズ・オースバーンは、正義の仲間として認め、困ったことがあったら私たちが力になると言った。
「ど、どうも…です」
「また会いましょう♪」
綾波は呆然としていた。そんな綾波にラフィーは言う。
「大丈夫。誰も綾波のことを悪く思っていない」
「さあ!早く行こう!」
思っていたのと違う自分の待遇に彼女は呟いた。
「変な感じです」
あれから綾波、ジャベリン、ラフィーの3人は基地内を周っていた。
その途中で遭遇したユニコーンを混ぜて4人で売店を巡る。
沢山の売店が連なるストリートでは、KAN -SENが集まって賑わっていた。
4人は食料品を見たり、ラフィーがジャグリングをしたり、占いで綾波を占ったりなどして楽しんでいた。
「わ〜!美味しそう〜」
一通り散策した4人は軽食を頂いていた。生地の上に、ホイップ、アイス、いちごやブルーベリーなどが載っている、見るからに美味しそうな組み合わせのパンケーキだ。ラフィーはそれを丸ごと口に運ぶ。ユニコーンはナイフで食べ易い大きさに切ってフォークを使い綺麗に食べていた。
一方綾波はまだ食べていなかった。それを見たラフィーは綾波のいちごを奪おうとする。その時だった。
「久しぶりっぽい!!」
聞いたことのある声が聞こえて、3人は固まる。その声は廃墟街での戦闘の際に対峙した相手の声だ。
ユニコーンは戦闘に参加していなかった為に聞いたことがなかったが、3人はしっかり覚えていた。
「夕立……何しにきたんですか…」
綾波は警戒心MAXで聞く。それをジャベリンとラフィーは慌てて止めた。
アズールレーンと日本皇国は既に講和をして和解している。それを彼女らは知っていたから綾波を止めることができた。
彼女らは綾波に事情を説明している。その間に夕立は、綾波たちが食べていたパンケーキと同じ物を買ってきて食べていた。
「おいしいっぽい!!」
ジャベリンとラフィーから説明されて事情を理解した綾波は、夕立をじっと見つめる。
思い出すはあの時の廃墟街での戦闘。それと別人のような今の夕立に戸惑いが頭から離れないでいた。
「本当に夕立なのですか?」
思わずそう聞いてしまったのは悪くないだろう。
他の場所にも艦娘はいた。
「これが黒いメンタルキューブですか……」
神通はプリンス・オブ・ウェールズのところにいた。そこにはホーネットやグリーブランドもいる。目の前の机には、黒いメンタルキューブが堂々と置かれていた。このメンタルキューブは、重桜で日本が奪い、廃墟街での戦闘でアズールレーンへと渡った物だ。
「あの戦い以降、キューブは異常な反応を示しています。これが何を意味するかは分かりませんが………」
「黒いメンタルキューブはオロチ計画の鍵。セイレーンの企みであることには間違いない」
とは言っているものの、その詳細までは分かっていない。セイレーンの仕業と分かってはいるが、どういう計画なのか分かっていないのが現状だ。
一応神通はゆかからある程度のことは聞いている。けれども、ナチスのことがある分、迂闊に動けない。
「ナチスのこともあります。神通様。ナチスという国家についてご教示いただけませんか?」
「はい。こちらもそのつもりです」
神通は、予め用意していた元の世界の地図を見せながら説明する。
「まずナチスというのは国民社会主義ドイツ労働者党の略称で、その組織が政権を握り建国されたのがドイツ第四帝国です。一般的にナチスとドイツを合わせてナチスドイツという名称で知られています」
「ナチスドイツか……鉄血に似ているのだな」
「文化面ではそうですね」
プリンス・オブ・ウェールズの呟きにそう答える神通。確かに地球のドイツの位置と、この世界の鉄血の位置はほぼ同じと言っても過言ではない。その為、文化が似ているのはある意味必然と言えよう。
だが、似ているのはそれだけで、ナチスはこの世界では考えられないような国家であることは神通は知っていた。
「ナチスはアリーア人至上主義の国家で、ドイツ社会に属さない者を容赦なく虐殺や収容所送りにする国家です。覇権主義の一面もある為、
その説明に3人は絶句した。彼女らの常識では考えられないのだ。国家主導で人種差別を推し進めることは、この世界ではありえないことなのだ。世界は違えどそんなこと許される筈がない。
実際、元の世界では日本やアメリカは彼の国を牽制していた。そのおかげか、非人道的な行為をやることはなかった。事態が変わったのは日本が異世界に転移してからだった。
「なので、いつ侵攻が再開されるが分からないのが現状です」
神通のその言葉はその場に重く響いた。
アズールレーンにはナチスに対抗できる力がない。もし侵攻してきたら、なす術なく蹂躙される未来しか見えない。
「それに、レッドアクシズのこともあります。日本側としては早く講和して共同戦線を張ってほしいところです」
「耳が痛い話だな」
この話はしばらく続いた。
数日後……
「本当に日本に似てるなぁ…」
そう感慨深げに重桜を見ているのは川内だ。この陣営はアズールレーンと違って日本と講和を果たしていない為、中に入るのは一度潜入したことがある川内が抜擢された。彼女はここで、オロチ計画の詳細について調査するという口実で観光しに来た。潜入のついでなので、一応任務は果たしている。
「怪しいのは、前見た洞窟だよね」
そう言って洞窟の中に入る川内。
場所を移動していなければ、一番怪しかったセイレーンの艦船は黒いメンタルキューブを強奪した場所にあるはずだ。だが、そこに行くまでに何があるかわからない。罠があるかもしれないし、見張りごいるかもしれない。川内は、ロイヤルと日本の潜入があったから警備が硬くなっていると思っていた。
だがその予想は外れる事になる。警備などのセキュリティ要素が全くなく、簡単に目的地に辿り着くことが出来た。
「悪いわね、重桜。オロチの秘密、探らせて貰うわ」
その声を聞いて川内は咄嗟に隠れた。鉄血のプリンツ・オイゲンと出会した為だ。彼女もオロチの秘密を探ろうとしており、まだ川内のことには気付いていない。
彼女が見下ろすと、オロチの前に加賀が佇んでいた。
「加賀!?」
プリンツ・オイゲンの驚愕を他所に、加賀は静かにオロチに近付いていった。
川内は加賀が何をするのか、予想できてしまった。
「まさか…」
「姉様…今参ります」
加賀がそう呟いた途端、オロチが起動した。
船体に赤いラインが張り始め、セイレーンの巨大な軍艦が動いていた。
「まずい」
川内は突如揺れ始めた洞窟や起動したセイレーンを見て慌てていた。
巨大な軍艦が動いている影響なのか、セイレーンが起動したことによる影響なのかは分からない。だが、セイレーンが起動したことを皮切りにレッドアクシズ基地全体が揺れていた。
川内とプリンツ・オイゲンは各自で急いで洞窟から脱出。そのまま川内は、艤装に搭載されているワープ装置で拠点と化している無人島に帰還した。
「提督!件の船が動き出した!!」
ゆかは川内のその報告に反応し、近くの隊員にある事を聞く。
「ナチスの動きは?」
「ありません…あっ!今艦隊が出航しました!!」
ゆかはそれを聞いて、目を閉じて深呼吸をする。息を吐き終わった後、目を開いてこう言った。
「総員!出航準備!!」
拠点内の隊員達が走って船に乗る。
あの時のナチスとの海戦から規模を増強した艦隊。その規模は戦艦7隻、空母10隻、巡洋艦23隻、駆逐艦75隻の合計115隻に上る。それに追従するように潜水艦24隻も投入される。
各隊員たちはこの戦いで、この世界で起こるナチスとの決戦を最後にすると意気込んでいる。
士気は充分。ゆかはそう判断して、全艦隊に向けて声を張り上げた。
「当初はセイレーンへの報復の為にこの世界にやって来た。その後にセイレーンの敵であるKAN-SENたちに接触した。彼女らは我が国とも敵対していたのに快く接してくれた。しかし!この世界にナチスが侵攻しようとしている。
諸君は知っているだろう!!元の世界で起こしたナチスの蛮行を!!それをこの世界の人間やKAN -SENに向けていいのか!!否!!答えは否だ!!
ナチスの侵攻を阻止して、世界を日で照らすのは我らだ!!
全艦!抜錨せよ!!暁の水平線に勝利を刻むのだ!!」
旗艦である戦艦『武蔵』に旭日旗が掲げられ、周りの艦隊は武蔵に続くように一斉に出航する。
数はナチス側が有利。質は日本側が有利。これから起こるであろうこの戦いの勝利がどちらに傾くかは誰にも分からなかった。
「なんて事をしてくれたのだ………加賀殿」
戦艦の甲板でそう言う高雄。彼女の他にも重桜のKAN -SENたちが同じ場所にいた。彼女らは重桜に対する裏切りと同然の行為をしている加賀に対しての対処法に迷っていた。状況によっては、加賀をオロチとともに轟沈させなければいけなくなり、仲間である筈の重桜のKAN -SENにとってそれは耐えられる事ではない。
「こんなの嫌なのだ…」
「雪風…」
良くない雰囲気が流れる中、瑞鶴だけ声を上げた。
「私たちはこの為に戦ってきた訳じゃない」
瑞鶴は加賀の目を覚まさせる気でいた。なんとしてでも連れ戻す気でいた。
ひっぱたいてでも、セイレーンに邪魔されようともだ。
「セイレーンの思惑なんかに乗ってたまるもんですか!」
その言葉は重桜の意志を統一させるには充分な言葉だった。
戦闘が開始してからしばらく経った。
レッドアクシズはセイレーンの物量に押されていた。あちらこちらでビームや砲弾、航空機や式神が入り混じる激しい戦闘が繰り広げられていた。
「目を覚まして、加賀先輩!!こんなのセイレーンに利用されているだけじゃない!!」
瑞鶴が必死に加賀の式神を弾きながら接近する。発艦した零戦も一航戦相手に善戦していた。
だが、そのうち一機が火を吹きながら瑞鶴に接近する。
「瑞鶴は傷付けさせないわ!」
「お姉ちゃん!!」
妹を庇うような位置に立つ翔鶴。尚接近してくる零戦。
2人の視界がスローになって零戦が衝突する、その時だった。
「迎撃成功!!間に合った!!」
零戦が、突如張られた弾幕により撃墜したのだ。その弾幕の出所を見ると、そこにはあの廃墟街で戦ったことがある船……川内がそこにいた。
ゆかに報告しに行った川内は、一度重桜に戻ってきていた。だが、すれ違いの形になってしまい、急いで追いかけて来たのだ。
「どうでも良くはないのです」
そしてその場に、アズールレーン基地にいた綾波、ジャベリン、ラフィーの3隻が救援に来た。
皆を助ける為に来た綾波の目には、かつてあった迷いはなくなっていた。
アズールレーンと艦娘が合流し、セイレーンを物凄い勢いで減らしていく。特に艦娘が大暴れしていた。
そんな時にオロチからロケットの発射台のような物が出現した。
「あれは……フリッツX?」
「いい線いってるわね、オイゲン」
そこに付いている兵器は、第二次世界大戦レベルの技術しか知らないKAN -SENには分からないが、それよりも進んだ技術を持つ日本皇国の兵器を扱っている艦娘には姿を見ただけで瞬時に分かった。そして、それの危険性も分かっていた。
「あれは巡航ミサイルです!!発射されると確実にアズールレーン基地まで届きます!!」
「なんだと!」
神通は発射を阻止させるように指示を出そうとするが遅かった。ミサイルは煙を出しながら、アズールレーン基地がある方角に向けて飛んでいった。
(幸い、速度はそれ程ではないですね……迎撃は可能…)「艦対空ミサイル発射用意!目標、巡航ミサイル!撃てぇ!」
「神通!迎撃成功っぽい!!」
データリンクシステムにより情報共有していた夕立が、迎撃が成功したことを観測して神通に報告する。
日本が明らかにミサイルの技術を持っていると予測していたオブザーバーにとって、迎撃されたことに対して大した動揺は見せなかったが、やはり日本皇国はイレギュラーなのか歯噛みしながらその様子を見ていた。
「加賀!!」
加賀の式神が綾波に襲いかかろうとしているところを瑞鶴がその式神を斬ることで防いだ。
そして瑞鶴は加賀に突っ込んだ。
「捨て身のつもりか!!」
加賀は突っ込んでくる瑞鶴に式神を放つ。瑞鶴は刀で弾く。弾き損ねたのが瑞鶴の顔面に当たる。
それでも瑞鶴は怯まずに加賀に突っ込む。
「いい加減目を覚ませ!!一航戦!!」
瑞鶴は加賀の胸倉を掴み、思いっ切り加賀に頭突きした。
加賀は倒れ、倒れた体勢のまま瑞鶴、翔鶴を見る。
「なんなんだ、お前は…」
「まだ分からないのですか、先輩。この子たち、本気で貴方たちを救おうをしているのですよ」
翔鶴がチラッと見た方向を見る加賀。そこには、綾波、ジャベリン、ラフィー、ユニコーンが加賀を見つめていた。そして瑞鶴に視線を戻した加賀は、涙を流してこう言った。
「赤城姉様を助けて………」
その場にいた全員が力強く頷いた。
一方別の場所では鉄血のKAN -SENたちがセイレーンの上位個体と激戦を繰り広げていた。
そこに綾波たちが駆け付け、戦闘が一時中断された。
「綾波〜!!」
夕立を筆頭に、雪風、時雨が綾波に抱きついた。実は綾波がアズールレーンの捕虜になってからは彼女は綾波のことが心配で堪らなかったのだ。
「てか、なんでアズールレーンと一緒に行動しているんですか!!」
「話は後です。今は赤城を止めるのです」
「さっきからやってるっての!!」
「違う。皆仲良く」
アドミラル・ヒッパーが言った言葉を否定し、修正するラフィー。その様子からプリンツ・オイゲンは何かに気付いたように納得する。
「お喋りは終わったかしら?」
「ええ。話は纏まったわ。
戦闘がさらに激化する中、謎の砲撃の嵐がセイレーンを次々と撃破した。
何のことか分からなかった一同だが、ベルファストだけ知っていた。
「待たせたわね!!円卓の騎士の到着よ!」
「余は長門!重桜の長門である!これより、レッドアクシズとアズールレーンはセイレーン打倒の為、連合艦隊を結成する!!」
援軍だ。それも頼り甲斐のある援軍だった。
思想の違いで2つの勢力に分離したが、思いの力によって再び一つになった。その思いは異世界から来た艦娘にも及んでいる。
「私たちは、世界を救う為に生まれてきた。
行こう!戦士たちよ!!命を燃やせ!!」
「バリアは私たちに任せて下さい!全艦!陽電子砲撃ち方用意!!撃ち方始め!!」
神通、川内、夕立はそれぞれ三方向に別れて、解析で分かった弱点を狙って主砲を放つ。
放たれた陽電子砲は、自動照準機能により見事に弱点に命中。バリアは大きな音を立てて崩壊した。
「今です!」
『撃てぇーー!!!!』
神通のその声を合図に、構えていたKAN -SEN一同が一斉に砲撃を開始する。
この飽和攻撃にオロチは耐えられる筈もなく、そのまま轟沈した。
オロチが轟沈したことを確認すると、KAN -SENたちは歓喜した。
エンタープライズによって、赤城は救出されてハッピーエンドかに思われた。
だが、艦娘は忘れていなかった。
もう一つ、敵対している勢力があったことを。
それは、海面が激しく揺れ始めたことから始まった。
「!?海中から高エネルギー反応!!浮上してきます!」
そうして浮上してきたのはオロチだった。しかし、何か様子がおかしい。
起動する様子も、こちらに攻撃する様子も微塵も見せないのだ。
警戒するKAN -SENや艦娘が不思議に思った瞬間、オロチの上空にワープゲートが出現した。そのゲートからは見たことがある軍艦が空中に浮遊した状態で出現した。
「ナチス…」
「何をするつもり…」
複数の軍艦が空中で静止してオロチの近くによった、その時だった。
黒い渦が軍艦とオロチを丸ごと呑み込んだのだ。そしてその黒い渦が晴れると、そこには見たことのない軍艦が佇んでいた。
その軍艦は、オロチの面影を残しつつもミサイル発射管があったり、垂直発射装置があったりとナチスの軍艦と融合した軍艦だと推測できた。だが、実際はそれ以上の性能だった。
「!?艦首に高エネルギー反応!!こ、これは…」
川内は信じられないと動揺するが、すぐに動揺を抑える。彼女は観測した結果をなるべく全員に響くように声を上げる。
「波動砲くるよ!!急いで射線上から離れて!!」
その言葉に反応したKAN -SENは急いで射線上から移動する。艦娘は反応が遅れたKAN -SENを急いで射線上から退避させている。そしてKAN -SENが波動砲の射線から外れたのを確認した艦娘も急いで射線から外れようとする。しかし最後の1人…川内は間に合わずに波動砲に呑み込まれてしまった。
「結界損耗率100%………これほどまでとはね…」
なんとか結界で耐えた川内。実は軍艦に載せてある自動結界は波動砲を1発だけ耐える事ができるように設計されていた。
そう設計されるようになった理由として第五次世界大戦で起こった宇宙海戦が挙げられる。波動砲とそれに匹敵する威力を持つ兵器を搭載した軍艦が多数所属する大艦隊と決戦を繰り広げて、宇宙海軍第四主力艦隊が全滅する損害を受けたのだ。その戦いは日本側の勝利で幕を閉じたが、他の宇宙海軍主力艦隊もある程度の損害が出ていた為、結界の強化を行った。その結果が、波動砲を1発だけでも耐えられる結界だ。尚、この結界は宇宙海軍所属艦艇やネクロマンス所属艦艇にしか配備されていない。
最近はコストの削減化に成功して海軍所属の戦艦、空母から順次配備される予定だ。
そんな結界で命拾いした川内だが、他の艦娘やKAN -SENとともにピンチに陥っていた。今の川内は、結界が崩壊していて普通の艦娘やKAN -SENと変わらない。
神通や夕立が反撃するが、オロチ特有の結界に阻まれて意味を成さない状況だった。正直、ジリ貧…そう言わざる得ない状況だった。
このようにして彼女らが苦戦している中、ついにナチス本隊の姿が彼女たちの目の前に現れた。
今度こそ終わりか。そんな思った時だった。
「あ、あれ!」
「あれは…」
「来ていらしたのですね」
「提督…」
日本皇国艦隊が現れたのだ。この艦隊を見て、艦娘もKAN -SENもホッとしたような表情をしていた。
「後は任せろ」
そんな内容の言葉を無線で全員に繋げた。
「あれが極東の猿の軍隊か」
この艦隊の司令官を任された中将はそう呟く。今回のナチス艦隊は最新鋭の兵器が搭載されている。これで日本と互角に戦える…そう思っていた。
「情報通り数は少ない。総員!戦闘配置につけ!正面から叩き潰す!!」
「司令!各空母から第一次攻撃隊全て発艦完了したとの報告が!!」
「タイミングバッチリだ!!攻撃開始!!」
その命令が、この世界の歴史に残される一大海戦の幕開けだった。
時間は少し遡る………
「司令!!艦娘付近の海域とナチス侵攻軍基地から高エネルギー反応!!映像出します!」
そうして出された航宙駆逐艦からの映像にはとんでもない物が映っていた。艦娘付近には復活したオロチにナチス軍艦が融合している様子が映っていた。ナチス侵攻軍基地には黒い渦が上空に伸びて、そこにあるワープゲートみたいな物に繋がっていた。ここでゆかはあることに気付く。
「基地の黒い渦が出ているところって………まさか!!」
ゆかは部下に急いである画像を持ってくるように伝えた。
その画像がゆかの手元に渡ると、今見ている映像と見比べた。
「やっぱりか!」
ある画像とは仮拠点と化した場所でゆかが見ていた映像の一部を切り取った画像であった。その画像には、今の変わらない基地が映っていたが、唯一違うところは基地内に複数の黒い幕で覆われている謎の装置が映っていたことだった。その装置はゆかが嫌な予感を感じつつも脅威ではないと判断して放置していた装置だった。
こうなった以上、艦娘とKAN -SENだけでオロチを相手するのは無理な話であり、当初の「ナチス艦隊と敢えて鉢合わせて遭遇戦の形で決戦を挑み、オロチは艦娘とKAN -SENで討伐する」という作戦を破棄して、日本側は急いで彼女らの救援に向かわないといけなくなった。
「ワープ装置を起動しろ!それとワープ後すぐに第一次航空隊を発艦できるように各空母に伝えろ!」
「ワープ装置起動しました!!座標設定完了!!5秒後にワープします!!」
「ワープ成功!!目の前にナチス艦隊視認しました!!」
「艦娘やKAN -SENは全員無事です!!」
ゆかはその報告を聞いて、間に合ったと胸を撫で下ろした。その後すぐに気持ちを切り替えて、ゆかは準備していた空母に指示を出す。
「第一次航空隊、発艦せよ!!」
その指示が出されると、待ってましたと言わんばかりに発艦して敵艦隊に向かっていく。
「敵ミサイル発射!!数10000以上!!うち150発は本艦直撃コースです!!」
「対空戦闘!!摩耶型を前に出せ!!出来る限り全て撃ち落とせ!!」
「敵戦艦からエネルギー反応!!陽電子砲きます!!」
「回避運動!!回避した後、主砲斉射!!撃ちまくれ!!」
戦場は一気にビームやミサイルが飛び交う場所と化した。戦況は数的不利の日本が若干不利になっていた。
KAN -SENは艦娘とともに戦場の外に移動している事、また向こうには艦娘がいる為、彼女らを守りながら戦う必要はない。だが、それでも彼我の数の差は凄ましく日本側は圧倒されていた。
日本側が圧倒されるのはナチスが最新鋭の兵器……日本にとって現役とほぼ同性能の兵器を使用している為、質が良いというアドバンテージが使えないのだ。
この戦いは長くなる。ゆかはそう直感した。
作戦最終段階発動………
オブザーバーたちセイレーンの生き残りは、ナチス出現の混乱に乗じて上手く姿を絡ませました。
魔王編にて、登場させて欲しいキャラは?(参考として検討します)
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レミリア・スカーレット
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フランドール・スカーレット
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両方出して欲しい
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出さなくても良い